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18話 雨宿り

今回は完全にネタ回です。

読み飛ばしてしまっても本編の内容は理解できると思うので、読むのが辛くなったら飛ばす事をオススメします。

 風舞




「なんか天気悪くね?」



 今朝もウサギ肉のサンドイッチで朝食を済ませた後、軽く食休みをした俺達は荷物をローズのアイテムボックスに全て押し込んで北へ向かって走っていた。

 気分的にはジョギングでも、ステータスのあるこの世界ではオリンピック選手並みの速さで走れるようになっている。

 どうやらステータスが上がることによって瞬発力だけではなく、持久力も上昇するらしい。



「うむ。これは一雨来そうじゃな」



 ローズが西の空を見ながらそう言った。

 昨晩はかなり冷え込むなとは思っていたが、雨の予兆だったのか。

 この世界も太陽は東から昇るし、地球と自転の方向は同じみたいだ。

 まさか天動説が正しい世界ということはあるまい。

 ないよな?



「それじゃあ、どこかで雨宿りしたいけど…出来そうな場所はないわね」

「どうする? このまま走るか?」

「いや、土魔法で軽く小屋を作って少し休憩するとしよう。雨の中走るのは想像以上に消耗するからの」



 そんなわけで足を止めた俺達一行は雨に備えて準備をする事となった。

 確かに雨で視界が悪い中ぬかるんだ道を走るのは結構きつそうだし、魔物がいるこの危険な世界では移動のみで体力を大きく消耗するわけにもいかない。

 ローズの言うことも(もっと)もだろう。



「それではマイ。3人が入れるような小屋を作ってくれんか? あまり複雑な造りでなくても良い。床を周りより少し高くして屋根を作ってくれれば十分じゃ」

「任せてちょうだい!3LDK庭付きの立派なお家を造ってみせるわ!」



 ローズの話を無視して元気なお返事をする舞ちゃん。

 別に簡素な掘っ建て小屋で十分だって言ってたのに、わざわざ床に木目みたいな模様をつけている。

 まぁ、舞は戦闘でそこまで魔力を使わないから無駄遣いしても問題無いんだろうけど、こだわるとこ(そこ)なのか?



「そう言えば、舞は魔力操作を覚えないのか?」

「私も覚えようと思って体内で魔力を動かしてみたりして練習してるのだけれど、中々覚えられないのよね」

「へー。結構大変そうなんだな」

「何でも無いようにお主は覚えておったが、一度魔力を流し込まれただけで習得するお主が異常なだけじゃからな?」

「そんなもんかね」



 初めて火魔法を使えるようになった時に魔力操作も一緒に覚えたが、普通はもっと時間がかかるものなのか。

 確かに魔力を一度流し込まれただけで魔法が使えるようになるなら、この世界の殆どの人が魔法を使えるようになってしまう気がするし、そう上手くはいかないものなのかもしれない。



「ほら、風舞くんはやっぱりチート野郎ね」

「はいはい。分かったから屋根の方を頼むぞ。そろそろ降り始めそうだ」

「むぅ。最近風舞くんの私の扱いが雑な気がするわ」



 ぶつぶつ良いながらも地面に手をついて直方体の小屋を作っていく舞。

 小屋というよりも土の箱だが、広さもそこそこにあるし雨宿りをするぐらいなら十分な出来だろう。



「お疲れ。舞のお陰で濡れずにすみそうだ」

「うむ。中々に良い出来じゃな」

「そうかしら? 私としては少し地味な気がするのだけれど」



 俺とローズが土の小屋の中に入って軽く壁を叩いたりして確認していると、舞が少し不服そうにしながらも小屋に入ってきた。

 中は壁の一面が丸々くり貫かれているためそこそこに明るい。



「ふぅ。どのくらいで雨が止むかね」

「雲の流れも結構早いし、一時間くらいではないか?」

「うーん。何かするには短いし微妙な時間ね」



 俺達は横並びになって座りながらそんな話をした。

 雨はすでに降ってきているし、小屋の中で時間を潰さなくてはならない。

 剣を振れるほど広くはないし、この中で運動をしたら蒸しそうだから筋トレとかをするのもどうかと思う。

 まだ朝で全然眠くないし、どうしたものか。


 俺がそんな事を思いながらほつれ始めているズボンの裾をいじっていると、アイテムボックスからコップを取り出したローズが水魔法でそこに水を入れながらふと思い出した様に舞に声をかけた。



「そういえばマイよ。昨晩の賭けは結局フウマの勝ちで良いのか? お主は何も答えて無かったじゃろ?」

「ええ。私が考えていた方向は正解からかけ離れていたし、風舞くんの勝ちでいいわ」



 舞が俺の方を見てニマーっと笑いながらそう言った。

 なんか「今回は風舞くんに勝ちを譲ってあげるわ」とでも言いそうな顔をしている。

 なんとなく試合には勝って勝負に負けた気分だ。



「そりゃどうも。その内落ち着いた時にでも頼むから覚悟しといてくれ」

「ふふふ。果たして風舞くんが私のメイド姿に耐えられるか楽しみね!」

「まぁ、マイのあの格好はかなり刺激的じゃからな。もしかするとフウマは耐えられんかもしれん。事実妾も耐えられんかったしの。(笑いが)」



 ローズが最後何と言ったのかは聞き取れなかったが、舞のメイド服はそんなに刺激的なのか。

 刺激的なんてメイドと対極の言葉だろうに、どういうことだよ。

 もしかしてスカートの中から無限に武器が出てきたりするのか?



