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22話 魔王と勇者の称号

イノシシの魔物の名前をファングボアからタスクボアに変更しました。

 風舞




「はい。それではタスクボアの素材は一頭あたり銀貨8枚なので、タスクボアの分は合わせて銀貨56枚ですね」



 ダンジョンでの二回目の探索を終えた俺達は冒険者ギルドにて素材の買取をしてもらい、そのまま酒場で夕飯を食べながら報酬について日本語で語っていた。

 日本語の方が話し慣れてるし、会話の内容にも気を使わなくていいからな。



「うーん。ホーンラビットに比べるとイマイチな金額ね」

「そうじゃな。しかし猪よりも兎の方が何かと需要があるからのぉ」

「なんか少し強い相手と戦ったのにこれじゃあ、やるせないよなぁ」



 ホーンラビットの素材が一羽あたり銀貨30枚、それに比べてタスクボアは銀貨8枚で魔石の買取価格は両方とも大銅貨3枚。

 これじゃあお金のことを考えるならタスクボアじゃなくてホーンラビットだけを狩っていたくなる。


 俺達は旅のためにレベルアップをする必要があるのでそんな事はしないが、これではタスクボアと戦おうと思う冒険者も少なくなるんじゃないか?



「そうねぇ。あ、そういえば風舞くんは魔法の習得にあとどれくらいステータスポイントがいるのかしら?」

「そうだな。火魔法まであと15くらいだと思うぞ。だから、レベル10を超えたくらいで覚えられるんじゃないか?」



 魔法やスキルを覚えるときの必要ポイントは覚えたいスキルや魔法を思い浮かべればあとどのくらいポイントが必要かなんとなくわかる。

 結構謎の多いステータスカードだ。

 見たい項目を思い浮かべれば勝手に表示が変わるし、謎のハイテクで出来ているのかもしれない。



「そうか。では第3階層に入る頃にはお主は魔法を使えるようになってそうじゃの」

「だといいな。転移者はステータスの伸びはいいけど、俺の場合初期値が魔力と知能以外そこまで高くないからなぁ。早く魔法で火力の底上げをしたい」



 この世界の普通の人々はレベルアップで増えるステータスの数値の平均が2から3くらいらしいが、転移者の俺達の場合3から4、ものによっては5も上昇する。

 この差がレベルが上がるごとに無視できない差になっていくのは言うまでもない事だろう。



「風舞くんの必殺技がより強力になるって訳ね」

「攻撃魔法を覚えたら早く使えるように練習しなくちゃだな」

「そうじゃな。ふむ。そういえば、フウマの技の名前は決まったのかの?」



 ローズがふと思い出したように舞に尋ねた。

 そういえばそんな話もあったな。

 俺も少し気になる。



「うーん。風舞くんの必殺技は攻撃の自由さも売りだから、あの高速転移をなんとか表現したいのだけれどまだ納得のいくものが出来てないのよね」

「もう高速転移でいいんじゃないか?」

「ダメよ! そもそも私達は世界を股にかける存在になる訳だから、舐められる技名じゃダメなのよ!」



 それから舞が英雄の志とでも言うようなものについて語り出した。

 英雄たるもの可愛い女の子を侍らせろだの、可愛いメイドさんが欲しいだの舞の欲望の話が大半なのだが、力説している事だし放っといてやろう。



「こわ」

「じゃろ? 妾もそう思う」



 俺とローズは白熱する舞を眺めながら話を続けた。



「そういえば、ソレイドの街のダンジョンは適正レベルどれくらいなんだ?」

「第1階層が10、そこから1つ階層が上がるごとに適正レベルが1ずつ上がっていくの。まぁ、10階層ごとにおる迷宮王はその適正からは少し外れるがの」

「ふーん。じゃあ俺の場合適正から少し外れてるのか」

「お主は転移者で勇者じゃからな。あまり適正などはあてにならぬ」



 ローズがそう言って果物ジュースをクピクピ飲む。

 この体になってから甘いものが美味しくてかなわんと言っていた。



「勇者でも戦力向上に繋がるのか?」

「うむ。その称号は勇敢さが増し正義感が強くなると人族の間では言われておる。正義感云々はともかく戦闘中に恐怖心に潰され辛くはなっておるじゃろうな」

「へー。確かにそれなら俺が戦えるのも納得だな」

「とは言え、気休め程度のものじゃからな。お主の戦はお主自身の力によるものじゃ。誇って良いと思うぞ」

「ありがとよ。それで魔王の方はどんな効果があるって言われてるんだ?」

「覇道を求め破壊衝動が強くなるらしいぞ」

「おいおいマジかよ。それって大丈夫なのか?」

「確かに魔王になった頃は落ち着きがなかったが、もう長いこと魔王の称号を持っておる。流石に乗りこなしたわい」



 千年を生きる魔王様はもう称号の欲になど呑まれない強い精神をお持ちだった。

 他者を愛せる優しい魔王。

 それが我等がローズなのである。

 本人には言わないけど。



「ふーん。称号にもいろいろあるんだな。そういえば魔王の称号ってどうしたら手に入るんだ?」

「なんじゃ? 魔王になりたいのかの?」

「いや、そういうわけではないんだが少し気になってな。俺もいつの間にか勇者になってた訳だし」

「ふむ。確かな事は言えんが魔王と勇者は認められればそうなると妾は考えておる」

「認められる? 誰にだ?」

「世界。正しくは人族と魔族じゃな。妾は多くの魔族を率いていくうちに魔王になった。つまり多くの者共に広く魔王として認知されたから魔王になったという訳じゃの」

「ふーんじゃあなんで俺は勇者なんだ? 別に有名じゃないぞ?」

「人族の転移者の多くは世界に救いをもたらすからの。既に世界の認識として異世界からの来訪者と勇者は繋がりがあるんじゃろうよ」

「ほーん。なるほどねぇ」



 世界に認められるか。

 多くの人に認められれば実際にそうなる。

 これはもっと称号について調べていいかもしれない。

 もしかするとハーレム王とかあるんじゃね?

