〜アニマ〜
『思い出したか』
「うん・・・俺死んじゃったのか?」
恐る恐る檻の中にいる何かに尋ねる。
『死んではおらん。だが腕は飛び、死が近いのは確かだ』
「・・・そうか、くそ。俺まだ死にたくない。もうすぐ兄になるんだ。それに・・・負けたくない。強くなりたいんだ。俺が憧れた父は屈することのない剣士なんだ。俺もそうなりたい」
『・・・我が力を使えば、生き残ることはできる。が、人の身で我の力を使うのは代償もあるかもしれんぞ』
「どんな代償なんだ?」
『・・・・・・』
これには答えてくれない。でもこんなところで死にたくないのだけは確かだ。死ぬぐらいなら代償がなんであれ生きることのできる道を選ぶか・・・?
「・・・・・・・・」
『どのみち時間はないぞ、あの人獣狼は待ってはくれないからな』
「!!・・・・・・わかった力を貸してくれ。」
考えている時間はないようだ。
『よかろう、存分に力を振るえ』
その言葉と同時に俺の体に生命力が漲る、そして自分の体とは思えない圧倒的な力。魂が震えている。これが俺の心魂の力か。今ならなんでもできる気がする、全能感が心を満たした。
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目を覚ました。ちょうどヤツがこちらに向かって歩いてきていた。それを確認したあと、自分の体を見る。やはり右腕はない。血がドバドバ出ている。が、不思議と痛みはない。
やることは決まっている。教えてもらってないのに頭に浮かんでくる。いくぞ。
『心魂来臨、塗り潰せーー黒龍神』
「ぐうぅぅ・・・」その苦悶の言葉と同時に、俺の右手があった場所、に黒い炎がまとわりつく。神経が一本ずつ引っ張られるような、形容し難い鋭く断続的な痛みを味わいながら、腕の感覚が戻っていくことにびっくりしていた。やがてそれも収まり、黒い炎は全身に巡ってくる。熱さはない。
その後、右手に握られるように真っ黒な黒刀が姿を現した。これが俺の『心魂』の力か。
力を身に纏うと同時に心臓が鷲掴みにされたような痛みが走る。
直感的に理解した。これは強すぎる力だ、と。そして今の俺ではそう長く使えない、と。
なら短期決戦だ。早く仕留めるしかない。俺は目の前にいる人獣狼に視線を向ける。そうすると不思議だ。相手が恐怖しているようにみえる。自分がこの力が扱えるようになったからか?とにかく油断は禁物だ。
身体強化を再度纏い、『心魂』の力を今できる最大限に引き出す。そして剣を腰に納刀するように構え、こう叫びながら横に振りきる。
『黒焔一閃』
俺が放った斬撃は燃え上がりながら飛ぶ、燃える黒い斬撃となり、切り裂いた。
斬撃はあまりに鋭く、切られたことに気づくのを許さなかった。斬られた後、その切り口から発火し、燃やし尽くした。
・・・これが俺の力か・・・でも、もう限界だ・・・・・・・
その光景を見送ったあと俺はまた意識を手放した。
明日またあげます。よろしくお願いします。