〜山頂での接敵〜
俺たちがここにたどり着いてちょうど2日後、軽い地震があった。
これが本当に噴火の予兆なのかわからなかった俺たちが宿屋の店主に確認すると、
間違いなく「予震」だ、と言われた。
よし、すぐに出発しよう。
2日ほど空けるかもしれない、と主人に説明して宿を出た。料金は1週間分先払いしてあるので問題はない。
荷運びのため、ある程度整備されている道を通り、山への道へ向かう。
そんなに標高の高い山ではないし、道も歩きやすい。登りきるのにそんなに時間はかからないだろう。
だが白狐龍と出会ったあの時のように、胸を打つ動悸のようなものは今のところ感じない。本当にここに龍王がいるのだろうか。
やがて山頂にたどり着いた。
山頂はある程度の平面的な広さがあり、その中央に巨大な噴火口と思しき物が見える。
中を覗くと、距離はあるのに感じるかなりの熱さと共に、溶岩がドロドロと流動し噴火の準備をしているのかのように見えた。
まだ予震から半日も時間が経っていない。ここであと半日待って龍を待とうか、二人にそう伝えようとした瞬間にその声は響いた。
「おや?もうここに龍の器がいるのですか。早かったですねぇ。
命令には含まれてはいませんが完成する前に殺してしまいましょうか。」
ランチでも行こうか。そんな軽い声のトーン。だがその中に不気味さを多分に含んでいる。
黒の装束に黒の髪。そして魔物の特徴であるはずの淀んだ黄色の目。そして頭から生える2本のツノ。
ーー悪魔ーー
そう考えた瞬間、襲いかかる殺気。
『凍て尽くせーー白狐龍』
急いで精霊幻界を発動し、凍刀を出現させる。
悪魔は気づけばもう目の前にいた。恐怖に駆られて刀を振り下ろす。
ギィイイィィンと鈍い音が響く。
「何っ!?」
鋭く伸びた黒い爪に受け止められたのだ。
すぐに刀を引き、距離をとる。
その瞬間にユーリによって「光矢」が放たれた。
だが悪魔は反応することなくその場に立ったまま、掌を飛んでくる魔法に向けた。
「光矢」は掌に当たった瞬間にパリンッと音をたてて割れて崩れた。
魔法的な防御力があるの強いのだろう。
「そんなっ!!」
それが効かなくても時間は稼いでもらった。
続けて心魂の『風妖女王』を発動したエメリアがその場で剣による突きを放つ。
『風突』
ドンドンドンッ、と悪魔に当たった音がする。あまりダメージが入ってはいないように見えるが、
流石に意に介さずにはいられず、悪魔が少し距離を取る。
そこに『龍の心臓』を発動した俺が凍刀で踏み込む。
「ふっ!!」
圧倒的な膂力を纏った斬撃は、一瞬悪魔の爪に止められたように見えたが、バキッ、という爪が割れる音と共に斬撃が走り、そのまま悪魔の体を斬り裂いた。
だが斬った俺の手に残る感触は、硬い。
そこそこ深い傷は与えられた。だが血は出ているものの、致命傷ではなさそうだ。
だが片手の爪は折ることが出来た。攻撃力は半減させられたか。
そう考えた瞬間悪魔から膨れ上がっていく魔力を感じた。
『魔装幻界』
悪魔の周りの空気が軋んでいる。
あれはやばいな・・・
俺の魂が全力で警鐘を鳴らす。
『龍の心臓』の溢れ出る魔力を限界まで引き出す。何かが来る。得体の知れない何かが。
黒の魔力が晴れた瞬間、そこにいたのは軽装の黒の鎧を身につけ、爪が太くなり、凶器と化した、完全武装の悪魔だった。
本日2話目です。




