002 ひとりでできるもんっ
「あっ アイナママ、おはよ~」
「あらクリス、おはよう。もう具合はいいのかしら?」
あれから半日。
熱も下がってきて、具合の良くなったぼくのおへやにアイナママが来てくれた。
「うんっ アイナママ、ありがとう。ぼくを魔法で治してくれたんでしょう?」
「ええ、でもほんとうに良かったわ。無事にクリスのお熱が下がって」
ニッコリと、幸せそうにほほ笑むアイナママ。
だけど、ぼくは知ってるんだ。
(勇者の記憶と混じった今だから、とくに)
アイナママの使う【神聖魔法】は、人を癒やすチカラを持っている。
でも? それはあくまで身体の活性化をうながすモノで、病気そのものを無くしてくれるモノじゃない。
(だからケガの治療とかには、すごく効果があるんだよね)
けれど、高熱にうなされ体力を失いつつある患者が、魔法1発で回復──なんてことは、ありえないんだ。
(だから……)
アイナママは、不眠不休で看病してくれたんだ。
お湯をわかし続け、部屋の温度と湿度を上げて、ぼくの身体を温めてくれた。
頻繁に身体の汗をぬぐい、冷たい水にひたした布をしぼっておでこを冷やし……
こまめに水を飲ませながら何度も『がんばって』と声をかけ続けてくれたんだ。
なのに、まるで【毒】状態みたいに体力が減り続けるぼくに、アイナママは何度も何度も、回復魔法をかけ続けてくれて──
(うぅ それをひとりで一晩じゅうやってたのに、アイナママはなんでもないみたいに)
勇者の記憶が混じってしまった今なら、それがよくわかる。
この行為が、どれだけ愛情の込められたものなのかが。
「ぐすっ ごめんね、アイナママぁ ぼく、これからはもっと強いコになるからっ」
「えっ? クリス、どうして泣いてるの?」
「うぅ だってぇ。ぼくアイナママに、いっぱい心配をかけて……ぐすっ」
「な、なにをいってるの? 子供を心配しない親なんていませんよ?」
「ぐすっ アイナママぁ」
「もう、クリスは泣き虫さんね」
そういうとアイナママは、ぼくをきゅっと抱きしめてくれた。
その柔らかくて暖かい胸に抱かれて……
ぼくは、ぼくは──
(あぁ、アイナママのおっぱい♪ おっきくて、ムニムニで……でへ)
あれ?
(──はっ なんだこれぇっ なんでこんなキモチになるのっ?)
いくら【一人前扱い】される歳だとしても、じっさいぼくはまだまだ子供。
(なのにっ すっごくムラムラ──じゃないっ ドキドキするんですけどっ?)
やっぱりコレって、前世の記憶があるせいなのっ?
よりにもよって、アイナママにムラムラするだなんて!
「ごめんなさいアイナママっ えっと、心配をかけて」
「ええ、けれど子供が親に心配をかけるなんて、ごく当たり前のこと……だから気にしないで?」
「ありがとう、アイナママぁ」
「それにあなたに万が一のことでもあれば、ステラに怒られてしまいます」
「うん」
【ステラ】は、ぼくを産んでくれたママの名前。
けれどステラママはぼくがまだ小さいころに、病気で亡くなってしまった。
だけどそんなぼくを、アイナママが育ててくれたんだ。
それはもう、ほんとうの子供とおなじくらいの愛情で。
「だから好き嫌いせずいっぱい食べて、たくさん身体を動かして……しっかりお勉強をして、立派なおとなになりましょうね」
「うん、アイナママぁ」
なにげに【お勉強】が入ってるのが、アイナママらしいというか~
「じゃあ、そろそろごはんは食べられるかしら?」
「うん、たべられそうだよ」
「でも今日は、軽いものにしておきましょうね? いきなり食べたら、お腹がびっくりしちゃうわ」
「うんっ」
そういって、アイナママの出してくれたごはんは──
たっぷりのお湯で煮込んだ、オートミール(燕麦)だった。
(うぅ、いわゆる【おかゆ】にあたるモノなんだろうけど……はむっ うぇぇ、お味が~)
この世界にはおミソやおショウユもなく、ましてや出汁にあたるうまみのある調味料がない。
(おさとうやコショウはお高いし、味つけはハーブとお塩だけ、なんだよねぇ うぅ、きのうまでは普通においしいって思えてたんだけど~)
アイナママのお料理は丁寧で、じゅうぶんにおいしいとは思うんだけど?
現代日本の記憶がジャマをして、なんだか薄味でものたりない。
(いやっ この世界ではこれだってフツーだしっ なによりアイナママの愛情のこもったごはんっ おいしくないなんていえるはずがない!)
