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27話 VSアセイダル 決着

 風舞




「フウマはん。ミレンはんは無事みたいやよ。今はうちの張った結界の中で回復中やね」

「そうか。ありがとなボタンさん」

「うちは別に何もしてへんよ。それで、あの無限に再生し続ける化け物をどうやって倒すん?」



 アセイダルは俺が最後に見たキモイ悪魔の姿とは打って変わって、もう太い枝が絡み合っているだけの化け物にしか見えない。

 動きも鈍くなっているし知性も感じられないが、さっきから俺と舞を殺そうとする殺意のみが俺の肌をピリピリと刺激する。

 どうやら意識を魔封結晶に焼かれてもその憎しみと怒りだけが身体に残った様だ。



「幸いにも動きは遅いし攻撃も雑だ。それに魔法も一切使ってこない。こうなったら火力だけを重視して一気に…って、マイムとシャーロットはもうやってるか」



 俺がボタンさんの質問に対して答えていたその時、舞とシャーロットはそれぞれでアセイダルに攻撃を始めていた。

 舞が俺から見て左側から最低限の攻撃でアセイダルの中心に向かって突進して行き槍を突き出す。

 って、あれ縮地使ってない?

 ちょいちょい姿が掻き消えてるんですけど。


 一方のシャーロットは舞とは反対側から盾で枝を防ぎつつ華麗な身のこなしで一気にアセイダルに近づき、高くジャンプした後剣を振り下ろした。



「ミレンたんをよくも傷つけてくれたなこのウジ虫がぁぁぁぁ!! メテオスパイク!!」

「消し飛びなさい!! 花穿かせん!!」



 舞とローズの渾身の一撃を受けたアセイダルは沢山の触手のような枝を失いバランスを崩して倒れるが、瞬時に再生を初めて体勢を立て直そうとしている。



「どぉりゃぁぁぁ!!ランペイジングインパクトォォォ!!」



 そこへガンビルドさんが走って行って斧で派手な連撃を繰り出した。

 舞とシャーロットもそれに続いて一気にアセイダルの身体を削っていく。



「よし、俺もさっさと始めるかな」

「フーマはん?」



 魔剣をアイテムボックスにしまった俺を見てボタンさんが少し驚いた顔をしている。

 でもこれ持ってると邪魔なんだよ。


 俺は両手を合わせてその間で少しずつ魔力を望むパターンへと変換しながら魔法を形成していく。

 俺の身体は自分の限界を超える高LVの魔法にはやっぱり耐えられないみたいで、身体のあちこちからミシミシと嫌な音が聞こえ視界の端も赤く染まり始めるが、俺は構わず詠唱を始めた。



「えーと、其は万象の彼方より続きし氷雪。我が求めに応じてその力の片鱗を静寂を以て示せ。…よし、全員離れろ!!」



 ボタンさんが俺が使える訳ないLVの魔法の詠唱をしたからか目を見開いて驚いた顔をしている。

 へぇ、そんな顔もするんだ。

 少し意外。



「な、氷魔法のLV7なんていつの間に覚えたん?」

「いや、覚えてないぞ。これはそうだな、なんていうかカンニングだ」



 俺はそう言って攻撃を続けていた三人がアセイダルから離れるのを確認してから、魔法の照準をあいつの中心に定めて小さな氷の球をアセイダルに向けて放った。



「リードジュデッカ」



 俺の魔法はふよふよと子供でも避けられるんじゃないかという速度でアセイダル目掛けて飛んでいき、アセイダルの枝の一本が俺の氷の魔法を払ったその時、ビキビキと音を立てながらアセイダルが末端から凍り始める。



