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8話 ドキッ!?脱ぎたがりばかりのお風呂パニック!ポロリもあるよ?

 風舞




「分かった。髪は洗ってやるから俺は服を着たままで良いだろ? この前ローズの頭を洗ってやった時もそうだったし」



 ローズに担がれながらも体を捻ってなんとか束縛から逃げ出した俺は、脱衣所の床に両手両膝ををついた状態で舞とローズにそう懇願した。

 この前舞が俺の入っている風呂に入ろうとしていた時は黒いビキニを着ていたし、舞も全裸での完全な混浴をしたいという訳ではないはずだ。

 ていうか、舞と素っ裸で風呂とか男子高校生の男子高校生が男子高校生しそうで俺がムリ。



「何を言ってるのかしら風舞くん。それじゃあ私が風舞くんの頭を洗ってあげたり、背中を流したり出来ないじゃないの」



 腕を組みながら顔を真っ赤にしつつそう言う舞。

 俺はそんな舞を見て思わず口を滑らしてしまった。



「痴女め」

「な、なな! ちょっと風舞くん! 今なんて言ったのかしら!?」



 俺の独り言をしっかりとキャッチした舞がぐいぐいと詰め寄ってくる。

 やば、完全に失言だった。


 そんな感じで俺が自分で掘った墓穴に飛び込もうとしているところで、たまたま服を脱ぎ終わって髪を自分の手ですいているローズが視界に入った。

 よし、ここはローズを使わせてもらおう。



「ちょっと待てローズ。手櫛で髪をすいたら綺麗な髪が傷むぞ。俺が念入りに洗った後で髪を乾かしてブラッシングしてやるからさっさと風呂に入るぞ」

「む? まぁ、やってくれると言うなら頼むかの。しかし、今日はやたらサービスが良いの。急にどうしたのじゃ?」

「ああ。日頃ローズにはお世話になってるからそのお礼だ」



 そんな都合の良いことを言いながらローズの両肩をぐいぐい押して、俺はその勢いのままさっさと風呂場へと逃げ込む。


 そこへ風呂場のドア越しにワンテンポ遅れた舞が突っかかってきた。

 ちっ、逃げきれないか。



「ちょっと風舞くん! まだ話は終わってないわよ!」

「分かった分かったから。服を脱ぎながら俺に近寄ってくるな。舞には恥じらいっていうものがないのか!」

「そ、そんなことないわ。今だって凄く恥ずかしいもの」



 両手の人差し指をツンツンと合わせながらもじもじする舞。

 さっきから言動と行動がすれ違いまくってて、舞の思考回路が全く理解できない。

 ああ、ごめんごめん。

 分かった。分かったから下から脱ごうとするな。

 もう黒の大人パンツが半分見えてるから。


 俺は舞の腕を抑えながら下半身を見ないようにしつつ話を続けた。

 おいローズ。

 欠伸をしながら話が長いのう、みたいな顔をするな。

 お前が俺を担いで来なければこうはならなかったんだぞ。



「それじゃあ、別に一緒に入らなくて良いだろ。頼むから勘弁してくれ!」

「嫌よ! ローズちゃんとお風呂に入る度に、風舞の技術はかなりのものじゃったと自慢されるのはもう嫌なの! ローズちゃんばっかりズルいわ!」



 目元にちょっぴり涙を浮かべながらローズの方を指さしてそう言う舞。

 俺は舞の指先にいる風呂場の椅子に腰かけて目を擦っているローズの方を向いた。

 おねむか、もうおねむなのか?

 もう少し俺達の会話に興味を持てよ。



「だって、フウマに髪を洗ってもらったあの日が忘れられないんじゃもん」

「じゃもんてお前…」



 そこまで言った俺はローズを指差しながら腕をブンブンふる舞と、欠伸をしながら俺達の方をぼんやりと眺めるローズを見て、なんだか真面目に対処するのがアホらしくなってきた。

