〜家族〜
少し他愛もない話をしながら一旦休憩を挟んだ俺たちは、鍛錬を再開する。
鍛錬の本番はこれからだ。父は今から違う領域に入る。それをしっかりと見るのが今の俺の鍛錬だ。
「今から呼び出すからな、よく見ておけ」
これだ、この時間が俺の楽しみな時間なんだ・・・!
『心魂来臨、燃やし尽くせーー紅蓮虎』
「うっ・・・」
父の言葉と同時に耳を覆わなければならないほどの爆音、圧倒的な熱量とプレッシャーが襲い、思わず息を呑む。父の中から、魂から、精霊の力が爆発したように溢れ出してくる。やがてそれは収まっていき、父の周りに滲み出る程度になっていく。
「これが俺の『心魂来臨』だ、まずはここを目指せ。お前も炎適正の心魂を顕著させられるはずだ」
「・・・はいっ!!」
これを見せてもらうのは何度目になるだろうか。見るたびに心に刻む。「こうなりたい」、と。
「さあ、朝飯にしよう」
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「あんた、またチカラ使ったでしょ?」
「・・・・・・すいません・・・・・・」
先程まであんなに威厳があった父が頭を下げ続けている。相手は金色のロングヘアーの顔の整った美人、俺の母のエレン=ラストリアだ。
庭の芝生を燃やしたのを怒っているらしい。俺も謝ったほうがいいだろうか?
「母さん、ごめんなさい・・・」
「えっ?違うのよ。グレンちゃんには何にも怒ってないわ!」
「俺も父さんの『心魂来臨』見たかったので・・・」
「・・・・グレンちゃんに謝られたらもう怒れないわ。あなたもういいわよ」
こうして母さんの怒りは収束し、父さんはギリギリ生き延びた。
「父さんと母さんは、いつ頃『心魂来臨』ができるようになったのですか?」
食事中にでた急な不意な質問に、父さんが答える。
「父さんは6歳の時だ、母さんは確か7歳の時だって言ってたな。」
この世界でそれが出来るようになるのは早くとも12歳を過ぎてからが普通と言われている。そもそも力を引き出せずに終わる者も少なくない。そう考えるとやはり二人とも相当早い。この家の一員として俺も負けないように頑張らないとな。
「ごちそうさまでした。先程のを参考に、自室に戻り、鍛錬してみます」
「「がんばってね」」
父と母の言葉が重なった。
明日また投稿します。よろしくお願いします。