015 救国の英雄からの、おねがい
「こ、これは……すごいですね」
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・名 前:クリス
・性 別:男
・レベル:LV01
・状 態:正常
・H P:13/13
・M P:29/29
・スキル:
【剣術:LV06】【盾術:LV08】【清浄魔法:LV03】【回復魔法:LV01】
【土魔法:LV01】【風精霊魔法:LV01】【作法:LV05】【調剤:LV04】
【清掃:LV06】【文章作成:LV04】【治療:LV01】【薬草栽培:LV03】
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(どきどき!)
HPはレイナちゃんとおなじに──ほんとは1たしたけど?
でもっ 勇者スキルをほぼ消して、剣と盾も少なくしてあるのにっ
(やっちゃったの? ぼくっ!)
アイナママのお顔を見ると、最初こそちょっと驚いたかんじだったけど?
とても嬉しそうにニッコリとほほえんでる。
「こほんっ 失礼しました」
「い、いえ?」
「HPこそ、クリスくんの年齢相応の数値ですが……驚くべきはそのスキルの数多さです」
(え? スキルの数、多いの?)
「しかも【剣術】【盾術】の武術系スキルは、すでに6等級クラス。【作法】【調剤】などの技能スキルも、すでに働いている新人並み」
(そうなの?)
「そしてなんといっても魔法スキルが4つ! さらにはレベル1の時点で、MPが30近くあるだなんて!」
「え? これ、多いんですか?」
「クリスくん? そもそも男性は、1桁を越えること自体、珍しいんです。まったくMPのない人も多いですし、これはすごい事なんですよ?」
「そう、ですか」
(しまったぁ! もとが20万だったから少なく感じてたけど、これでも多かったんだっ でもスキルとかは、ホントにあるやつだしぃぃ)
すると、アイナママがくすっと笑う。
「やはりステラの息子ですね。クリス? 彼女もあなたがその素質を引き継いでくれて、さそや喜んでいることでしょう」
「アイナママぁ」
「そうでした! クリスくんは【大陸最強の魔女】ステラ様の──」
「アマーリエさん?」
「は、はいっ アイナさんっ」
「これは【お願い】なのですが……」
「ななっ なんでしょうか?」
「クリスが、男子にしてはMPが高いこと、魔法スキルがいくつかあること……それらは【秘匿】していただけると、たいへん助かるのですが」
「そ、それは──」
「もちろん、ギルドのしかるべき立場の方々には、通達していただいて結構ですので」
「でっ ですがっ」
「うふふ、お願いしますね?」ゴゴゴゴゴ……
「しっ 承知いたしました!」
そんなアイナママの【笑顔の威圧】に、即堕ちするアマーリエさん。
(救国の英雄の【おねがい】だもん、これはことわれないよねぇ)
たぶん、このぼくのスキルやMPの多さは、確かに多いみたいだけど?
それよりも【救国の英雄の息子】だから、という立場に興味を引かれる人が多いんだと思う。
だから、
(アイナママはそういう人からぼくをまもってくれてるんだ、ひみつにすることで)
とはいえ、ぶじ(?)にステータスも調べられたし?
ギルドですることはもう終わりかな?
「では……このたびクリスくんは、冒険者ギルドへの加入をご希望とお伺いしておりますが、よろしいでしょうか?」
「あ、はい」
さいしょは、ステータスを調べるだけのつもりだったんだけど? ぼくもギルドに入ることにしたんだ。
アイナママも冒険者ギルドに籍があるみたいだし、ね。
「うふふ、ありがとうございます」
するとアマーリエさんは、また別の紙をとりだした。
そしてまたぼくに向かって、すっとさし出してくれる。
「こちらが、冒険者ギルドの加入書類になります。失礼ながらクリスくんは、文字は?」
「あ、はい。よむのもかくのもできます」
「まぁ、それは素晴らしいです」
「えへへ、アイナママがおしえてくれましたから」
「そういえば【文章作成】のスキルがありましたね」
やっぱり読み書きできる人は、あんまりいないみたい。
なのでとっても褒めてくれたけど……
そんなぼくをアイナママは、とっても嬉しそうに見つめてくれたんだ。
◇◆◆◇
あ、ちなみにこの世界では、紙はそれなりに普及してるんだ。
いわゆる植物からできてる紙で、その品質は繊維が見えちゃってざらざら。
色もけっこう茶色かったりする。
それにけっこうお高いけど、そんなにめずらしいものでもなかったりする。
(なん代かまえの召喚勇者が、広めたそうだけど?)
