『15話 ファイアレベル5の力』
『15話 ファイアレベル5の力』
受付けからは危険性を注意されるも考えを変えることなく決めた。
クエストを受注し王都から出発し目的地付近に到着。
付近には冒険者は見えないので、俺とエテルナだけのよう。
つまりは誰も助けてくれない状況。
助けを呼んでも誰も来ない。
自分達で切り抜けなければならない。
危ないとわかり逃げる必要があると判断できる力が要求される。
間違えば死にます。
周りはかなり木が生い茂っているから魔物の姿は確認できないが、どこから来るか。
不意打ちとか止めてください。
ギルドの女性からのアドバイスだと、一撃で死ぬらしいから。
「マツシマ、私もウインベアーは初めてだから倒せる余裕はない、これだけは言っておく」
「そんなに断言しなくてもいいでしょう。エテルナも死を覚悟してるんだな」
「死んだら………私を殺して貴族の財産を自分の物に横取りしようと考えてるわね!!!!!!!!!!!!!!」
「横取りしません!!!!!!!!!!!」
「ヤバいと感じたら速攻で逃げます」
「逃げる準備してるのはどうかと……」
エテルナは今までと違い今回の相手には危険を感じている様子。
すでに逃げる風な言い回ししてるし、逃げる準備まで出来てる。
エテルナの声は微かに震えて聞こえた。
そこに草が音を立てる。
魔物か。
「マツシマ、発見した。ウインベアーだわ!!」
「マジか、けっこうデカいぞ!」
デカいです。
俺の想像していたクマは、身長は少し大きいくらいだろうと予想していたら、3メートルくらいはありそう。
色は真っ黒な毛で覆われており、口からは鋭い牙がむき出しに。
もう食う気満々って感じです。
エテルナと一緒に戦うのならと思い振り向くと、
「……」
すでに戦意は失っており、後ずさりしていた。
「大丈夫か!!!!!!」
「大丈夫なわけあるか!!!!!!!!」
「エテルナは控えていて!!」
「はい、そうします!!!!!!」
エテルナを避難させたと同時にウインベアーは襲いかかってくる。
噂以上の凶暴な魔物であった。
あの腕に当たったら終わりでしょうから、避難する。
ウインベアーの腕が地面を叩いた。
雑草ごとショベルカー並に持っていった。
確かに一撃で終わりのようです。
戦うというよりは距離を取って、戦わないように専念した。
「マツシマ! 危ない!!」
「……!!」
危ないところだった。
再びウインベアーの豪腕が飛んでくると、大木をなぎ倒した。
このままだと二人とも殺られるのは時間の問題。
ファイアレベル5を打つしかないが、襲いかかるのが速く、打つタイミングが合わない。
ファイアを打つよりも回避するのが先決となった。
その時にエテルナが前に出ていった。
エテルナ……何をしてる?
前に行ったら死ぬでしょ。
なぜ……。
「私がオトリになる。その時にウインベアーにスキができる。そこでファイアを打って!!!!」
「……わかった……」
自分の体を張ってオトリになるとは思いもしなかったが、もうやるしかない。
エテルナは剣でウインベアーと応戦していた。
エテルナの捨て身とも取れる行為。
決死の行為のおかげもあり相手は俺を無視した。
そこでチャンスが生まれる。
ウインベアーの背後に回ると、俺の存在に気づいていないらしく、無防備な背中に的を絞る。
「ファイア!!!!!!!!!」
手から放出された炎。
以前のレベル1とは比較にならない火力で飛んで行った。
ウインベアーの背中に炎が命中し、爆発音とともにウインベアーは丸焦げとなった。
凄え火力です。
一発でクマが丸ごと焼けてます。
エテルナの捨て身の作戦があっての討伐だろう。
しかしエテルナは……?
