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『32話 魔導ペンで書く』

『32話 魔導ペンで書く』


 なんと軽々とイノシシシーンを片手で持つとは常識外の腕力です。

 魔法を使わずに筋肉だけで持ち上げているのか。

 自動車くらいの大きさはあるのだが、慌てて持ち上げたのはなぜ?


「マツシマ〜〜、イノシシシーンを燃やしたらダメダメ〜〜〜!!!!」

「うわあ〜〜〜びっくりした!!!!!!!」


 イノシシシーンを持ち上げていたのは遠くであったのに、一瞬で俺の目の前に現れました。

 びっくりして思わず声を出してしまった。

 もう少しゆっくりと近くに来れませんかね。

 しかもイノシシシーンを持って現れるので迫力あり過ぎです。

 そのまま俺は後方に倒されています。

 

「燃やしてナニカ悪いの?」

「ダメダメ、イノシシシーンの血を使うから燃やしたら使えなくなる。それで直ぐに消してあげた〜〜〜。よ〜しイノシシシーンは手に入ったから、小屋に帰ろう〜〜〜」


 小屋に帰ろうてことは試験は合格てことでいいのかな。

 言われたイノシシシーンとマジックキノコは集めたので問題はないはず。

 

「試験は合格ですよね」

「合格〜〜〜〜〜〜!」

「やったわ!!!!!!!!!!」

「おおおおお!!!!!!!!!!」

「イノシシシーンはマツシマが持って帰ること!!!」

「持てるかい!!!!!!!!!!」


 エテルナが合格祝いなのか抱きついてきましたので、胸が顔に当たりました。

 エテルナとも無事に終わったのが一番良かったです。

 大ケガするのが一番怖かったから、小屋に帰るので安心する。

 採取したマジックキノコはエテルナが持っているとして、イノシシシーンはこのままランホーさんに持ってもらおう。

 俺には重過ぎて絶対に持ち運べない重さでしょう。

 俺が説明しなくてもランホーさんは片手で持ち帰った。

 ありがとうございますランホーさん。




 

 ランホーさんの小屋に到着した。

 イノシシシーンを徒歩で来たのに披露の色は見えないのはさすがだった。

 むしろ笑顔なのが不気味とさえ言えます。


「疲れてません?」

「疲れるだと……この程度の山道を歩いただけで疲れていたら情けない。毎日この何倍もの重い物を持ち上げて鍛えた体だからな、あははは!!」


 イノシシシーンをまるで重量挙げみたいにして持ち上げてみせポーズをとる。


「す、凄い!」


 エテルナは手を叩いて褒めてあげるが、ちょっと怖がっている風でもある。

 半分以上丸焦げのイノシシシーンをランホーさんが解体するとして、おれとエテルナは小屋で待つことに。

 しばらくしてランホーさんが来ると、手には血のような赤い液体が。

 たぶんこれを魔導書作りに利用するのだろう。

 確か魔導インクが必要なためだった。

 きっと血とマジックキノコを使うはずだ。

 ランホーさんにマジックキノコを渡し、作業を開始。

 

「これから魔導インクを作る。馬を速く走らせるのに良いインクを考えてイノシシシーンの血を利用した。作る魔導インクによっても効果は変わるから面白いだろ。マジックキノコから取った煮汁を使う。そこにイノシシシーンの血を配合する。これでインクの完成だ」


 完成した魔導インクは赤い血とキノコの煮汁が混ざり合いドス黒い液体となった。

 気味悪い色してます。


「黒くなった。不気味ですね」


 正に魔導的な感じがしてきた色にエテルナも不気味に感じていた。


「魔導インクは賢者にしか配合できない物だ。他の賢者以外の者には配合出来ない特殊スキル」


 どうやら賢者だけが持つ特殊スキルらしい。

 試しにエテルナがやったらどうなるのか。


「エテルナが配合してみたら?」

「ええっ! 私が配合を……ランホーさん、いいかしら?」

「どうぞエテルナちゃん、挑戦してみなさい〜」


 嬉しそうにランホーさんはまだ配合していない血と煮汁をエテルナに渡した。

 エテルナは受けとり挑戦してみる。

 混ぜ合わせるだけなのだから、誰にでも出来そうな気がするが、エテルナの配合した物はランホーさんのものとは違っていた。

 なぜ、違うのかな?

