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クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...  作者: がいとう
第4章 微妙にクラスメイト達と馴染めていない気がするんですけど…
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68話 野球拳

 

 風舞




 舞とローズとで冒険に出て呪いの鎧を手に入れたり、ミューカスワームとの戦闘で粘液や砂まみれになった俺達はソレイドの我が家にやって来ていた。

 そして日も暮れかけて現在、俺達は脱衣所で何故か野球拳をしている。



「「「やーきゅーうーすーるならーこうゆう具合にしやしゃんせー。アウト! セーフ! よよいのよい!!」」」



 俺がグーで舞とローズがチョキ。

 これで舞とローズは完全に下着姿となり、俺は砂と粘液にまみれた服のまま一枚も脱いでいない。

 俺には豪運というスキルがあるため、運に全てを任せたじゃん拳では一切負ける要素がないのだが……正直なところ早く風呂に入りたい。



「くっ、流石は風舞くん。なかなかやるわね」

「舞とローズが弱すぎるだけだ。毎回二人とも脱ぐって、どんだけ脱ぎたがりなんだよ」

「風呂に入るために服を脱いでおるんじゃから当然じゃ。むしろお主はいつまで服を着たままでいるつもりなんじゃ?」

『お姉様の言う通りです。そもそもフーマが野球拳で負ける事などないのですから、これはとんだ茶番ではないですか』



 経験者は語るだろうか。

 フレンダさんは既に何回か俺に脱がされてるもんな。

 野球拳だけでなく、脱衣麻雀やらなんやらで。



「本当は俺も早く風呂に入りたいんですけどね」

「あら、それなら私が優しく(無理やり)脱がせてあげるわよ?」

「それだけはない。絶対に嫌だ」

「そう。それなら野球拳を続けるしかないわね!」

「はぁ。結局そうなるのか」

「それじゃあ行くわよ!」

「うむ! 次こそ脱がしてやるから覚悟せよ!」

「「「やーきゅーうーすーるならーこうゆう具合にしやしゃんせー」」」



 さて、こうして再開された野球拳だが、そもそも始まった原因はやはりというかいつも通りというか、舞にある。

 まず初めにソレイド郊外の草原に転移して来た俺達は、屋敷の中が汚れてはいけないからと、比較的掃除もしやすく洗濯カゴもある脱衣所に再度転移したのだが、そこで舞がこんな事を言い出した。



「さぁ、風舞くん! 服を脱がせてあげるわ! 洗いっこしましょう!!」



 一度舞と一緒に風呂に入って互いの体を洗いあった経験のある俺ではあるが、あれはそういう雰囲気でいくつかの段階の上にあったシチュエーションであって、素面のままではとてもではないが恥ずかしくて賛同できない。

 それに、ここには以前風呂場で裸で抱き合って行くところまで行きかけたローズもいるのだ。

 だから俺はただ一言「嫌だ」と断ったのだが……



「ならば仕方ない。その服を燃やし尽くすしかないのう」



 何故かノリノリのローズがそんな事を言ってファイアーボールをチラつかせ始めた。

 こうなったら一度一人で転移して二人が諦めるまでどこかで時間を潰そうと思った時にはもう遅く、舞とローズが俺の両手首をしっかり握っている。

 そこで俺はこう言ったわけだ。



「暴力で物事を解決するのは良くない! 何か別の方法で決着をつけよう!」

「なら野球拳ね!!」



 そんな塩梅で野球拳が始まったのである。



「「「アウト! セーフ! よよいのよい!!」」」

「……勝った」

「何故じゃ! 何故一度も勝てないんじゃ!!」

「まだ諦めるのは早いわローズちゃん!! 私達にはまだパンティーが、オパンツがあるわ!」

「女子高生がオパンツ言うな」

「ふん! そうやって余裕でいられるのも今のうちよ! 今に風舞くんをひん剥いてあんなところやこんなところをガン見してやるわ!!」

「はいはい。何でも良いけど、二人ともちゃんと約束は守れよ?」

「うむ。全裸になったら大人しく風呂に入る。もちろん分かっておるわ!」

「もちろん約束は守るわ!」



 本当に分かっているのだろうか?