「エテルナ!!!!!!!」
「私まで燃やす気か!!!!!!!!」
「悪かった…………傷は?」
「ああ……大丈夫だよ私は。少し傷ついたけどね」
オトリになっている間に傷を負ったようだった。
だが、傷は浅く軽傷で済んだから良かった。
あと少しファイアが遅ければ危ないところ。
「ウインベアーを倒せる火力はあった」
「ファイアレベル5は初めて見たけど、さすがの火力だわ。討伐した後は素材も回収しましょう。素材は売れば良いマースになるので」
「そうだね………熱い!!!!!!」
「素材ごと燃やしてどうするの!!!!!!!!!」
「食われるよりいいでしょ!!!!!!!!」
熱さで火傷しますね。
素材を回収しようと不用意にウインベアーを掴んだところ、強烈な熱さで手を火傷しました。
自分の魔法で自分の手を火傷させるとは、ドジな自分に反省する。
素材はウインベアーの牙、ウインベアーの毛皮、ウインベアーの爪を回収しておく。
これらはギルドに持ち帰ると報酬がさらにアップしてくれる。
できるだけ持ち帰る。
報酬は大事ですし、少しでも金は欲しいです。
◇
強力な魔物との一戦を終えて、リラックスした。
ファイアレベル5は強力な魔法だったことが判明した。
過去に戦った低ランクの魔物なら簡単に倒せるレベルだ。
あらためてホットメルトの力が証明された形に、満足度はあった。
王都の冒険者ギルドに帰還した。
店内は話し声が充満しており、俺の顔を見ると声は止まったように消えた。
素材を持ち帰えったのがわかると、店内は騒然となった。
受付けの女性は素材を見て驚いてしまう。
鑑定のスキル持ちらしく差し出した素材を鑑定して、
「鑑定した結果は…………間違いなくウインベアーの爪、牙、毛皮のようです。どうやってウインベアーを討伐したのですか???」
「ファイアです」
嘘ではなく本当です。
「ファイアて言われてもレベル1だったはず。レベル1ではとてもウインベアーは歯が立たないとされてますが……」
「ファイアレベル5です。だから行く前に言ったでしょう。ファイアレベル5ですと」
まだ信じていないようで困りました。
ファイアレベルが5になっているのを、そこまて否定しているとは。
「いやいや、それは嘘です。ファイアレベルアップには最低でも一年かかります。そうなるとレベル5にするには4、5年はかかります。ついこの前までレベル1からアップしたはずありません! そんなのは冒険者でない者でも知ってます。ギルドで仕事している者なら常識ですから」
「でも倒したのは俺のファイアレベル5ですけど」
「……確かに討伐してますね……」
自分で否定しておいて、言葉に詰まる女性ギルド職員さん。
何があっても信じようとしないのであった。
「嘘だろ……こいつマジでウインベアーを討伐してるぜ……。この前は初心者ランクだったよな……」
「どうやってファイアレベルを5にしたんだ!!」
店内にいた冒険者達は俺の活躍ぶりにつぶやいている声が聞こえた。
行く前は完全にバカにしていたのが、今では不思議な風に見ているのは、気持ちいいものです。
「とりあえず報酬をください。クエストは終えてあるのです。それとも私が貴族なのに嘘を言ってると言いたいのかい!!!!!!!!!!!」
「貴族出身でしたか。報酬をお出しします。少しお待ちを……」
周囲の冒険者が騒ぎだして受付けさんまで疑っている中でエテルナがキレた。
その影響からか受付けの女性は真顔になり、失礼しましたと対応。
何があったのか理解できない風な顔してマースを用意してきて、報酬のマースを渡してくれる。
素材も一緒だし、ランクも高いランクだったからか報酬は今までで最高額をもらえた。
これで魔導書も大量に買える。
自作の魔導書からファイアレベル5がとても強い魔法になったのを実感し、更なる魔導書の開発に繋げたいと思ってます。
冒険者ギルドを去る際に、行く時に俺に文句を言ってきた冒険者がいた。
ウインベアーが倒せるわけないとか言ってきた奴らだ。
あの時はムカっときたので、顔は絶対に忘れることはなかった。
文句があるのかと思っていたらエテルナが先に話しかける。
「ねぇ、あなた達さ、クエスト行く時にウインベアーを倒せるかいとか、バカにしてきたよね?」
「いいいいっ!!!!! 言ってませんエテルナさん!!」
「マツシマさんでしたっけ。凄くお強いのですね。知りませんでしたよ、あははははは」
「わかればいいよ」
俺はその連中の肩をポンと叩いて行ったら、連中はびっくりして倒れてしまった。
どうも攻撃されたと勘違いしたらしい。
まさかギルド店内で戦うことはしませんよ。
エテルナと店を出るとパンを買いに行った。
今日は甘いドーナツ風のパンを購入。
しかしエテルナはドーナツを落としそうになった!
「あっ!」
「落ちる!」
俺はとっさにドーナツを拾おうとして手を出した。
ドーナツは落ちる寸前でキャッチ。
ギリギリセーフでした。
良かった。
だが、ドーナツをキャッチした勢いで、エテルナのパンツの中にまで手が行っていた。
あれっ、これはパンツに入ったぞ!
「すみません、お客様、店内でパンツに手を入れたりするのは……」
「ごめんなさい!」
俺は慌ててエテルナのパンツから手を出した。
恥ずかしくてお店を出ると家に帰り、飲み物はエテルナがいれてくれて、飲み物とパンで夜ご飯は満足しました。
「それにしてもウインベアーを討伐するとは思ってなかったの。あのバカにしてきた冒険者と同じかも。途中で逃げるだろうって」
「エテルナも俺を疑っていたのか!!!!!!! これでホットメルトのスキルが使えるとわかった。次の自作の魔導書作りをしたい」
「だいぶこの世界の生活に慣れてきたみたいね。その調子で頑張ってね!」
「ああ、頑張るからよ!」




