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『3話 アイテム店ノームさんと出会う』

『3話 アイテム店ノームさんと出会う』


 あまりの迫力に負けた俺は大人なのにかっこ悪いが尻もち状態に。

 その俺に気づいた賢者が近くに来て、


「大丈夫? もうオーガは倒しましたから」

「あ、ありがとうございます。俺ならケガはありません」


 俺は賢者の女性にお礼をひとつ言って、立ち上がるのを手伝ってもらった。

 もの凄い強いが、可愛さも一級だ。

 日本でこの顔とスタイルなら芸能人レベル確定でしょう。

 テレビに出演もあり得る。

 立ち上がる際に胸がチラリと見えてしまうとつい胸に目が行ってしまった。

 圧倒的な強さ以上に胸のボリュームに圧倒される。

 お尻はダンサーのようであり、半分以上見えている服装だった。

 こんな服装で女性が歩くなんて日本では考えられないな。


「あなた冒険者?」


 賢者の女性は俺を冒険者かと?


「いいえ、冒険者ではないです。凄いです、俺は感激しました!」


 あまりの強さに本当に感激した。

 

「冒険者になるなら魔物と戦い経験を積むこと」

「魔物ですか……怖い」


 足がガクガクと震えているのは怖かったからだろう。

 地に足が着いていない感じ。


「怖がってたら生きていけない」

「ありがと…………?!」


 ありがとう、と返事をした時に頭も一緒に下げた。

 足が震えていたのもあって前のめりになってしまった。

 そして賢者さんの方に体が倒れてしまったのだった。


「!!!!!!」

「あなた、どこに顔を埋めている?!」


 俺は倒れてしまい賢者さんの胸に顔を埋めていた。

 とても柔らかな胸だな。

 いや、そんな余裕などない!

 早く顔を起こさないと!


「ご、ごめんなさいです!」

「気をつけて」


 賢者さんは冷静な感じで言ったが、少し顔を赤くしていたのが印象的だった。



 賢者さんは怒らずに去っていった。

 殺されなくて良かったと思った。

 周りの人達は賢者さんに盛大な拍手を贈っていた。

 凄いなと、俺にもあんな声援をもらえるようになれるかな。

 この世界で生きていくのは大変だな。

 どうやって生きていくか考えないとマズい。

 オーガの災難は片付くと町は再び笑顔が戻ったようだ。

 俺は自分のスキルを試したくなった。

 スキル名はホットメルトだ。

 いったいどんなスキルなのか……。

 もしかしたら、とてつもなく強いスキルだったりして。

 単に俺が弱いと思っているだけで、まだ試してもいなかった。

 この際だから、あの賢者レベルのスキルであって欲しいと願った。

 せめて食べていけるレベルの冒険者にふさわしいスキルであってくれ。

 普段は神に願いをすることはなかったが、この時ばかりは神に願いをした。

 スキルを詠唱すればいいのだろうと思って詠唱してみることに。


「ホットメルト!!」


 こんな風かな?

 なんだこれは?

 詠唱した後に俺の手から突然に小さな白い塊がこぼれ落ちた。

 その白い欠片を拾ってみた俺は欠片を知っていた。

 それはあまりにも俺の知っている物。


「…………職場で製本時に使うノリのホットメルト……。まさにホットメルトそのものだった……」


 ホットメルトは通常は固まっている。

 常温では溶けないためだ。

 製本機を高温状態にすること、約150〜170度くらいに設定。

 そうするとホットメルトは溶けて固体の欠片から白い液体のノリに変わる。

 この白い液体の状態で紙の背に付けると、紙の束はノリがついてバラバラにならない。

 温度が冷めると再び固まる性質だ。

 つまりは本として形作られるわけだ。

 そのノリであるホットメルトがそのままの白い固まった小さな塊で手から飛び出した。

 どうします?

 これが俺のスキルなのかよ?

 どうして使う?

 何に使う?

 ノリでモンスターを倒せるか?

