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クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...  作者: がいとう
第4章 微妙にクラスメイト達と馴染めていない気がするんですけど…
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第4章SS 『教育実習生マユミ』

 


 私の名前は山田真弓。

 どこにでもいる大学4年生、将来は高校教師になるために日々邁進中! のはずだった……。

 それなのに…



「ここは皆様が住む世界とは異なる別の世界です。皆様を勇者様としてこの国に召喚させていただきました」



 見たこともない場所で聞いた事もない国のお姫様様がそんな事を言っていた。

 それに加えて…



「皆様を元の世界にお返しする事は出来ません。申し訳ございません」



 どうやら私は元いた世界に帰る事が出来ないらしい。

 たまたま教育実習に行った高校で、たまたま試験監督をしていたら異世界に召喚されたようだ。


 思い返せば私は幼い頃から運が悪かった。

 小学生の頃に初めて好きになった男の子が中学生の年上のお姉さんの事が好きだったり、中学生の頃にテニスの公式戦に出たらズボンが裂けて下着を公衆の面前に晒すことになったり、高校で修学旅行に行ったら逃走中の銀行強盗犯に人質にされたりと、かなり不幸な人生を送ってきた。


 そんな私でも大学受験では無事に第一志望に合格し、何事もなく平穏な大学生活を送っていた。

 人生は山あり谷ありと言うし、私のこれまでの不幸な人生は谷で、これから幸せな山の人生が待っているんだ!

 そんな事を思っていた。

 思っていたのに……



「異世界とかマジないわ〜。ビールもクソまずいし、煙草も吸えないとか萎えるわぁ」



 私は絶望した。

 もう元いた世界に帰る事は出来ないし、大好きだったビール(アサヒ)煙草(セッター)もこの世界にはない。

 クラスの女の子には戻れないなんて辛すぎるなんて泣いている子もいたけれど、私の場合戻れたとしてももうまともな人生は帰ってこない可能性がある。

 大学四年生の大事なこの時期に、原因不明の失踪なんてしたやつを普通の学校が雇ってくれるとは思えない。

 流石に数日や数週間で元の世界に帰れる事はないだろうし、私の夢はこの異世界に来た時点で頓挫したのだ。


 グッバイ、私の幸福な教師生活。

 ハロー、私の不幸な異世界生活。



 そんな絶望から始まった私の異世界生活だが、住めば都とでも言うべきか、意外にもすんなり異世界生活に慣れる事が出来た。

 この世界の基準は分からないけれど、国賓待遇のお陰か出て来る食事は美味しいし、お風呂も化粧品も十分で与えられた部屋もかなり広い。

 正直なところ、上京して一人暮らしをしていたアパートの一室で暮らしていた頃なんかとは比べものにならない良い生活をしている。


 だが、生活面は満たされていても、この世界に転移して来たのは私一人ではない。

 思春期真っ盛りの高校生がいきなりクラスごと異世界に連れて来られたのだ。

 そりゃあホームシックも起こすし、不慣れな生活で溜まったストレスから喧嘩だってする。


 そんな高校生達の中で私は教育実習という立場ではあるものの、一応彼ら彼女らの先生ということになる。

 異世界に来て私の高校教師になるという夢は頓挫しても、この世界でこの子達が先生と呼べる人は私しかいない。

 そりゃあやる気が出るってもんですよ!!


 そう一念発起した私は、取り敢えず手近な女の子から励ましてみる事にした。

 まず一人目のターゲットは石田佳織ちゃん。

 ボブヘアーが特徴の気の弱そうな女の子で、クラス内でも友達が少ないのか一人で泣いている事が多かった。

 食堂で見かけてもぼっち飯の事が多い。

 私のステキな先生計画はそんな子のカウンセリングから始まったのである。



「おはよう。佳織ちゃん。よく寝れた?」

「せ、先生。まぁ、そこそこには」



 私に話しかけられた佳織ちゃんはそう答えるが、目の下にはクマが出来ていて目は真っ赤に腫れている。

 おそらく一晩中泣いていたのだろう。


 さて、思いきって声をかける事には成功したのだが、この後どうすれば良いのか分からない。

 そもそも今までの人生の中で私に人を励ました事はあっただろうか?

