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ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第2章 ルシアママは、エルフの魔法騎士
63/92

063 それはぼくのおいなりさんです

「違うのですっ!」

「えー」


 それは、ぼくがベッドでお休みしてすぐのこと。

 ミヤビさまが、ぼくの夢枕に立ってくれたんだ。

 そして開口一番のセリフがそれ。


「ちがうって、何が違うんですかぁ? ミヤビさまぁ」

「あぁっ またクリスきゅんが、わたくしを家畜を見るような目で、ハァハァ」

「しまった! コレじゃミヤビさまがよろこんじゃう!」


 それというものゆうべ、お休みする前にアプリルさんのいってたセリフ──


『【武芸守護】を司る高位神!【ミヤビ】さまが与えて下さった力です!』


 だからぼく、おへやの明かりを消したあとに、ミヤビ様を想って──


『えー、業務放送・業務放送』

『天界からおこしのミヤビさま、クリスくんが【おこ】でおまちしています。至急、夢枕にお立ちください』


 そうしたらミヤビさま、来てくれました~


「うぅ、あんな業務放送で呼び出されるだんて……わたくしの、神としての威厳がぁぁぁ」

「っていうか、そこを気にするなら、いちばんで言い訳しないでくださいよぉ」

「でもぉ、クリスくんが【おこ】だって」

「もう【おこ】じゃないですから、ね? だ・か・ら、なにが【違う】んですかぁ?」

「うぅ、あの【姫巫女の戦装束】のことですぅ」

「やっぱりアレ、ミヤビさまのシュミですよねぇ?」

「は、はいぃ ですが、あれには実は、理由があって~」

「りゆう? それってどんなのです?」

「実は、千年前の当時の勇者が【アレ】に夢中だったんですぅ」

「せんねんまえのゆうしゃ」


 ええと、【アレ】こと【セーラ服美少女戦士】が活躍するアニメは~

 日本人だったぼくが召喚された時点で、30年前くらい前の作品だったはず。

 こっちじゃ千年たってるのに、時間がずれてるの?


「それというのも、その異世界の勇者をここへ召喚した際に、彼は紙で出来た手提げ袋の中身を、全部ぶちまけてしまったのです」

「ぶちまけた?」

「そこには大量の【アレ】の絵が描かれた薄い本が──」


 え、エ○同人誌だそれぇ!?


「ですが、その薄い本に描かれた女子の装束は、わたくしに、いんすぴれーしょんを与えました!」

「与えちゃいましたかー」

「そんな折、エルフの森に魔族が襲いかかり、わたくしに救いを求める声が!神としてはこの事態、捨て置くわけには行きません!」


 天の神様、魔族と魔物を倒すためなら? めっちゃ協力的ですからねー


「さて、どの様な力を授けましょう? そうわたくしが思案した──その時! わたくしに『神』が降りたのです!」どどーん!

「神さまなのにっ?」

「あの【特別な戦装束】を魔法でまとい、剛力と絶大な魔法を得るその姿……これは使える、と! そしてわたくしは早速その【でざいん】に入りました!」

「あー、入っちゃいましたかー」

「その作業は徹夜に至り、そして明け方になった頃……それは完成しました! 心地よい疲労感がわたくしを包みます」

「おつかれさまですぅ」

「それによりわたくしは、少しだけ仮眠を取り……そして目覚めた後、改めてその装束を見てわたくしは思いました」


『もしかしたら、これは攻めすぎたかもしれない』


「わたくしとしてはまさに【至高の逸品】。しかし、エルフや人族には【まだ】早かったかもしれない……そんな不安がわたくしを襲います」


 それって~

 徹夜で書いたラブレターとかポエムを、次の日改めて読み直したら~ ってヤツですよね?


「しかし、クリスきゅん? 【交渉事】には、こんな手管があるのです」

「あ、はい」

「まず、相手にとって、到底納得出来ない【厳しい条件】を叩き付けます。そしてそれは、当然の様に【却下】されるでしょう」

「ですよねぇ?」

「ですがその後、『では少々、条件を緩めましょう』そう提案します。すると相手は『まぁ、さっきよりはマシ』と、警戒を緩めてしまうのです」

「ほほう」

「そうなれば、あとは微調整をして契約に漕ぎつけるだけ……そうすることで本来よりも有利な状況で、契約することが可能なのです!」

「なるほどー」


 だけど、ミヤビさまはなぜか悲しそうに目を伏せて──


「ですが、なんということでしょう」

「え?」

「エルフの姫巫女は、その一番最初の条件──すなわち【一番過激なでざいん】のソレを、受け入れてしまったのです!」

「あー」


 あのー、ミヤビさま?

