073 ステレオタイプなニセモノ
「う~ん、【カルキノス】と【メネアンライオン】は倒したものの~」
【悪霊】は逃しちゃうし? 魔物はまだ4体も残ってる。
とまぁ? 今日もケストレルの街をパトロールするぼく。
そして今日も、なんの手がかりもなさそう~
「あら? ですが、すでに2体封印したとも言えますし、さらに【姫巫女の従者】もすでに2人集まった、そうも言えますわ」
「アマーリエさん……そうですね! 今は前向きに考えなくちゃ」
「ええ ですが個人的には【悪霊】が、どうやって魔力を集めているか? それが前回、まったく判らなかったのが口惜しいですわね」
「あー、それですよね?」
カルキノスのときは、女性神官の姿で【気配遮断】の魔法を使い、直接魔法使いを襲うというダイレクトな手段だった。
(この手はぼくらに見つかったから、もう使わなくなったみたいだけど?)
前回、ネメアンライオンを復活させた魔力はどこでどうやって集めたのか、それはわからないままだったんだ、
「ともかく早くその方法を見つけないと、また魔物が復活しちゃいますし」
「ええ、それにどこかで魔力を奪われている女性がいるかもしれませんわ」
「で、ですね」
というか、アマーリエさん、頭の回転が早いというか~
やっぱり受付嬢をやってると、細かいトコまで気が回るのかなぁ?
と、そのとき──
「あ、アプリルさん アマーリエさん」
向かいからやってきたのは、ぼくの姿のアプリルさんと、
「あーっ アマーリエさんっ なに姫巫女さまと腕とか組んでるんですか!」
そのペアの、アルタムさんだったんだ。
「あら? 腕くらい良いじゃありませんか」
「でもっ これは遊びじゃないんですよ! ね? クリスくん?」
「あ、あはは~」
とまぁ、さっきからアマーリエさん。
アプリルさんのカラダのぼくの腕に、ぎゅっ ってしがみついて歩いてる。
アプリルさんはこの町では4人しかいないエルフで、アイドル並みの美少女。
そしてアマーリエさんはすっごい美人だから、とにかく目立つんだよぉ
(というか? アマーリエさん、前はぼくにあんなベッタリだったのにぃ)
今はアプリルさんであるぼくにベッタリ、なんだかなぁ
アマーリエさんが、本気でぼくを好きだなんて、さすがに思ってないけど?
こうして別のコとイチャイチャされると、ちょっとショック。
しかも、
「そもそも! どうして今日もアマーリエさんが姫巫女様とペアなんですか!」
「それはクジ引きで決めたから、でしたでしょう?」
「あのくじ、ちょっと怪しいんですよねぇ? 後で調べても?」
「ぎくっ!」
「なんですか今の『ぎくっ』って!」
「な、なんでもありませんわ! おほほっ」
って、アルタムさんまでアプリルさんを気にしてるみたいだし?
ほんと、なんだかなぁ?
すると、それを見ていたアプリルさんが、
「なら、アマーリエさんとアルタムさんの意見を解決するには、こうすればいいんですよぉ」
「「えっ?」」
◇◆◆◇
さっきのアプリルさんの【解決策】で?
アマーリエさんとアルタムさん、ぼくとアプリルさんがペアになったんだ。
ふたりとも、なにかいいたでではあったけど?
ぼくとアプリルさんは【そういう感じ】じゃないから、まだマシって思ったみたい~
「うふふ アプリルさん──というかクリスくん、モテモテですね~」
「えっ?」
そんなぼくを、アプリルさんがニコニコしながら見てる。
「いえいえいえ! モテるのはアプリルさんですよぉ じっさいふたりとも? さっきからぼくの方ばっかり見てたじゃないですかぁ」
「あ、もしかして、気づいてません?」
「え? 気づいてないって?」
「この前【姫巫女の従者】が、【アプリル】じゃなくて【クリス】を想う者、そう考察したじゃないですか?」
「そうですね?」
「そして今は、アマーリエさんもアルタムさんも、従者として覚醒してます」
「そう、ですね?」
「つまりあのお二人は、その【アプリル】の身体の中の魂、すなわち【クリス】の魂に、惹かれてるんじゃないでしょうか?」
「えっ!」
「んふふ♪ それで、あなたはどちらがお好きなんですかぁ?」
「ちょっ」
そんなふうにアプリルさんに聞かれて、ぼくは一生懸命『誤解です!』って!