ぼくはもくもくとスプーンをおくちに運んで……その味気ないオートミールを食べきった。
◇◆◆◇
「ごちそうさま、アイナママ」
「あら、全部たべられたのね? 偉いわ、クリス」
「うん。アイナママ、いつもおいしいごはんをありがとう」
「うふふ、どういたしまして。ちゅっ」
アイナママはぼくのほっぺにキスをして、食器をかたづけてくれる。
その楽しげな笑顔と後ろ姿に、ぼくの胸はムラムラと──じゃないっ
(うぅ、食欲が満たされたあとは性欲だなんてぇっ いったいどうしちゃったのっ ぼくぅ)
とはいえ、ほんとうはなんとなくわかってる。
アイナママは、前世のぼく── 召喚勇者の恋人だったんだ。
その勇者の時の記憶が戻った今は、どうしてもその視線でママを見てしまう。
(ええと、前世のぼくが魔王と相打ちになって、そこから十数年ってコトは~ アイナママって、アラサー(30歳前後)くらい?)
勇者の従者だったころのアイナママはまだハイティーンで、きれいだけどやせっぽちで、おっぱいもぺたんこだった。
そして一人前になるのが早いこの世界では、結婚適齢期でもある。
女子なんかは、20歳をすぎて結婚してないなら【行き遅れ】だし?
20代のなかばを過ぎてたら【大年増】あつかい。
(だけど、いまのアイナママのおっぱいは……でへ)
ゆうべのあの女神さまに負けないくらいの大きなおっぱいで、お尻もふとももも、それはもうムッチムチで~
(ってぇぇぇっ だからなんでっ そんなエッチな目で見ちゃうのぉっ?)
いつもの見なれたはずの光景なのにっ
ニコニコと、ぼくのお世話をしてくれるアイナママの健康的なしぐさがっ とってもイヤらしく感じちゃうぅぅっ?
(こ、これも勇者時代のぼくがっ ヤリたいざかりのお年頃だったからっ? だからってっ よりにもよってアイナママにムラムラするなんてぇっ 恋人だったのは前世のハナシでっ いまはぼくのママっ ママなんだぁぁぁっ)
◇◆◆◇
そう、恋人── アイナママはぼくの恋人だった。
それは従者として初めてアイナママに出会ったときから、勇者だったぼくは、恋におちていた。
そしてそれは会話を重ね、勇者として一緒にいるごとに……
(どんどんアイナママのことが好きになっちゃって、魔王軍に占領されていた街を開放したその夜に、告白したんだっけ)
あの中ボスとの戦いよりも緊張したぼくの告白は、アイナママが大泣きするというまさかの展開で。
(でも、アイナママも『わたしもずっと、お慕いしておりました』って)
けど、おたがいに初恋同士のぼくたちは、最初のキスから先は、手をつなぐのもテレまくりで~
いよいよ魔王城に突入する前の日の夜、アイナママは、ぼくにいってくれた。
ふるえる手で、ふるえる声で──
『あなたの勇気を分けて欲しいのです。そして思い出が、欲しい』
そして、ぼくらは結ばれたんだ。
(けど……うぅ あの時はぼくも夢中で、ほとんど覚えてないぃぃ)
覚えているのは、痛みをこらえて健気に微笑むアイナママのお顔。
そしてたまらなく香るアイナママのにおい。
(はぁん~ エッチって、ほんとうに五感で感じるモノだったんだなぁ)
前世の頃はそういう動画でしか知らなかったから、においなんてしないし。
そんなぼくがアイナママを想って悶々と、身体をくねくねさせていると……
「クリス? 食べ終わったなら、今日はもう横になりなさいな」
「え? でもぼく、もうだいじょうぶだよ?」
「そういって、昨日ママを心配させたのはだぁれ?」
「うぅ、ゴメンなさい」
そしてぼくが、おとなしく横になろうとすると──
「ああ、ちょっと待って? その前に、身体を拭いてあげるわ」
「えっっ」
「くんくん あぁ、やっぱり少し匂うわね。さ、脱いで?」
「え? いいよっ じぶんでやるからっ」
そんなアイナママから、お湯と布だけもらおうとしたぼくだけど。
「ダメです、ひとりで背中がちゃんと拭けるの?」
「で、できるもんっ」
「ほんとうに?」
「ホント、ですぅ」
「むぅ、いいでしょう」
「……(ほっ)」
「ではママが、ちゃんとひとりでできるか、見ていてあげます」
「えっ」
アイナママにハダカを見られるのが、はずかしいからなのに!
目の前で見られてたら、一緒だよぉっ
「もう、やっぱりできないんでしょう?」
「えっ いや、だから」
「ダメですっ あなたはまだ病み上がりなんですから」
「ちょっ、アイナママ?」
「おとなしくママに、お世話されちゃいなさい」
「ら、らめぇぇぇぇぇっ」
そのあと──ぼくはアイナママに服をぜんぶ脱がされて。
お顔や背中はもちろん、お尻や内股、はては……うぅっ
そしてつい【おっき】しちゃったぼくのアレに、ママは──
「あらあらあら~ もうクリスったら……オトコノコ、なのねぇ」
って、ニッコニッコしながらていねいに、ソコを拭いてくれました。
もちろん、やさしく皮をむきながら。
(ぼくもう……おムコにいけないぃぃぃっ)
今日はあと1回更新します~