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『184話 ドラゴンのうろこ』

『184話 ドラゴンのうろこ』


「じゃあプレミアさん、待ってて!」

「マツシマ、気をつけて!」


 プレミアさんに手を振ると彼女も手を振り返した。

 何とかアンデッドドラゴンから素材を取りたいのだが、難題なのが確定していた。


 プレミアさんの家で長いこと話を終えると、家を出て王都にある魔導書店へと向かった。

 目的はドラゴンのうろこ魔導書とヒールグラン魔導書の二つ。

 置いてあれば購入しておきたい魔導書だ。

 ただしドラゴンのうろこ魔導書は極めて数は少ない量しか流通していないレア魔導書らしい。

 あっても数が少ない可能性もあり得る。

 エテルナは不安な顔になっていて、ザラスさんも同じだった。

 あまり喋らないことろからわかる。

 緊張しているのだろう。

 リスグラさんとジェニアさんは平穏そうだ。

 戦いの経験値が違うだろうし、ドラゴンとも戦ってきているのかもだ。

 余裕はないが、絶望はしていなそう。

 ブィブロさんとライラックさんに至っては、引退後の戦いになる。

 直ぐに戦いの感が戻るものなのかな。

 プロスポーツ選手だって少し休んだら感が鈍ると言う。

 大丈夫なのかな。





 魔導書店は近くにあった。

 店構えは立派な魔導書店だ。

 俺のマツシマ魔導書店よりも大きくて、品数も豊富そうだ。

 この店ならあるだろうな。

 スカーレットさんが最初に入店。


「スカーレットさん、どうもです」


 店主が挨拶した。

 顔なじみのようだった。

 顔なじみなら、話も通じやすいだろう。


「店主、ドラゴンのうろこ魔導書は置いてますか」

「えっ、どうしたのですかスカーレットさん、ドラゴンのうろこ魔導書が必要な理由があるのですか、まさかドラゴンと戦うとか」

「はい、ご察しの通りアンデッドドラゴン退治です。どれですかね?」


 店主に魔導書の有無を。

 ストーレートに言うのね。


「ドラゴン退治ですか! それもアンデッドを! 危険ですし、確か冒険者ギルドからは立ち入り禁止区域のはず。スカーレットさん、おやめなさい」


 スカーレットさんの手を取り、中止を求めてきたが、彼女は首を振って、


「いいえ、退治します。お願いします店主、お見せください」

「………」


 店主は黙ってしまったな。

 決して嫌がらせではなく、スカーレットさんのことを思っての黙りだろう。

 困ったが、どうしたらいいのか。


「店主、わた〜しがお願いしてもダメか」

「えっと……もしやリスグラかい!! リスグラまで集めたのなら本気なんだな」


 リスグラさんの顔はわかったようで、少し店主も悩みだした。


「店主、ブィブロからもお願いする」

「えっと……あなたはブィブロさん? それにエルフ族のライラックです? あなた達まで一緒に……わかりました、そこまでメンバーを集めたのなら、どんな理由かはわからないが応援します」

「ありがとう店主」

「しかしうちの魔導書店はあいにくドラゴンのうろこ魔導書は取り置きしてない。誰も買わない魔導書だから、うちは在庫なしなんだ」


 ええっ!

 それじゃ意味ないじゃん!

 今までのやり取りはなんだったんだ!


「どこにあるのか教えて」

「王都にある魔導書では、取り置きしてるのは、一件だろう魔導書店がある。王都の一番外れにあって、地味な古い魔導書店がある。そこに行けば置いてある。そこは誰も買わないレア魔導書をメインに並べてあるお見世なんだ。普通の冒険者はまず足を向けないお店、だが普通の魔導書ではない超レア魔導書が欲しい者には重宝されるお店。行ってみたらいい」


 王都の外れにあるらしい。

 重宝されとは俺の魔導書店にも通じるな。

 面白そうなお店だから、ぜひとも行ってみたい。


「スカーレットさん、ぜひとも行きましょう!」

「わかった。しかしなぜか嬉しそうなのはなぜだか」


 俺が嬉しそうなのを察したよう。


「マツシマは超レア魔導書とかに興味があるからですよ。変わってるんで、あまり気になさらずに」

「わかりました……」

「なんか、俺が変わり者みたいな言い方だな」

「そうでしょ」

「はっきり言うか!」


 教えてもらった魔導書店は直ぐにはわからない場所にあった。

 王都の外れなので、時間もかかり、治安も悪そうな気がした。

 探していた魔導書店の扉を開を、


「どうも……」

「何か用かい?」


 店内はかなり暗かった。

 先の魔導書店が明るく、お客も多く居たのに比べて、お客は誰もいなかった。

 店主は男声で、奥から俺たちを見ている様子。

 暗いな……。

 それに魔導書は並べてあるが、少ないし、ほこりが溜まっていた。

 まるで売れない古本屋みたいな雰囲気だな。

 

「ドラゴンのうろこ魔導書はあるかな?」

「…………ドラゴンのうろこ魔導書だと……なぜ欲しい?」


 店主は薄暗い店内の奥から言った。

 奥から言われても暗くてはっきりとは顔は見えない。

 店内も俺たちの顔までは見えてないかもだ。

 なぜとは?

 理由がないと買えないとか。


「買うのに理由がいるのかい」

「ドラゴンが相手。勝てない相手に売りたくはない」

「このブィブロでも勝てないと?」


 ブィブロさんが名前を出した。

 奥の店内の声が一瞬だけ変わった気がした。

 

「ブィブロ……あのブィブロかい?」


 店内はブィブロさんに確かめるように言った。

 お互いに知ってるのかな。

 

「そうだ、ブィブロだ、フォートラン」

「フォートラン………俺の名を知る者。どうやら本物のブィブロらしいな。店内の奥に来なさい。ドラゴンのうろこ魔導書を見せよう」


 店主はフォートランという名前なのか、急に魔導書をみせてくれるとなった。

 聞いた話しの感じではブィブロさんとフォートランが知り合いみたいに聞こえた。

 

「店主を知ってるの?」

「うん、昔から知ってる」

「ライラックさんもかな」

「ええ、フォートランは私が若い時に知ってた。彼なら信用できるわ」


 ライラックさんも知ってたので、年齢的にも同世代と思える。

 ブィブロさんがいて良かった。

 もしブィブロさんとライラックさんが居なかったら、フォートラン店主は奥に案内してくれなかったかも。

 フォートラン店主はゆっくりと歩いて奥に行き、ブィブロさんを先頭に後ろからついていった。

 奥にドラゴンのうろこ魔導書があるのか。

 普段は隠しているてことだな。

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