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『7話 魔導書』

『7話 魔導書』


 危ない場面はあったが、無事にクエストは終わらせた。

 初めてでも死ぬ人もいるそうなので、警戒は必要なのを体験したのは大きい。

 この経験を日本でSNSにアップしたら、世界中が大炎上するのは確実だ。

 それくらいに衝撃的な日になった。

 平原から王都に帰って冒険者ギルドに立ち寄ると、クエストを終わらせたと報告をした。

 クエストではしっかりと報告をしないと討伐したのと認められないからだ。

 忘れずにギルドに立ち寄る。


「お疲れ様です。エテルナさんが居るから安心してました。でもマツシマさんは緊張したでしょう?」

「はい、緊張しました。怖かったですしケガもしました」


 受付けの女性は最初だから緊張したでしょうと笑っていたが、俺は笑っていられる余裕は全くなかったです。

 むしろチュウワラビットが怖くて今でも手足が震えてるくらい。

 普通の人なら当然だろうな。

 魔物など戦う経験などあり得ないし、常識を超えた時間を過ごしたわけです。

 魔物から採取した素材はエテルナが持っていた。

 

「エテルナが持ってるのは素材でしょ。魔物からはぎ取った。はぎ取るのは面白そうだから、俺もやってみたい」

「待ちなさい……そう言っておいて私の服も、はぎ取ることを計画しているのだな。貴族の衣服を!!!!!!」

「魔物の!!!!!!」


 これでクエストの報告は終わった。

 流れは覚えたので、経験値を積むようにギルドには定期的に来るようにしたい。

 店内では傷ついた冒険者も数多くいた。

 血まみれの防具もあり、生々しい。

 あの感じだとかなり強い魔物と対戦したのが伝わってくる。

 まだ今日初めて経験した俺にはない風格が備わっていた。

 いつの日か俺もあんな風な風格が備わる日が来るのだろうか。

 それには絶対に必要なのが死なないことだ。

 死んだらそこで終わり。

 俺の異世界生活も終焉となるので、気をつけたい。

 冒険者ギルドに報告が終わると、次の目的は王都内の魔導書店へと向かうことに。

 魔導書店は一番興味がある店だ。

 浮足立つのが自分でもわかった。


「魔導書店へ行きましょう。ギルドからは報酬も得たのでマツシマにも渡します」


 報酬の俺の分を渡してくれた。


「ありがとう、でも貰えないよ。俺は倒したわけじゃないから倒したのはエテルナだろ。報酬はキミが持つべきだよ」


 恥ずかしいけどあれはエテルナが倒したわけで、俺はうっかり殺されかけたので。


「報酬は要らないが、その分の報酬として貴族の体で払わせようと考えてるな!!!!!」

「考えてない!!!!!」


 防具を両手で隠して言った。

 隠した姿はエロくて思わず興奮してしまう。

 面倒だから報酬は貰っておくことにした。

 

「いいわよ、報酬は半分ずつね」

「ありがたく半分もらいます」


 とりあえず報酬額の半分をありがたくもらいましたが、いつかは俺が稼いでエテルナにごちそうしてあげられるくらいになりたいです。

 魔導書店は冒険者ギルドから近かった。

 歩いて到着すると店の前には看板。

 魔導書と書かれてあるので大変に興味がわいてくる。

 

「ここが魔導書店。マツシマの興味ある本がたくさんあるから好きなだけ見てよ。そして気に入ったら購入したらいい。足りなければ支払ってあげる。後で返してくれるならね!」

「もちろん返しますから!」


 そうして魔導書店へ。

 店内は静かで本が棚に並べてある。

 普通に町の本屋って感じで、先ほどの冒険者ギルド店とは真逆だ。

 あそこは騒がしかった。

 血の気が多い奴らの集まりだから当然ではあるが、それにしてもいっぱいあるな。

 並べてある本を眺めているとファイアの文字が目に入った。


「ファイアとある、これってファイアの魔導書かな?」

「そうよ、ファイアね。そして魔導書はレベル1のみ。これを購入して魔法コードを唱えれば魔法として習得できる。マツシマはもうファイアレベル1は習得してるから無駄になる」

「なるほど、俺には必要ないのか」


 他に探しているとゲームでなじみのある名前があって、思わず手にとってしまう。


ファイア(火属性)

ウォーター(水属性)

クエイク(土属性)

ウインド(風属性)

ヒールアップ(光属性)


