表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第1章 アイナママは、もと【聖女】
18/92

018 神官の、お姉さんは好きですか?

 ぼくの記憶が戻ったこと。

 そしてこの前冒険者ギルドで聞いたことで、今まで【よくわからなかったけど、なんとなくそういうもの】。

 そう思っていたことが、それなりに整理がついてきた。


「そのひとつが……うちの村のうら山の、魔物討伐をしてくれる冒険者だね」


 こういうのって、じつは【定期的な駆除】がたいせつなんだ。

 というか【何かあったら】じゃ、もう遅い。

 だから冒険者に定期的に来てもらって、こまめに駆除してもらう。

 でも、それにはお金がかかる。

 そのうえ【まだ起きていない事故】だから、なんとなくお金を出しにくい。


「そこで、ギルドの【社会貢献】ってヤツだね」


 冒険者という人たちは、【魔物を討伐する人】なんだ。

 だから基本的に、魔物と戦えない人たちは、冒険者たちに感謝してる。


「そう、感謝はしてるんだけどぉ?」


 そして冒険者という人たちは、【自己責任】で動いてる。

 なのに危険なお仕事なので、どうしても【癒し】がいる。

 それはお酒やおいしいものだったり、異性だったりといろいろだけど?

 ともかく【ガッと稼いで、パーっと使う】という人がけっこう多い。


「もちろんしっかりはたらいて、コツコツ貯めてる人もいるだろうけど、ねぇ?」


 しかも冒険者の武器・防具・アイテムとかは、とにかくお高い。

 でも命がかかってるから、少しでもいいモノを買う。

 さらに冒険者は商売がら、ケガもよくする。

 その治療代がまたお高い。


「そしてうごけなくなると、さらに稼げなくなっちゃう」


 なので防具や回復アイテムには、とにかくお金をかける。

 それはもう、貯めただけぜんぶ使っちゃうくらいに。


「だからだいたい、いつもビンボーなんだよねぇ」


 なので冒険者は、前世日本でいうところの【ウェイ系】っぽい人が多い。

 しかもあんましお金を持ってない、わりと【育ちが悪そう】な人たち。

 日本のそういうかんじの人たちが、酒場とかで、


『ウェーイwww』


「なんて大さわぎしてたら? そりゃぁチンピラあつかいされちゃうよねぇ」


 と、いうわけで?

 冒険者ギルドとしては、冒険者の好感度を少しでも上げたいんだ。

 つまり、


「今日の冒険者さんたち、たぶんギルドの【社会貢献】で依頼を受けてるっぽい」


 そもそもぼくの村は、彼らの本拠地としてるケストレルの街からけっこう遠い。

 しかも魔物のレベルも低めで、ぜんぜんおいしい【狩り場】じゃないんだ。


「ほんとうにかせいでる冒険者は、ずっとダンジョンにもぐりっぱなしだっていうしなぁ」


 だから?

 定期的に魔物を駆除してほしいけど、あんましお金は出せない辺境の村。

 少しでも冒険者の好感度を上げたい、冒険者ギルド。

 とてもお安いおちんぎんで依頼を受けて、恩を売る。

 まさに【社会貢献】というわけだ。


「このあたりが、おとしどころなんだろうなぁ」


 な~んて考えながら、ぼくはいま村長さんのおうちへむかって歩いてる。

 手にさげたカゴには、アイナママが焼いたほかほかの焼きたてパン。

 しかも! いつものカっチカチの黒パンじゃなくて、保存とか考えてない、ふわっふわの白パン!


「えへへ~ あったかいうちに、はやくもっていってあげようっと」


 というわけで?

 今回みたいな【定期的な魔物駆除】は、おちんぎんがお安いことが多いっぽい。

 だけど冒険者の人たちも、それが【社会貢献】ということはわかってるから?

 ノルマをこなす為に、ガマンしてるところはある。

 だから村の人たちはせめてもの心づくしとして、お金をもらわないで泊まってもらったり、


「こうやって食べものを持ちよって、ごちそうしてあげるんだよね」


 そしてぼくのおうちはいつも【アイナママの焼いたパン】。

 もちろんそれは、アイナママのパンがとってもおいしいから。

 それはもう、村でいちばんおいしいんだ。


「おかげでぼくたちも、白パンが食べられるし? やっぱり冒険者さんたちには、感謝しないとね~」


 そうしてぼくが、村長さんのおうちにたどり着くと、


「あれ? あの人、さっきの神官のお姉さん?」


 村長さんのおうちの外で、神官のお姉さんが座ってるのが見えた。

 おうちの中からは、にぎやかな声が聞こえるのに、ひとりでなにをやってるんだろう?


「あのう、どうかしたんですか?」

「おや? さっきのボクじゃないか。ボクこそどうしたんだい? こんな夜更けに」

「ええと、ぼくはクリスです。ボクじゃないですぅ」

「あははw ゴメンねぇ」


 さっきは剣士のお兄さんに、鬼の形相でアームロックを極めていたお姉さんだけど?