 【だからわたくしは悪くないのです!】ってお顔、してますけど?


「ミヤビさま?」

「……はい」

「いちおう、いっておきますけどね?」

「……はい」

「神さまからいただいた【神託】のデザインに、リテイク(やりなおし)を出せると思います?」

「も、もしかしたら? ……と」

「出せませんからね? 普通はそういうの。ですからもうそういうの、止めましょうね?」

「……はい」


 気づいたらミヤビさま、床に正座してしょんぼりしてました。

 なんだかかわいそうになったぼくは、そのおひざを借りて、ひざまくらしてもらったんです。

 そしたらミヤビさま、


「うふふ、クリスきゅん♪」


 そんなふうに楽しげに、ぼくの髪をなでてくれました。


 ◇◆◆◇


 カポーン


「「はふぅ」」


 そして今回も、ミヤビさまご自慢の、露天の風呂につかるぼくたち。

 例によって湯船の底がないから?

 またミヤビさまに、仰向けでだっこされてます~


「それにしても、ミヤビさまぁ」

「はぁい なんですか? クリスきゅん」

「あの【姫巫女の戦装束】のデザイン変更とか──」

「ムリです」

「えー」

「すでに千年間、エルフたちに伝えられてしまっているのですよ? それが急にカタチが変わってしまったら?」

「あー」


 きっと、すっごく混乱しちゃうよねぇ?

 見た目はともかく、その効果はすごいんだし?


「ええと、じゃあ、新シリーズ展開による【フルアーマー化】とか?」

「む、なにやら魅惑的な響きですが、布面積を増やすのはわたくしのぽりしーに反します」

「えー」

「むしろ、その余剰な装甲を吹き飛ばし【きゃすとおふ】すべきかと」

「アレ以上削っちゃダメでしょ!?」

「くろす・あうっ(脱衣)」


 だから脱いじゃらめぇ!


「それにあの装束には【認識阻害】の効果があるのです」

「にんしきそがい?」

「ええ、その姿を他の者に見られても、その顔は印象に残らないのです」

「なにそれすごい!」


 そういやあのアニメも、額のティアラにそーゆー効果があったんだっけ?


「ですから初心者でも、安心して楽しめるのですよ」

「なにを楽しむのぉっ?」


 やっぱりミヤビさまのシュミ、丸出しだよぉ!


「ですが、その【転身】を見られた者には、認識阻害は働きません。そしてその後も効き目はありませんので、注意してくださいね?」

「そうなんですね? 注意しますぅ でもあれ、ビキニアーマーよりずっとすごいんですね?」

「ええ、その威力には自信がありますが、ほぼ姫巫女専用ですから~」

「あ、そっか」


 いま、ビキニアーマーはすっごい数、装備されてる。

 その総数による効果を考えれば、ビキニのほうが確かにすごいよねぇ


「あの戦装束は、わたくし単独で授けたもの。ですが【びきにあーまー】は、何人もの高位の神々たちから力を借りた、いわば【共同ぷろじぇくと】なのです」

「え? それってすごくないですか?」

「えっへん、実はすごいのです」

「おぉぉ」


 ミヤビさま、高位の神さまだとは知ってたけど、実はかなりすごい?


「というか、ミヤビさま?」

「はい、クリスきゅん」

「もみもみしないでください」

「もみもみ♪」

「それはぼくのおいなりさんです──って! ぼくのおいなりさんがないんですよぉぉ!」


 いま、こうしてぼくが【クリス】の姿なのは、ここがミヤビさまの司る【精神世界】のようなものだから。

 いまごろぼくは、ベッドの中でスヤぁ。

 もちろん、アプリルさんのカラダのままで。


「ミヤビさまぁ その無敵の神通力でなんとかしてくださいよぉ!」

「ですが、わたくしは、地上の民に直接手を出せないのです」

「そうでした~」

「ですが、今回の件は【魔族による被害】ですので、諦めずに申請すればおそらく通ることでしょう」

「おぉぉ」


 なんだか…お役所とか保険会社っぽい?


