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ママとビキニと、かわいい英雄  作者: 身から出た鯖
第1章 アイナママは、もと【聖女】
10/92

010 ぼくだけの、ひみつだもんね

「んー、やっぱりさいしょの魔物といえば【スライム】だよねー」


 この世界でもスライムは、いわゆる【最弱】の魔物。

 冒険者になりたての【入門者】は、このスライムか角の生えたウサギ、【ジャッカロープ】の相手をすることが多いんじゃないかな?


「でも? さすがに弱いといっても魔物は魔物。油断して死んじゃう冒険者も、いっぱいいるって聞いたなぁ」


 とはいえこんな山の中だし、危険な獣だっていっぱいいる。

 このあたりだと、オオカミやクマ、イノシシなんかも出るって聞いてる。


「そういえば日本にいるころ、なにかで読んだっけ」


 道具も服もなしで、【本気】で【殺しあい】したら、人が勝てるのは、家ネコがギリギリなんだって。

 もちろん鍛えてる人や、なにかしら格闘術を身につけてる人は別だろうけど?

 いわゆるフツーの人は、中型犬くらいだともう勝てないらしい。


「うん、勇者スキルのないぼくなら、ネコさんでもあやしいね」


 ちなみに、魔物と獣の違いはナニかというと?

 まず魔物には体内に魔石があるけど、獣にはない。

 そして獣が【生きるため】【身を守るため】に人族を襲うのに対して、魔物は明確な【人族への殺意】をもって襲ってくる。


「魔物は人族をおそうコトが、本能にきざまれてる。そうアイナママが教えてくれたっけ。って、いけないいけない。まずは魔物をやっつけないとね~」


 ぼくの持つ【気配遮断】のスキルを使えば、安全に近づけるけど?

 ここは実験ということで、わざと足音を立てて近付いてゆくぼく。

 すると、明らかにスライムの意識がこちらに向いたのがわかった。


「お顔もナニもないけどねー」


 丸っこいなみだ型をしているとはいえ、さすがにあの間の抜けたような、愛嬌のあるお顔はついていない。

 その見た目はまさに、ゼリー状の大きな水袋、といった感じ。

 この個体の色は青く、そしてその体内には1センチくらいの赤い石が見える。


「あれが魔石だけど……いかにも【弱点】ってカンジだよねぇ」


 この世界のスライムは、人の顔に張り付いて窒息させたり──しない。

、強酸で溶かしたりもしないし、ましてや人体の【穴】に入り込んだりもしない。

 基本、体当たりをかましてくるだけ。

 そして仕留めた相手を、ゆっくりと溶かして補食する。


「でも、あの大きさなら50キロくらい? それがおもいきり体あたりしてくるなら」


 ぼくなんかはあっけなくふっ飛ばされちゃうし?

 大の大人でも、当たりどころが悪ければ骨や内臓をやられちゃう。


「【剣術】のスキルだけで、どこまでやれるかな? えいっ!」


 ぼくが剣を構えてスライムに駆け寄ると、スライムは大きく身を反らして、その反動を使ってこちらに近付いてきた。

 その動きは、まるで生きたボールが跳ねるようで、しかも跳ねるごとに反動を増してゆき、どんどん速くなってゆく。


「さぁ こいっ」


 わざとギリギリまで引きつけると、スライムは高く飛んでぼくの頭めがけて突っ込んできた。


「──くっ」


 一瞬、その核を剣で突いてやろうか? と思ったけど……いまのぼくに、この重量の魔物の突進を、受けきれる自信がない。

 なのでとっさに身をひねって、その体当たりを避け──


 ドッ!


「んあぁぁっ」


 スキルがまだ馴染んでいないのか、避けそこなって肩に体当たりをくらった。

 そして──


(ものすごくっ 痛いぃぃぃ!)


 それでも転ばずに、なんとか耐えたぼくをホメてほしい。

 ナミダ目でなんとか振り返って、スライムに向かって剣を構える。


(痛いのガマンガマンガマン~~~っ)


 スライムは、ぼくにぶつかったことで勢いを殺され、地面に落ちた。

 そしてその場でまた、身を反らした。


「いまだっ」


 身を低く伏せたまま、がむしゃらに走ってスライムに駆け寄るぼく。

 そして身体を横にひねりながら、思いきり地面を蹴った!


「たぁぁぁっ!」


 地面ぎりぎりの高さを、水平に飛ぶ・

 その姿勢のまま、ぼくは剣を突き出した!

 そしてその切っ先は、的確にスライムの魔石を── 貫いた!


 ピキッ!


