『21話 ファイアレベル10』
『21話 ファイアレベル10』
魔導書を買いに来ただけなのに、面倒な事態にみまわれる。
突然に現れた賢者ジェニア。
この世界では賢者は最高の地位にある。
その賢者が俺の前に立ちふさがるようにしていて、店内は緊張感に包まれる。
俺を疑っていて大変に困った状況に。
一歩間違えば死罪となる瀬戸際へとなり、大ピンチです。
まずはこの場での自作するのは認めてもらえたから、ホッとした俺です。
「店主さん、そういう話なので、この場をマツシマが使いますが、よろしいですか?」
ジェニアが店主の許可を求めた。
「も、も、も、もちろん賢者ジェニアさんの命令なら従います。どうぞこの店内をご自由に使いくださいませ」
店主は賢者ジェニアにはとても頭が低いが俺とは大違いだな。
店主はまるで王様に会ってるかのように、オドオドしている。
そうなると必要なのはホットメルトを使うために、ホットメルトを溶かして液体状にする際に使う皿が欲しい。
皿がないとホットメルトを溶かしずらいし、製本作業が難しいからです。
これを説明するのは話が長くなりそうですから、店主に皿が欲しいとだけ伝えよう。
「店主、皿のような物が必要なのですが、お借りしてもいいですかね。魔導書を自作するのにどうしても必要なのです」
「お皿を用意しろと! 自分で用意したらどうだ」
賢者ジェニアとは真逆の対応であった。
「店主さん、お皿をお願い」
「はい!!!!」
賢者ジェニアがお皿を要求すると、店主は奥から皿を持ってきた。
店主の態度にはムカっときたが、そこはスルーしよう。
サイズは問題ないので、作る作業に取りかかれる準備は整えばいいわけだ。
賢者ジェニアと店主は、俺がいったい何をするのかを不思議そうに見学する。
「マツシマは錬金術士か?」
「いいえ、製本士です」
「セイホンシ?」
「あまり気にしなくていいです」
「私は鑑定魔法が使える。マツシマのステータスは見たところ、ファイアレベル5となっていた。これは自作の魔導書の成果か?」
「そうです。信じてもらえるには自分のステータスで結果をみせましょう。ファイアレベルを5以上にしたら信じてもらえますね」
「作ってみろ」
ジェニアは無表情なまま言った。
「よし、マツシマ、貴族を相手にしたのを後悔させてやるんだ。向こうがその気なら作ってやるがいい。疑いを晴らしてやれ。魔導書レベル10を作り、逆に賢者ジェニアを刑罰にしてやれ!!!!!!!」
「誰かエテルナに刑罰してくれ!!!!!!!!!!」
さらに疑ってますから、話をせずに作業に入ります。
確かにエテルナの言った通り、どうせ作るならレベル10まで作ってやるのも有りだ。
レベル10が完成し成功したら賢者とて何も文句は言えないとなる。
「ホットメルト!!」
借りた皿に手からホットメルトをコロコロと放出した。
数はいつも使うくらいであるのは、ある程度ホットメルトがないと背に付けるのが難しいからである。
ホットメルトが皿に出た途端に賢者ジェニアはびっくりしていた。
「なんだそれは?」
「ホットメルトて言います。俺のスキルです。これは製本時に使う製本用のノリでして、ノリで接着して魔導書を作ります」
有名である賢者でも、さすがにホットメルトには驚いたみたいです。
初めて見る物体でしょう。
目が点になってますから。
「ホットメルト……、作ってみろ」
賢者ジェニアは上から目線で来るが、やや不安な目だ。
言われた通りに作業を開始。
店主は不思議な目で眺めていた。
「はい、開始します。ファイア!」
ファイアを弱めで使う。
ホットメルトを使う温度である170度にしておく。
ホットメルトは固体から液体状に変わるのを待つ。
溶けるのを待つ間に買ったばかりの魔導書を分解に。
基本術式コードと強化術式コードへと分ける作業は何をしてるのかと思われるだろうが、そのまま進める。
魔導書レベルを5以上にすると約束したからには5以上にする。
準備段階としてファイアの魔導書を分解した。
基本術式コード+強術式化コードの魔導書に、9冊の強化術式コードを接着したらレベル10のファイアへと変わる。
そこで9冊分を溶けたホットメルトで接着を開始した。
ホットメルトはすでに170度に達していたから問題はない。
本の背の部分にまんべんなくノリを付着させて9冊分を繰り返し接着した。
9冊もあるとかなり分厚くはなるが、やる作業は同じなため慌てずに作業した。
基本術式コード+強化術式コード+強化術式コード+強化術式コード+強化術式コード+強化術式コード+強化術式コード+強化術式コード+強化術式コード+強化術式コード+強化術式コード
時間はかかったが無事に作業を終えて魔導書を作成。
念のため中身を確認してみる。
○○○○○○○○○○○○○
炎の強さを強くします
炎の強さを強くします
炎の強さを強くします
炎の強さを強くします
炎の強さを強くします
炎の強さを強くします
炎の強さを強くします
炎の強さを強くします
炎の強さを強くします
炎の強さを強くします
○○○○○○○○○○○○○
○○○○○○○○○○○○○
ファイア魔導書レベル10です
○○○○○○○○○○○○○
間違いなく完成していますね。
時間はかかったが、達成感は一番あった。
自作したばかりの魔導書を手にして賢者ジェニアに渡してみる。
「作りました。ファイアレベル10の魔導書です。ご確認をどうぞ!」
「……何をしたのか全く理解できないが。これが魔導書レベル10だと。単に魔導書をたくさん合わせただけの本だ。これのどこがファイアレベル10だと……ま、ま、ま、ままさかレベルが10に!」
賢者ジェニアは魔導書の表題を確認したようです。
魔導書が作れるわけだから、読むのも出来るわけで、内容を理解したようです。
「認めてくれますね賢者ジェニアさん」
「……魔導書の表題と本文を見るとレベル10になっている。しかしまだ信じられない。何かしらの細工をした可能性も否定できない。この白いノリが特に怪しい。実際にマツシマの体で示しなさい。さもなくば偽物と断定する」
「賢者の体で試してもよいわ、貴族の体は賢者よりも価値があるからだ!!!!!!!!!」
「価値ない!!!!!!!!!」
「早く示せ」
「俺の体で試せばいいのですね」
細工ってまだ信じないとは、かなり疑り深い性格のようだこの賢者さんは。
賢者ジェニアがやれと言ってるのだから、やるしかない。
自分のステータスがマックス値のレベル10になるのは損ではないから良いとしよう。
もともとは売店で販売するようの魔導書だったが、ここは変更してしまったのは、あきらめる。
賢者ジェニアは俺をジッと見ていて、きっと何かしらの細工をしているのであろうと、見逃さないためだ。
自作の魔導書を読み込む。
ファイアレベル10の魔導書は俺の手からスッと消えていった。
あとはステータスを確認すればオッケーとなる。
自分のステータス画面を現して確認してみたところ、
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
魔法
ファイアレベル10
ヒールアップレベル2
○○○○○○○○○○○○○○○○○○
問題ありません。
ちゃんと覚えておりますから、賢者さんにステータスを確認してもらえたら、この問題は解決となる。
面倒なのはあったが、とにかく俺の罰則をする疑いの偽物疑惑は無事に晴れそうです。
賢者って何人くらい居るのかな。
世界中に賢者が居るのか、それともジェニアしか居ないのかは気になった。
更に大賢者とか居るらしいので、そこはもはや偉大さな人で俺が会うような人ではないのでしょうね。
賢者ジェニアですらこの態度ですから、こちらから会いたくありませんです。




