〜魔物〜
ーー・・・なんで俺はここにいるんだ?ここは・・・・
そう、何度も来はしたが何もないこの空間は、俺の魂の中だ。なぜここにいるかはわからない。
意識がはっきりしてきて、いつもと違うことに2つ気づく。
まず第一に、俺の右腕がない。そして、ない右腕の代わりを務めるように黒い靄がかかっているように見える。そのおかげか、今痛みはないのは喜ばしいことだ。
そして第二に、いつもの空間と明らかに違う点がある。視線の先にとんでもなく大きい檻のようなものがみえるのだ。中は黒い靄がかかっていってよく見えない。だが何かいる。そう直感した。父の力よりもはるかに大きなプレッシャーを感じるのだ。
俺はフラフラしながらも、吸い込まれるようにその檻へと近づいていく。その時、
『我を宿す主ともあろうに、雑魚にやられるとは』
その声は圧倒的なプレッシャーを放っていた。息ができなくなる程の圧。
『自分の命が危なくなってようやくここに来られるとはな』
そう言われた俺はここに来るまでにあったことを思い出した。
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後ろの物音に反応し、振り向きざまに俺が振り抜いた木剣は、「ガスッ」という音とともに止められ、それが当たった位置を確認すると、そこに異形の化け物が立っていた。
身長で2,5m程、全身に灰色の毛並みを携え、狼の顔を持った2足歩行のバケモノ。
俺が思い切り振り抜いた木剣は、そいつの膝のあたりに当たって止まっていた。俺は一瞬にしてそれが魔物だと思い立った。
ーー魔物には動物型、人獣型、飛行型、と様々な種類がいる。その全てに共通するのは人間に敵意を持ち、どんよりと輝く黄色の目を持つ、ということである。ちなみにだが動物型の魔物は、普通の動物と間違えられることも多く、仕留めようと近づいたら逆襲にあって怪我をしたり、最悪死亡したり、ということがあるらしいーー
俺はその魔物の特徴である黄色の目を見るなり、即座に距離をとった。これが魔物か・・・。見るのは初めてだった。
すぐに身体強化を発動。先程の感触からして、木剣ではどう頑張ってもダメージが通らないだろう。これは逃げるための身体強化だ。だがその前に今覚えている魔法をぶつけてみようと思った。
『ーー我が魔力よ、敵を滅する熱を成し、三本の炎砲となりて敵を穿てーー砲炎撃』
ゴオッ、という音と共に俺の周りに3つの炎の弾が生み出され、3つ一気に飛んでいく。それらは着弾し、ドンッドンッドンッ、と3回の爆発を引き起こした。こうして近い距離で爆発して見ると中々の威力だ。ただでは済まないだろう、と思いながら火が落ち着くのを待つ。
・・・・そうして見えてきたのは、若干焦げているようにはみえるが、特にダメージにはなっていなさそうに仁王立ちしているバケモノだった。その直後、
ソイツはこちらを一瞥すると一瞬で距離を詰め、その鋭い爪で俺の右腕を付け根から切り飛ばし、詰めてきた勢いそのまま俺を蹴り飛ばした。飛ばされながら自分の血が舞うのが見えた。
かなり遠くに飛ばされた俺はそのまま何かにぶつかり、止まった。意識が朦朧とする。
こんなところで死ぬのか・・・俺は兄になるんだ、まだ死にたくない・・・。俺が強ければ・・・。そう思いながら意識は遠のいていった。
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こんばんは。本日もう1話あげます