 二人とも髪ブラで腰に手を当てて仁王立ちしているから、とてもそうは見えない。

 いや、顔が真っ赤で若干震えているあたり、ただの空元気なのか?



『お、お姉様の裸。あぁ、なんと神々しいのでしょう!!』

「…………うっさ」

『何か言いましたか?』

「いいえ、なんでも。よし、それじゃあラスト行くぞ」

「ええ! さて、そろそろ本気を出すとしましょうか」

「うむ。ここまではただの前哨戦じゃ」



 そう言って舞が側の壁に立てかけてあった妖刀星穿ちを抜き修羅モードを発動させ、ローズがギフトを発動させて赤いオーラを纏う。

 二人とも自身にバフをかけたみたいだが、それで運も良くなるのだろうか?

 そんな事を考えているうちに、次の回が始まった。



「「「やーきゅーうーすーるならーこうゆう具合にしやしゃんせー」」」



 二人ともかなり集中しているな。

 集中したところでどうせ運勝負なんだから関係ないだろうに…………


 --ってもしかして!



「「「アウト! セーフ!」」」



 二人の狙いに気がついた時にはもう遅く、野球拳は決着に入り始めていた。

 この二人、俺がじゃん拳で何を出すのかを見て、その場で勝てる手を出そうとしているのか!?



「「よよいのよい!!」」

「……よい。…………ま、負けた」

「よっし!! まず一枚よ!!」

「ふん! 途中で妾達の視線に気がついて出す手を直前で変えた様じゃが、あの程度では遅すぎるの。正直楽勝じゃったわ!!」

「そんなのありかよ」

「運も実力のうちと言うのなら、実力も運のうちよ!」

「ほれ、渋ってないでさっさと脱ぐが良い!」

「くっころ」



 そんなこんなで一枚目の服を脱がされた後、二人の作戦が分かっていても単純故に防ぎ方が全く浮かばなかった俺はそのまま連敗を重ね、舞とローズにすっぽんぽんにされて風呂場へ引きずりこまれた。