 無理だろう。

 この白い欠片を投げつけてもウサギ一匹殺せやしない。

 ウサギは無傷だろう。

 俺の期待した、賢者並みのスキル。

 全く無駄な期待と終わった。

 何にも役に立たないホットメルト。

 はっきりと言えば、残念なスキルと確定した。

 俺はがっくりと肩を落とす。

 異世界とやらに来て、新しい人生が始まるかと思いきや、いきなりこの残念なスキル。

 終わったな……。

 もう生きていける自信はなくなった。

 こうなったら万引きでもして暮らすしかないよね。

 生活保護の制度なんてないだろうし。

 途方に暮れるよね。

 どうしてるかな職場のみんなは?

 俺のことを心配しているかな。

 日本に帰りたいよな。

 来て一日で嫌になったよ。

 俺は全てをあきらめて白い欠片、ホットメルトを投げつけた。

 ホットメルトは回転しながら地面に転がる。

 その転がった先には一人の男性の足があった。

 ホットメルトを拾うと不思議そうに見ている。

 危ねえとこだった。

 男性に当たっていたら因縁をつけてして、ぶん殴ってきたかもな。

 当たらなくて良かったよ。

 俺はホッとした。

 しかし男性はホットメルトをジッと観察していた。

 まさか気に入らなかったのか俺が。

 ヤバイよねここに居ると。

 知らない振りして逃げましょう。

 くるっと反対方向に体を向けて逃げようした。

 しかし男性はそこで俺に近づいてきた。

 ヤバイよね!

 マジでケンカ売られる感じでしょ!

 走って逃げます!

 小走りにして逃げると男性は全力で俺を追ってきた。

 捕まったらアウト。

 あの男は速かった。

 すんなりと俺は作業着を掴まれてしまった。

 ここは素直に謝ろう。

 人間は素直に謝れば、許してくれる生き物だろう。

 決してケンカは売らないぞ!


「す、す、すみませんでした!」


 俺は頭を下げて謝罪する。


「…………」


 男性は俺をジッと見たまま何も話さない。

 何か話してください。

 余計に怖いからさ!

 

「許してください!」


 許してください!


「許す? 何も怒っていないが……」

「えっ……、それじゃ俺が投げつけたのを怒ったわけじゃないの?」


 それじゃなに?


「怒るどころかキミに訊きたいから追いかけたのさ。この白い欠片が何なのかを教えて欲しい。ちなみに俺の名前はノームだ」


 名前はノームというらしい。

 なんだよ、怒ってたわけじゃないのかよ!

 それならそうと先に言えっての!

 こっちはマジで怖かったんだぞ!

 でも殴られないのがわかってよかった。

 それとホットメルトが気になるようだが、簡単に説明してあげよう。


「ノームさんですね。俺はマツシマです。その白い欠片は俺のスキルで、ホットメルトと言います」

「ホットメルト? 聞いたことのない名だ。自分は素材に詳しいが知らない名だ。職業がアイテム店だからな。どこで手に入れたのだい?」

「簡単です。俺の手から出しました。俺のスキルがホットメルトなんです」


 こんな説明で納得してくれるかな……。

 バカにするなと怒るかだ。


「手から! 不思議なスキルだ。何に使うスキルだろう。自分にはさっぱりわからないが……」

「説明しても信じてもらえるかどうか……」


 ノームさんが信じてくれるかだが。


「ワケありのようだな。問題ない、話してくれよ。キミに興味があるので」

「それなら話します。俺は今日この世界に来たのです。来た途端にいきなりオーガが現れたので驚きました。俺は日本という国にいました。しかしある印刷された紙、魔方陣のような絵があったのを見たら、ここに転生してしまったのです。日本で使っていたのがホットメルトです。ホットメルトは固体ですが熱すると溶けて液体のノリとなります。冷えてくると固まる性質。本を作るのに使えますね」

「ほお〜〜、ホットメルトとはノリなのか。ノリはこの世界にもあるが、特殊なノリなのかもだ。それに日本という国から我が国に異世界転生してきたと。もう少し知りたいので店に来てくれないか」 

「ええ、行きます」


 俺はノームさんについてアイテム店に案内される。

 とりあえず誰も知らないし、悪い人ではなさそうだから、ついて行くのもいいだろうな。

 他に行くところもないし、お世話になりましょう。


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