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『8話 魔導書を分解して合成してみよう』

『8話 魔導書を分解して合成してみよう』


 大事な宿泊するのをうっかり忘れていた俺は困ってしまう。

 ホットメルトを売ればまたマースにはなるだろうからと考えていたが、なんとアイテム店はすでに閉店していた。

 まさかの閉店、確かにもう夜は日が暮れているから閉店していても変ではない。

 むしろ俺のミスといえよう。


「アイテム店がまだ開いていると思った。マースに代えられるはすが……閉店してますね」

「もう閉店の時間ね。そしたら家においでよ。宿泊したらいいわ。元貴族の私が家を持っているのは当然だ!」

「ええっと?! そんなマズいでしょう! 俺は男だし、今日出会ったばかりだし!」


 普通に日本なら問題ですよね。

 または俺が規格外にイケメンなら話はわかるが、あいにくイケメンには程遠いですから。

 それともエテルナだけでなくこの世界では普通なのかも。

 魔法もあるし、常識が違っているとしたら変ではない。

 それならエテルナに甘えてもいいよな。


「別にいいじゃない。マツシマは変な人じゃないと思うから」

「ええっと、それじゃ、エテルナの家のベッドで寝させてもらいます」

「寝させて……夜中に家の中で体を襲う気だな!!!!!!!!!」

「ベッドは別々でいいですよ!!!!!!!」


 家に到着したらエテルナの家には誰も居なかった……。

 てことは独り暮らしらしい。

 貴族の家を家出したのは本当らしい。

 独り暮らしで俺を宿泊させてもいいって、どういう意味かと考えてしまう。


「どうぞ、親から家出してこの家に居る。だから独り暮らしなのね。気にしないで魔導書の研究をして」

「はい、します」


 気にしないでいられますか。

 こんな可愛い子の部屋に来て。

 動揺するのが普通でしょう。

 しかし俺は気持ちを切り替える必要性がある。

 魔導書の研究があるからで、一番優先させないといけないのがこれだ。

 魔導書をテーブルに並べてみると、先ほど気づいた点は魔導書は二つに別れる構造を持っている点。

 これは魔導書の全体像のコードと魔法を強くするコードだったのを考慮して、ある点に着眼してみたい。

 まず魔導書を思い切って分解してみたいのであって、それは魔法を強くするコードだけを取り除く作業となる。

 なぜその様な面倒くさい作業をするかと言えば、このコード部分の魔導書をホットメルトで合成させたいから。

 つまりは魔法を強くするコード部分だけを合成できたらレベル1の魔導書が強くなるという仮説です。

 普通のレベル1の魔導書に魔法を強くする部分のコードだけを合成。

 これを実験してみたいと思う。

 

「まずは魔導書を分解したいから、エテルナに協力して欲しい」

「どうすればいい?」

「魔導書をこのページを中心に二つに断裁して欲しい。もちろん剣で構わないから」

「剣で切っていいのね。知らないわよ、 後で元に戻せって無理だわよ!」

「大丈夫だ。お願いします!」


 渡したのはファイアレベル1の魔導書。

 エテルナは俺の注文通りに魔導書を真っ二つに断裁した。

 さすがにチュウワラビットを切った剣である。

 魔導書など綺麗に切れる。


「はい、切れた」

「さすがですね」


 これでファイアの魔導書は分解できたので、ここからが重要である。

 ファイアの魔導書は二冊買ってある。

 一冊はそのままで、一冊は分解済み。

 分解した物で魔法を強くする術式コード部分のを普通のファイアレベル1の魔導書とに合成したい。

 そうすれば魔法の強さだけを強くできると思うからで、はたして上手くいくかな。

 俺はホットメルトの準備に取り掛かる。

 エテルナに適当なお皿を借りてその上にホットメルトを出す。

 ホットメルトは俺の手からポロポロと落ちていった。

 

