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クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...  作者: がいとう
第4章 微妙にクラスメイト達と馴染めていない気がするんですけど…
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22話 襲来

 


 風舞




「コホン。失礼しました」

「い、いえ。お気になさらず」



 お姫様がエルセーヌさんに興奮して、それが落ち着くのを待つ事約10分。

 俺達の話し合いはようやく再開された。

 つい先程までのお姫様との会談ではかなり緊張していたのだが、あの体たらくを見てはそれももうない。



「それでは話の続きと参りましょう。今後の我が国の大まかな方針についてです」

「殿下はこれまでの歴史とは異なる道を歩むとの事でしたが…」



 舞が真面目な口調でそう言って話を促す。

 どうやら舞は先程のお姫様の少女らしさを頭の隅に追いやって真剣に会談に臨むようだ。

 これは俺も気を引き締め直さないとだな。

 相手は俺より年下でもかなり賢い少女だろうし、油断していては足元をすくわれかねない……かもしれない。



「はい。此度のジェイサット魔王国の目的は我が国の人を含めて資源を手に入れることです。つまり、ジェイサット魔王国は我が国に勝利して終わりではなく、我が国はジェイサットにとって魔族同士の戦争へ向けた足掛かりでしかありません」

「となると、ジェイサットはラングレシア王国との戦争に全ての力を割く事は出来ないという事ですか」

「ええ。両国総てを挙げての総力戦でしたら現在の我が国に勝ち目は無いでしょうが、ジェイサットが我が国を占領した場合に得るであろう資源よりも多くの損害をジェイサットにもたらす事が出来れば、此度の戦争から我が国を守り抜く事が出来ます」

「ふむ。機会費用の重さを相手に感じさせるまでの戦争というわけか」



 俺の横に座っていたローズが顎に手を当てながらそう言った。

 機会費用っていうのは確か、自分がやらなかった事をやった場合に得る事の出来る利益の事だったと思う。


 今回の場合だと、ジェイサットがラングレシアを攻め込んで得る利益と、ジェイサットがラングレシアに攻め込まなかった場合に国内に保持しておける軍隊や食糧などの資源を比べて、ジェイサットがこれ以上ラングレシアに攻め込むと損をするなと思わせればそれで戦争は終結する。

 きっとローズが言ったのはそういう事だろう。


 なんか既に理解するのも必死だから、俺は外で遊んでて良いかなぁ。

 これ以上難しい話をされたらついて行けないんだけど…。



「実際には魔族領域の情勢がどう動くかによって戦況は変わって来ますが、ジェイサットの総資産のおよそ5パーセントを戦争で消費させればジェイサットは我が国から手を引くはずです」

「経済的制裁でジェイサットに損失を出すことは出来ないのですか?」

「魔族と人族の間での国家規模での交易はほぼ無いに等しい。おそらくそれは無理じゃろうな」

「となると直接的な攻撃で損害を出すしか無いわけね」

「はい。幸いにも我が国は諸国との交易で物資の補充は継続的に出来ますし、籠城戦の様に耐え切れば後は時間が解決してくれます」



 あぁ、ダメだこりゃ。

 もう俺にはついていけないっぽいや。

 舞とローズとお姫様の話が難しすぎる。

 今晩にでも舞かローズに優しく教えてもらおっと。



『おいフーマ。話が難しくて付いていけないのかもしれませんが、このまま寝るんじゃありませんよ』



 全人類の中で高校生が最もつまらない話を聞いてると寝てしまうと言うのに、フレンダさんは無茶な事をおっしゃる。

 何か眠気が覚める様な面白い事でも起き無いかなぁ。


 そう思っていたその時、エルセーヌさんが舞とローズとお姫様の話を中断させた。



「オホホホ。お話し中失礼いたしますわ。どうやら場内に張っておいた警戒網に誰かが引っかかった様ですの」

「ヒルデ。詳細は分かりますか?」

「人数までは分かりませんが、場内を泳がせていた賊の他に何者かが入り込んだ様です。この位置は、勇者様方に接触するつもりでしょうか」



 ヒルデさんがどこからか取り出した板状の魔道具を見ながらそう言う。

 すげぇ、魔法式のタブレットか?

