〜秘密基地1〜
ここに連れてきたのはそういうことか・・・。
ラストリア家は剣の名家。そしてシルフィーデン家は魔法の名家。地位もほぼ同じで、領地も隣り合わせということもあり、何かにつけていがみあうような関係だったらしい。それが改善されたのは今代の当主同士、つまり俺たちの親同士の代になってかららしい。俺の父とエメリアの父が同学年の同級生だったことが幸いし、最初はぶつかっていたものの、互いに必要なものだと考えるようになったらしい。
しかし当人同士が仲良くなっただけで、家と家の関係がすぐによくなるわけではなく、その親たちーーつまり俺たちの祖父、祖母の世代ーーの間では、まだわだかまりがある、ということらしい。
つまりこの場所の役割は俺たちの鍛錬の場、であると同時に、両家の目から逃れられる場所でもある、ということだ。素晴らしい考えだ。俺もできることなら魔法を学んでおきたいと思っていたからな。・・・でもエメリアは本当に剣を学びたいのだろうか?
「エメリア、剣を使ってみたかったのか?」
「うん!だってかっこいいじゃん!」
屈託のない笑顔でそういう彼女が眩しい。彼女は勇気があり、探究心があり、意欲があるんだ。
俺はふふっと笑ってこう言った。
「じゃあ教えあってお互い強くなろう」
「うん!頑張ろう!」
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俺は持ってきた木剣をエメリアに貸し、素振りと、俺が父から教わっている型を教えている。ここまでは俺が教えている段階だ。はっきり言ってお嬢様のような格好ではやりにくいだろうと思ったが、今日は仕方ないか。ふっ・・ふっ・・ふっ、と真面目に剣を振りながら荒れた息遣いが聞こえる。だいぶ時間も経っているし、少し休憩にするか。
「エメリア、少し休憩しよう」
「うん、わかった!」
そう元気よく返事をした彼女は、ふうぅーー、と長い息をついてその場に座った。今までやってこなかった動きをしたから、その分余計に疲れているんだろう。彼女が軽く休憩を取れたら魔法を教えてもらおう。そう考えているとだらっとした状態のまま、彼女はこう言った。
「じゃあ、今度は私が教える番だね!」
「ちゃんと休憩してからでいいよ」
「ふふん、魔法は疲れてても教えれるよ!」
そう誇らしげにいって彼女の講義が始まった。
今日3話目です。続きはまた明日投稿しようと思います。