「な、な、何これ、白い石かな?」

「これがホットメルトさ。製本用のノリ。まぁ見ててくれよ、ここからがホットメルトの能力だから」


 エテルナはホットメルトの実物を見てかなり驚いていたが、それは当然であって、俺も初めて見た時はノリだと思えなかったくらいでした。

 えっ、これがノリなんですかって聞き返した記憶があります。

 エテルナが不思議に思っても何も変ではない。

 そしてホットメルトを個体から液体にする為に熱するので、ファイアレベル1の魔法の出番。

 ファイアレベル1を使いホットメルトの温度を上げると、しだいにホットメルトは溶けて白い液体に変わる。

 ホットメルトの溶ける温度は高温で、170度くらいが適温だろう。

 あまり低い温度だとノリが固まってしまうし、接着がうまくいかないケースもあるからです。

 さいわいなことに、ファイアレベル1で温度は170度近くまで上げられるから助かる。

 それらの変化をエテルナが驚いて、


「あちちっ!!」

「あああっ!」


 エテルナが間違えて溶けたホットメルトを触ったので熱がった。

 なんと俺に抱きついてきたのだった。

 エテルナと近い。

 接近し過ぎて興奮してしまう距離。

 胸に視線がいく。


「ええっと、溶けてますが、大丈夫なの?!」

「溶かしているのです。ノリは溶かして使うからね。ホットメルトのノリは温度は170度くらいがいいんだ。170度に達してるみたいだから液体になる。この状態でファイアの魔導書を合成してみよう」


 普通のファイアレベル1に分解してある部分のコードを合成したいので、両方の背の部分にホットメルトを大量に塗っておく。

 ベッタリとノリは背の部分につくと、ホットメルトの温度が低くならないうちに接着しておく。

 ここで時間が経つとホットメルトの温度が低くなってしまい液体から固まってしまい接着が難しくなるから、手早く作業。

 なんとか接着は出来て、見ためは一冊の魔導書になったようです。

 はたして結果はどのように変化してあるかで、何も変化してなかったり、逆に弱くなっていたりしたら失敗です。

 レベルを強化したわけだから、成功を祈ります。


「魔導書が接着されてるわね。完全に一冊よ、凄いじゃない」

「でも中身が問題だよ。魔導書の中身の術式コードが変化していれば成功。何も変化なし、または弱くなっていたりしたら失敗となる。読んでみればわかる」

「読んで読んで!!」


 エテルナも興味があるのか必要に結果を知りたがるのを待たせて、魔導書のコードを読んでみると。

 最初の部分である基本術式コードはそのまま変化ない。

 これは予定通りです。

 次からが問題の箇所。

 変化していることを祈りつつ俺はページをめくってみて、見た瞬間に驚いてしまうコードが目に入った。



○○○○○○○○○○○○○

 炎の強さを強くします

 炎の強さを強くします

○○○○○○○○○○○○○




 と書かれてあるのを目撃して成功を確信しました。

 魔導書の表題はというと……、




○○○○○○○○○○○○○

 ファイア魔導書レベル2です

○○○○○○○○○○○○○



 これって成功だよね。


「成功したようだ!」

「えええっ! 本当に!」

「ああ、ファイアレベル2にレベルアップしているはずだ。俺は魔導書を作り出したようだよ!」

「嘘みたい!! 魔法ファイアをレベル1から2にレベルアップするには沢山の戦いの経験値が必要なの。普通にファイアを使っていても一年はかかるわ。それが初めからレベル2で覚えられるってわけよね。まさに革命的な成功ですわよ!!!!!」


 喜んだエテルナは俺に抱きついてきた。

 体と体が接触してます。

 しかもここは彼女の家で俺とエテルナしかいない。

 肌が温かいくて、柔らかいや。

 こんな接触ができるなら何度でもホットメルトを使いたい。


「そんなに凄いとは知らなかったなぁ〜〜」


 エテルナの話ではレベル1から2にするには一年はかかるそうですから、俺はえらく凄い物を作り出したようです。

 そして思ったのはこれは売れる。

 だって考えてみたら通常はファイアレベル1しか覚えられないわけで、それが最初からいきなりレベル2で覚えられるとしたら、どちらを買うか。

 それも一年も時間がかかるものを。

 俺の魔導書なら短縮時間はハンパない程に超お得商品だろう。

 エテルナが驚いてしまうのも無理はない。

 つまりはこの世界にどこにもない存在しなかった魔導書を作ったのだ。

 何の役に立たないと思ったホットメルトのスキルも、発想を少し変えただけでもの凄い可能性があることが判明しました。

 俺は心の中でやったぞ!と叫びました。


「やったね、マツシマ!!!!」

「おおおおおおおっ!」


 エテルナは笑顔で俺に迫りなんと抱きついて来ました!

 まさかの抱きつきに嬉しくなる俺。

 このまま抱き合っていたいけどいいよね。


「何をする、貴族の体に触るとは汚らわしい!!!!!!!!」

「俺は悪くないでしょ!!!!!!!!!!!!」



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