『144話 国王と王女に再開』
『144話 国王と王女に再開』
馬車での移動は長かった。
途中でモズさんとクリノさんが交代して進む。
アリアイン国に到着した。
「ようやく到着しました。ここはアリアイン国の王都です。マツシマさん達、ご苦労様にゃだ」
「到着したか。王都はさすがに人がいっぱい」
「人と言うか猫人だけどな」
王都は俺の住む王都と遜色ない都会だった。
町並みは綺麗で馬車が走り出している。
猫人だけでなく、他の獣人族の姿もあった。
人族の姿も、ちらほらと確認できる。
猫人が歩きながら買い物をしている風景は、これから戦いになるとは想像もつかないほどに平和な町だった。
城に向かっている途中、馬車からお店通りを過ぎた。
色々な商店があって賑わっていた。
通りを眺めていたら魔導書の看板を目にした。
猫人国の魔導書店か。
ちょっとのぞいてみたいな。
「魔導書店がある。のぞいてみたいんだ」
「馬車を止めるにゃる」
馬車を止めてもらい魔導書店に入店。
店内は猫人の店主がいた。
さすがに俺のことは知らないだろうな。
魔導書を見物していたら、フレイム(火属性)の魔導書を発見。
一般的な火属性の魔導書はファイアだが、俺の知らない魔導書。
火属性とは俺は相性が良いので即決で購入を決める。
猫人国だからレアな魔導書なのかな。
「フレイム魔導書を購入した。ファイアとは違うのかな?」
「フレイムはファイアよりも強い魔法だ。魔力を消費するから初心者はファイアを覚えていく」
「強いのですね。面白そうだな」
さらに探しているとプリモさんから、
「プリモが発見した。ウインドの上位魔法、ストームがある」
「プリモさん、ちょっと摂って欲しい」
「はい。プリモが教えてあげる。ストームはフレイムと同じ上位だよ。魔力の消費も多い」
プリモさんから渡され説明してくれたのはフレイムと同じく上位の風属性魔導書らしい。
なんだか楽しみがいのある魔導書だから、購入だろう。
「マツシマ、ランドルなんかもあるわよ!」
「ランドル?」
エテルナから教えられた。
またも俺の知らない魔導書であった。
「ランドルは土属性魔導書だわ。上位の魔法で魔力の強さは大きくて、中級ランク冒険者に人気のある魔導書だわ」
「ランドルか……これも購入したいな」
中級ランク冒険者レベルの魔法なのだろう。
新しい魔導書なので購入したい。
ホットメルトにも使える可能性があるし。
「ホットメルトを使うつもり?」
「うん、面白そうな魔導書を作り出せるかもな。それは城に行った後の話だよ。時間を取ったけど、城に向かおう」
魔導書店でフレイム魔導書を購入して城に。
ホットメルトを使うのは楽しみにしておこう。
新たな魔導書も試したいところ。
せっかく遠くの国まで来たので、レアな魔導書を購入も考えておきたい。
「ザラスは覚えているの?」
「覚えてますとも。王都に住んでいたし、よく走ったりしたものだ。城があるのは向こうだにゃ〜」
「城に行きましょう。国王も王女も驚きますにゃだ」
「ザラスにとっては実家てことね!」
実家になる城は歩いては遠いので馬車で。
城の近くに来ると門番がいて止められる。
「許可証を出しなさいにゃ………これはクリノさん、どうぞお通りくださいにゃ」
「ご苦労様にゃる」
「クリノさんだと素通りな感じですか?」
「当然だ。王女の護衛の職務についておるからな。それに姫もいると知ったら門番は腰を抜かすだろうにゃる」
「城につくにゃだ」
城に到着後は兵士に引率されて国王の元に案内される。
城は雄大な広さを構えていた。
恐ろしくデカい。
ここにザラスさんは生まれて住んでいたのかよ。
完全に王宮な感じだぞ!