 エテルナも同じようにしたはず。

 だが結果は違う物になった。

 色が全く違っている。


「おかしいな……ランホーさんのと色が違ってしまったわ」

「どうしてだろう……」

「あはははははは、賢者の特殊スキルなのがわかったろ〜」


 嬉しそうに自慢するランホーさん。

 確かに特殊スキルなのはわかった。

 賢者にしか魔導書は作れないのは特殊スキルもあるのだろうが、マッチョポーズで決めて言ったので筋肉まで自慢しているのは関係ないと言いたい。

 

「実際に魔導書を書いてくれますか。とても興味があるので」


 俺はランホーさんに作った魔導インクを使用して欲しいとお願いする。

 この目で作るのを見れるのはラッキーかもしれない。

 

「マツシマは魔導書を書くのに興味があるようだが、キミのファイアはよく鍛えられていた。その若さでイノシシシーンを燃やすファイアを打てる者はそう居やしない〜」

「ランホーさんが魔導書を作ってくれたら、俺もファイアの秘密を話します」

「秘密だと? 意味がわからないが」


 ランホーさんは俺の言ってる意味が理解できないのは当然でしょう。

 ジェニアさんだって説明しても納得してくれなかったのだから。


「これは魔導ペーパーで、魔導書になる紙だ。そして魔導ペンで書いていく。魔導ペンじゃないと効力は無いからな。魔導ペンの先に先ほど作った魔導インクを付ける。インクによって効果は変わるのも奥が深い」


 ランホーさんは魔導書の作業に入った。

 魔導ペーパーと魔導ペンを用意してくる。

 説明された通り、この三種の道具がないと作れないらしい。

 ちょっと怪しい気もするのは、こんなのは迷信であって、他になんでも代わりの物で置き換えられそうだが。

 ペンなんて100円ショップに売ってるペンと何が違うのか。

 同じペンにしか感じないです。

 

「どこにでもあるペンに思えますね」

「それが賢者にしか使えないペンなのさ。そして全ては大賢者様から教わる。賢者の上におられる偉大なる方だ。大賢者様の所で修行した者は魔導書を作れるのだ〜」


 ランホーさんやジェニアさんを教える存在が居るようです。

 名前からして偉そうな名前しているのでわかる。

 長い説明があって魔導書を作る作業に入った。

 魔導ペンを持ち魔導インクを先に付けていき、魔導ペーパーに何やら書き込んでいきました。

 スラスラと書いていくのみ見ると手なれていたのは笑いそうになりました。

 この筋肉の腕で起用にペンで書いていくのは、面白い光景です。

 ランホーさんに失礼なので、実際に笑い声を出してはいないです。

 笑ったら殺されそうです。

 エテルナは隣に座って眺めていた。

 しばらくして魔導書を書き終えたのか、魔導ペンをテーブルに置いた。


「完成したぜマツシマよ〜〜〜〜!」

「ありがとうございます!!」

「賢者ってやっぱり凄いですわ!」

「おお〜〜エテルナちゃんは俺のことをわかってくれてる。嬉しい、だから抱っこしちゃう〜〜〜〜」

「貴族にだってとは、やはり変だわ!!!!!!!!」

「変とは?」

「ジェニアさんにデアガーロさん達がみんな言ってました……………」

「なんだと、アイツら!!!!!!!!」


 意外と早かった。

 書き上げた魔導書には文字が並んでおり、感謝してもしきれません。

 賢者さんに直接書くのを頼むのは普通は例外なのだとしたらお礼がいるだろう。

 日本でも人にお願いしたら、常識的にお礼はするものです。

 ただこの世界の常識はわからないですから、ランホーさんに直接訊いてみるしかない。

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