013 ギルドの受付嬢さんも、ビキニでした
「おー、ここが冒険者ギルドなんだね」
「ええ 、じゃあ手続きをしましょうね?」
ケストレルの街の冒険者ギルドはけっこう立派な建物で、そこにはたくさんの職員さんや冒険者でにぎわっていました。
「えっ? あのコ、聖女様のお嬢様じゃなかったの?」
「違うわよ! あの子はステラさまのお子さん。しかも男の子!」
「うっそ! あんなカワイイのに? 男の子なのっ?」
「あのねぇ あんな可愛い子が女の子のワケないでしょう? ハァハァ」
「やーん カワイすぎるぅ」
なんて声が聞こえるのは、ぼくの気のせいでしょうか?
アイナママもステラママも【救国の英雄】だし? 目立つのはしかたないけどー
(なんでさっきから、ぼくのことばっかり!)
ちなみにいまの女のひとたちは、ギルドの受付嬢さんだったりします。
しかもみんな若くてきれいなひとばかり。
(やっぱり気性の荒い冒険者相手のお仕事だから? 美人さんを並べておいたほうが、つごうがいいって聞いたことあるけど)
ギルドの女性職員さんも、若い女性はみんなおそろいの制服とビキニです。
たぶん20代じゃないっぽい女の人は、スーツっぽいのを着てるけど。
(ギルドとしても、ビキニアーマーを推してるんだなぁ やっぱり若い女性冒険者に着てほしいよねぇ)
そもそも女性冒険者というのは、若い女性がなる場合が多いんだ。
そして、死んだりケガをしたりすることがなくなれば、けっこう稼げるお仕事でもある。
つまり、
(若くて稼げる女性冒険者というのは【かっこいい】んだよね)
街の普通の若い女性たちにとっては、ちょっとした【アイドル】みたいな?
すると、そのビキニ姿はけっして恥ずかしいモノじゃない。
むしろ冒険者じゃなくても、進んでマネすべきモノ
──と、いうことになってるのかも?
と、いうことは、さっきのお兄さんの喜びかたからすると、
(日本人の感覚だと【ブラウスにブラが透けてる】くらいのエッチ度っぽい?)
そりゃぁ前世のぼくだって? 夏場の女子やキレイな女先生のブラウスが透けてて、ちょっと嬉しくなった時はある。
でもそれを、わざわざ指摘するのはヤボってモノだし?
逆に【エロい目で見てる】って思われかねない。
だからこの場合──
(むしろエッチな目でみるのは【×】、マナーいはん。ココロの中でだけ、こっそりエッチな目でみるのが【○】)
そうやって、理解したうえで街を見れば──
ビキニ姿の女性を横目で見ては、鼻の下をのばしてる男の人。
それに気付いて呆れてるけど、べつに気にしない女の人。
そんな構図が、あちこちで見られた。
(うぅ とにかくあれは防具! エッチなモノじゃない! だからエッチな目で見ちゃだめなんだ~~~っ)
必死にそう思い込もうとするぼくだけど、
(でも、でもだよ?)
そりゃぁぼくだってビーチでのビキニ姿なら、なんとも思わない。
いや、少しは思うし? おっぱいとかおおきければ、そりゃあ見ちゃうけど?
でも少なくても、むやみにエッチな気分になったりしない。
じゃあ、想像してみてほしい。
たとえば日本のお役所とか銀行に行ったとして、そこの若い女性職員さんが、みんなビキニだったら?
(むむむっ ムリっ だってこれ、ギャップがありすぎるよぉっ!)
◇◆◆◇
そんなぼくがアイナママに手を引かれて、受付カウンターのひとつにすわった。
アイナママは、ぼくの後ろに立っているつもりだったみたいだけど?
職員さんがイスを持ってきてくれたので、ふたりで並んですわってます。
「初めまして、アイナ様、クリス様。冒険者ギルド、ケストレル支部へようこそ」
「はっ はひ」
「私は受付嬢のチーフを務めさせて頂いております【アマーリエ】と申します。今後は私がクリス様の担当を仰せつかりました。以後よろしくお願いいたします」
そのカウンター越しに、やっぱり美人さんの受付嬢がそういった。
チーフさんだからなのか、やっぱり話し方がていねいでキッチリしてる。
明るいブラウンの髪を片方だけ耳を出してて、ほんとゴージャスな美人って感じのお顔に、おデコがチャームポイント☆
そしてビキニを着ていて、おっぱいがおおきい。
「こちらこそよろしくお願いしますね、アマーリエさん。ですが、わたしもクリスもただの村人に過ぎません。どうか【様付け】はお止めいただき、気さくに話しかけくださいね(ニコっ)」
「は、はいっ アイナ様っ ──いえ、アイナさん」
そんなアイナママの【聖女スマイル】に、さすがのチーフさんもほっぺを赤くしているみたい。
(んふふ、やっぱりアイナママはすごいなぁ。いつもこうやってほほえんでるだけで、みんなをポカポカさせちゃう)
そんなチーフさん、アマーリエさんは、いちまいの紙を取り出した。
そしてカウンターに置くと、それをぼくらについっとさし出す。
「では、当ギルドの規定についてご説明させて頂きます」
「はいっ」
「これは、すでにギルド会員である方からのご説明を頂く事で、省略する事もできますが、いかがいたしますか?」
「ええ、お手数ですがご説明いただけますか? やはり、専任のあなたの説明の方が適切でしょうし(ニコっ)」
「は、はいっ アイナ様 ──いえアイナさんっ」
おぉぅ、またアイナママのファンが生まれてしまった。
(でもぼくなんて、ずうっと前からファンなんですからね! えへん。ちなみに前世は恋人だっだし?)