「へぇ、そいつは楽しみだな」

「ええ! 期待してると良いわ!」



 舞が自分でハードルをぐんぐんとあげながら胸を張ってそう言う。

 舞は自分で高くしたハードルを余裕で飛び越えて無駄にカッコいいポーズで着地するから油断ならないんだよな。

 俺もその日に備えてイメトレをし始めた方が良いかもしれない。



 そんな事を考えながら舞とどうでもいい話をする事しばらく、雨足が弱まってそろそろ雨宿りも終わりそうだなと思ったところで、いつの間にかローズが小屋の隅の方で寝てる事に気がついた。



「ほら、まだわからないかしら? ヒントは水タイプのポ○モンよ!」

「ん? ああ、少し待ってくれ。ローズが寝てる」

「あら、ほんとね」



 そう言った舞が腰を落としてがに股のままローズの方へ寄って行って顔を覗き込んだ。

 マジでそれ何のモノマネだよ。

 全然見当もつかないぞ。

 その左手は尻尾のイメージなのか?

 指がわちゃわちゃ動いてて結構気持ちわるい。



「今朝もアイテムボックスを使って魔力をそこそこに消費して疲れてるだろうし、夜も周囲に警戒してるからあんまり寝れてなかったのかもな」

「そうね。もう少し寝かせておいてあげましょ」

「ああ。ローズは体重が軽いし、荷物もないからおぶって行けば良いだろ」



 俺がそう言ってローズを優しく抱き抱えようとすると、そこにモノマネをやめた舞の待ったがかかった。

 ん? 雨もちょうど止んだし、出発するんじゃないのか?



「フウマくんだけにローズちゃんを運ばせる訳にはいかないわ。私達は仲間なんだから、こういう時も力を合わせましょう!」



 舞が満面の笑みでそう言った。

 別にローズはそこまで重くないし一人でも十分に運べるのだが、こういう時の舞の提案は大抵ブッ飛んでるし、少し面白そうな予感がした俺は取り敢えず舞の意見を聞いてみることにした。




 ◇◆◇




 ローズ




「えっほ。えっほ。えっほっほっほ」

「えっほ。えっほ。えっほっほっほ」



 いつの間にか寝てしまっていた妾は小刻みな振動と謎の掛け声を聞いて目を覚ました。

 セイレール村ではあまり休めんかったから、予定よりも疲労が蓄積してぐっすり眠ってしまったようじゃ。

 フウマとマイには気を使わせてしまったかもしれんの。


 そんな事を思いながら身体を起こすと、妾は今の今まで棺のような箱に入れられて運ばれておった事に気がついた。

 む? これはどういう状況なんじゃ?



「なんじゃこれは? 何故小屋で寝ておったはずの妾がこうして変な運ばれ方をしてるんじゃ?」



 妾が半ば呆れつつそう問いかけると、棺から伸びた棒を両肩にのせて土でできた四角い兜を被っているマイとフウマが走りながら返事をした。



「あらローズちゃん。起きたのね。もう少し寝てても良いのよ?」

「その声は、マイか? どうして妾はお主らに運ばれてるんじゃ? というか、その雑な造りの兜はなんじゃ?」

「ああ。これは誰かに出くわしても俺達の黒髪が目立たない様にするための偽装工作だな」

「いやいやいや。どう考えても今のお主らの格好の方が目立つじゃろ!」



 舞の兜の前面がどうなってるかはわからないが、棺を後ろ側で持っているフウマが被っている兜は目の部分が三角にくり貫かれ、口の部分は丸く掘られている。

 何だか愛嬌のある造りをしているが、このような奇妙な格好をしている方が黒髪よりも珍しいじゃろう。

 そんな事を妾が考えていると、先頭を走る舞が何かに気がついて声をあげた。



「あ、風舞くん。前から人が来るわよ」

「これで二回目か。このペースで人に出くわすなんて珍しいな」

「おい、お主らどうするんじゃ? まさかこのまま真っ直ぐ進むのか?」

「なぁマイ。またさっきと同じことやるのか?」

「ええ。さっきはあれで上手くいったし、今回も同じ作戦で行きましょう」

「はぁ。おいローズ。出来るだけ揺らさないようにするからちゃんと掴まってろよ」



 一度走るのを止めてフウマがそう言うと、マイとフウマが揃って腰を下げた。

 必然的に妾が入っている棺も少しだけ位置が低くなる。

 おい、まさかこのまま走るのではないじゃろうな?