 こうやって笑ってると、とっても優しそうできれいな人だった。

 いまはベールを付けてなくて、後ろで結んだ髪が見えてる。

 しゅっとしたスリムな身体つきで、腰とかすごく細いかんじ。

 ちょっとタレぎみな目が、チャームポイントっぽい。


「あっ これ、ぼくのおうちで焼いたパンです。とってもおいしいから、食べてください」

「お? これは嬉しいね。前に来た時に出たパンがえらく美味しかったけど、クリスのおうちで焼いたパンだったんだねぇ」

「えへへ」


 お姉さんはカゴを受け取ると、おうちの中に入っていった。

 そしてすぐ出てきて、手には3個のパンがあった。


「あれ? ここで食べるんですか?」

「ああ、あいつらもうすっかり出来上がっちまっててねぇ やかましいから、あたしだけ外でゆっくりしてたんだよ」

「な、なるほど」


 やっぱり冒険者って【ウェイ系】なんだなぁ。


「あたしは【レニー】、見ての通りの神官さ。で、さっきの剣士は【ユカイ】、あたしの弟なんだ」

「あ、さっきお兄さんに聞きました。きょうだいで冒険者をやってるんですね」

「ああ、あいつがどうしても『冒険者になる』っていうんでね」

「おぉう」

「あいつ、見たまんまのバカでさぁ 危なっかしくて、放っておけなくてねぇ」

「あー」

「それでまぁ? なんだかんだと世話してやってるうちに、あたしまで神殿勤めを辞めて、冒険者になっちまったってワケさ」

「おー」


 そういうレニーさんのお顔は、とっても優しげで……神官らしい慈愛に満ちたステキな笑みだったんだ。


「そういうの、とってもステキだと思います」

「そうかい?」

「ユカイさんもきっと、レニーさんにありがとうって、いつもそう思ってるって……ぼくも思います」

「ふふっ だといいんだけどねぇ」


 ぼくがそういうと、レニーさんは照れくさそうに笑う。

 歳上のお姉さんにこういうのは失礼かもだけど、


(レニーさん、かわいい)


 ◇◆◆◇


 そしてぼくは、レニーさんと一緒にぼくのおうちにむかって歩いてる。

 それは、


「ええと、ホントにいいんですか?」

「ああ、いいっていいって。それにクリスはギルドの依頼を受けてみたいんだろう?」

「は、はいっ」

「なぁに、これも【縁】ってヤツさ。あたしでよかったら、その最初の依頼に付き合ってあげるよ」

「ほんとに?」

「ああ、でもその前に」

「あー」


 それというのも。

 さっきぼくは、おいしそうにパンを食べるレニーさんに聞いてみたんだ。

 ぼくみたいな【入門者】が、ギルドの依頼を受けるには? って。

 そうしたら、


「それにはまず……あたり前だけど、ギルドのあるケストレルまで行かなきゃねぇ」

「ですね」

「そしてその前に、クリス?」

「はい」

「アンタの親御さんに、許可を取らなきゃいけない」

「ですよねー」

「で、アンタはそれをまだ許してもらってない」

「はひ」

「だから、あたしが頼んでやろうってハナシさ」

「あ、ありがとうございます」


 とまぁ、レニーさんは見た目のとおり(?)姉御っぽいお姉さんだった。


(とってもたのもしい)


 まぁ? 中途半端とはいえ、中身は勇者なぼくだ。

 たいていの依頼はこなせると思うけど?

 このまえの魔物の時みたいに、やらかさないとも限らないし。


(それに街に行くことじたい、ハードルが高いしなぁ)


 ぼくひとりで街に行くのを、心配性なアイナママが許してくれるはずがない。

 かといって、アイナママと一緒に街に行けるのを待ってたら、


(いつになるかぜんぜんわからないし~っ)


 でも、レニーさんはレベル30オーバーの【上級者】!

 レニーさんが引率してくれるなら、アイナママも許してくれるかも?


「で、どうなんだい? クリス。アンタのオヤジさんとオフクロさん、どっちが手強そうなんだい?」

「ええと、ぼくのおうちはパパがいないので、ママがとってもしんぱいするっていうか~」

「ああ、そりゃそうだろうよ。女手一つで育てた息子。そりゃぁ大事だろうさ」

「……ですよね」

「でもまぁ? 子供なんてのは、いつかは親元を離れるもんさ。そうやって手の離れた所で見守るってのも、親の務めなんだ」

「おぉう。レニーさん、かっこいい」

「あはは、そうかい」

「ですです」

「それにまぁ、あんな美味いパンを焼けるオフクロさんなんだ。きっとクリスの事を想って、わかってくれるさ(ニコっ)」

「レニーさん(きゅんっ)」


 な、なんという【姉御力】!

 レニーさん、かっこよすぎるぅぅ

 ぼくが女のコだったら、スキになっちゃってるかもぉ


(って、ぼくは男のコで、レニーさんは女の人だってばぁ!)


 ◇◆◆◇


「れ、レニーさぁん」

「しししっ 失礼しましたぁぁっっ!?」

「……こほん」


 レニーさんはアイナママの前で、腰を90度に曲げて【ピシっ】と頭を下げてる。

 そうだ、そうだった。

 ちょっと考えれば、わかることだったんだ。


「まままっ まさかクリス── いえっ クリスさんの御母上様がっ」

(あわわ)

「【救国の英雄】にして【慈愛の聖女】! 神殿最高位の神聖魔法の使い手! アイナ様であらせられるとはっ!」


 そう、アイナママもレニーさんも、神殿の神官。

 しかもレニーさんはバリバリの体育会系(?)。


(やっぱり、アイナママには勝てなかったよ……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