 今まで野球拳で負けた事がなかったためもちろんかなり悔しかったのだが、舞とローズが俺の肌が新しく見える度に感想を言うものだから純粋に恥ずかしかった。

 何が「意外と鮮やかな乳首をしておるんじゃな」だよ。

 勘弁してくれよ。マジで。



 ◇◆



 野球拳に負けた俺の末路は単純明解で、舞とローズの二人に体を洗われ、そのお礼に二人の体を洗い、そしてそのまま湯船に直行であった。

 なんかもう、心臓がはち切れそうですよ。



『あぁ、お姉様と混浴。なんと素晴らしい日でしょうか。今日というほどフーマに感謝した日はありません!!』

「そりゃどうも」



 この状況で唯一の救いは、シスコンのフレンダさんがいてくれる事だ。

 彼女のおかげで、なんとか舞とローズの裸から意識を逸らせている。

 俺にとってもこれほどまでにフレンダさんに感謝した日はないかもしれない。



「ふふ。やっぱりみんなでお風呂に入ると暖かいわね」

「みんなでご飯を食べると美味しいみたいに言わないでくれ。同調意識の鬼か」

「妾は鬼じゃぞ? じゃからお主らと風呂に入ると暖かいのぅ」

「それなら吸血鬼さんがのぼせる前に出た方が良さそうだな。それじゃあ俺はここらで…」

「ダメよ風舞くん。ちゃんとミレニアム懸賞問題が解けてからにしなさい」

「それを言うならちゃんと10まで数えてからにしなさいだろ」

「数学の得意な風舞くんには10数えるなんて簡単すぎるでしょう?」

「だからって懸賞が出るほどの難問を用意しないでくれよ。一生あがれねぇよ」

「まぁまぁ。お主も妾達と風呂に入れて満更でもないんじゃろう?」

「……超のぼせそう」

「あら、風舞くんったらエッチね」

「全くじゃ」



 舞とローズには言われたくないと思ったが、それは言わないでおいた。

 だって、横から二人がすり寄ってくるんだもん。

 膝を抱えて動かずにいるしか出来ない俺には何も言う資格はないだろう。



「ふふふ。ローズちゃんがいて、風舞くんがいて、幸せね〜」

「幸せじゃの〜」

『し、幸せです。あぁ、お姉様の胸がこんなに近くに……』



 もう、本当に勘弁してもらいたい。

 湯船よりも先に二人のせいでのぼせそうだ。



「あぁ…っと、今日はソレイドに泊まるとして、明日はどうするんだ?」



 今は何でも良いから話を変えたかった。

 少しは真面目な話をすれば気がまぎれるだろう。

 そう思っての判断である。



「風舞くんはどうしたいのかしら?」

「シルビアとアンには数日は戻らないって言ってあるし、明日もどっかに冒険に行くか?」

「ふぅん。どこに?」

「どこにってどこでも良いけど……あっ」



 なんだか舞が何かを含んだ話し方をするからその視線を追ってみたら、ローズが少し俯きながら耳を赤くしていた。

 彼女の金色の髪から水滴が流れていて、妙に色っぽい。



「や、やっぱり………明日は冒険じゃなくて違うことがしたいな」

「へぇ。何を?」

「そ、そうだなぁ…………例えば、ローズとデートとか…」



 そう言えばデートの前の訓練ってローズ自身が言っていたし、今日の冒険も訓練の一環だったはずだ。

 冒険が一区切り付いてソレイドにやって来たということは、そういう事だと思って良いと思う。

 さて、ローズの反応は……



「お、お主がどうしてもと言うんじゃったら妾はか…構わんが?」



 念のため舞の方も見てみる。



 パシャッ!



 顔にお湯をかけられた。

 私には聞くな。

 そういう事だろう。


 そうだな。

 これは俺の意思で決める事だ。



「それじゃあ、明日はデートにしようぜ。俺とローズの二人で…」

「う、うむ! そうじゃな! あぁ、それが良いじゃろう!」

「ふふっ、良かったわねローズちゃん。それとほら、だから風舞くんはローズちゃんとのデートを嫌がったりしないって言ったじゃない」

「あぁ、マイにも感謝するのじゃ。お主の立場じゃと色々と思うところもあったじゃろうに…」

「ふふふ。私は風舞くんもローズちゃんも大好きだから構わないわ。その代わり、今度私ともデートしてちょうだいね! ローズちゃんも私のハーレムの一員なんだから!」

「やれやれ、仕方ないのう」

「ええ、仕方ないのよ! それと、明日は一人で寂しいから今のうちに、ぎゅーっ!!」

「お、おい!」



 舞がいきなり横から抱きついてきた。

 俺と一緒に抱き締められたローズも照れ臭そうに笑っている。



『よく出来た女ですね』



 さっきまでローズの裸を見て興奮していたフレンダさんに同意するのは癪だが、俺もそう思った。




 ◇◆◇




 舞



 風舞くんとローズちゃんと一緒に冒険に行って一緒にお風呂に入って一緒にご飯を食べて一緒に寝た次の日、デートに行った風舞くんとミレンちゃんを見送った私は一人で雲龍に来ていた。

 昼間のこの時間に時間のある知り合いはボタンさんぐらいだろうし、他に行くあても無かったのである。

 本当はミレイユさんの耳をモフりたかったけれど、お腹も空いていたし仕方ないわよね。



「あらあらあら、昨日ぶりやね。マイはん一人とは珍しいなぁ」

「言われてみればそうね。今日は牛丼が食べたいわ」

「おおきに。そしたら少し待っててなぁ」



 私の注文を受けたボタンさんがそう言ってパタパタと厨房に入って行く。

 あの尻尾、いつかモフらせて欲しいわね。


 そんな事を考えながらカウンター席に座ると、エプロン姿のキキョウちゃんが水を持って来てくれた。



「久しぶりだな人間。元気だったか?」

「ええ。まぁ、ボチボチよ」

「どうした? う◯こでも踏んだのか?」



 言っている事はかなり見当はずれだけれど、意外と鋭いのね。

 流石はボタンさんのところでお世話になっているだけの事はあるわ。



「今日、風舞くんとミレンちゃんがデートに出かけているの。だから私はお留守番なのよ」

「ふーん。あれか? 嫉妬ってやつか?」

「そんなんじゃないわ。ただ少し寂しいだけ」



 そう、ちょっぴり寂しいだけだ。

 断じて嫉妬なんかではない。

 風舞くんとローズちゃんが私と風舞くんみたいな関係になったら良いなって本当に思ってるし。



「寂しいならそれは嫉妬だろ? 人族と魔族は良い感情と悪い感情があって、悪い感情は他の悪い感情と繋がるって習ったぞ。だからお前は嫉妬してる」

「だからそんなんじゃないって言っているでしょう?」

「お前がそれならそれでも良いけど、やりたい事は全部やった方が良いぞ。どっちかだけなんて考えずに両方、全部だ。私はお前の事をよく知らないけど、お前は悪魔流が出来るやつだろ?」

