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『130話 グローリーの宿』

『130話 グローリーの宿』


 馬車での移動を終えて王都が見えた。

 久しぶりに王都に来ると、また懐かしくなる。

 グローリーさんが馬車から町をのぞくと、


「ああ〜王都だわ、ライトムーンと違って人が多い」

「そりゃ王都だからね。国の中心都市にふさわしい」

「エテルナさんの家は王都なの?」

「王都の中心から少し外れた住宅街。マツシマとザラスも一緒に住んでいるのよ」

「一緒に?! 知らなかった……そんな関係だったとは……」


 グローリーさんは俺の顔を見て恥ずかしがる。

 

「そんな関係……違う違うよ、誤解しないでら、俺は住まわせてもらっているだけだから!」

「エテルナの裸を見たりしてるにゃ〜」

「まぁっそれじゃ彼女ってことね」

「いやいや違うんだよ。俺は魔導書のことだけ考えてる。決して変なことは考えてないよ!」


 グローリーさんが俺を怪しんでいるので、苦しい言い訳する。


「マツシマが変態なのか、彼女にしているのかを知るならエテルナの家に行ったらいい。エテルナの家に宿泊したらわかるさ。グローリーはまだ泊まる宿屋もないだろう〜」

「ランホーさん!」

「そうですね、これから宿泊する宿を探すつもり。資金は多少持ってきているし、宿屋はあるでしょ」


 グローリーの家か……。

 王都に来るなら真っ先にしておく必要があるな。

 若い美少女、夜の町を歩くのは危険でしかない。

 襲われでもしたら大変だ。


「これからグローリーの宿を探しに行こう。王都には宿屋なら数多くある。エテルナの家に近い物件でもいいかもね。直ぐ近いし会えるしさ!」

「協力してくれると助かるわ!」





 グローリーも探す気になった。

 王都内にある宿を貸す店に。

 馬車から降りて店に入ると、


「どうぞ、お座りください」


 店主らしきオヤジが対応した。

 俺たちを見てどうな客層なのかを品定めしている風に感じる。


「どうも、一人で暮らせる部屋の物件を貸して欲しい」

「あなたが借りるのかい?」

「いいえ、彼女です。名前はグローリー」

「エルフか?」


 グローリーを見ると少し驚いていたところを見ると、珍しいのかもな。


「エルフ族です。今日から王都に住むと決めました」

「ふ〜ん、エルフね、部屋なら王都にありますよ。こちらが部屋の資料です。そして家賃はこの通りだ。お自分でよく確認してください」


 店主はグローリーに資料を取り出すと前に出した。

 店主の顔から何やら思わしげな物を感じたのが気になる……。

 グローリーは胸いっぱいに資料を拝見する。

 期待に満ちた王都の生活が現実になふのだ。

 しかしグローリーの顔は険しくなった。

 どうした?


「……グローリー……どうしたの……気に入らないの?」

「エテルナも見てみて……」

「……どれどれ、広くて良さそうな部屋よね……ええええええっ家賃が月250000マース!」


 エテルナは資料をしわくちゃにしてしまう。

 よほど驚いたのだった。


「250000マースは高い。高給宿並だにゃ〜」

「王都では最近は宿賃が高騰していてな。これでも安くしてあげてるのだよ。これ以上は安くできない、早く決めないと他の人に貸してしまうから、今すぐサインしな」


 店主はグローリーに契約を求める。

 しかしグローリーだけでなくザラスさんも、高すぎると不満点。


「あの……もう少し安くなりませんか。ちょっと高いかな……」

「そうよ、高いわ!」

「若くて美人なエルフなら色々とお金を稼ぐ方法はあるだろう……へへへへ」

「どう言う意味?!」

「体を王都の男に差し出すのさ。そうすればこの程度の宿賃くらい直ぐに稼げるさ、へへへへ」


 店主はグローリーの体をジロジロと見ている。

 エロい目でみているな。

 なんてエロい不動産屋なんだよ。

 

「マツシマ……グローリーに悪いよ、他の所に移ろうよ……」

「そうだな……」


 エテルナは店主に聞こえない小声で俺に言った。

 もちろん俺も同じ意見。


「あの、ごめんなさい、ちょっと高いので他にあたろうかな……」

「なんだと……せっかくいい部屋を紹介してやってるのに、親切にしてやってるのによ!」


 俺が丁寧に断ると店主は嫌な顔をした。


「宿賃が月250000マースは王都でも高い。普通の部屋ならもう少し安くしなさい」

「はっ! 誰に口をきいてる。これでも安く宿賃をしてやってるのに、安くしろだと。調子にのるなよな冒険者らしいが」


 ジェニアさんが安くしろと……。

 そしたら店主はジェニアさんに乱暴な言い方をした。

 

「調子にのるなとは? お前こそ誰に口をきいてるか」

「誰だろうな? 知らねえな? この程度の宿賃も払えない仲間なんだろう、しょぼい冒険者に違いないから知らねえよ!」

「あっ……ジェニアさん、怒らないでください……部屋を他で探しますから……あははは……」


 エテルナが気をつかってジェニアさんをなだめようとした。


「ジェニア?」


 店主は強気であった。

 だがジェニアさんの名前には反応する。


「そうよ、この女性はあの、賢者ジェニアさんよ。まさか王都に居て知らない?」

「賢者ジェニアまさかでしょ! し、し、し、し知りませんでした!」


 店主は嫌な顔をしていたのに、急に優しい顔に。

 

「賢者だ。どう見ても資料の宿賃は高いだろう。そうだな……月250000を月10000にしろ」

「10000マースそれは無理無理てですわ、いくら賢者ジェニアさんの頼みだろうと無理です!」

「それなら月5000にしろ」

「それじゃ下がっていますが!」

「この宿賃にしないとジェニアに後から恨まれるぜ店主。ジェニアに恨まれた物がどうなるか、考えた方がいいぜ〜〜〜」


 ランホーさんが店主に軽く脅すようにしていった。


「ランホーは黙ってろ。話が変になる」

「はいよ〜〜〜〜」

「…………えっとランホーて言いましたか?まさかランホー……て賢者のはずないよね。賢者が二人も来るわけないもの」

「脳筋で有名なランホーといったら賢者ランホーしか世界にいないだろう」


 ランホーさんは、ちょっとぎこちない顔に。


「ええええええっあのランホーさんまでも、なんで二人も一緒に借りに来たのだ。わかった、わかった、宿賃は月5000マースでいい、それ以上は要らないさ!」

「ありがとう店主さん、それじゃ契約します!」


 グローリーは満足そうに契約書に契約した。

 逆に店主は契約書を受け取ると手はガタガタ震えている。

 今にも落としてしまいそうに。

 怖がっていて、殺されるのではといった風。

 ジェニアさんとランホーさんも一緒に来てもらったのがグローリーに取っては良かった。


「店主……本当に良いのか〜〜〜」

「ど、ど、どうぞ、宿をお好きに使いください!」

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