「きっつ」

「よくやったの。後は妾に任せておけ」

「そうね。むしろここまでフウマくんにやられちゃあ、私の見せ場がなくなってしまうわ」



 魔力切れと無理な魔法の行使の影響によって膝をつきそうになったが、ローズと舞が両脇を持って俺の体支えてくれた。



「あらあらあら、まだ三分も経ってへんよ」

「ふん。フーマの馬鹿げた魔法を感知すれば嫌でも起きるわい」



 ローズとボタンさんがそんな話をして二人で口角を上げている。

 互いに憎まれ口を叩いているのに二人共少し楽しそうだ。



「ありがとう。でも大丈夫だ。ここで一気に決めるぞ!」



 俺はそう言って自分の足でしっかりと立ち、舞とローズに両手を差し出した。

 舞とローズは無言でニッと笑うと二人とも俺の手を握る。

 それを見た俺も笑みを浮かべて3人揃ってアセイダルの真上へ転移した。


 アセイダルは今もビキビキと音を立てながら凍り続けドデカい氷像へと変わっていく。

 それに抗うかの様に暴れ回るアセイダルが空中にいる無防備な俺達を叩き落そうと残った枝を振るってきたが、ボタンさんの方から飛んできた扇子にその枝を粉微塵に刻まれていた。


 ちらっとボタンさん達の方を見ると、ガンビルドさんがサムズアップして俺達を応援し、ボタンさんが扇子を口に当てて尻尾を楽しそうにゆらゆらと揺らしているのが見えた。

 シャーロットは、まぁ言うまでもないだろう。

 予想通り俺を睨んでローズに熱い視線を送っている。


 アセイダルが完全に氷に包まれるのを確認した俺達は、繋いでいた手を離し必殺の一撃の為にそれぞれの武器を構えた。

 ローズは真っ赤な大剣を形成し、舞は槍を空中で腰だめに構える。

 俺も炎の魔剣をアイテムボックスから取り出して攻撃の瞬間に全ての魔力を一瞬で注ぐ準備をした。



「よし、それじゃあ行くぞ!」

「ええ! 跡形もなく消し去ってやるわ!」

「うむ。これで幕引きじゃ」



 俺達は互いの様子を確認してそう言った後、目の前に迫っていたアセイダルに渾身の一撃を放った。



「ソニックスラッシュ!!」

「花穿!!」

「ブラッディリーパー!!」



 グギョグギャガァァァァァァ!!!


 俺達の攻撃で焼き切られ穿たれ切り裂かれたアセイダルは奇妙な叫び声を上げた後、凍ったまま粉々になって黒い霧となって消えた。

 ゴトリと地面に落ちた大きな魔石も時間差で粉々になって空気中に消える。


 全力の一撃を出し切った俺とローズはまだ余力のあった舞に抱えられながら着地し、ボタンさん達の方へ連れてかれた。



「皆はんお疲れ様やなぁ」

「ああ、ありがとう。でも、もう気を失いそうだから先に治してくんない?」

「あらあらあら、フーマはんは我儘やねぇ」



 そう言うとボタンさんは俺を舞から奪い取り、俺をギュッと抱きしめながら回復を始めた。



「よう頑張ったなぁ。今日のフーマはんは凄いかっこよかったんよ」

「あ、あぁぁぁぁ!!! ボタンさん今キスした! キス! フーマくんのおでこにキスしたぁぁ!!」

「頑張った男の子にご褒美を上げるんは、お姉さんの役目やろ?」

「そ、それじゃあ私もするわ! 私の方が誕生日が早いからお姉さんだしぃ!? フーマくんとは同郷だからボタンさんよりもお姉さんだしぃ!?」

「も、もうギブ」



 疲労困憊で死にそうだった俺はボタンさんの大きな胸にトドメを刺された。

 決まり手はボタンさんの胸による窒息だと思う。

 最後に舞が声を裏返しながら騒いでいたが、よく聞き取れなかった。

 まぁ、後で聞けばいいか。


 はぁ、すげぇ疲れた。

 ここ三日間の出来事はかなり濃かった気がする。

 当分はシルビアさんの尻尾でもモフりながらのんびりすごしたい。

 まだ一回も触らせてもらった事ないんだよな。


 そんなとりとめもない事を考えながら俺の意識は暗闇へと沈んでいった。



◇◆



「起きなさい人間」

「ああ、またここですか」



 目を覚ますと本日3回目の何もない白い空間にいた。

 フレンダさんはさっきまでと同じ様に赤い椅子に座って頬杖をつき脚を組んでいる。

 この人にもお世話になったしお礼を言わなきゃな。



「命を救ってもらった上に、ギフトまで開花させてくださってありがとうございました」

「ふん。別に私は貴方の為に力を貸した訳ではありません。それに貴方のギフトはまだ開花していませんし、今回は一部の花弁を無理矢理に開いたので、この後貴方の魂はその代償を支払う事になります」