なんて自慢にならない自慢をぼくがしていると、アマーリエさんは書類をこちらに見せながら、ぼくに解説をしてくれたんだ。
「ではまず、当冒険者ギルドについてご説明いたします」
「よろしくおねがいします。アマーリエさん」
「まぁ、こちらこそお願いしますね? クリスさん」
「ええと、ぼくのことは【クリスくん】でいいですから」
「うふふ ええ、わかりました、クリスくん」
「えへへ、ありがとうございます」
そんなぼくのお願いに、なぜだかニコニコしているアマーリエさん。
ぼく、男のコだから【くん】って呼んでほしいだけなんだけどなぁ。
「では改めまして。まず冒険者ギルドとは、魔物や魔族の討伐を基本とした、冒険者の為の互助組織となります」
「ごじょそしき?」
「つまり冒険者の活動を助け、同時にその力を活用するという、互いに支え合っていて、はじめて機能する組織といえます」
「ええと、ギルドはおしごとを出して、冒険者がそれをうける。冒険者がおしごとを成功させれば、ギルドはお金をはらう。こんなかんじですよね?」
「ええ、その通りです。クリスくん、すごいわ」
「えへへ」
これもアイナママに教えてもらってるし、前世でもしってるからね~
「そしてその存在は国や貴族様の組織ではなく、あくまで民間組織になります。ですのでギルドと冒険者のやりとりには、一部【税金】が発生します」
「ぜいきん」
これはぼくもしらなかった。
もちろん、この世界に税金があることは知っていたけれど。
◇◆◆◇
ぼくの住む国は、いわゆる王さまがいる【王国】です。
その王様の住む王都や直轄地は、王さまが直接管理しています。
で? それ以外の地域は、3人の侯爵さまと5人の伯爵さまたちが、それぞれ管理してるんだ。
(この人たちが【上級貴族】って呼ばれてます)
そしてその領地もさらに細分化して、子爵さま・男爵さまと、下位の貴族さまが統治していて……
ぼくの住む村は、とある子爵さまが領主として治めてるんだ。
(こちらは【下級貴族】だね~)
で、ぼくたちはその領主さまに、税を納めている。
それはお金だったり、麦とかの穀物だったりするけれど?
その税は【人頭税】という、住民ひとりひとりにかけられたものになるんだ。
それが子供だろうが老人だろうが税率が変わらないので、現代日本の知識があるぼくとしては、だいぶビミョーに思えるけど~
(ちなみにぼくらの領主さまは、それほどきびしくないみたい)
そんなこんなもお仕事をおてつだいしているときに、アイナママが教えてくれたんだけどね~
アイナママ、村の財政管理も手伝ってるから。
◇◆◆◇
「そして冒険者ギルドにおける冒険者収入──お仕事は、次のようなものになります」
「ひとつめは、依頼者からの依頼を達成する事による【依頼報酬】です」
「いらいほうしゅう」
「冒険者が受け取る成功報酬に関しては非課税ですが、その1割を手数料としてギルドに支払う事になります。いわゆる【仲介料】という事ですね」
「ちゅうかいりょう」
「ふたつめは、魔物&魔族を討伐した際に得た【ドロップアイテム】などを、ギルドに販売する事による【販売利益】です」
「はんばいりえき」
「こちらは冒険者が受け取る利益に関して、1割の課税対象となります」
「かぜいたいしょう」
「最後のみっつめは、魔物および魔族を討伐。その討伐証明である【魔石】をギルドに納品する事による【討伐報酬】です」
「とうばつほうしゅう」
「こちらの冒険者が受け取る成功報酬に関しては、非課税になります」
「ひかぜい」
この前のスライムたちを倒したときにもでた、魔石。
魔物や魔族は、体内に魔力のみなもとである魔石をもっていて、死亡するとそのカラダはかき消えてしまうんだ。
そしてあとには魔石しか残りません。
(だから魔物の素材とかは取れないけど?)
魔石はいわゆる【魔力の結晶】であり、マジックアイテムの電池代わりに使われたりもするから、高く売れる。
それにたまにその魔物由来の【ドロップアイテム】が出たりする。
これは天界の神さまによる【神の御業】のひとつ、だそうです。
(ええと、つまり)
『○○を討伐して』という依頼を受けて、その魔物を討伐して魔石をゲット。
で、その魔物から出たドロップアイテムもゲット。
それをぜんぶできれば……3種類の報酬がぜんぶもらえるってコトだね。
そしてギルドを通すと、なんだかんだで1割の税金をとられるけど?
魔物を倒した時の討伐証明。
つまり魔石の買取料金だけは、税金がないですよー というわけだ。
(うーん。これはきっと、やっぱり魔物を討伐するのをオススメしてるんだろなぁ)
そもそも冒険者って、要は兵士になれなかったり、次男以降で継ぐ家のない人。
そして職にあぶれた人──そういう人たちがなるモノだったりする。
(つまり、誰でもなれる職業ってことだよね)
でも、冒険者はケガをしやすいし、死にやすい。
ギルドのバックアップがあるとはいえ、すべてが自己責任で行われるから。
だから冒険者の命は安い、そう言われてる。
だからきっと、その【命が安い】ということに対する配慮、
(そういうコトなんだろうなぁ)
そういう意味なら、前世のぼくも討伐中に死んじゃった冒険者?
(……ん? そういえば)
前世のぼくって、衣・食・住はしっかり支えてもらってたけど?
それ以外のお買いものは、アイナママが王城からあずかったおサイフでしてた。
だからとくに気にしてなかったけど……
(ひょっとして前世のぼく……おちんぎん、もらってなかった?)