 んー、無いな。



「せ、先生?」

「あ、あぁ、ごめんね! ここ座って良い?」

「は、はい。どうぞ」



 相席を許可されて座ってみるが、やっぱり何を話せば良いか分からない。

 やっべぇ、今時の女子高生が好きそうな話題なんて全然分からない。

 誰かこの気まずい雰囲気を何とかしてよー!

 そう思いながら一先ず笑顔で朝食に手をつけていたその時、佳織ちゃんが呟くように話を始めた。



「せ、先生って凄いですよね」

「え? そうかな?」

「はい。クラスの皆がピリピリしているのに先生は笑顔ですし、落ち着いてて大人の女性って感じです」

「そ、そんな事無いと思うけどなぁ〜?」



 たまたま不幸な人生を送って来たばっかりに、切り替えだけはかなり早い私である。

 大抵の嫌な事は酒を飲めば忘れる事が出来るのだ。

 まぁ、その悩みが持続的なものでなければという条件はつくのだけれど……。



「今だってこうやって私を励ましてくれていますし、先生はやっぱり大人の女性です。憧れます」

「そ、そう? まぁ、これでも私は色々経験してきたからねぇ〜」



 嘘である。

 本当は流される様に生きてきて、この年になっても彼氏の一人も出来た事がない。

 少なくとも佳織ちゃんの憧れる大人の女性では無い、と思う。

 残念ながら…。



「せ、先生?」

「あぁ、なんでもないなんでもない。ちょっと昔の事を思い出していただけ」

「そ、そうですか」

「それより、佳織ちゃんは何か悩みとかないの? …………いや、ごめんなさい。悩みが無い方がおかしいよね」

「すみません」

「あぁ、謝らなくても大丈夫。いきなりこんなところに連れて来られたら、誰でもびっくりしちゃうもん」

「はい。すみません」



 んん〜。困った。

 全く話が弾まない。

 このままでは年上の女性が弱っている内気な女の子を虐めていると勘違いされてもおかしくはない。


 この年頃の女の子が好きそうな話。

 好きそうな話……そうだ!



「ねぇ、佳織ちゃんって好きな子はいないの?」

「え? 好きな子ですか?」

「うん。ほら、例えばクラスの男子とか………」



 そこまで言って私は気がついた。

 仮に佳織ちゃんの好きな男の子が別のクラスとか元の世界にいた場合、佳織ちゃんはもっと悲しんでしまう。


 お願い!

 クラスの男子! クラスの男子来い!!


 そう思いながら佳織ちゃんの顔を恐る恐る見てみると、顔を真っ赤にしてモジモジする佳織ちゃんと目があった。

 こ、この反応はもしかして……



「もしかして、同じクラスに好きな男の子がいるの?」

「は、はい」



 よっしゃあーー!!!

 なんとか無責任な大学生にはならずに済んだ。

 危なかったぁ。

 誰かは知らないけれどグッジョブ! クラスの男子。



「先生? 何でガッツポーズしているんですか?」

「え、えぇっと。佳織ちゃんがステキな恋をしているからよ。ほら、愛の力は凄いって言うでしょ? そんな感じ。そんな感じ。あははは」



 どんな感じだよ。

 自分でもそう思った。



「さ、流石は先生です。誰にも言った事なかったのに」

「ま、まぁ。このぐらいなんでもないわ」

「やっぱり先生は大人の女性…」



 なんだか佳織ちゃんの中で私の評価が爆増している気がする。

 ど、どうしよう。

 私の恋愛経験なんて、少女漫画を読み漁った程度なんだけどなぁ〜。



「せ、先生。実は相談があるんです」

「そ、相談? ど、どうしたの!?」



 どうしよう。

 どうやったら意中の彼を振り向かせますかとか聞かれても絶対に答えられない。

 一体どうすれば……

 そう思っている間に佳織ちゃんは決心をしてしまい、相談の内容を話し始めてしまった。



「わ、私の好きな人はすごく優しい人なんです。あんまり表情には出さないけれど、嬉しい事があるとちょっとだけ口角が上がって…」

「そ、そう。それで、その彼がどうしたの?」

「でも、いつも感情が顔に出ないその人が見るからに元気がないみたいで、私は心配なんです。だから出来れば励ましてあげたいんですけど、大きなお世話になっても嫌だし…」

「な、なるほど。意外と大人なんだね」

「え?」

「あ、なんでもないなんでない! つまり、佳織ちゃんはその男の子を励ましたいけど、迷惑にならないか心配なんだよね?」

「はい。その、みんなピリピリしてますし、こんな時に声をかけても大丈夫かなって」



 どうせ高校生の恋だからどうやって告白すれば良いのか分からないとか、その程度の質問だと思っていたけれど、まさか相手に迷惑をかけたくないだなんて、そんな大人な考えを持っているとは思いもしなかった。