「具体的には聖女に【正しき身体にその魂を戻す魔法】、これを授けましょう」

「パーフェクトですっ ミヤビさまぁ」

「感謝の極み」ズパッ


 そんなミヤビさまに、なんとかひとあんしん。


「じゃあ、あしたにでもその魔法、もらえます?」

「ええ、この後にでも、神託を授けましょう」

「やったぁ えへへ ミヤビさま、すき」

「あぁぁ、クリスきゅん」


 ぎゅぅ♪


「……ですが!」

「びっくり!」

「クリスきゅん? すぐに元の身体に戻ってはいけませんよ?」

「なんでぇっ?」


 思わずカラダの向きを変えて、ミヤビさまに向き合う格好になるぼく。


「それはあなたと姫巫女、ふたりの魂がまだ、馴染んでいないからです」

「たましいが、なじむ?」

「ええ、実際に今、あたたがたの魂は、その身体に違和感を感じています」

「それは、そうですよねぇ?」

「ですからその魂は非常に不安定で……いつ身体から魂がぬけ出しても、おかしくない状態なのです」

「な、なんだってぇぇっ?」


 それって【幽体離脱っ】てコト?


「そしていちど魂が抜け出してしまえば、自力で元に戻ることはまず不可能」

「そうなの? ええと、魂の状態で身体に飛び込めば~?」

「魂だけになってしまえば、もはや物質に触れることは出来ませんよ?」

「なんと」

「故に、身体に触れてもただ突き抜けるだけ、乗り移ることなど出来ません」

「そんなぁ」


 そんなの、ユーレイになってさまよってるのと同じじゃないかぁ!


「ですからまずは今の身体に魂を、馴染ませる必要があるのです。でないと元の身体に戻っても、その魂が安定せず抜け出してしまうでしょう」

「うぅ、はい。具体的にはどうすればいいんですか?」

「そうですね……さしあたって問題なのが、あなたと姫巫女の性別が異なること」

「そうなんですか?」

「ですからクリスきゅんは姫巫女に、姫巫女はクリスきゅんに、なりきってください」

「えっ」

「そうすることで、その身体に違和感をなくさせるのです。その【思い込み】の力が、より魂の安定を授けてくれるでしょう」

「ぼ、ぼくが、アプリルさんになりきるの?」

「ですから、あくまで期間限定です。それが成された後なら、聖女の魔法で元に戻っても良いでしょう」

「うぅ、わかりましたぁ」


 な、なんだかスゴいことになっちゃった!


「あ、それからぼくの勇者スキルなんですけど、どうしてカラダが入れかわったのに、こっちに移ってるんですか?」

「うふふ、それは当然のことなのですよ? クリスきゅん」

「とうぜんのこと?」

「ええ、なぜなら勇者魔法とそのスキルは、あなたの魂に結びついているからです」

「ぼくの、魂に」


 ミヤビさまは、とても優しい目でそういってくれたんだ。

 ぼくの頭を、愛しげになでながら。


「そもそも勇者の力は、決して他の者に奪われてはならぬもの……そしてクリスきゅん? あなたの様な清く正しい魂の持ち主にこそ、勇者の力は授けられるのです」

「ミヤビさまぁ」


 そんなミヤビさまに抱っこされていると、その心地よさに、思わず眠ってしまいそう。

 でもぼくは、がんばってそれをこらえて──


「わかりました! ミヤビさまっ ぼくがんばって、あの【悪霊】と6体の魔物を討伐します」

「うふふ、あなたならきっと出来ますよ」

「ミヤビさまぁ」

「それに、女の子になりきることも」

「うぅ、そっちもがんばりますぅ?」

「うふふ、がんばれがんばれ♪」

「むぅ、ぼくはちいさいコじゃありませんのだ」

「ふふ では、おっぱいは吸わなくていいんですか?」

「……吸いますぅ ちゅぅ」

「あン♪」


 ミヤビさまの、とっても大きなおっぱいに、吸い付いちゃうぼく。

 けど、ミヤビさまはそんなぼくをからかったりしないで?

 またやさしく、ぼくのあたまをなでてくれるのでした~

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