「やった!」


 スライムの身体は、ざばりとお水みたいに地面に落ちて、ぱぁっと光って消えてしまった。

 そして剣に貫かれた魔石は──


「あぁっ 割れちゃったぁっ?」


 それはもうあっけなく、コナゴナになっちゃった。


「うぅ 転生して、はじめての魔石だったのにぃ ……とりあえず、ひろっておこう。ほぼコナだけど」


 地面にしゃがみ込んで、ちまちまと魔石を拾うぼく。

 戦いには勝ったのに、なぜだかすごく負けた気がした……


 ◇◆◆◇


「ふう、ではだい1回、クリスくん反省会をおこないまーす。わー ぱちぱちぱち」


 あのスライムを討伐した後も、ぼくは何匹か魔物を狩り続けたんだ。

 その数はスライムが3匹、ジャッカロープが2匹。

 まぁ、その討伐する時間は、そのつど速くはなったのだけど……


「まずはスキル、かなぁ」


 剣術スキルはそこそこうまく発動してくれた。

 けど、【回避】や【痛覚遮断】のスキルは最初、動いてくれなかった。


「でも『ガマン~』って思ってたら、とつぜん痛くなくなったけどね~」


 やはりスキルは持ってはいても、いちど使うなりして、馴染ませないとダメっぽい。

 そのあたりを油断して、ぶっつけ本番でやったおかげでこのざまですぅ


「んー、それに高レベルのスキルのおかげで、身体はかってに動くけど……」


 なにせぼくの【筋力】と【攻撃力】がレベル1相当なんだ。

 与えるダメージがとにかく少ない。

 しかも【防御力】も低いので、攻撃を喰らうとけっこうキツい。


「ただ、HPだけは10万もあるんだよねぇ」


 おかげで今日のダメージも、HP総量の0.01パーセント程度。

 ほぼ無傷といってもいいんじゃない?

 コレってひょっとして……


「ぼくって、そう簡単に死なないんじゃないの?」


 ぼくのステータスさんもいっているとおり、【HP】(ヒットポイント)は【打たれ強さ】を数値化したものであって?

 生命力を数値化したものじゃない。

 なので、10万もHPがあるということは……


「ぼく、と~~~っても【打たれ強い】ってコトだよねぇ」


 たとえ爆発に巻き込まれようとも、10万のHPを一気に削るのはかなり難しい。

 というか、魔王の最大攻撃魔法だって、一撃で10万のダメージを与えるものなんて、ありはしない。


「あの魔王戦のときにうけたいちばんキツかった攻撃魔法が、せいぜい5千いくか、いかないか」


 それでも5パーセントだね。

 だからダメージこそ負いはするけれど、【一撃死】するにはほど遠い。

 そして剣で首を飛ばそうとしたり、大きな魔物に踏みつぶされたとしても──


「うん、たぶん死なない」


 一気に10万を超えるダメージでないかぎり、致命傷にならない。

 そして、致命傷にならないということは? 首は落としきれないし、身体も潰しきれない。


「だから死なない。やっぱり勇者って、チートだよねぇ」


 うーん、でも?

 即死しないだけで、問題がない訳じゃないよねぇ?

 魔王のときみたいに、強い敵とずっと殴りあえば、いつか死んじゃうし。

 とくに、いまのレベル1相当の、低いパラメーターがやっかい。

 しかも当分のあいだレベルアップできないという縛りプレイ状態。


「だから【攻撃力】も【防御力】も両方ひくいんだよねぇ うーん、やっぱり魔法かなぁ」


 この世界の女性は【防御力】が低く、そのうえ重い防具が装備できない。

 だから魔法で防壁を張る事で、魔物を寄せ付けないようにしていたんだ。

 ただそれを突破されたら、なすすべがない。


「そこはミヤビさまが、加護のアイテム(ビキニアーマー)を広めてくださったし?」


 だから防具なしでもケガしたり、死んじゃうことはすごく少なくなったんだ。


「けどぼく、男のコだしな~」


 そう、そのアイテムは【女性専用】

 男のコのぼくには使えないモノっぽい。


「う~ん、まとめるとぉ」


・HPはいっぱいあるから、そうカンタンには死なない。

・スキルもいっぱいある。けどそれは身体になじませないとダメ、うごかない。

・パラメーターはHPのほかは、ぜんぶレベル1。冒険者でいう【入門者】です。


「つまり、いまのぼくは──」


 やたらに打たれ強く、やたらに小器用な【非力な少年】 だ。


「なんというビミョーっぽさ!」


 でも、まぁ?

 いまのぼくは、片田舎の村に住むごく普通の少年──クリスだ。

 もう魔王を倒さなきゃいけない、召喚勇者じゃない。

 もっといえば、魔物すらムリに討伐する必要だってない。


「だからこんなチカラは、ぼくになくてもいいモノなんだ」


 そう考えたら、すとんと頭が楽になった。

 でも?


「まぁ? あれば便利なモノだし? いざという時には、うまく使えるようにしとかないとね~」


 そして、ぼくには考える時間も、工夫する時間もたっぷりある!

 それに、どうやらこの勇者のチカラ(の一部)は、アイナママたちにも話しちゃいけないコトみたい。

 だったら──


「んふふっ だれにもいえないぼくだけの、ひ・み・つ」


 そう思うと、とっても楽しい、

 さぁ! どうやってこのチカラ、使いこなしてやろうか?


「じゃ、もうすこし魔物を討伐して、カンを取り戻さなくちゃ! んふふっ 魔物、まだいるかなぁ?」


 そんなぼくはウキウキと、山の魔物を狩りまくり、すっかり山に、魔物はいなくなりましたとさ~

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