でも、アプリルさんはニコニコするだけで~
(むぅ、解せぬぅ)
◇◆◆◇
「ルシア? 貴女、わたしたちに黙ってまた街に行きましたね?」
「は? いや、行っていないが?」
「いえ、現在冒険者ギルドと神殿に、かなりの目撃情報があげられています。貴女が夜の街でなにやら怪しい取引をしている、と」
「そんなバカな!? はっ! そうだ、一緒に留守番をしているレイナに聞いてもらえば──」
「その頃には、あの子は寝ていますよ?」
「そうだった!」
と、いきなり尋問モードのアイナママ。
それというのも~、さっきの件で冒険者ギルドからクレームがでたから。
「だが信じてくれ! 私は決して街になど行っていない! なんなら私の宝である、クリスの描いてくれた似顔絵を賭けてもいい!」
「そういうものは大事にしてくださいっ! とはいえ、本当に行っていないのですね?」
「もちろんだ! そもそもなんだその【取引】とやらは! 自慢ではないが、私には商才などカケラもないぞ?」
「本当に自慢にもなりませんが、まずは信じましょう」
「おぉ、さすがは慈愛の聖女!」
アイナママに許されて、ほっとするルシアママ~
「ですがそうとなれば、そのルシアを名乗る者はいったい」
「ならば早速、その偽物を捕らえ──」
「判っていると思いますが、貴方は留守番ですよ?」
「そんな殺生な! 私の偽物だぞっ?」
「だからこそ! そこへ【本物】が紛れ込んだら、余計に混乱するからです!」
「ぐぬぬ」
とまぁ? 実はぼくたちも【ニセモノ】って思ってたんだけどね?
でもいちおう? 確認はとったけど、やっぱりかぁ
「これってやっぱり、【悪霊】のしわざかなぁ?」
「ええ、そうでしょうね。おそらくルシアの名を騙り、何かしらの方法で【魔力】を集めている、でしょうか」
「うわぁ、ありえる」
「ぐぬぬ、許せん!」
「ともかく、夜の見廻りを増やすしかないでしょうね」
「うーん、でもぉ」
「どうしましたか? クリス」
「それこそ、悪霊が犯人だとしたら、ぼくらの前には姿を現さないんじゃないのかなぁ?」
「そうですね、では誰に?」
「それなら──」
◇◆◆◇
「それで──あたしってワケかい? クリス」
「はい、レニーさんなら悪霊に顔が知られてませんし……でも、じっさい囮にするのと変わりませんから、申し訳ないんですけど」
とまぁ、ぼくのカラダのアプリルさんが、レニーさんに相談してくれてる。
冒険者ギルドのひとたちとも相談したんだけど?
レニーさんはこの街のトップパーティーの紅一点で、女性冒険者としてはかなりの上位だから。
(ソロ冒険者の、クラウさんって話もあったんだけど~)
今はちょうど長期の依頼でお留守でした。
なのでレニーさんを推薦されたんだけど、
「ああ、あたしもだいたいのハナシは聞いてるよ。その悪霊ってヤツ、相当にタチが悪いってね」
「はい、」
「こらこら、クリス? そんな顔するんじゃないよ」
「で、でも、危ないですよ?」
「なに、もとより冒険者は危険と隣り合わせさ。それにクリスからの頼みとあっちゃ、断れないからね」
「レニーさん」
って、ぼくのカラダのアプリルさんが頼んでくれてるけど?
ホント、レニーさんってかっこいい。
っていうかアプリルさん、レニーさんになでなでされてるぅ いいなぁ
「じゃあそういうことなら善は急げだ、あたしにひとつ心当たりがあるよ」
「こころあたり?」
◇◆◆◇
「ひぃぃぃっ! な、なにもしていないわっ 誓って敵対なんて、してないからぁぁぁ!」
「えー」
えー、いまぼくとアルタムさん、そしてレニーさんは、通称【闇ギルド】。
冒険者くずれのひとたちの【互助会】みたいな組織のアジトにきています。
そしてこの、絶賛混乱中のひとは、その闇ギルドの女幹部さん。
そう、前にルシアママが【風刃の首飾り】で、めちゃくちゃ脅したひとです。
っていうか、ルシアママの名前を出しただけで、そんな怖がるとか~
「いえ、そういうことじゃなくて? さいきん、街でルシアさんを見てませんか?」
「み、見てるわ! けどっ もちろん手出しなんてしてないからぁ!?」
「見てる? えと、それはどこで?」
「い、いちおうウチのシマだし、最初は確かに様子を見に行ったわ。けど相手がルシア様と知ってからは、誓ってウチはなにも──」
「ですから~、どこで見たんです?」
「そ、それは──」
◇◆◆◇
「こ、ここは」
「ああ、娼館だねぇ、しかも女の冒険者向けの」
そう、あの幹部さんに教えてもらった場所は……
いわゆる歓楽街の外れにある、エッチなお店でした!