「ロマーノ国王様、クリノ、モズはただ今帰りましたにゃる」
「戻ってきたか。それで依頼していた魔導書は手に入ったかにゃ」
「アイテム袋は依頼していた以上に素晴らしいです。しかもおみあげ付きですにゃる……」
「おみあげ付きとは……なんのことだ……ん、クリノとモズに、もうひとり猫人がいるが誰かな……にゃ?」
「父さん、母さん、私だよ、ザラスだにゃ〜」
ザラスさんは前に出て言ったら、周りの反応は固まったままに。
兵士も遮ろうとしたが、足が止まっていた。
「……ザラスだと……ザラスなのかにゃ?」
「ザラスだにゃ〜」
「ザラス!」
「母さん!」
「おおおおおお間違いない我が娘のザラスだ。どうして生きていたのだな。嬉しいにゃ」
「人族の国の王都に居る。人族の家に暮らしており、魔導書店で働いている。そこにクリノとモズが依頼に来たの。もうびっくりしたにゃ〜」
「なんと、偶然にも魔導書店に、それでは魔導書店の店主にもお礼を言う、ありがとうにゃ」
ロマーノ国王は俺にお礼を言ってきた。
国王にお礼されても、どうしていいかわかりません。
とりあえず俺も謙虚に挨拶しておこう。
「はい、俺はマツシマと言います。人族王都でマツシマ魔導書店の店主してます。ザラスさんとは一緒に仕事したり、冒険をしてます」
「キミがマツシマかい。娘の仲間でもあるのだにゃ」
「私はエテルナといいます。ザラスとは冒険者仲間でもあります」
「エテルナ、娘をここまで連れてきてくれてお礼を言いますわ。私は母親のエメラル。娘を理由があって国から外に出していたのにゃ」
「聞きました。魔族から狙われているから、国外に逃がしたと」
「逃がすしか方法がなかったのです。魔族は我が国を支配しようと企んでいます。そして再び魔の手が及びつつある情報を知り、猫人達を避難させようと考えてます。そのためにアイテム袋に効果を与えられると噂のマツシマさんの所へクリノとモズを送りました。まさか娘が一緒に居たとは思いませんでしたにゃ」
母親らしく悲しい歴史をはなしてくれた。
「アイテム袋なら沢山お持ちしましたし、容量を何十倍にも収納できる容量に付与しました。お役に立つと思います。それ以上に気になるのが魔族の件。魔族の情報が知りたい。俺とエテルナも協力します」
「魔族は魔物を大量に引き連れて着ます。以前もそうでした。再び攻めてくる日は近いと考えてます。我が国の全ての総力をかけて戦うことになる。マツシマが戦うのなら助かるぞ。魔族との戦いでは我ら猫人だけでは勝てないだろう。いつかは負けてしまい全滅するか、国を捨てて逃げるしかなくなる。残念だが厳しい現実だ。魔族は娘を捕えて、我らを奴隷にしようと考えているらしい。ザラスが捕えられたら魔族には絶対に逆らえない。恐ろしい奴らじゃ。それとマツシマの横に居る者も仲間なのかにゃ?」
俺の横に居るのはリスグラさん、プリモさんだった。
「正式な仲間というわけではないです。しかし今回の魔族の件の話を聞いて賛歌したいとなりました。人族の国ではAランク冒険者に属するリスグラと、その仲間のプリモです」
「紹介されたわた〜しは、リスグラです。ご協力します」
「プリモも協力します」
「な、な、なんと、人族の冒険者リスグラ」
国王はのけぞるようにして驚いた。
あれっ、彼女達をしってるかな?
こんなに遠いし違う国だし、知るはずもないが……。
「知ってるも何も有名な冒険者、人族において最高の冒険者のひとりとしてリスグラ氏の名はアリアイン国にも届いておる。本当にリスグラと仲間のプリモが助っ人ならば大変に嬉しいにゃ」
「私も姫と出会い驚きましたが、同じくらいにリスグラが協力してくれて驚きましたにゃる」
「わた〜しの名がアリアイン国まで届いていたのは光栄です。魔族が敵なら協力します、魔族は人族にとっても天敵。倒さねばならぬ相手ですので」
「おおおおおおリスグラにゃっ」
王室の中にいた兵士にどよめきが。
リスグラさんの名前を聞いての声だった。
そんなに有名なのか。
凄いな。
「だがマツシマも負けずに名前は届いておる。人族の国にマツシマと言う職人がいると。マツシマは賢者ですら作り出せない魔導書を作り、この世に売り出していると。アリアイン国にも届いておるにゃ」
「本当にですか? 嬉しいです!」
へぇ〜、俺の名前もリスグラさんまではいかなくても、近いくらいに有名な名前らしい。
魔導書店の評判が遠い隣国まで届いていたなんて嬉しい。
今日まで頑張ったかいはある。
ホットメルトのスキルを得て異世界に来た。
あれからまだ日は浅いのにも関わらず、ここまで名前が通る存在になれた。
最初は即死してしまうなと思っていた。
何日持つかなと……。
わずかの短期間で異世界で有名になれたのは、エテルナにもザラスさんにも、そして賢者のジェニアさん、ランホーさん、冒険者リスグラさん、プリモさん、アイテム店のノームさん、温泉でのエルフ族のグローリーさん、母親のライラックさん、ゴブリンでの戦いでのリテーナさん、カデナさん、エテルナの母親のリオンさんとカイザーさん、他にもみんなの力で成長したと思える。
俺ひとりの力では絶対になくて。
アリアイン国でも俺は何をするか、何をすべきは、もう決まっている。
魔族を倒す!
必ず倒す!
もうザラスさんが逃げ回らなくていい世界にしていくことだ。
俺が協力することで実現できるなら、体を張って協力したい。
アリアイン国に平和がくる日までは。
「プリモはマツシマが変態としても有名なのも知ってる」
「今それ言う!」