「悪魔流?」

「そうだ。欲しいものは全部手に入れて、やりたい事は全部やる。それで殺されてもそれは弱かっただけ。決して自分が間違ったからじゃない。それが悪魔流だ!!」



 キキョウちゃんが胸を張りながら堂々とそう言う。

 私とした事がこんなに小さい子に励まされるなんて、まだまだね。



「それもそうね。そう、そうだったわ。私は土御門舞! この世の全てを手に入れる女よ!!」

「おお、それでこそだ!! まぁ、この世の支配者になるのは私だからお前は2番だがな!」

「ふっ、この私に勝負を挑むだなんて良い度胸だわ! 優しく撫でてあげるから覚悟しなさい!!」

「良いだろう!! お前がその気なら久し振りに本気を出してやろう! ちょうど身体が鈍っていたところだ」



 へぇ、そこそこ強そうだとは思ってたけれど、エルセーヌから数枚落ちる程度なんてかなりやるのね。

 これは本気を出さないと殺されそうだわ。

 そう考えつつ妖刀星穿ちと未だ慣らし途中の鎧袖一触の力を引き出そうとしたその時、いつの間にか厨房から出て来ていたボタンさんが私とキキョウちゃんの間に立って、カウンターに牛丼を置いていた。



「二人とも、元気が有り余ってはるのは良いんやけど、少しおいたが過ぎるんやなぁい?」

「「な、何の事かしら? (だ?)」」

「それ、うちには椅子が倒れてる様に見えるんやけど……」

「うっ…」

「気のせいやろか?」



 ボタンさんの殺気にあてられて無意識に彼女に斬りかかろうとしていたら、刀を抜く前に柄を片手で抑えられていた。

 こ、これが勇者だけでなく魔王にも認められる裏社会の女王の実力。

 全然敵う気がしないわ。



「お、おい! 冗談だ! 私とそこの人間はただ話していただけだ! 椅子も倒れちゃっただけで今直す! なっ!?」

「へぇ、そうなん?」

「え、ええ! キキョウちゃんの言う通りよ! ほら、今元に戻したわ! だからおいたなんて何もしてないい! ねっ? キキョウちゃん?」

「お、おうっ! ほら、私とこの人間はナカヨシ! ナカヨシだ!」

「そしたら良いんやけど……。さぁ、冷めたら美味しなくなるし、暖かいうちに食べてなぁ」

「そ、そうね! それじゃあいただきまー…」

「あぁ、そうそう。言い忘れてたんやけど、いくらフーマはんの恋人さんでも、うちの店で暴れたらタダじゃおかへんから、気ぃつけてなぁ」

「ひゃ、ひゃいっ!」



 こ、怖いわ。ボタンさんが怖いわ。

 風舞くんとローズちゃんはかなり気に入られているみたいなのに、私は怖くてたまらないわ!



「お、おい人間。困った時は相談しろよ? なんとなくお前は私と似てる気がする」

「え、ええ。キキョウちゃんも何かあったら私を頼ってちょうだい。もしもの時は匿ってあげるわ」



 強大な敵を前にしたら人と人は手を取り合えると言うが、それは人と悪魔でも同じ事らしい。

 ふっ、思わぬ友情が出来てしまったわね。



「まったく。マイはんを頼むって言いはるから何の事や思うたらまさかこういう事だなんて、手のかかる子供が増えたみたいで大変やわぁ」



 ん? ボタンさんが何か言っていた気がするけど、気のせいよね?

 あぁ。でも、ボタンさんの牛丼ってやっぱり美味しいのよねぇ。

 ボタンさんは恐ろしいのに、不思議だわ。



次回17日です。

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