 …と言っとけば俺にもハーレム王へのフラグが立つかもしれない。


 なんて考えていると俺達が二人で話していることに気がついた舞が頰を膨らまして抗議の視線を向けてきた。



「って、聞いてるの!? フウマくん! ローズちゃん!」

「うむ。聞いておったぞ。可愛い獣人のメイドが欲しいのじゃろう?」

「ああ。俺も聞いてたぞ。エルフのお姉さんの貧乳をさわさわしたいんだろ?」

「ぬぬぬっ。そうだけど!! そうじゃないのよ!!!」



 舞が顔を真っ赤にして手をブンブン振る。

 実際には俺は聞いてなかったけど適当に言ったら当たったみたいだ。

 マジで言ってたのね。


 そんな事を考えながら舞の抗議から目をそらしていると、見覚えのある騎士姿の女性がいた。

 その女性が俺の視線に気が付いたのか、ふと振りかえると目を見開きピタっと固まった。



「ろ、ろろ、ローズちゃーん!!!」



 女騎士シャーロット再来である。

 シャーロットさんがローズに物凄い速さで近づきいつのまにか抱きついていた。

 全く見えなかったぞ。



「な、何故お主がここにおる!? それに妾はローズではない!! ミレンじゃ!!」

「うんうん。解ってるよぉ〜。この前は私を怖がらせようとしてつい嘘をついちゃったんだよね!? でも、あの恐ろしい千年を生きる魔王の名前を騙っちゃダメだぞ!」



 うわっ。

 ローズ、この前テンパりすぎて本名言ったのかよ。

 俺達の周りに座る人々がローズの名を聞いて一瞬身構えたが、続くシャーロットさんの言葉でなんだ子供の冗談かと食事を再開した。

 恐れられすぎだろローズ。



「おいっ! わかった。わかったから離せ! 妾は今食事中なのじゃ! お主はさっさと帰れ!!」

「もう、ミレンちゃんは相変わらずつれないなぁ。そんな可愛いミレンちゃんは私が持ち帰って食べてやろう!」

「ひぃっ!?」



 魔王ガチ怯えである。

 そんな今にも泣き出しそうなローズに舞が助け舟を出した。



「まあまあ。シャーロットさん。ここは離してあげてくれませんか?」

「ふん。誰だお前は? いや、見覚えがあるな。この前は腹を抱えていた女か」

「はい。私はマイムといいます。ミレン様とはパーティーを組ませていただいております」



 舞がもの凄い綺麗なお辞儀とともに自己紹介をした。



「ふむ。ミレン様とはお前なかなか身の程をわきまえているではないか! よし、お前の名前を覚えておいてやろう」



 どこの傲慢貴族だよ。

 お前騎士なんだろ?

 清廉さのかけらもないぞ。

 よだれ垂れっぱなしだし。



「はい。恐悦でございます。そこで提案なのですが、ミレン様をお離しいただけませんか?」

「いや、それはお前の頼みでも聞けないな」

「私の国にはお食事とご休憩と宿泊という文化がございまして、これは相手を落とすために必要な3段階の手順と古来より言われています。今晩は共にお食事をなさってみてはどうでしょうか? そうすればこの先にご休憩と宿泊が待っておりますよ」



 うわぁ最低な話だった。

 それって美人局の手順じゃなかったか?

 舞はローズを助けるよりも自分の面白さを選んだようだ。

 今も完璧な微笑みの口元が笑いを堪えてピクピクしている。



「ふむ。ミレンちゃんと休憩と宿泊。これはありだな。どぅへへへへ」

「ひいっ!?」



 シャーロットさんはそう言うとローズから離れて舞の横の席に着いた。

 ローズの正面の席である。

 一方のローズはシャーロットさんが離れた後、俺の腕をがっしりと掴んでぶるぶる震えている。



「ふ、ふーみゃ。助けて欲しいのじゃ。わ、妾にはもうお主しかおらにゅ。お主がいてくれないと妾は怖いのじゃ。もう怖いのは嫌なのじゃ」



 ローズは既に半べそをかいている。

 それにしても魔王にここまでのトラウマを植え付けるローズの叔母さんってどんな人なんだ?

 そんな危険人物間違っても会いたくないんだが。



「おいそこのお前。何をミレンたんと馴れ馴れしくしている。さっさと離れろ!」



 うわぁ。やっぱり俺は睨まれんのか。

 俺はローズに抱きつかれているだけで何もしていないんだが。



「まあまあ、とりあえず何か飲みものを頼みませんか?」

「うむ。そうだな。これから私とミレンたんのめくるめく愛のお食事が始まるのだ。とりあえずは乾杯をしなくてはな!」



 え、マジ?

 もう始まんの?俺帰っちゃダメ?

 ローズはフーマフーマって俺の名前を呼びながら泣いてるし、舞は笑いを堪えてえピクピクしてるし、シャーロットさんはめっちゃ俺を睨んでくる。

 正直俺の手には負えないんですけど。


 誰か助けて。マジで!!

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