『189話 リスグラさんの正体』
『189話 リスグラさんの正体』
スカーレットさんは王都に住んでいるし、ギルドに登録済みなのと思われる。
残っている俺たちの顔を初めてみたわけで、名前を教えて欲しいと。
「リスグラ。スカーレットの友達で冒険者をしている。登録はサートル国でしてある」
「ええっと、リスグラさんと…………リスグラら、ひ、ひ、姫! リスグラ姫ですよね、本物の姫ですよね!!」
姫!!
何を言ってるのだろうかこの受付けは。
リスグラさんが姫のわけない。
どこぞの国の姫なんて話を聞いた覚えは一度もなく、聞き間違いかな。
「いかにも姫だが。しばらくぶりに国に帰った。登録はしないとダメか」
「いえ、いえ、とんでもございません。リスグラ姫ならば登録など要りません」
「そしたらこの子はプリモだ。よろしく」
「はい、プリモさんですね」
プリモさんもすんなり認められたが、問題はリスグラさんが姫ってことだ。
なぜ今まで黙っていたのか?
「ちょっとリスグラさん。どういうことなの?」
「実はわた〜しはナーリア国で生まれた姫なんだ。訳あってエテルナのいるサートル国で冒険者をしてた。黙っていたのは説明するのが面倒くさいのが理由だ」
「面倒くさいで済むか!」
「めちゃめちゃ重要な話ですにゃ〜」
「ザラスだって姫なのを黙っておったろ」
確かにザラスさんも最初は知らなかったが、リスグラさんまで姫だとは。
「てことは……二人も姫がいるとなる」
簡単に受付けの審査が通ったのは、さすがに国の姫ならではだろう。
「おい、見ろよ、リスグラ姫だぜ!」
「マジかよ!」
ギルドにいた冒険者が耳に届いたらしく噂をする。
リスグラさんが姫なのは知られているらしい。
しかし俺と一緒に冒険しているので、誰も気付かなかったようだ。
「名前はジェニア。賢者をしている」
ジェニアさんらしく無駄がない簡潔な言い方。
受付けの反応はどうなのか。
リスグラさんを知っているなら、賢者の名前も知ってるかだ。
「えっと賢者をしている。それは大変にめずら…………賢者ジェニアですか!!!!」
受付けは驚いて大声で言ったら、ギルド内にいた冒険者は反応した。
「なんだって!!!!」
「ジェニア!」
いっせいにジェニアさんの方へと顔を向けた。
なんかみんな見てますが……。
「賢者だ。登録するのか?」
「い、い、い、いいえ、賢者様なら登録しなくて結構です、あははは、リスグラ姫はいるし、賢者様もいるし、凄い豪華メンバーですね」
「ありがとう」
受付けはリスグラさんの次にジェニアさんで、面を食らったようだった。
長いこと受付けしてても、中々このメンバーに会うのは少ないだろう。
「エテルナで、ジャンダル家の娘です。サートル国では冒険者してます」
「ジャンダル家まで居るの!」
「ナーリア国でも有名みたいだわ!」
「自慢するな!」
「そりゃジャンダル家なら知ってます」
受付けはエテルナの家の名前を知ってますと。
「私はザラス。猫人アリアイン国の姫だにゃ〜」
「アリアイン国の姫!」
「よろしくお願いしますにゃ〜」
ザラスさんが姫だと言うと、周りもざわついた。
リスグラさん並みの驚きのようだった。
「それとあなたは?」
「俺はマツシマ。サートル国王都で魔導書店の店主してます。冒険者ランクはCです」
「Cですね」
俺は何も言われなかった。
スルーされたのは、前のリスグラさんおジェニアさんやザラスさんのキャラが強烈だったから。
「これだけのメンバーでいったい何をする気ですか?」
「それはお話します……実は私の友達が呪いにかかり苦しんでいる。呪いを特別な方法を探したら、アンデッドドラゴンにたどり着いたの。そこでアンデッドドラゴンについてギルドに教えてもらいに来たの」
「アンデッドドラゴンを! あれは危険種に指定されていて、クエストは禁止魔物です。ましてリスグラ姫に行かせるわけには行きません。私は冒険者ギルドを解雇されます!」
受付けは魔物の名前を聞いたとたんに、慌てて行かせないと言い出した。
そりゃ姫を危険な目に合わせたら避難されるだろうな。
「わた〜しが解雇させないと約束する」
「約束……困りました」
「リスグラが言ってるのだからあなたに責任はない」
「スカーレットさんまで……わかりました。アンデッドドラゴンの情報をこっそり教えます。しかしリスグラ姫を守るようにお願いします」
「俺が誓います。生きて帰ります」
「ランクCのマツシマさんには無理でしょう。アンデッドドラゴンは、極めて危険な魔物ですから即死します」
「えっと……俺は即死」
どうやら俺は即死候補らしい。
まぁ現在のランクは俺の能力を表しているわけじゃないから気にしない。
「あははは、即死だってにゃ〜」
「即死言うな!」
「王都から南部に位置する森があります。森はアンデッド系の魔物が多く住み、冒険者には危険ですから、クエストも行きたがらない。オススメはしない地域です。ドラゴンは森の奥、ダンジョンに住むと言われております。ただダンジョンも誰も行きませんから、現在の情報があっているかは確証はありません。自己責任となります」
「詳しい説明ありがとう」
リスグラさんがお礼を言った。
姫だと知ってか、とても失礼のない態度に思える。
受付けの話でも南部の方だと言ったから、最初に聞いた話と同じだ。
南部に行けばドラゴンがいるのだろう。
冒険者ギルドから去り、王都から出発するとした。
「ところでリスグラさんは城に行くと国王と女王がいるでしょ。会わなくていいのかしら?」
「父と母は元気だろうから、会わなくていいんだ」
「リスグラは姫だから、マツシマが結婚すればナーリア国の国王になる」
「ぶっ!!!」
国王!
俺が国王だと!
考えられないだろう。
でも結婚すれば国王になるのは当たっているが、リスグラさんが断るだろう。
「マツシマ、どうした、動揺してるのか。わた〜しと結婚すると国王だ。する?」
「する、とか言わなくていいですよ」
「あははは、マツシマの顔が赤いにゃ〜」
結婚とか言われたら赤くもなるさ。
ましてリスグラさんみたいな美人な女性に言われたのだから。
「国王と姫、お似合いだ!」
「ちょっとプリモ、押すな!」
「ああっ!」
プリモさんがリスグラさんを押して、俺と無理矢理にくっつけようとした。
リスグラさんが倒れてきて俺も不意だったから倒れてしまう。
ええっ!
リスグラさんが俺の上に!
「マツシマ………結婚するか」
「リスグラさん、みんな見てますから!」
ギルドの前で俺とリスグラさんが抱き合って寝ているのを、通行人が歩きながら見ていた。
まさかこの国の姫と抱き合っているとは夢にも思わないだろうな。
「冗談はいい。早く出発する」
「あははは、ジェニアさん、怒らないでね」
「道の真ん中で抱き合っている国王などいますか!」
「エテルナ、俺は悪くない!」
ジェニアさんが、ふざけているのに我慢を切らしていたらしい。
出発となった。