でも、紙は普及してても、やっぱり本はほとんどない。
印刷技術がぜんぜん進んでないから、ぜんぶ手書きしないといけないからね。
(そんなお高い紙を使えるなんて、やっぱりギルドはもうかってるのかな~)
なんて思いながら、ぼくは必要事項を書いてゆく。
とはいえそれは、住んでる村のなまえ。
それと男か女か? と、じぶんのなまえと歳、だけだったけど。
「はい、かけました」
「ありがとうございます、クリスくん。あら、とても綺麗な字ですね?」
「えへへ」
「うふふ、ではこれで正式に、クリスくんも冒険者ギルドの一員となります。今後とも、よろしく願いしますね」
「はいっ、こちらこそ」
アマーリエさんが差し出した手を、ぼくもきゅっと握る。
あ、この握手の習慣も、まえに勇者が広めたそうです。
「ではアイナさん、これで手続きはすべて終了いたしました」
「はい、お忙しいところお手数をお掛けして、申し訳ありません」
「いえっ そんな」
「ですが、クリスも現場で実際に働く、あなたのお話が聞けました。それはかけがえない経験となって、この子の糧となるでしょう。ほんとうに、感謝しています(ニコっ)」
「あ、あぁ……そんな、恐れ多いですぅ」
「では、こちらをお収めください」
「お、恐れ入ります」
アイナママは袋に入ったままの……たぶんお金?
それをアマーリエさんに差し出した。
たぶん検査にかかったお金とか、それとも入会金かな?
「では行きましょうか? クリス」
「うん、アイナママ」
「あっ クリスくん」
ぼくたちが立ち上がると、アマーリエさんも一緒に立ち上がる。
そして、布に包まれたなにかを渡してきた。
「こちらをどうぞ、ギルド加入の記念品です」
「え? いいんですか」
「ええ、魔法適正のある子には、さしあげているんです(ニコっ)」
「うわぁ ありがとうございますぅ」
「いえいえ クリスくんは将来有望ですからね。ギルドとして── いえ、私個人としてもバックアップは惜しみません」
「あ、ありがとうございます?」
個人?
「それにあのスキルなら、うちの支部の職員としても即戦力です」
「そうですか? えへへ」
「ええ、その気になったらぜひ! 私たちと共に、冒険者たちを導いてあげましょう! クリスくんなら──立派な受付嬢になれますよ」
「ぼくっ 男のコですけどっ」
◇◆◆◇
アイナママと一緒にギルドをでて、街を歩く。
【おこ】なぼくだったけど?
アイナママが手をつないでくれたので、すぐにきげんもなおっちゃった
そして街はあいかわらず、ビキニ姿の女の人でいっぱいだ。
「ねえ、アイナママ?」
「あら? どうしたのかしら?」
「あ、あのね? もしかして」
「なぁに?」
「前にぼくがお熱をだしたとき……アイナママ、ビキニ装備してた?」
「………………(ふいっ)」
なにもいわず、目をそらすアイナママ。
いやそれ、装備してたっていってるのとおんなじだから。
「ええと、アイナママ?」
「クリス? 世の中にはね……」
「知らなかった方が良いものも……あるのよ?(ニコっ)」ゴゴゴゴゴ……
「ひぃっ」
で、でも……いまのぼくならよくわかる。
ビキニアーマーを装備すれば、【知力】の数値が倍増する。
それは魔法の威力も、さらに強大してくれるはずで。
「ぼくのために、回復魔法のチカラをすこしでも高めるために……装備、してくれたんでしょう?」
「……ええ、そうですよ、クリス。このままでは、あなたが死んでしまうかもしれない。そう思ったら迷いはありませんでした」
「あ、アイナママぁ」
そんなアイナママの思いやりが嬉しくて、ぼくはアイナママに抱き付こうと──
「ですが!」
「えっ?」
「いいですか? クリス。この件は、誰にも話してはいけませんよ?」
「え? そうなの? でも──」
「いえ! わたしの様な者がビキニアーマーを着るだなんて……」
「えっ?」
あれ?
アイナママが神殿の人とおはなししてたときも、ビキニを装備した神官の女の人は、いっぱいいた。
だったら、同じ神官のアイナママが装備しても、おかしくないよね?
「ええと、アイナママ? 神殿でも装備してる女の人、いっぱいいた──」
「クリス」
「はいっ」
「一度しかいいません、よく聞いてください」
「は、はひっ!?」
「ビキニアーマーはね」
「び、ビキニアーマーは……?」
「20代中程までの、若い娘が装備するものなんです」
「おぅふ」