『130話 グローリーの宿』
『130話 グローリーの宿』
馬車での移動を終えて王都が見えた。
久しぶりに王都に来ると、また懐かしくなる。
グローリーさんが馬車から町をのぞくと、
「ああ〜王都だわ、ライトムーンと違って人が多い」
「そりゃ王都だからね。国の中心都市にふさわしい」
「エテルナさんの家は王都なの?」
「王都の中心から少し外れた住宅街。マツシマとザラスも一緒に住んでいるのよ」
「一緒に?! 知らなかった……そんな関係だったとは……」
グローリーさんは俺の顔を見て恥ずかしがる。
「そんな関係……違う違うよ、誤解しないでら、俺は住まわせてもらっているだけだから!」
「エテルナの裸を見たりしてるにゃ〜」
「まぁっそれじゃ彼女ってことね」
「いやいや違うんだよ。俺は魔導書のことだけ考えてる。決して変なことは考えてないよ!」
グローリーさんが俺を怪しんでいるので、苦しい言い訳する。
「マツシマが変態なのか、彼女にしているのかを知るならエテルナの家に行ったらいい。エテルナの家に宿泊したらわかるさ。グローリーはまだ泊まる宿屋もないだろう〜」
「ランホーさん!」
「そうですね、これから宿泊する宿を探すつもり。資金は多少持ってきているし、宿屋はあるでしょ」
グローリーの家か……。
王都に来るなら真っ先にしておく必要があるな。
若い美少女、夜の町を歩くのは危険でしかない。
襲われでもしたら大変だ。
「これからグローリーの宿を探しに行こう。王都には宿屋なら数多くある。エテルナの家に近い物件でもいいかもね。直ぐ近いし会えるしさ!」
「協力してくれると助かるわ!」
◇
グローリーも探す気になった。
王都内にある宿を貸す店に。
馬車から降りて店に入ると、
「どうぞ、お座りください」
店主らしきオヤジが対応した。
俺たちを見てどうな客層なのかを品定めしている風に感じる。
「どうも、一人で暮らせる部屋の物件を貸して欲しい」
「あなたが借りるのかい?」
「いいえ、彼女です。名前はグローリー」
「エルフか?」
グローリーを見ると少し驚いていたところを見ると、珍しいのかもな。
「エルフ族です。今日から王都に住むと決めました」
「ふ〜ん、エルフね、部屋なら王都にありますよ。こちらが部屋の資料です。そして家賃はこの通りだ。お自分でよく確認してください」
店主はグローリーに資料を取り出すと前に出した。
店主の顔から何やら思わしげな物を感じたのが気になる……。
グローリーは胸いっぱいに資料を拝見する。
期待に満ちた王都の生活が現実になふのだ。
しかしグローリーの顔は険しくなった。
どうした?
「……グローリー……どうしたの……気に入らないの?」
「エテルナも見てみて……」
「……どれどれ、広くて良さそうな部屋よね……ええええええっ家賃が月250000マース!」
エテルナは資料をしわくちゃにしてしまう。
よほど驚いたのだった。
「250000マースは高い。高給宿並だにゃ〜」
「王都では最近は宿賃が高騰していてな。これでも安くしてあげてるのだよ。これ以上は安くできない、早く決めないと他の人に貸してしまうから、今すぐサインしな」
店主はグローリーに契約を求める。
しかしグローリーだけでなくザラスさんも、高すぎると不満点。
「あの……もう少し安くなりませんか。ちょっと高いかな……」
「そうよ、高いわ!」
「若くて美人なエルフなら色々とお金を稼ぐ方法はあるだろう……へへへへ」
「どう言う意味?!」
「体を王都の男に差し出すのさ。そうすればこの程度の宿賃くらい直ぐに稼げるさ、へへへへ」
店主はグローリーの体をジロジロと見ている。
エロい目でみているな。
なんてエロい不動産屋なんだよ。
「マツシマ……グローリーに悪いよ、他の所に移ろうよ……」
「そうだな……」
エテルナは店主に聞こえない小声で俺に言った。
もちろん俺も同じ意見。
「あの、ごめんなさい、ちょっと高いので他にあたろうかな……」
「なんだと……せっかくいい部屋を紹介してやってるのに、親切にしてやってるのによ!」
俺が丁寧に断ると店主は嫌な顔をした。
「宿賃が月250000マースは王都でも高い。普通の部屋ならもう少し安くしなさい」
「はっ! 誰に口をきいてる。これでも安く宿賃をしてやってるのに、安くしろだと。調子にのるなよな冒険者らしいが」
ジェニアさんが安くしろと……。
そしたら店主はジェニアさんに乱暴な言い方をした。
「調子にのるなとは? お前こそ誰に口をきいてるか」
「誰だろうな? 知らねえな? この程度の宿賃も払えない仲間なんだろう、しょぼい冒険者に違いないから知らねえよ!」
「あっ……ジェニアさん、怒らないでください……部屋を他で探しますから……あははは……」
エテルナが気をつかってジェニアさんをなだめようとした。
「ジェニア?」
店主は強気であった。
だがジェニアさんの名前には反応する。
「そうよ、この女性はあの、賢者ジェニアさんよ。まさか王都に居て知らない?」
「賢者ジェニアまさかでしょ! し、し、し、し知りませんでした!」
店主は嫌な顔をしていたのに、急に優しい顔に。
「賢者だ。どう見ても資料の宿賃は高いだろう。そうだな……月250000を月10000にしろ」
「10000マースそれは無理無理てですわ、いくら賢者ジェニアさんの頼みだろうと無理です!」
「それなら月5000にしろ」
「それじゃ下がっていますが!」
「この宿賃にしないとジェニアに後から恨まれるぜ店主。ジェニアに恨まれた物がどうなるか、考えた方がいいぜ〜〜〜」
ランホーさんが店主に軽く脅すようにしていった。
「ランホーは黙ってろ。話が変になる」
「はいよ〜〜〜〜」
「…………えっとランホーて言いましたか?まさかランホー……て賢者のはずないよね。賢者が二人も来るわけないもの」
「脳筋で有名なランホーといったら賢者ランホーしか世界にいないだろう」
ランホーさんは、ちょっとぎこちない顔に。
「ええええええっあのランホーさんまでも、なんで二人も一緒に借りに来たのだ。わかった、わかった、宿賃は月5000マースでいい、それ以上は要らないさ!」
「ありがとう店主さん、それじゃ契約します!」
グローリーは満足そうに契約書に契約した。
逆に店主は契約書を受け取ると手はガタガタ震えている。
今にも落としてしまいそうに。
怖がっていて、殺されるのではといった風。
ジェニアさんとランホーさんも一緒に来てもらったのがグローリーに取っては良かった。
「店主……本当に良いのか〜〜〜」
「ど、ど、どうぞ、宿をお好きに使いください!」




