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クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...  作者: がいとう
第4章 微妙にクラスメイト達と馴染めていない気がするんですけど…
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60話 ロリコン疑惑

 

 風舞



 無事にキングアクアエレメンタルウルフを討伐しローズの魔封結晶を回収した俺達はそのままお城に戻り、それぞれの寮の部屋の前で別れて今日の遠足は解散となった。

 皆一様に防水仕様のローブを被っていたものの、激しい戦闘でフードが外れてしまったため雨に打たれて体が冷えてしまっている。

 それぞれの部屋についている風呂はシャワーのみだが、それでも暖かいお湯で雨水を洗い流すのはかなり気持ちよかった。



「ぬふぁぁぁ。気持ちいいぃぃ」

『変な声を出さないでください。背筋が震えました』

「フレンさんは無粋ですね。日本語が話せるんですからもっと風情というものを学んだ方が良いですよ」

『どういう意味ですか?』

「ほら、日本語には擬態語ってものがあるじゃないですか。雪がしんしんと降るとか、雨がしとしととふるっとかそういうやつ」

『ありますね。それがどうしたのですか?』

「共通語でも日本語の影響なのか似たような擬態語とか擬声語があるんですけど、それでも日本語に比べれば大したことないんですよ」

『それで?』

「ですから、俺がぬふぁぁぁ。って言ったのも気持ち悪い表現ではなく、かなり文学的で知的な表現なんです」

『仮にフーマの言う事が正しかったとしても、フーマが気持ち悪かったことには変わりはありませんが?』

「………………ひどいよフレンダさん」



 そんな話をしつつも俺は目元の雫と共に体の水滴を綺麗なタオルで拭きとって風呂場を出た。

 そして俺の部屋のリビングに向かうと、俺が風呂を上がるのを待っていたシルビアとアンとエルセーヌさんが何やら話をしている。



「シルビア、風呂空いたぞ」

「は、はい! ただいま入ります!」



 シルビアがそう言ってたたたっと風呂場へ駆けていく。

 なんか慌てていた気がしたけど、どうしたんだ?



「ねぇフーマ様。シルちゃんの裸を見たって本当?」

「ん? あ、ああ。そういえばそうだな」

「オホホホ。シルビア様もああ見えて大胆ですわね。まさか戦闘中に全ての服を脱ぐ様な方だとは思いませんでしたわ」

「魔道具を使うために必要な事だったんだから仕方ないだろ」

「そんな事より、その魔道具を使うのは今度からフーマ様に許可をとってからにしろって言ったって本当?」

「言ったけど、何かマズかったか?」

「ううん。むしろフーマ様がそう言ってくれて助かったよ。ほら、シルちゃんってばフーマ様のためならすぐに服を脱いじゃいそうでしょ?」

「まぁ、確かに」



 シルビアの俺への忠誠心はかなりのものだし、俺のためとあらば貞操観念を取っ払って行動しそうなところはかなりある。

 実際のところ、今日だって魔道具を使うために全ての衣類を脱ぎ捨てた訳だし。



「オホホホ。それでは私もフーマ様が望まない限りは服を脱がない様にいたしますわ」

「え? エルセーヌさん服脱がないの? ばっちぃ」

『確かに汚いですね』

「エルセーヌさん。お洋服はちゃんと洗ってお風呂も毎日入った方が良いよ?」

「お、オホホ。なんだか悪意的なニュアンスのズレを感じますわ」



 そんな話をしつつ風呂上りにアンが淹れてくれた紅茶を飲んでいると、隣の部屋から舞がやって来た。

 舞がやって来たところまでは何ら不思議ではないのだが、わざとらしく頬を膨らませながら口でプンプン言っている。

 また何か新しい遊びでも思いついたのか?



