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クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...  作者: がいとう
第4章 微妙にクラスメイト達と馴染めていない気がするんですけど…
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65話 二人目の女神

 


 風舞



 一度目はソレイドでアセイダルという悪魔を倒しに行く道中だった。

 あの時に俺は二度とこんな目には合わない様にもっと強くなろう。

 そう思った。


 だが、なのに……



「ちくしょう! なんでまたこんな目に合わなくちゃいけないんだよ!!」

「風舞くん! 喋ってると舌を噛むわよ!」



 俺はまたもや、舞にお姫様抱っこされながら砂嵐の中を猛スピードで移動していた。

 そもそもこうなった原因はローズの立てた、砂嵐の中をどちらに進めば良いのか分からないなら持っている魔封結晶の力でダンジョンから魔物を引き寄せれば進む方向がわかるというとんでも作戦にあるのだが、残念なことにこれが作戦としてはかなり有用みたいで、舞の魔力が切れそうな今は駄々をこねる隙すらもなかったのだ。


 けど、だからってさぁ…



「何もお姫様抱っこしなくても良いだろ!」

「でも風舞くんじゃ私とミレンちゃんの走る速さについて来れないじゃない」

「それは百歩譲って分かるけど、俺を抱えて走るなら小脇に抱えるとかおんぶとかで良いだろ!」

「小脇に抱えると地面に擦っちゃうし、おんぶだと後ろからの急な攻撃に対処できないわ」

「……なんてこったい!」

「どうしようローズちゃん! 風舞くんが壊れたわ!」

「良いから黙って走らんか! この中ではぐれたら妾が困る!」



 ローズは俺と舞の先を魔物を蹴散らしながら走っている。

 長年誰も寄り付かないダンジョンなら魔物が溢れ出ているのではないかという事で今回の作戦に思い至ったそうだがその予想は的中し、一方向からとんでもない数の魔物が現れては魔石に変わりを繰り返していた。

 良いなぁ、俺もローズみたいにカッコよく魔物を蹴散らしながら走りたい。



「む、どうやら砂嵐を抜ける様じゃぞ! この先は魔物で溢れかえっておるからフウマも戦ってくれ!」

「よし来た! 舞のことは俺が守るからな!」

「え、ええ。嬉しいはずなのに、お姫様抱っこされている風舞くんにそう言われるとなんだか不安になるわね」

「なんでこういう時ばっかり正論を言うんだよ! 俺だって言動が合っていない事はよく分かってるんだよ!」

「もう。分かったから大人しくしていてちょうだい。その…流石に胸元で騒がれると少し気が散るわ」



 これまでの経験から分かっていた事だが、舞は戦場では結構真面目だ。

 戦闘中のセリフやテンションなんかは普段の天真爛漫モードなことも結構あるのだが、その行動には一切の隙がなく常に周囲を警戒している。

 そんな舞にうるさいと言われては黙るしかないのだが、俺の男心は嘆きの叫びを上げずにはいられなかった。



「……こんちくしょう!!」

『やれやれ。フーマもマイも相変わらずですね』



 ◇◆



 砂嵐を抜けた先にあったのはちっぽけな石の遺跡と大量の魔物だった。

 魔物はローズの持つ魔封結晶の力にあてられて理性を失い牙を向いている。



「ほれフウマ! ようやく出番じゃ!」

「おう! 舞、ここまでありがとな!」

「ええ! 背中は任せたわよ!」

「よしきた!!」



 そうそう、こういうのだよ。こういうの。

 俺は舞やローズとこうやって力を合わせて冒険したかったんだよ。



『おいフーマ。何に打ちひしがれているのかは分かりませんが、マイとお姉様はもう戦い始めていますよ?』

「はっ! 出遅れた!」



 既に舞とローズが背中合わせで魔物の群れの中心で素晴らしいコンビネーションを披露しながら戦闘を始めている。

 つい先程まで俺に殺気を向ける魔物もいたのだが、次々と魔物を屠る2人に魔物の群れが夢中になって、誰も俺に注目していなかった。

 これ、俺の出番ないやつじゃん。



「……もうお家帰りたい」

『お、おいフーマ! こんなところでいじけないでください! 周囲には魔物がいるんですよ!?』

「ははは。どうせ誰も俺に注目してないんで放っておいても大丈夫ですよ」

『そんな馬鹿な話が……本当ですね。お姉様の持つ魔封結晶に惹かれているのでしょうか』

「ここに来るまでに砂嵐の中の魔物は舞とローズが倒しちゃいましたし、そもそも砂嵐の中の魔物は体を切り刻まれていたので後ろから魔物が来る事はほとんどないと思います。ですからほら、ここで寝転がっててても全然大丈夫!!」

