『129話 グローリーさんを強引に……』
『129話 グローリーさんを強引に……』
やっとのことで依頼された魔導書を製本した。
ライトムーンまでの移動時間、温泉に入ったり、アークデーモン、イベリアと戦いあった時間も含めて、時間はかかった。
時間をかけた上で納得のいく魔導書は作れた自信はある。
妥協はなくて、自信を持って王都に帰れるだけの力作。
「ちょっと待て。新しい魔導書が完成はした。それは認める。全く新しい魔導書だ。しかし課題もある」
「課題……」
「新しい商品にしたいのだろうお店の。そうなった場合は必ずテリン草が必要になる。テリン草は王都周辺にはない薬草」
「そうか……エルフにしか栽培できない」
「エルフからテリン草を王都に送ってもらうかしないと材料がたりない」
「しまったな……俺は魔導書のことばかり考えていて、テリン草が必要になることを忘れた」
「1番肝心よ!」
「テリン草をどうやって確保するかは今後の課題にゃ〜」
ジェニアさんの指摘通りだった。
テリン草の数だけ魔導書も作れるわけで、無くなったら終わりだな。
これは困ったな……。
課題をクリアしないと、新商品には無理になる。
凄く面白い商品になり得るので、このまま製本出来ないとなると、もったいないです。
「マツシマの失態ね、それはそれで魔導書が完成したから、王都に帰れるわね。きったモーネンも待ちわびているはずだわ」
「俺もモーネンさんの笑顔が見たいよ」
「宿屋きら星とは、お別れ」
ジェニアさんはお別れと言って道具を片した。
みんなも帰る準備に取り掛かるが、
「まだまだ! 朝ごはんをまだ食べてないにゃ〜」
「猫人はご飯ばっかり〜〜〜〜」
ザラスさんの要望もあり、宿屋きら星で朝ごはんの食事を取った。
◇
「マツシマさん、お帰りですね、お忘れ物はなく」
「お世話になりましたライラックさん」
女将さんのライラックさんにお礼。
「アークデーモンとイベリアの件は助かりました。町の冒険者ギルドには報告してあります」
「王都のギルドにも伝わるな」
「マツシマさん、町は今のところ平穏です。きっとマツシマを怖がってアークデーモンも逃げたのでしょう。王都のお店、頑張ってください!」
「頑張ります!」
グローリーさんの声援で勇気をもらった。
「そこなんです……グローリーさんは宿屋きら星に働らかなくてはダメなの?」
「えっと……エテルナさん、どう言う意味かな……私は母が女将ですから、宿屋きら星で働くしかないですね」
「グローリーさんが良ければ王都に来て欲しいのよ」
「ええええええっ」
グローリーさんはエテルナの当然の発言に驚く。
俺も驚いた。
何を言ってるのか?
グローリーさんは宿屋きら星の大切な人だろう。
王都に来る理由などないよな?
「私は考えてたの……マツシマの製本する魔導書にはテリン草が必要になるの。それもいっぱい必要になる。商品になって売れたら沢山欲しいの。でもテリン草はエルフ族しか栽培できないのよね。そこでグローリーさんが王都に住んで、王都の近くの畑で農家になるの。そしたらテリン草は使えるでしょ!」
「ええええええっ私が王都に住んで栽培!」
「エテルナっ、キミはとんでもない事を言ってるぞ!」
「でも……エテルナの考えは理論的だ。エルフ族を王都に住まわせて農家になる。テリン草の確保は十分に可能になる」
「ほらっ、ジェニアさんも賛成してくれてる!」
「しかしだな、母親のライラックさんが怒るにゃ〜」
「私は…………いきなり言われても無理……かな」
グローリーさんは下を向いて黙ってしまった。
さすがにエテルナの無理やり過ぎだろう。
誰だって直ぐに、はい行きます! なんて答えられない。
グローリーさんに謝ろう。
「ごめんなさいグローリーさん。エテルナが馬鹿なことを言ってしまい……」
「いいのよ、気にしてないし……」
「馬鹿とは何よ貴族に対して馬鹿とは」
「馬鹿だから馬鹿って言ったんだ!」
「あら、良いじゃない。王都に住むのも良いわよグローリー」
「ええっ……お母さん……いいの?」
「グローリーはグローリーの好きなことをしなさい。宿屋きら星を継ぐのもいいし、好きなことをするのもいい。あなたは王都に行ってみたいと言ってたでしょ。田舎町よりも都会の王都に興味があるとね。マツシマさん達と一緒に行ってみたら。一度王都に住んでみて、またライトムーンに帰ってくるのも良いことよ」
「そうね……私は……王都に行って見たかったの、農業は今も畑でしてるから問題ない。テリン草もね!」
なんとグローリーさんはエテルナのむちゃぶりを受け入れてしまった!
俺的には大歓迎ではあります。
テリン草はいつでも入手出来るし、グローリーさんにも会えるし。
「グローリーさん、王都に来なよ俺も協力するからさ!」
「そうよ、お願いよ」
「みんな助かるにゃ〜」
「行きます! お母さん、行くわ!」
「行って来なさいグローリー!」
俺も考えてなかった展開になった。
グローリーさんが王都まで来て農業をすることと決まった。
テリン草は料理で出された時にグローリーさんが農業して栽培したとか言っていたな。
グローリーさんが王都に来ることでテリン草は確保しつつ、栽培したらジェニアさんに魔導書にしてもらう。
温泉は王都近くの温泉からお湯は頂けばランホーさんの魔導書も作ってもらえる。
2つの魔導書の数が一定数揃えてもらえたら、お店で新商品になれるな。
「ランホーさんの温泉の湯は、王都の近い温泉からお湯をもらえたらいいと思うけど、どう?」
「王都近くにある温泉でも問題ないだろう〜〜〜」
宿屋きら星をグローリーさんと一緒に出る。
「グローリーさん、お元気で!」
「は〜〜〜〜い」
「グローリーさん、王都の男には気をつけて。都会の町には変態もいるからね!」
「大丈夫だ頼りになるマツシマさんが居るし!」
宿屋きら星のエルフ族がお別れの挨拶をした。
グローリーさんが、みんなから好かれていたのがわかる場面。
嫌われていたら、絶対にない。
「あの…………マツシマは変態ですけどにゃ〜」
「余計なこと言うな!」
「ええっ……マツシマさんが変態……とか聞こえたような?」
「聞こえてなくていいです、あははは」
「それじゃ、出発しますわ!」
ザラスさん所有の馬車へ。
王都に帰るまでグローリーさんに、エルフの話を聞いた。
宿屋きら星でずっと働くつもりだったらしいが、王都には住んでみたかった。
エテルナの強引な誘いに乗っかり、王都で生活に。
あれ……住むとこ決まってないよな。
どうするのかな?
王都に行ってから考えるかもな。




