014 ぼくのおちん○んが…ない?
(あ、ぼくクリスです)
(前世では魔王と相打ちになって死んじゃったので? おちんぎん、もらってませんでした! てへっ)
……まぁ、死んじゃったしね?
衣食住と必要経費はもらってたしね?
(そういえば召喚勇者のおちんぎんって、どんなんだろ? アイナママに聞けばわかるかなぁ って、聞けないけどね)
前世だったら、スマホで何でも調べられたんだけど、さすがに勇者のおちんぎんはわからないだろうなぁ
ちなみに前世のぼくが召喚されたとき、持っていたスマホ。
実はぼくの【異空収納】にまだ、入ってたりする。
(もちろん電池切れで使えないけどね)
そう考えるとスマホってホント、べんりだったんだなぁ
ぼくのステータスさんでも調べられたらいいのにー
(【万物真理】、召喚勇者のおちんぎんってどんななの? なーんて──)
パッ!
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【召喚勇者の報酬】
出典:万物真理事典『ステペディア(stapedia)』
この世界における召喚勇者の報酬は、以下の2通りに分類される。
・この世界に残留し、相応の立場と財産を与る。
・金塊や宝石などを与えられ、元の世界(現代日本)に戻る。
残留した場合はおおむね領地なしの貴族【勇爵】となるが、その爵位は一代のみ。
※相応の屋敷と、子爵相当の貴族年金が支給される。
帰還する場合、転送の都合上、財宝は【己で持てるだけ】が条件となる。
※ただし、大量の金塊・財宝を得ても、現代日本では換金が難しいと思われる。
また人物や生物なども連れて帰る事は出来ない。
マジックアイテム類も、マナの少ない地球では使用が難しいと考えられる。
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「調べられるの!?」
「はい? クリスくん、なにを調べるのでしょうか?」
「あ、いえっ なんでもないですぅ」
(いけない、思わず声にだしちゃった。でもぼくのステータスさん、すごすぎない?)
◇◆◆◇
「こほん、続きを説明してもよろしいですか?」
「あ、お願いしますぅ」
「では──そうしたギルドによる業務のあっせんですが、基本的にはすべて【自己責任】となるのが現状です」
「じこせきにん」
「つまりギルドから受けたお仕事で、その冒険者がケガや病気・もしくは死亡したとしても、ギルドは責任を負わない── という事です」
「あー」
そりゃそーだよねぇ。
そんなのを保証していたら、あっという間にギルドの金庫が空になっちゃう。
そうでなくても冒険者は、ハイリスク・ハイリターンだし?
「もちろんギルドといたしましては、その過去の経験と実績から業務内容の難易度を想定し、その方の【レベル】に応じた、比較的安全に達成できるであろう業務、そうしたものをご紹介しているのが現状です」
「なるほどー」
つまり『あなたのレベルなら、これくらいのお仕事ならいけそうですよー』
って、教えてくれるわけだ。
「そして現在当ギルドでは、その方の持つレベルに応じて、こちらの【等級】に寄る分類を採用しております」
「ええと?」
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等 級 レベル 通 称
・7等級:LV.01~04 入門者
・6等級:LV.05~09 初心者
・5等級:LV.10~19 中級者
・4等級:LV.20~29 一人前
・3等級:LV.30~39 上級者
・2等級:LV.40~49 達人級
・1等級:LV.50~ 英雄級
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「この7つの等級に分類されていますが、実際には右の【通称】で呼ばれる事が一般的ですね」
「ほうほう?」
「今まで魔物、もしくは魔族を討伐した事のない方は、もれなくレベル1からのスタートです」
「ですよねー」
「そしてこちらのアイナさんこそ【1等級】、【英雄級】のお方なんですよ?」
「アイナママ、すごいや」
「うふふ、恥ずかしいわ」
って、もちろん知ってたけどね~
でもいまこの大陸に、レベル50以上の英雄級の人は、アイナママを含めて2人しかいない。
それだけ英雄級ってすごいことなんだ
「そしてこちらの等級を目安として、依頼業務を斡旋させて頂く事になりますが、その方の等級の【ひとつ上】の業務まで、お受け頂ける事になっております」
「ひとつうえ?」
「ええ、しかし先程申し上げたとおり、あくまで自己責任となりますが……」
「な、なるほど」
やっぱり、そんなハイリクス・ハイリターンのお仕事を、『やりたい!』って人が多いんだろうなぁ
「えー、ただし本来はその等級に満たない場合でも、結果的に依頼達成してしまった場合は、その限りではありません」
「ええと?」
「本来、その方の等級では勝てない、と設定している高レベルの魔物と遭遇したとします」
「あ、はい」
「これはギルドとしては、討伐行為を推奨いたしかねます」
「ですよね?」
「ですが、これをなんらかの理由で倒してしまった、とします」
「すごい」
「この場合、ギルドとしては推奨しておりませんので、本来はその方に厳重注意──お説教しなくてはいけません」
「あぶないですしね」
「そして依頼を通していない上に、等級以上の討伐になりますので、原則【報酬半減】です」
「きびしい」
「ですが? 実績は実績です。実際は、担当者の采配により見逃される場合が多いですね」
「やさしい」
「もちろん、きちんとお説教はしますよ?」
「はぁい」
そんなやさしいことをいってくれるアマーリエさん。
ホントは、いっちゃいけないかもだけど?