『分かりました。フーマが苦しんでいるのはよく分かりましたから、もう少しだけ頑張りましょう? 今晩はフーマを甘やかしてあげますから。ね?』



 フレンダさんが俺を励ましてくれている。

 そういえばフレンダさんは俺の特訓期間中の精神を鍛える担当だったな。

 こんなに優しく励ましてくれるなんて、俺は良い先生に恵まれたんだな。



「はぁ、少しだけ頑張りますか」

『そのイキですよフーマ! さぁ、武器を取り立ち上がるのです!』

「よっこらせっと」



 フレンダさんのエールを受けて立ち上がり、出来るだけ強そうな魔物と戦うために周囲を見回す。

 お、丁度良いところにライオンっぽいでかい魔物がいるな。

 よし、あいつと戦おう。



「ファイアーボー…」

「果断!!」



 大丈夫だ。

 他にも魔物は沢山いるんだから、慌てる事はない。

 お、今度は額の固そうな大きな豚が……



「サンダーランス!!」



 ……。

 ……………。



「はぁ。もう良いや」

『き、気持ちは分かりますが諦めないでください! 諦めてしまってはずっとこのままですよ!?』

「今度舞とローズがいないところで一人で訓練するんで大丈夫ですよ。とりあえず今は寝かせてください」

『お、おいフーマ!? 泣いているのですか!? げ、元気を出してください!』

「もうどうしろって言うんですか。俺が元気を出したところで……ん?」

『どうかしましたか?』



 今、誰かがあの遺跡の中からこちらを見ていた気がする。

 あ、やっぱりいる。

 あの緑色の髪の女性はローズを見てるのか?



『おいフーマ。おい! どうしたのですか?』

「あぁ、すみません。ほら、あそこに緑色の髪の女の人がいるんですけど、誰ですかね?」

『緑色の髪の女性? あ、あれは……。いや、そんなまさか……』

「どうしたんですか? もしかして知り合いですか?」

『はい。おそらくですが、あれは私とお姉様の知り合いの女神です』

「はい? 女神ですか?」

『はい。以前トウカが白い世界に来た時に話したでしょう? 私が一度目に遭った女神があの女です』

「あぁ、そう言えばフレンダさんも神様に会った事があるとか言ってましたね」

『とりあえず逃げられては面倒ですし、あの女を目の前に転移させてください』

「え? そんな事して襲われませんか?」

『あの女神に危険性はありません。いつもの様に押し倒して乳でも揉みしだけば大人しくなります』

「俺、今までそんな事した覚えないんですけど?」

『まさか記憶にないとは……。女性の敵ですね』

「はいはい。それじゃあ女性の敵の俺は見ず知らずの女神様を転移させますよっと…ほいっ」



 ふぅ、この程度の転移ならお茶の子さいさいだな。

 魔力の消費量もかなり少なく済むし、意識的にもそこまで集中しなくても発動できる。

 流石は俺、転移魔法の申し子である。

 そんな無駄に長いモノローグを浮かべながらいきなり転移させて呆けている女性を見上げていると、ようやく状況を飲みこんだのか、俺を見下ろして驚き始めた。



「えっ!? えぇぇぇ!? 私、いつの間にか転移させられちゃってます!」

「どうもこんにちは。通りすがりの勇者です」

「えぇ!? ゴミみたいに地面に転がっている人に挨拶されました!」



 この女神、今ゴミみたいって言わなかったか?