「どうかしたのか?」

「プンプン。私は怒っているわ」

「へぇ、何で?」

「風舞くん。私というものがありながらミレンちゃんとデートの約束したでしょう。プンプン」



 舞の言い分は十分理解できるし申し訳ないとも思うのだが、特徴的な口癖のせいで話をスッと飲み込み辛い。

 エルセーヌさんのオホホには大分慣れてきたのに、舞のこれはなんで受け付けないのだろうか。



「ねぇフーマ様。ミレン様をデートに誘ったって本当?」

「あぁ……まぁ、そうだな」

「へぇ。ほぉ……」

「なんだよ」

「別にぃー」



 アンがそう言って優雅に紅茶に口をつける。

 な、なんなんだよ。



「それで風舞くん。私というものがありながらミレンちゃんをデートに誘ったのはどういう了見かしら?」

「え、えぇっと。成り行きで……」

『おいフーマ。お姉様はお前ごときに誘われて成り行きでデートに行くほど安い女ではありません』



 確かに。

 これはちょっとローズに失礼だったか。



「……えぇっと。どうしてもローズとデートに行きたかったから誘わせていただきました」

「そう。プンプン。まったく、私という完璧超人彼女が出来た日に別の女の子をデートに誘うだなんて風舞くんは随分と女ったらしなのね。知っていたわ」



 知っていたわ?

 あぁ、見損なったわって言いたかったけど、俺が女ったらしだって知っていたからそう言ったのか。



「え、えぇっと。ごめんなさい」

「プンプン。別に謝る事はないわ。仮に風舞くんが私以外の女の子とデートに行くのが嫌なら私がもっと頑張って風舞くんをメロメロにすれば良いだけだもの」

「それでもごめんなさい」

「ふふ、だから怒っていないと言っているでしょう?」

「オホホ。しかし先ほどからプンプンと言っているではありませんの」

「それは何か彼女っぽい事がしたかっただけよ。でもそれももう十分に堪能できたから、今度は風舞くんに甘えることにするわ」



 そう言って舞がソファーに座っていた俺の膝の上に座って、俺の両腕を舞の正面に回し始めた。

 最終的には俺が舞を後ろから抱きしめている形になって落ち着く。



「ねぇ風舞くん。私が好きな男性は風舞くんだけだけれど、私もハーレム系主人公を目指しているから風舞くんが恋人を何人作ろうと文句は言わないわ」

「なんだそりゃ」

「でも、私を構ってくれなくなったら風舞くんが嫌と言ってもこうして甘えにくるから覚悟してちょうだい。私は風舞くんが私とずっと一緒にいてくれると言った言葉を信じているわ。分かったわね?」

「はい。よく分かりました」

「よろしい。それでは私の頭を撫でてちょうだい!」

「はいはい。舞ちゃんは今日も可愛ゆうござんすね」

「ふへへぇ。当然よぉ~」



 舞がそう言ってくにゃんと俺に体重を預けて来る。

 何というか、俺の彼女が凄く可愛い。



『はぁ、こういうのをリア充爆発しろというのですね。ようやくアカリの言っていた事が分かりました』

「フーマ様。マイ様とラブラブなのは良いと思うけど、人前だという事を忘れないでよ?」

「オホホ。私もご主人様に頭を撫でてほしいですわ」



 舞とイチャイチャしていたら三人から一斉に文句を言われてしまった。

 な、なんだか急に恥ずかしくなってきたな。



「舞、ちょっと離れてくれないか?」

「ふっふ~ん♪ いーやーよー」

「アン、どうしたら良い?」

「私に聞かないでよ。マイ様とイチャイチャしているフーマ様なんてもう知らない」



 ため息交じりにそう言ったアンが残っていた紅茶を一気に飲んでリビングを出て行ってしまう。

 はぁ、後でちゃんとアンに謝らないとだな。

 そんな事を考えつつ部屋の出口の方を眺めていると、今し方出て行ったばかりのアンがお客さんを連れて戻って来た。



「フーマ様。お客様です」

「お客様? あぁ、殿下でしたか。これはわざわざどうも。ほら舞、殿下の前なんだからしゃっきりしてくれ」

「しゃっきり!」



 舞がそう言って本当にしゃっきりし、凛とした態度で俺の横に座りなおす。

 お姫様の方は、今日はヒルデさんとシャリアスさんと一緒か。

 シャリアスさんをこうして招き入れるのは初めてだな。



「お見苦しい処をお見せしました」

「いいえ。急な来訪に対応していただき感謝いたします」

「それで今日は一体どういった御用で…」

「本日は先日の依頼の達成報酬の件で参りました」

「あぁ、そういえばそんな話もありましたね」



 お姫様を部屋のソファーに案内してから俺と舞も揃って座る。

 ってあれ? なんかシャリアスさんがキョロキョロしてるけどどうしたんだ?



