『174話 最下層で異変』
『174話 最下層で異変』
「ゴールドラットが私達をここまで来るように仕向けたとは考えにくい。魔物にそこまで知性がないわよ」
エテルナは否定した時だった。
急にダンジョン最下層が揺れだした。
なんだろうか、地震か?
「地震かにゃ〜?」
揺れだしたら、今度は壁が揺れだして、
「壁が動いているわ!」
壁が何もしていないのに、自分で動き出した。
まさか、壁が動くなんて!
「おいおい、どうなってるんだ、壁が!」
冒険者の声だった。
冒険者も壁の移動には怖がる者もいて、中央に集まりだした。
このフロアー全体で壁が移動しているようだな。
「マツシマ、みんな真ん中に集まってる、行こうよ!」
「本当だ。真ん中は壁がない?」
壁が移動したのはフロアーの真ん中に大きなスペースが出来ていたらしい。
冒険者の多くは広場に集まりつつあった。
なぜ壁が?
俺たちは集まったよりも集められた?
「エテルナちゃん。ダンジョンマップ魔法で確認してみて〜〜〜」
「マップだと、やはりフロアー中央付近に壁がなくなり、大きな部屋のように変化しているの。壁が端っこに移動した感じ。なのんために移動したのかしら?」
「……嫌な予感するな〜〜〜」
ランホーさんの顔からは、余裕が消えていて、不安に思える。
珍しいな、ランホーさんが不安なのは……。
嫌な予感は当たっていた?!
中央に集まった冒険者。
広場の一番端っこには部屋があった。
部屋は扉があるのが見える。
「ああっ、わかった! あの扉の向こうに宝箱があるんだ!!」
「扉だ!!」
「みんな宝箱だ!!」
冒険者のひとりが扉と言った。
全員が扉を目指して走り出したから、おしくらまんじゅう状態となった。
人と人で押しつぶしあいになって、それでも最初に扉に到着したのが、扉を開けた。
あそこが宝箱なら、俺ももう完全に間に合わないよな。
「間に合わないな俺は」
「早い者勝ちにゃ〜」
扉に入った冒険者が出てきた。
あれっ……何も持っていないな?
宝箱の財宝はどうした?
「…………」
ドサッ。
冒険者は扉付近で倒れた。
なせ?
俺は自分の目を疑った。
すると別の冒険者も次々と扉の部屋へと。
「うわぁ!!!!!」
なんだ!
部屋からだろうが、大声で叫ぶのが響いた。
何かに襲われでもしたかのような叫び声に思えた。
「ザラス、何かしら、見える?」
「うん、冒険者が部屋から出てきたら、みんな死んでいるにゃ〜」
ザラスさんは視力が大変良いので、はっきりと見えていた。
死んでいる!
「本当かい!」
「本当だ。扉から魔物だ。魔物がいたんだ。出てきて冒険者を殺しているにゃ〜!!」
「嘘だろ!」
俺にもはっきりと見えたのは、扉から魔物が現れたこと。
姿は大型の人型をした魔物だ。
手にはこん棒を持っていて、冒険者を棒で殴ったいた。
「魔物がこん棒で殴ったぞ!」
「あ、あれは……トロール!」
「トロール! トロールは怪力の巨人魔物。しかも何匹も出てくるにゃ〜」
冒険者も対抗して、魔法を放った。
ファイアだろう。
炎がトロールに花垂れたが、こん棒で軽く振り払われた。
皮膚が硬いのか、ファイアの火の効果がなかった。
防御力あるな。
「マツシマ、トロールと戦うしかない。冒険者も戦ってる。逃げ道はないにゃ〜」
「トロールと戦います、ランホーさんは?」
「俺は見学してる。頑張れ〜〜〜」
「のん気だこと」
ランホーさんは置いておいて、おれとエテルナとザラスさんは、トロールに接近した。
近くでみると、より巨大だった。
デカいな!
「助けてくれ!!」
到着したときにはすでに犠牲者が大量に床に伏せていた。
凄いペースで倒れている……。
「先に行くわ!」
エテルナが斬りに行った。
怖くないのか、迷いなく行った。
俺も負けてはいられないので、ファイアを準備しておく。
エテルナとは違う方向のトロールへ向けて放った。
「ファイア!!」
トロールに命中した!
俺のファイアは、周りの冒険者のファイアとは違うレベルだ。
レベル10なので、火力がケタ違いだった。
しかし、ファイアレベル10を持ってしても、トロールの体は無事だった。
マジか!
こいつの皮膚はかなり防御力高い!
「マツシマのファイアでも耐えてる!」
「まいったな、防御力高いよ!」
「あ、危ないにゃ〜!!!!!」
「えっ!」
ザラスさんが俺に叫んだ。
叫んだ声が聞こえたと同時に、俺は頭を殴られた感覚を覚える……。
痛い…………。
殴られたか……………………。
クラっときて、その場に倒れたらしい。
床に顔がついていたから。
「マツシマ!」
「エテルナ……俺はどうした?」
「別のトロールに殴られたわ。しかし頭を軽くこすった程度に。まともに殴られたら死んでたわ」
「軽くで良かった……」
エテルナとザラスさんは俺を避難させて、自分は戦いに行った。
油断したといえば、油断した。
ファイアが効果が及ばなかったのが大きいだろうな。
そこで一瞬だが、注意を怠ったんだ。
少しの間は立てそうにない。
何もできないし、腕も動かない感じ。
トロールから、少し距離を取ってくれたから助かった。
エテルナとザラスさんをここで観戦としよう。
体は動かないのだから。
トロールは更に数が増えた感じした。
扉から出てきたらしい。
まさに、ノンコダンジョンにはめられた。
俺たちと冒険者を最下層まで引き寄せておいて、トロールで皆殺しか。
今考えると、ゴールドラットが多量に出現しまのも不自然だった。
ダンジョンが意思を持っているかはわからないが、途中でゴールドラットの不自然さに気づいていたら、最下層に来ることはなかったはず。
早く目的だけ済ませて地上に戻れたと思う。
完全判断ミスだろうな。
それも致命的な判断ミスで、原因はお宝だ。
金を目の前にぶらさげられて、思考力が停止したのが原因だ。
アホか……。