「代償って何ですか?」

「さぁ、私が知っているはずがありません」

「さいですか」



 2回目にここに来た時にフレンダさんが俺にしてくれた説明はギフトの概要のみで、俺のギフトの効果とかそういった事は何もわからないと言っていた。

 何でも俺の魂とギフトについて他人が詳しく知る事は出来ないし、彼女は知りたくもないらしい。

 ギフトとは自分の本質を見直し引き出す力らしいから、その効果も本人にしかわからないものなのだろう。


 俺のギフトは多分どんな魔法でも習得する前から使えるってものだと思う。

 ローズが散々俺には魔法の才能があるって言ってたし、結構俺に合ってる気がする。

 まぁ、どんな魔法でも使えるって言ってもゴリ押しで無理矢理使ってるだけだから、自分の実力を超える力を使おうとすると身体がミシミシ言うんだけどな。


 そんな感じで自分のギフトについて考えていると、フレンダさんが椅子から立ち上がって俺に話しかけて来た。



「さて、貴方の魂はもう安定しましたし、私はお姉様の元に向かいます」

「あ、そうですか。お世話になりました」

「ふん。貴方は人間にしては中々使い甲斐があるようです。これからもお姉様の奴隷として馬車馬の様に働きなさい。それではフーマ、また会いましょう」



 そう言うとフレンダさんはドレスのスカートを翻し、俺に背を向けて歩き始めた。

 最初は怖い人だと思ってたけど、何だかんだいい人だったな。

 流石はあのローズの妹さんだ。


 俺がそんな感じでフレンダさんの後ろ姿をぼんやり眺めていると、フレンダさんがすっと立ち止まった。

 あれ、どうしたんだ?

 ローズの魂のとこに行くんじゃなかったのか?



「な、なぜここから出られないのですか?」

「あのー、どうかしたんですか?」



 ボソリと何かを呟いたフレンダさんにそう尋ねたら、彼女が俺の元までつかつかと歩いてきて俺の襟元を掴んでガクガク振り始めた。



「まさか、貴方の仕業ですか!」

「俺には何の事かさっぱりわかんないですけど! ローズの精神世界に行くんじゃなかったんですか!?」

「そのつもりでしたがお姉様の魔力を媒介にアクセスしようにも、貴方の魔力が邪魔で内側からだと外に出られません!」

「んな事俺に言われても知りませんよ! それに俺の魔力は今はほとんど無いはずですよ!?」

「それは貴方の身体の中にある魔力の話です! 魂から精製されている魔力を消しなさい!」

「そんなんやり方分かりませんよ!」



 俺がそう言った所でフレンダさんは俺の襟元をパッと離して頭を抱えて悶え始めた。



「そ、そんな。まさか他人の世界に入り込む事がこんなデメリットのある事だったなんて。このままではお姉様の世界に行くどころか、私の身体に戻る事も出来ませんし、かくなる上はこの人間を殺すしか」



