〜雷光の槌〜
黄金都市ベルタの街の人々を逃がす。
その役目の責任者は普段魔物相手に戦う冒険者で、冒険者支部にいた中で一番ランクの高いパーティが選ばれていた。Sランクパーティ「雷光の槌」。彼らは3人パーティで、全員が接近戦を得意とし、全員が雷属性の『心魂』使いで構成されている。
この街では唯一のSランクパーティで、リーダーのグラネルは冷静な判断ができるベテランとして有名である。
彼らは多数の冒険者パーティを率い、今や国の騎士すらも指揮下に置いていた。
「もう2時間ほどでベルーガの街に着く。今はまだ魔物が迫ってはいないが、最後まで気をつけるんだ!」
護衛や避難民の気が緩まない様に大声で伝える。
だが彼には気がかりがあった。この国の危機とも言える状況なのに、国の上層部は何も出来ていない。いや、していない。
王自らが住む主都に魔物が迫っているにも関わらず、報告をあげても国としての動きは「特になし」とのことだった。
事態を甘く見ているのか、そもそも国を治めようとする気すら無いのか。
・・・おそらくは後者だろう。基本的にここの国王はクーデターの手腕こそ見事だったが、政治などは前国のものを引き継いでいるだけだった。少なくとも自分たちがここにきてからは。
唯一、人口を増やせるようになのか、建物の建設には積極的だったらしいが。
主都に冒険者ギルド支部ができ、その旗印として、ある程度有名だった自分たちが呼ばれてきた。自分たちがくることで、「あいつらがいくなら大丈夫」といって移住を決めたものも少なくないらしい。
実際にきても仕事は割の良いものが多いし、冒険者としては問題はなかった。
だが国として見た時には、どんどん裕福にはなっていったが、行政は何もしていないというチグハグな感じの感想を持っていたのだ。
そんなことを考えながら、また小一時間、護衛をしながら歩いていると、若干遠目にベルーガの街が見えてきた。やっと辿り着いたか。そう思った時。
ゴゴゴゴゴゴゴと言う音とともに、目の前に高さがわからないほどの土壁がベルーガの街方向に向けて地面から生えてきた。
それらはどんどん横にも広がっていき、やがて果てが見えないほどの壁になった。前に進むのは許されなくなってしまったのだ。
ベルーガの街に入るにはこの壁を壊すか、相当な距離を迂回するしかない。
だがこの壁は高い。そしてとても頑丈そうだ。壊すのは諦めた方がいいだろう。
なんとなく上を見上げたクラネルの目の先はるか高くに、何か黒い人影を見た気がした。
見間違いかと目を擦ると、次の瞬間にはその姿はなかったのだった。
本日2話目です。