それに【娼館】っていえば、現代日本でいうところの【ソー○ランド】!
しかも【女性冒険者向け】!
「あー、アンタ達にはちと早いけど、女もカラダを持て余す時があるからねぇ」
「もてあます!?」
「しかも冒険者なんていう、死と隣合わせの商売なんだ。そんな夜は、どうしても人肌が恋しくなっちまうのさ」
「そう、ですね?」
いや、ぼくも前世の知識があるから、そういうのが必要なのはわかってる。
それより、なんでルシアママを騙る悪霊が、こんなお店で?
「あー、クリス? とりあえずあたしとアプリルで様子を見てくる」
「あ、はい」
「その間、アンタはここで待機しときな。さすがにアンタには、この店は早いからね」
「ですよねー」
真っ赤になってるアプリルさん。
でもぼくたち、毎晩のように【レッスン】してますからね?
◇◆◆◇
そして、レニーさんがお店の人と話しか結果、わかったことは──
・ルシアママがこのお店に在籍してる。
・だけどお客は、女性の【魔法使い】か【神官】だけ。
・しかも一番ランクの高い【娼婦】で、もちろんお値段もお高い。
・最初の数回は、お酒を一緒に飲むだけでおしまい。
・けど、ルシアママが気に入れば、エッチもできるかも?
・でもそのことはぜったいヒミツ。守れないなら出入り禁止。
って、なんだか江戸時代の【遊郭】みたい、そっちも娼館だけど?
(けどルシアママを騙って、娼婦をするだなんてぇぇ!)
そんなふうにぼくが【おこ】になってると、
「ともかく、あたしが客として潜入するよ」
「で、でも危ないですよ!」
「けどねぇ、客がふたりだんて、それこそ店が許さないさ」
「うぅ、あっ! だったら──」
◇◆◆◇
「やぁ、待たせたかな? 仔猫ちゃん」
「い、いえ、ルシア様」
「ああ、君とはどこかで会ったことがあるのかな?」
「いえ、遠くからお姿を見かけただけで……」
「ふふ、そうか それじゃあ、ひとまず乾杯と行こうか」
「は、はい」
「では、今夜の出会いと、君の瞳に乾杯」
「か、乾杯」
チンっ
(うわぁ)
そしてぼくは、レニーさんに【隠蔽魔法】をかけてもらって、お部屋のすみでふたりの様子を見ています。
それにしても~
(あのルシアママ、どうみてもニセモノだよねぇ)
偽ルシアママは、いつものビキニアーマー姿。
そりゃぁ、ぱっと見はにてるけど? よく見なくてもあちこち違ってる。
まず、ビキニアーマーはおおむね同じ。たぶん出回ってるレプリカかも?
でも、手足の鎧はだいぶカタチが違うし、なによりマントの裏地が紫色!
そして最悪なのは、そのお顔がツリ目ぎみだったんだ!
(な、なんてステレオタイプな【ニセモノ】なんだ!)
なんてぼくが呆れてると、
「それで、聞いているかな? 私と【愛し合う】には、これからも何度か通ってもらう必要があってね?」
「はい、それは」
「ふむ、だが魚心あれば水心──その回数を減らす手もあるのだよ」
「それは、お金……ですか?」
「ああ、違う、欲しいのは、君の魔力だ」
(ま、魔力だってぇぇっ?)
「魔力、ですか?」
「ああ、もちろん君が【枯渇酔い】しない程度でいい。そうしてもらえるなら……もっと早く愛し合えるというものだ」
「な、なるほど、」
なんと、そうやって魔力を集めてたのか!
(あぁ~っ どうりで魔力を奪われた被害者が、名乗り出ないはずだよぉ)
そうと判れば、これ以上茶番に付き合うヒマはない!
ぼくは右手を頭上に掲げながら──」
「シュミンケ!」
ぱぁっ
「戦いに疲れ、癒やしを求める女性冒険者を騙して……魔力を貢がせるなんて許せません!」
「な、何奴!」
「セーラーコス☆美少女戦士! エルフィー・シルフ! 風にかわってぇ、おしごとですっ」
きゅぴーん☆
(はっ! またヘンなキメゼリフが勝手にぃぃ!?)