「よし、それじゃあ行くわよフウマくん。準備はいいかしら?」

「ああ。いつでも行けるぞ」

「お、おい。お主ら何をするんじゃ? おい!」

「それじゃあローズちゃん号特急モード開始よ!えっほほ。えっほほ」

「えっほほ。えっほほ」



 妾の必死の問いかけは空しく風にのって置き去りにされ、フウマとマイが謎の掛け声を上げながら全速力で走り始めた。

 前方を走る舞は火魔法と風魔法を交互に使うことで、ぬかるみや水溜まりを一気に乾かして地面を整えながら走っている。



「おい! なんじゃこれは!」

「えっほほ。えっほほ」

「えっほほ。えっほほ」

「その訳がわからん掛け声もなんじゃ! って、このままでは前から来る馬車にぶつかるぞ!」



 妾を乗せた棺の前方で炎と暴風を撒き散らしながら走ってくる妾達を見て馬車が動きを止めている。

 馬車に乗っている者の顔が見えるくらい大分近くなってきたその時、舞が片手を棺の下に入れてカウントダウンを始めた。



「行くわよ! 3、2、1、ゼロ!」



 舞がゼロと言うと同時に風魔法で棺を下から打ち上げながら大きくジャンプをする。

 一方で後ろで棺を持っていたフウマは何とか吹き飛ばされまいと必死で棺から生えている棒を掴んでいた。

 お主も中々に大変そうじゃな。



「爺や! あれは何ですの!」

「す、すみませんお嬢様。爺にもあれが何か分かりかねます」



 異様な被り物をした二人組が棺のような箱を担いで宙を跳んでいるのを見て、馬車に乗っておった二人組が目を見開いて頭上を見上げている。


 すまぬ。

 うちの馬鹿二人が本当にすまぬ。


 妾は棺を担いだ二人が着地してどんどん離れていく馬車に目を向けながら、心の中でフウマとマイの奇行を謝罪した。




 ◇◆◇




 風舞




「で、何か申し開きはあるかの?」



 前方からやって来た馬車を跳び越えて、その馬車がみえなくなるまで走った後でローズに一度止まるよう言われた俺と舞は、街道から少し離れた位置で二人揃って正座していた。

 まぁ、何でこうなっているのかは考えずともわかる。

 隣に座っている舞は頭の上にクエスチョンマークを浮かべているけれども。



「近頃ローズちゃんがお疲れのようだったから、私とフウマくんの二人で寝ているローズちゃんを起こさないようにそっと運んだのよ」

「ごめんなさい。凄く面白そうだったので便乗しました」

「ちょっと風舞くん! 便乗ってどういう事よ! それじゃあ私が何か悪巧みしたみたいじゃない!」

「まったく。どうしてお主らはそこまでアホなんじゃ。それに、これはなんじゃこれは」



 ローズが自分の尻の下に積み上げられている俺と舞の被り物をぺしぺしと叩きながら呆れた顔で俺達に尋ねてきた。

 因みに三角の目のやつが俺のやつで、四角い目のやつが舞の被っていたものである。

 口は片方を開けてもう片方は閉じることで阿吽の息であることを表現したのが舞のこだわりのポイントらしい。

 舞は細かいところにも手を抜かない土魔法の匠なのである。



「それは私と風舞くんの黒髪を隠すための変装道具ね。どうかしら? 我ながらに中々いい出来だと思うのだけど」

「はぁ。そう言う事を言っているのではないんじゃが。のうフウマ。お主には妾の言いたい事が分かるじゃろ?」

「そうなのフウマくん?」

「おふざけが過ぎました。かなり反省してます」

「え、そう言う事なの? ねぇ、風舞くん。私も謝った方がいいかしら?」



 ローズに土下座している俺の横に座っていた舞が小さい声で俺にそう質問してきた。

 ああ、なんとなく今のローズの気持ちが分かった気がする。



「のうフウマ。マイは以前からこうなのか?」

「いやぁ。日本にいた頃の舞は叡智の結晶みたいな凛々しい女の子だったんだけど。ホントどうしちゃったんだろうな?」

「はぁ。しっかりとマイの面倒を見んか。お主の同郷じゃろ?」

「え!? なんで二人とも私の事をそんな可哀想な子を見る目で見てるのかしら? ってその優しげな目は何かしら!? なんで? どうして二人揃って私の頭を撫でるの!?」



 俺はいつの日か舞を真っ当な人間に更生させる事を心に誓いながら舞の頭を優しい顔で撫でた。

 俺と舞はソウルメイトだから舞の失敗は俺の失敗でもあるのである。


 これからも一緒に頑張っていこうな。

 俺は天真爛漫な舞ちゃんの頭を撫でながらそう心の中で呟いた。

4月11日分です。

そろそろ本編が本格的に動き出すのでその前に少し遊ばせていただきました。


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