 もういいや。

 早く風呂に入って一息つきたい。



「はぁ、分かった。舞の頭も洗ってやるから、せめて水着を着てきてくれ。馬車に積んだ荷物の中に確か入れてただろ?」

「本当!? 私も風舞くんの超絶テクを味わえるのかしら?」

「そんな大したものじゃないが、それでもいいなら着替えて来てくれ。その間ローズの頭を洗って待ってるから」

「わかったわ! 急いで着替えてくるから待っててちょうだい!」



 舞は満面の笑みでコクコクと頷くと、全力ダッシュで水着を取りに行った。

 はぁ、あの大人っぽくてお淑やかな舞はどこに行ってしまったのだろうか。

 近頃の舞はわりかし天真爛漫なガキンチョに見える事が多い。

 まぁ、あれはあれで微笑ましくはあるんだけど。


 俺がそんな事を考えながら風呂場のドアを閉めてズボンの裾を捲っていると、ローズに上着の端をくいくいと引っ張られた。



「寒くなってきたのじゃ。そろそろ頼む」

「はぁ、お前は普段は常識的なのになんでこうも残念な時があるんだろうな」

「む? なんのことじゃ?」

「はーい。まずは髪を濡らしますねー」

「わっぷ。おい、いきなり何をする!?」

「何って髪洗うんだろ。はい、それじゃあシャンプーですねー」

「おい、もっと優しく洗ってくれ! なんじゃ? 怒っておるのか?」

「別に怒ってませんよー」



 俺はそういいながらローズの顔を泡だらけの手で揉みくちゃにしてやった。

 ふはは。

 少しは俺の心労の一部を味わうがいい。



「フウマ? そこは顔じゃぞ? おい、鼻の穴の中まで洗わんで良いぞ? おい!」

「はーい。流しますよー」

「冷た!? おい、やっぱり怒っとるじゃろ!?」

「ははは。何のことだ?」



 俺がそんな感じでローズの頭で遊んでいると、脱衣所の方から舞の騒がしい声が聞こえてきた。

 あれ? 思ったよりも早かったな。



「ちょっと! 下ろしてちょうだい! まだ私は水着を着てないのよ!」

「あん? お前は何を言ってるんだ? 風呂は全裸で入るもんだぞ?」

「ちょっと待って。流石にフーマくんに裸を見られるのは恥ずかしいわ!」

「まったくうるせぇ奴だな。ほら、うちの風呂を貸してやるんだからあたしの背を流してくれ」



 あれ、なんか聞いたことない女の人の声がする。

 そう思った俺がローズのとんがってる耳に指を突っ込みながらドアの方を見てみると、ドアをバン! と開け放って腰の下まで伸びた真っ赤な髪の女性が、舞を肩に担いで全裸で風呂に入ってきた。

 舞がまだ紐を結べていないビキニを両手で抑えてお尻と胸を隠しながら、赤髪の女性の肩の上でジタバタと暴れている。


 おいおい。

 色んなとこが丸見えなのに、なんでこの赤髪の人はまったく隠そうとしないんだ?

 あの舞だって顔を真っ赤にしながら大事なとこを隠そうと必死になってるんだぞ。



「ん? お前らも見たことない顔だな。ファルゴのダチか?」

「え、ああはい。まぁ、そうです」

「ふーん。まぁいいや。ほら、私の背中を流してくれ」

「いたっ!?」



 舞が赤髪の女性の肩からぱっと落とされて風呂場のタイルの上で尻餅をついた。

 その衝撃で舞の胸元のビキニがずれて、もう色々とその、あれが丸見えになってしまっている。



「ふ、フーマくん? その、あまり見ないでちょうだい。は、恥ずかしいわ」



 舞が顔を真っ赤にしながらしおらしくそう言った。

 あれぇ? さっきまでの威勢はどこに行ったんだよ。

 舞のこういう普段とのギャップは結構ずるいと思う。

 いつぞやの夜に舞が俺の部屋を訪れて来た時も、こんな感じだったし。



「あ、ああ。悪い」



 俺は舞から目を離してローズの頭にリンスを馴染ませ始めた。

 なんだこれ。

 超気まずい。



「おーい。まだかぁ?」

「はっ! それよりもいきなり出てきて、貴女は誰よ!」



 舞がビキニの紐を結びなおしながら赤髪の女性にそう質問した。

 そうだよ。

 そういえばこのいきなり現れた美人さんは誰だ?

 まぁ、何となく予想はついてるけど。



「あん? あたしのうちの風呂を借りといてその言い様はなんだ? ファルゴにあたしの話は聞いてんだろ?」

「聞いてないわよ!」



 舞が水着をしっかりと着終わって立ち上がりながらそう言った。

 いやいや、赤髪の時点でピンとくるだろ。



「貴女がファルゴさんのお嫁さんのセイレール騎士団の団長さんなんですね」

「バカっ! お前ぇお嫁さんだなんてそんなシャバいこと言うなよな!」



 両手で顔を隠しながらいやんいやんと椅子の上でクネクネする団長さん。

 えぇ、そんなんでここまで照れるのか?

 裸を見られても全く動じないのに?



「フーマくん。今のうちに私の髪を洗ってちょうだい! 団長さんが腑抜けている今がチャンスよ!」



 舞が風呂場の隅に積んであった椅子をローズの横に持って来て、俺の顔を見ながらそう言った。



「えぇ、流石に団長さんがいるのに、俺がここにいるわけにはいかないだろ」

「そんな、ここまで私にさせておいてあんまりよ!」

「今度いくらでも洗ってやるから、今日は勘弁してくれ」

「わぶぶぶぶぶ」



 俺はローズの頭に水をぶっかけてリンスを流しながらそう言って、風呂場を後にした。

 舞がこの世の終焉を見たような顔をしていたが、今回は仕方ないだろう。

 風呂場でクネクネしてる人妻がいるわけだし。


 さて、ファルゴさんとジャミーさんになんて文句を言ってやろうか。

 俺はそんな事を考えながら二人のいる部屋へ向かって廊下をずんずん進んだ。

4月1日分です。

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