アイナママもニコニコしてるから、みんな知ってることなのかも?
「そして当ギルドに所属する冒険者の方には、社会貢献として依頼業務を定期的にこなすノルマがございます」
「ノルマ?」
「魔物や戦いと関係のない、一般の方々への配慮と奉仕・貢献、ですね」
「あー(察し)」
なるほど。
さすがに【英雄級】までいけは、話は別だろうけど?
そうでない人たちにしてみれば、冒険者はやっぱり怖く見える。
じっさい、チンピラと変わりない冒険者もいるし?
そのあたり、身近なところで役に立つところを見せとこう。
そんなかんじかなぁ。
「もちろんこれはギルドからの【お願い】でありますので、お断り頂いても構わないのですが」
「え? いいんですか?」
「ですが、それを否定し続けますと、ペナルティが発生します」
「ですよねー」
「そしてあまりにもあからさまな場合は、ギルド追放も有り得るのでご注意を」
「きびしい」
「もちろん自らお受け頂ける場合に関しましては、先程の等級の問題に触れない限り、なにも問題はございません(ニコっ)」
「な、なるほど」
つまり、【あんましお願いをサボるとクビだよ?】ってことだね?
「そして最後に、ギルドが取り締まるべき犯罪行為についてご説明します」
「あ、はい」
「本来、当ギルドには犯罪に関する捜査権や逮捕権はないのですが……その対象が当ギルドに所属する冒険者にのみ、それを有する事になります」
「ええと?」
「ギルドに参加するなら、悪い事をするとギルドがおしおきしますよ? という事ですね」
「わかりやすい」
「うふふ、クリスくんも理解が早いですね。さすがです」
「えへへ」
ほめられちゃった♪
「もちろんその犯罪行為の重さにより、罰則は変化しますが……原則的に相手を傷害した場合は、罰金及び強制労働となります」
「きびしい」
「そして殺人や強盗、放火などの重犯罪の場合、死罪か鉱山送りとなりますね」
「もっときびしい」
「そしてその場合、当ギルドがその冒険者を庇護することはまずあり得ず、むしろ積極的に取り締まることになりますね(ニコっ)」
「は、はひぃ」
うーん、きびしい。
「そして当ギルドといたしましては、冒険者同士の【私闘】を原則的に禁止しております」
「ケンカはダメですね」
「はい。ですが、実際には【見て見ぬふり】をする事が多いですね」
「あー」
冒険者、ケンカ多いですからね。
「しかしその場合でも、【抜刀】または【攻撃魔法の発動準備】などの【殺傷可能な武器】を使用した場合は、その限りではありません」
「ですよね?」
「はい。相手を傷害、もしくは殺害の意志があるとみなし、処罰の対象となります」
「おー」
「そして、それを返り討ちにすることは、自衛の為に認められています」
「かえりうち……」
これはぼくも前世で知ってたけど?
この世界では【武器を抜いたら殺し合い】なので、抜かれた方には、自衛のために【返り討ち】にする権利がある。
つまり、
(剣を抜いてきたら、相手を殺しちゃっても罪にならないんだ)
そしてぼくは、勇者時代にもうそれを経験してる。
【同じ人族同士、話し合えばわかりあえる】
そんな甘い世界じゃないんだ、異世界は。
◇◆◆◇
「さて、簡単ではありますが、以上が当ギルド加入に関するご説明となります。なにかご質問はありますでしょうか?」
「いえ、とってもわかりやすかったです。ありがとうございました、アマーリエさん」
「うふふ、どういたしまして。クリスくん」
「えへへ」」
「では、こちらに触れて頂けますでしょうか?」
「あ、はい」
でた、ステータスの検査マジックアイテム!
そこには、さっきの入会書類と同じくらいの大きさの板があった。
周囲には複雑な模様がいっぱい描いてあって、これにふれるとステータスやスキルが浮かび上がる……って感じかな?
(ええと、【万物真理】、これ【偽装】できる?)
今までこんな聞きかたをしたことはなかったけど?
さっきの件もあるし? なんだかいけると思って聞いてみた。
そうしたら、
パッ!
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【ステータス検査ボード(人族用)】
種 別:マジックアイテム
制 限:無制限
価 値:金貨2枚
性 能:人族が触れることで、対象の人物の【名前】【性別】【レベル】【状態】
【HP】【MP】【スキル】などを調査・表示することが可能。
ただし一定の時間(およそ一昼夜)の経過で、記録は消えてしまう。
また別の人物が触れることで、その記録は上書きされてしまう。
対象は【人族】のみ(亜人に関しては別の検査用具が存在する)。
その対象者の状態に関わらず調査は可能。
ただし死者には使用出来ない。
特 記:【万物真理】にて任意の状態に偽装可能。
現在設定中の偽装状況を、このアイテムに適用しますか?
【はい/いいえ】
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(おーう、さすがはぼくのステータスさん。ええと、【はい】でおねがい)
その有能すぎる結果に満足しつつ、ぼくは検査アイテムに手を乗せる。
すると──
「はい、ありがとうございます。こちらにクリスくんのステータスが表示され──えっ!?」
浮かび上がる文字を見て、アマーリエさんが驚いた声を上げる。
でもそこに表示されてるのは、ぼくが偽装した数字やスキルで間違いないんだけど?
(えっ ぼくなにか、やっちゃいました?)