〜グレンと悪魔公ヴェルダ〜
グレンは上空を飛んでいた。
黄金都市ベルタへ向けて。
『崩落龍』によると、この国には今『悪魔公』が存在し、何やら動き始めたという。どうするか。
とりあえずは合流優先だ。家族の無事を確認するのが最優先。
その上でどう動くのか決めよう。家族三人で合流できればほぼ怖いものはない。
『悪魔公』となれば国の危機かもしれないが、俺にこの国を守ってやる義務はないしな。自分の家族優先だ。
そう考えをまとめた俺は飛ぶ速度を維持する。すでに最大速だ。これ以上早くなりはしないができるだけ急がなくては。
そうしていると、俺の飛ぶ正面に何かが立っているのが見えた。空中にも関わらず、立っているのだ。
近づいていくと、頭に紅いツノを生やした大柄な男が腕組みをして立っているのが見えた。その人物の目の前に止まると、彼は話し出した。
『俺は「下級悪魔公」、ヴェルダだ。お主も名を名乗れ、龍の器よ』
「俺はグレン、グレン=アスガルドだ。そちらから出てきてくれるとはありがたいな」
『それはそういう意味でだ?』
「どうせ倒すんだ。探す手間が省けたからさ」
『ハハハッ!いい理由だ。
俺もお前と戦いたくてここにきたからな。・・・すぐに死ぬなよ』
そういった瞬間相手のプレッシャーが高まる。こちらもいくか。
『魔装幻界』
『心魂来臨』
二人の声が重なる。
見えてきたヴェルダの姿はまるで人間の将軍のような紅色を主体とした重装備を身につけ、手には彼の背丈以上の大斧を持っている。見るからにパワータイプだろう。
対して黒皇龍の力を顕現させたグレンは服が黒を主体としていて、剣は黒刀から黒剣に変わっている。そして以前と違うのは彼の背に浮かぶ、燃えるような紅と凍えるような氷の玉が浮かんでいること。
『ほう、奴に聞いていた姿とまた少し違うな!』
「・・・聞いていた、とは誰からだ?」
『それは俺を倒せたら話してやろう。楽しみだ!
全力でかかってくるがいいぞ!!』
「言われなくてもすぐに終わらせてやるさ!」
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ガンガンガンと剣戟よりも更に重い音がする。
片方がかなり重そうな大斧を振り回しており、もう片方は黒剣でそれを迎え撃っているのだ。体の大きさもかなり違う二人が互角に打ち合っているのはなんだかおかしな図に見える。
だが共通するのはどちらも楽しそうなことだ。大柄のツノを生やした方は見るからにそういうことが好きそうだ。
だが小柄の人間の方はぱっと見そうは見えない。だが口元がにやけている。
やがて剣戟がひと段落して、グレンが口を開いた。
「・・・強いのだな、悪魔公とは」
『そうだ。悪魔公にもランクがある。俺は下級だが戦闘タイプの魔装だ。こそこそするのは性に合わんしな。
そういうのは得意な奴』に任せている。
・・・それにしてもお前も楽しそうに戦うな?』
「自分が強くなっているのを実感するのは楽しいよ。
でも家族が心配だからな。そろそろ終わりにしよう。」
『フフ、そうか。ならやってみろ!!』
そういって二人はまたぶつかり合うのだった。
本日5話目です。