 フレンダさんはそう言うと赤い槍を何本も取り出してその全てを俺に向けてきた。

 何本かの槍は空中に浮かんでいて、視界の殆どが槍に埋め尽くされている。



「ちょ、ちょっと待った!!」

「問答無用!」

「俺を殺してもフレンダさんが無事に自分の身体に戻れるとは限んないぞ!」



 俺がそう叫んだらフレンダさんの槍がピタリと止まった。

 俺のおでこにはもう何本か槍が軽く刺さっているが、一命は何とか取り留めた。

 何とかハッタリでこの場を切り抜けなくては。



「どういうことですか?」

「いや、だって俺の魂が消えてフレンダさんの魂がここに残ったら、俺の身体にフレンダさんの魂が憑依するんじゃ無いですか?」

「そうしたらもう一度術を使って自分の身体に戻るだけです」

「そ、それに!」

「まだ何か?」

「多分急に俺が死んだらローズが悲しみますよ? 俺はローズとの付き合いはまだ数日程度ですけど、これでも結構仲良しですからね。なんせ俺はローズと一緒に風呂に入って身体を洗うよう頼まれたくらいです。そんなローズのお気に入りである俺をローズの事が何よりも大事っぽいフレンダさんは殺すんですか?」

「お、お姉様とお風呂。私でももう700年は一緒に入っていないのに、あまつさへお姉様の麗しい柔肌にまで触れるなんて、万死に値します!」



 あ、ダメだこれ。

 何か別の理由で殺されそうだわ。

 フレンダさんのシスコン度合い的にローズが悲しむ事はしないだろうと思ってペラペラ喋ったけど、嫉妬心まで刺激しちゃってんじゃん。


 クソっ!

 せめて最強の鎧でもあればこの槍を防げんのに。

 そう思ったその時、いつの間にか俺は今まで着ていた高校の制服の上にローズに借りていたレッドドラゴンの鎧を着ていた。



「そ、それはお姉様の鎧。どうして貴方がそれを」

「えーっと、多分ローズの愛情です。ローズが俺のピンチを察して俺の事をこうして守ってくれたんじゃないですか?」

「そ、そんな。お姉様はこんな人間の事をそこまで愛して…」



 フレンダさんはそう言うと地面に伏せておんおんと泣き始めた。

 俺に向けられていた沢山の槍もいつのまにか消えている。

 はぁ、何とか助かって良かった。

 アセイダルを死にものぐるいで倒したのに、こんなくだらない理由なんかで死にたく無いもんな。


 しかし、この人どうしたもんか。

 正直このままここに置いといたら殺されそうだし、早く出て行って欲しい。

 それがダメならここから出る方法が判るまでは大人しくしていて欲しいんだが。

 はぁ、せめてこの人の力が封じられていたらなぁ。


 そう俺が思って自分の頬をかいた時、いつの間にか俺の左手の親指に真っ赤な指輪が嵌められている事に気がついた。

 何となくローズの大剣やフレンダさんの槍に材質が似てる気がする。



「な、貴方何をしたんですか!? どうして私の力のほとんどを貴方が持っているのですか!?」

「え? 別に何もしてないですよ?」

「嘘を言わないでください! その紅い指輪には私の力が封じられているでは無いですか!」

「へぇ」



 お、これはもしかするともしかするんじゃないか?

 おそらくここは俺の精神世界に似た世界らしいし、俺の方がフレンダさんよりも権限とかが上なのかもしれない。

 それじゃあ…。



「バニーガールになって」

「な、なな? おいこのクソ野郎! 私に何をしたんですか? 私をこんな破廉恥な格好にさせて何が望みですか!」

「おお! 思った通りだ」



 やっぱりこの世界なら俺はフレンダさんを好き放題できるらしい。

 こいつは楽しめそうだな。



「聞いているのですか人間! 早く私を元の姿に戻して力を返しなさい!」

「笑顔でポールダンス」



 俺がそう言うとフレンダさんは引き攣った笑顔でどっかから生えてきた紅いポールを使ってダンスを始めた。

 ふぅ、これで俺が殺される心配はなさそうだな。

 当分はフレンダさんをここに置いといて、俺が死なずに彼女をここから追い出す方法をゆっくり探せば良いだろう。


 こうして俺は何でも言いなりになる貧乳のお姉さんを手に入れた。

 フレンダさんを助け出した時に仕返しされたら怖いから、いじめるのは程々にしておこう。


 まぁ、今はもう少しこのポールダンスを堪能させてもらうけどな。

 だって金髪のバニーさんのポールダンスなんて男子高校生の夢じゃんね?

第2章まだ続きます。

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