 格好は……なんか女神官っぽい格好だな。

 それと髪が濃い緑色で目も緑、あとはエルフ耳か。

 他に特徴らしい特徴は………無いな。



『この阿呆丸出しの話し方。やはり間違いありません。リリエルです』

「リリエル?」

「えぇっ!? なんで私のお名前を知っているのですか!? お、恐ろしい人間です。もしかしてこれがストーカーですか!?」

「あぁ、違います。知り合いからリリエルって神様がいるって聞いた事があったんです」

「え!? 私が優しくて慈愛に満ちた素敵な神様ですって!? もしかして私の信者になりたいのですか!?」

「いや。そういうのは良いんで、財宝をください。ダンジョンの中にいたって事はあそこに住んでるんですよね?」

「確かにあそこは私のお家ですけど、財宝なんてありませんよ? それとダンジョンでもないです」

「え? そうなんですか?」



 でも、魔物がウジャウジャ出て来てるし、スタンピードっぽい現象も起こってるぞ?

 これでダンジョンじゃなかったらなんなんだ?



「あの魔物達は私の信者になりたくてここまで来た魔物です」

「それってリリエルさんの家に勝手に住み着いたって事ですか?」

「まぁ、そうとも言いますね。時々襲って来ますけど、別に強くもないので放っておいたら勝手に増えました」



 えぇ…普通、害がなくても魔物が住み着いたら倒すなり追い払いなりするだろ。

 いくら強くなかったとしても、そのまま棲みつかせておくってどうなのさ。



『この女はこういう女神なのです。まともに取り合うだけ無駄ですよ』

「あぁ、なるほど…」

「むむっ!? 貴方、今私のことバカにしましたか!?」

「してないです。それより、何故貴女はこんなところに?」

「はっ! そうでした! あの恐ろしい吸血鬼の姉妹から逃げてここに閉じこもっていたのに、貴方達が来たんです! もしかして貴方、あの吸血鬼の姉妹の仲間ですか!?」

「一応聞いておきますけど、あの吸血鬼というのは……」

「ローズ・スカーレットとフレンダ・スカーレットです! あぁ、思い出すだけでも腹が立ちます! いきなり私の家にやって来てめちゃめちゃに破壊するなんて!!」



 えぇぇ……ローズとフレンダさん何やってんだよ。

 流石に人の家を壊しちゃダメだろ。



『まだ自在に血を扱えなかった頃の話ですし、私とお姉様も若かったのです。若気の至りというやつです』

「あぁ、マジで破壊したんですね」

『だって魔物が住み着いていたんですよ!? だったら建物ごと壊せば早いかなって……』



 言葉尻が小さくなるあたり、それなりに反省はしているらしい。

 まぁ、俺には関係ない事だからとやかく言う気は無いけどさ。



「それで、俺達がローズやフレンダさんの仲間かどうかって話ですか?」

「そうです! もしも貴方があの吸血鬼の姉妹の仲間だと言うのなら覚悟しませんよ!」

「そ、それって……」

「ご想像の通りです! 私は逃げますからね!!」

「あ、逃げるんだ。戦わないんですね」

「当然です! あの二人は本当に恐ろしいんですから!!」



 リリエルさん、よっぽどローズとフレンダさんが恐ろしいんだな。

 って、そうこうしている内に魔物を倒し終わった舞とローズがこっちに来ちゃったぞ?

 逃げなくて良いのだろうか?



「風舞くん。こっちは片付いたけれど、その人は誰?」

「リリエルさん。そこの遺跡に住んでたんだって」

「り、リリエルじゃと!?」

「おや? 貴女も私をご存知なのですか!?」

「う、うむ。知っておるには知っておるが…」

「ミレン。この女神様はローズに怯えているらしい。もしも見つけたら逃げるそうだ」

「その通りです! あの吸血鬼の姉妹は恐ろしいですからね! 本気で逃げますよ!!」



 その場で足踏みをしながら両手を振るリリエルさん。

 この女神様、本当に淫乱女王様と同じ女神なのか?

 どう見てもかなり残念な女の子にしか見えないぞ?