「高音様?」

「いえ、なんでもないです。それで報酬の件でしたか?」

「はい。私といたしましては出来る限り高音様と土御門様のご意向に添いたいのですが、何か望むものはありませんか?」

「いいえ。元はと言えば私達は自由に行動する代わりに姫殿下の依頼をお受けしたのですし、報酬は何もいただけません」



 舞がキリッとした顔でそんな事を言う。

 確かに舞の言う通りではあるんだけど、俺は報酬ほしいなぁ。



「土御門様。これは以前高音様にもお話した事なのですが、皆様には何か形のあるものを報酬としてお渡ししなくては他の者に示しがつきません。どうか私のためと思ってお受け取りください」

「しかし…」

「ツチミカドマイよ。あまり殿下に恥をかかせるものではないぞ」

「そうだぞ舞。くれるって言うならもらっておこう」

「おや? 高音様は以前報酬はいらないとおっしゃっていたのでは?」



 ヒルデさんがニヤリと口角を上げながらそんな事を言う。

 この人も大概イタズラ好きな人だな。



「思い返してみたら欲しいものがあったんですよ」

「それは何よりです。それでは高音様の望みをお聞かせくださいませんか?」

「はい。俺はお金が欲しいです」

『おい、それはあまりにも情けなくありませんか?』



 そんな事を言っても俺が欲しいものなんてお金ぐらいなんだから仕方ない。

 ソーディアで礼服を買うときにボタンさんに借金してからかなり経つし、そろそろ借金の返済をしたいのだ。



「金銭ですか」

「はい。使いきれないほど膨大な量は必要ありませんが、少しで良いのでいただけませんか?」

「分かりました。それでは土御門様は何がよろしいですか?」

「それでは私も金銭でお願いします。価格は冒険者ギルドの依頼とした場合の適正価格をいただければと思います」

「分かりました。ヒルデ、今日中にお渡し出来る様に用意しておいてちょうだい」

「承知しました」



 そう言ったヒルデさんがお辞儀をして去って行く。

 よし、これで借金返済の一助にはなりそうだな。

 そんな事を考えて心の中でガッツポーズをしていると、お姫様にガン見されている事に気がついた。



「あの、何か?」

「高音様は不思議なお方ですね」

「そ、そうですか?」

「はい。時には子供らしく時には大人らしく、時には女性で時には男性で、ここまで幅広い心を持っている方はそういらっしゃません」

「そうですか」

『さてはこの小娘、フーマに気があるのではありませんか?』

「マジで?」

「高音様?」

「い、いえ。なんでもないです」



 このお姫様が俺に気があるだって?

 確かにこのお姫様は間違いなく将来美人になりそうだけれど、やんごとなき御身分の方だしなぁ。



「風舞くん。流石に節操がないのは私でも怒るわよ?」

「ゴホンっ。それで姫殿下、おそらくですが報酬の件以外にもお話があるのでは?」

「はい。実は今後の我々のジェイサットに対する方針をお伝えに参りました」



 わお、予想外に重要な話を持ってきたな。

 これはローズにも来てもらった方が良いんじゃないか?



「すみません殿下。そのお話をお聞きする前に、少しお時間を頂いてもよろしいですか? 俺の配下にもお話を聞かせていただきたいです」

「ええ。構いませんよ。シャリアスもよろしいですね?」

「はい。もちろんです殿下」



 あれ? 心なしかシャリアスさんが嬉しそうにしている気がする。

 いやいやいや。まさかな。

 シャリアスさんは人間中心主義らしいし、どこぞの変態女騎士みたいな事は考えていないはずだ。



「それでは高音様、土御門様。お話は今晩改めてさせていただきます。その時に依頼の報酬もお渡ししますので、そのおつもりで」

「はい。ありがとうございます。それではまた」

「はい。失礼いたします」

「タカネフーマよ。あの吸血鬼の少女にも話を聞きたいから必ず連れて来るのだぞ」

「は、はい」



 おい、これは本当にローズに聞きたい話があるだけだよな!?

 決してシャリアスさんも変態なわけじゃないよな!?




本日もう1話投稿します。

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