 などゲームをしていた者なら知ってる魔法だったから嬉しくなった。

 見ていたら全部欲しくなる魅力的な本。

 さっそく手にとって中のページを開いた。

 文字は俺でも読める日本語であったのは言語理解スキルの影響のようだ。

 そのためスラスラと文字は読めた。

 読み進んでいくうちに俺はあることに気がついていて、文は魔法の説明がある。

 ファイアの術式文の内容は、ファイアは火属性である。

 火力はレベル1が基本の強さである。

 レベル2はレベル1の二倍の強さとなる。

 なるほど、レベルが上がると強さは二倍、三倍と増えていくらしい。

 要するに使えば経験値が積まれて攻撃力は増すわけだ。

 エテルナの話ではレベルを上げるのはかなり時間がかかるとのこと。

 気の長い話らしい。

 まぁ普通に考えたら強い魔法使いになるには厳しい道のりがあるってことだ。

 簡単にはいきませんよと。

 どの世界でも上には上がいるもので、努力した者が選ばれていくのは変わらないのだ。

 そして術式文を読み進んでいくと、新たに発見があった。

 魔法の強さを上げる為のコードだろう文が。

 炎の強さを強くします……と書かれてある。

 なんだこれは、ずいぶんと簡単に書いた文だよな。

 あまりの単純さに小学生レベルの文章に感じるも、魔導書なのだから別に問題ないと思った。

 要は魔法を詳細に書きつづった術式文なのだと考えればいいのだろう。

 ファイア以外の魔導書もみてみようと。

 同じ構造をしているのか確かめたい。

 ウォーターを手にとってみた。

 読み進んでみると、やはり魔法の強さを上げる構文は同じ構造をしていたのが判明した。

 俺が頷いているとエテルナが、


「どうしたの、魔導書を読んで理解できるの? 一般の人は理解できないわ。賢者にしか理解できない術式文だから。マツシマはまるで理解している風に思えたから?!」

「ええっと? エテルナには読めないのかいこの術式文が」


 どういうことなのかわからないが理解できないらしい。

 俺には普通に日本語を読むのと一緒だ。


「できないわよ!!!!!!」

「俺は読めたけど」

「ええっと?! 凄いじゃない!!!!! 術式文の意味が理解できるなんて!! 初めて会ったわ!!!」


 いやいや普通に小学生レベルの文章でしょこれ!

 それともこの世界の人はあまり文章の読解力がないのかも知れない。

 俺は日本に生まれたから当たり前のように読めるが、それは社会に出ていく上で必要なスキル。

 日本の識字率は世界でもトップクラスらしいからな。

 文章が読めなければ仕事につくのは困難だろう。

 しかしこの世界の人は文章の読解力よりも剣のレベル、魔法のレベルが問われる。

 よって読解力はほとんど必要性がないスキルと考えられる。

 それとも賢者にしか読めないのも関係あるのか。

 これは俺が非常に優れた点と言えよう。

 他の人と比べて圧倒的に劣る俺のスキルであるホットメルト。

 それにステータスも低く、初級者だ。

 しかし読解力で補えば、弱くて低いステータスの差を縮められる可能性がある。

 俺は少し希望の光を感じる。


「俺は日本でこの程度の文章を勉強したから、理解できちゃうようだ。面白い感じするからこの本をみんな買いたいです!!! なのでお貸しして欲しいです!」


 買いたい気持ちはあるけどマースは足りないような。

 最初にホットメルトをアイテム店で売った金であるマースとエテルナから半分もらったマースを合わせてもどうかな。

 俺は手のひらをエテルナに出してありったけのマースを見てもらうと。


「…………貴族の体を貸せと申すか!!!!!!」

「お金です!!!!!!!」

「お金ね。足りない分のマースは貸してあげます。マツシマが凄く楽しそうだし、私もなぜか興奮してきちゃったみたい。マツシマのホットメルトの本を作るスキル、それ魔導書の術式文が読めちゃう力に」

「ありがとう。そしたらお願いします!!」


 エテルナに買いたい本を全部渡した。

 渡した本はファイアとウォーターを二冊ずつの四冊だ。

 なぜ二冊ずつかと言うとホットメルトで試したいことがあるからで、違う種類のは今は要らないので。


「あれっ、同じファイアとウォーターが二冊あるわよ、いいの?」

「いいのです」

「わかったわ、支払いをしてくるね」


 エテルナは会計をしてきてくれた。

 とても感謝したい気持ちでいっぱいです。

 日本で生活していて女子からこんなに優しくされた経験はなかったから余計に嬉しくなったよう。

 

「はい、買った魔導書よ!」

「ありがとう。これで俺の一回してみたいことができるよ! それはホットメルトと関係していて、俺の思いつきだから成功するかはわからないが、成功したら面白い結果になりそうなんだ!」

「ふふふ、面白そうね。見学したいわ。そう言えばマツシマは寝る家がないじゃいの、今日この世界に転生してきたわけでしょう」

「はい、無いです」


 忘れていた、家のこと。

 魔導書が面白いから、つい宿泊するという大事なのを完全に忘れてました!


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