 外見的には俺や舞と同じか少し上ぐらいだし……。



「なるほど。そういう事ね。よろしくリリエルさん。私は舞、そこの風舞くんの恋人よ」

「へぇぇ、そうですか! お似合いのカップルですね!!」

「そうでしょう! そうでしょうとも! ふふん! お似合いのカップルですって!!」

「はいはい。分かったから砂の上で暴れないの。髪に砂がつくぞ」



 いち早く事情を察して地面に横たわる俺の横で転がり始めた舞を抑えつつ、顎に手を当てて考え込むローズに視線を向ける。

 どうせまだバレてないんだから誤魔化せば良いと思うけど、もしかして謝るつもりなのだろうか。



「そちらの貴女はミレンさんと言いましたか? こちらのお二人とはどういったご関係で?」

「あぁ、そうじゃな……妾はそこの二人の保護者みたいなものじゃ。よろしくの」

「はい! よろしくお願いします!」



 どうやら自分の正体は明かさないことにしたらしい。

 まぁ、いきなり逃げられても困るし賢明だな。

 正体を明かすなら色々と話を聞いた後が良いだろう。

 そう思っていたのだが……



「むむっ!? しかしミレンさん、どこかでお会いした事はありませんか!?」

「き、気のせいではないかの?」

「うーん。そうでしょうか? 吸血鬼でその話し方。まるで……」



 や、ヤバイ!

 このままじゃローズの正体がバレる!



「おぉ、我が妹よ! リリエルさんが驚いているから普段通りの話し方にしたらどうだ!?」

「妹じゃと? いつから妾はお主の妹に……」

「バカ! このままじゃ正体がバレるから話を合わせろ!」

「お、おお。そういう事か。おお、兄上よ! これはすまなかったの…だよ!」

「すまなかったのだよ?」



 ヤバイ!

 リリエルさんがローズの変な話し方に疑問を抱いている。

 これは早く誤魔化さないと………。



「ミレンは田舎の産まれなんだ! 俺とは血が繋がっていないけど、義理の兄妹でな!」

「あぁ、なるほどそうでしたか! 一瞬ミレンさんがあの恐ろしい吸血鬼の姉に似ている気がしたのですが、どうやら私の勘違いだったみたいです! あの吸血鬼にこんな微妙な義理の兄がいるわけないですもんね!!」



 良かった。

 どうやら疑念は晴れたみたいだが……なんでこんなに腹が立つのだろうか?

 あの遺跡の上に石でも降らすか?



「ねぇ風舞くん。それでこの後はどうする? あの遺跡はリリエルさんのお家なのよね?」

「ああ。そういえばそうだったな。何か舞の防具に良さそうな物を求めて来たけど、家捜しをする訳にも行かないし帰るか」

「鎧ですか? もともとそこの遺跡にあった古いもので良いならあげますよ?」

「え? 良いんですか?」

「はい。蜘蛛の巣がついてばっちいですし、多分中古なのでどうせ安物です!」



 これはどっちだ?

 謎の遺跡に眠る伝説の鎧か、ただの古くてボロい鎧なのか見当もつかない。

 舞に見合う鎧となると妖刀星穿ちクラスの高性能な防具じゃないとダメなんだけど、大丈夫か?



「ふむ。一先ずは見てみぬことには何とも言えぬし、とりあえず見せてもらってはどうじゃ?」

「どうじゃ?」



あぁ、またリリエルさんが違和感を感じ始めている。

ほらローズ、早く言い直すんだ!



「あ、あぁっと……ど、どうだろな!?」

「こ、ここまででそこそこ疲れたし、折角だし見せてもらおうぜ!」

「それもそうね。それじゃあリリエルさん。見せてもらえますか?」

「はい! 良いですよ! こっちです!!」



 まさか久しぶりに3人で冒険に出かけたら女神様に出会ってその家に案内されるとはな。

 普通に考えればこれは勇者が魔族との決戦の前に、女神様から伝説の武器や防具を貰う王道的展開なんだけど……



「あぁ、魔物以外のお客さんが来るのは久しぶりです! そうだ! 折角ですし、キノコ茶を淹れましょう!」



 女神様がどうにもアホっぽいんだよなぁ……。

 かなり不安だ。

次回11日予定です

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