 自分だって目を真っ赤にするぐらい泣いているのに、これでも好きな子を励ましたくて、けれど迷惑になるのも嫌で………良い子すぎかよーー。

 こんな良い子に私なんかが何をアドバイスすれば良いんだよーー。



「あ、あの。先生?」

「ひゃ、ひゃいっ! ど、どうしたの?」

「その。私は一体どうすれば良いんでしょうか」

「そ、そうだねー。その男の子とはよく話すの?」

「いえ。彼はあまり口数が多い方ではありませんし、私も…」

「な、なるほど。それじゃあ挨拶とかは?」

「それもあんまり…。そもそも目を合わせる事もあんまりないです」

「そ、それじゃあ、そこから始めてみたらどうかな? まずはその男の子と目を合わすところから」

「目を合わすですか?」

「そう。男の子ってのは、弱ってる時に可愛い女の子と目が会うだけでグッとクルんだよ」

「か、可愛いだなんて私…」

「大丈夫。佳織ちゃんは十分可愛いよ。まずは目を合わせるところから始めて、それに慣れてきたら笑顔を向ける。それにも慣れてきたら今度は挨拶をして、それも慣れたらそこでやっと励ます。どう? これなら迷惑になる前にやめる事も出来るでしょう?」

「それはそうかもですけど、やっぱり私みたいな地味な女に話しかけられても…」

「んー。佳織ちゃんは地味じゃないと思うけど、そう思うなら……はい、これあげる」

「これ、ですか?」



 ふぅ、たまたまリクルートスーツのポケットにコンシーラーが入ってて助かった。

 まさか転移して来る前日の晩に飲み過ぎた影響で顔色が悪すぎるのを隠すために、教育実習の日の朝に慌てて使ったのが功を奏すとはね。



「折角の可愛い顔でも、クマがあったらもったいないよ。辛い事とか悲しい事とか沢山あって大変かもだけど、私達は女の子なんだからお化粧でそれを隠せるの。女の子はいつでも可愛く元気じゃないとね!」

「は、はい。そうですよね。励ましたい人がいるなら、まず私が元気にならないとですよね!」

「うんうん。その調子その調子。でも、それでも辛くなったらいつでも相談しに来て良いからね。なんたって、私はみんなの先生なんだから!」

「はい! ありがとうございます!」

「よし、佳織ちゃんは強い子だ! それじゃあ、私はもう行くね」



 そう言って私は立ち上がり、食堂を後にした。

 ふっ、一時はどうなる事かと思ったけれど、意外と上手く行ったね!

 これで佳織ちゃんが元気を出してくれれば、その友達から私の評判が広がって私の人気も上がるはず!

 ふふふ、みんなのステキな先生になれる日も近いかもしれない!



 ◇◆



「なんて思っていた時期が私にもあったんですよぉ〜」



 ここはラングレシア王国王都の酒場の一つ、草の根亭のカウンターである。

 今日たまたま廊下で会ったミレンさんに、「今晩呑みに行かんかの?」と誘われて、トウカさんとミレンさんの二人呑みにご一緒させていただいたのだ。



「む? 今の話じゃと、生徒供と上手くいったのではないのかの?」

「はい。それで最初におっしゃっていた、私はクラスの子達にナメられているんだーという話にはならないと思うのですが」

「それがこの話には続きがあるんですぅ〜!」

「続きじゃと? もしや、相談に来た生徒の前で酒に溺れる姿を晒してしまったとかではなかろうな?」

「ミレン様。いくらマユミ様ではそれは流石に無いかと」

「あぁ、確かにそうじゃよな。いやぁ、すまんかったマユミ。お主はやる時はやる女じゃものな。流石に酔いの回った状態で生徒の前に出るなど………マユミ? どうしたんじゃ?」

「……そうなんです」

「もしや………」

「そのもしやなんですよー!! その数日後に私の部屋を訪ねて来た佳織ちゃんをベロベロに酔った状態で迎え入れて、その後酔いすぎて体調が悪くなった私を介抱してもらったんですーー!!」

「そ、それは……。災難じゃったな」

「はい。そのカオリ様が可愛そうです」

「トウカさんはどっちの味方なんですかぁ!!」

「私はフーマ様の味方です」

「この、男の趣味最悪女!!」

「酔っ払い面白女に言われたくはありません」

「うえぇぇぇぇん!! ミレンさん! 聞きました!? 今トウカさん、私のこと面白女って言いましたよ!? 人が真剣に相談しているって言うのに!!」

「あぁ、はいはい。分かったからまずは落ち着くのじゃ。トウカもあまりマユミをからかうでない」

「はい。失礼いたしました」



 ミレンさんにたしなめられ、私とトウカさんは一度席に座り直す。

 ミレンさんはそんな私とトウカさんを見て一度頷きお酒をグイッと煽ると、手の甲で口を拭って話を続けた。



「つまり、マユミは失った信頼を取り戻したいということじゃろう?」

「まぁ、有り体に言えばそうですね」

「それなら話は簡単ではないか」

「え? そうなんですか!?」

「のう、トウカも一番簡単で単純な解決策が思いついておるじゃろう?」

「はい。もちろんです」

「え!? 教えてください! 高音が最悪なのは撤回しませんけど、男の趣味最悪って言ったのは謝りますから!」

「一体お主とフウマの間に何があったんじゃ」



 思い出すだけでも忌々しい事があったのだ。

 いずれアイツとは決着をつける必要があるかもしれない……。

 って今はそれより……



「その単純明快で、スーパーハイスペックイケメン天満くんや、超カリスマギャル篠崎さんよりも人気者になれる方法を教えてください! お願いします!!」

「流石にそこまでは無理だと思いますが、何も難しい事ではありません。お酒をやめれば良いのです」

「え? 聞き間違えたみたいです。もう一度聞いても良いですか?」

「だから、お酒を飲むのをやめれば良いのです」

「あ、あははぁ。聞きましたミレンさん。トウカさんってば、お酒を飲むのをやめろだなんておかしな事を言ってますよ?」

「いや、妾もトウカと同じことを考えておったんじゃが……」

「あ、あぁぁ。なるほど。どうやら私のスキルがおかしくなったみたいですね。いやぁ、スキルを覚えただけで共通語が話せるなんて、出来過ぎだと思ってたんですよぉ〜」

「スキルを疑うのなら、日の本の国の言葉で言ってやろうかの? 酒を飲むのをやめるのじゃ」

「言わないで! 折角スキルのせいにしようと思ってたのに、わざわざ日本語で言うなんてひどいです!」



 この私からお酒を取り上げようだなんて、もしかするとミレンさんは鬼なのかもしれない。

 いや、そう言えば今は目を青くしてエルフのフリをしているけれど、実は吸血鬼だったっけ。

 やっぱり吸血鬼は恐ろしい種族だ!



「しかし、お主の話を聞いた限りじゃと、酒をやめれば全て解決するのではないかの?」

「マユミ様は教師として最適なアドバイスをしていますし、その結果として現に多くの生徒から親しまれています。その状態で威厳を取り戻したいと言うのなら、やはりお酒をやめるのが妥当では?」

「なんでですか! それじゃあ私の酒癖が悪いみたいじゃないですか!」

「事実悪いじゃろうに」

「百歩引いても悪いですね」

「こ、この、この人でなし!」

「妾は人ではないからの」

「私も厳密には人ではありませんしね」

「う、うわぁぁぁん!!! おっちゃんおかわり!! もうこうなったらヤケ酒じゃぁあぁぁ!!」



 ミレンさんとトウカさんが何と言おうが、私はお酒をやめるわけにはいかない。

 なぜならこれこそが私の人生! 生きる意味なのだから!!!



「それをやめればもう少しまともになると思うんじゃがのう」

「やれやれ。やはり酔っ払い面白女ですね」



 そんなこんなで二日酔い必至の私達3人の大人女子会は更けていき、私が潰れるまで続いたのであった。

 あぁ、それにしてもミレンさんの教えてくれるお酒は美味しいんだよなぁ〜〜。

次回から第5章に突入です。


投稿日は23日を予定しています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 大学四年生なのに早くも酒浸り&スモーカー...なんというか...人生に疲れてる感が出るのがはやすぎんか...
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