 俺もあれ欲しい。



「オホホ。どうなさいますの?」

「至急近くの者に伝令を飛ばして取り押さえます」

「あ、それじゃあ勇者の避難を俺に任せてもらえませんか? 安全な場所に避難させるだけなら俺にも出来ると思います」

「私共としては大変助かりますが、よろしいのですか?」

「はい。殿下は引き続き会談を続けてください。シルビア、エルセーヌさん、行けるか?」

「はい!」

「オホホ。かしこまりましたわ」

「ヒルデ。私の護衛はエスだけで大丈夫ですから貴女も行きなさい」

「分かりました。エス、姫様を頼みましたよ」



 ヒルデさんのその視線の先に目を向けると、そこにはいつの間にか無表情の白髪の少年が立っていた。

 エルセーヌさん並の突然の登場だな。

 この技量の上に白髪で身長が低いし、きっと強いぞ。



「それでは参りましょう高音様。場所は訓練場の辺りです」

「分かりました。それでは行きます、テレポーテーション!」



 よーし、何とか理由をつけて会談をバックれる事が出来たし頑張っちゃうぞ!




 ◇◆◇




 風舞




 俺達が転移魔法で訓練場まで転移して来ると、クラスメイト達は模造の武器を構えて訓練をしていた。

 どうやら複数対複数の訓練中だった様である。



「サーディン、侵入者です。事が片付くまで勇者様方に避難していただきます」

「はっ。勇者様! 訓練中止だ! 集合!」



 ヒルデさんの迅速な指示により命令を発したサーディンさんの目の前にクラスメイト達が全員整列する。

 おぉ、流石は幼少から高度な行軍練習を受けた日本人だな。

 みんなダッシュで来て数秒で整列したぞ。



「皆様。ただ今場内に侵入者が現れたため、一時的に避難していただきます」

「侵入者!? それなら俺達も加勢しないとじゃ…」

「黙れ! 誰が発言の許可を出した!」

「申し訳ございません教官!!」



 わお、まるで軍隊みたいだ。

 これは学校では習わない範囲だったと思う。

 みんなしっかり訓練してたんだな。



「魔法の座学を行なっている勇者様方はこの後に同様に避難していただきますので、皆様はお先にこちらの高音様の転移魔法で安全な場所に転移してください」

「えぇっと、どこに転移させましょうか?」

「高音様にお任せします」



 お任せしますって言われても、安全な場所に心当たりなんて…。

 いや、あるにはあるけどさぁ。



『おいフーマ。ボタンのところで良いではありませんか』

「はぁ、やっぱりそうっすよねぇ」

「転移先は決まりましたか?」

「はい。それじゃあ、みんな前の人の肩に手を置いて、最前列の人は横の人と手を繋いで………よし、テレポーテーション」



 こうして、俺はここにいたクラスメイト全員を雲龍の目の前の道に転移させた。

 ボタンさんならきっと事情を察して皆を守ってくれるだろう。

 迷惑かけてごめんね。



「フーマ様。勇者様方だけで転移させてしまっては言葉が分からないのではありませんか?」

「あ、そうだった」

「もしよろしければ、私がボタンさんに事情をお伝えしますが…」

「それじゃあ頼んで良いか? やる事が済んだらすぐに迎えに行くから」

「委細承知しました! お任せ下さいませ!」

「よし、それじゃあ頼んだぞ」



 これで勇者達はシルビアの案内でボタンさんに会えるだろう。

 シルビアは少なからず日本語も話せるみたいだし、悪い様にはならないはずだ。



「よし、それじゃあ次に向かいましょう」

「次は中庭の近くです。まずはそちらまで転移をお願いできますか?」

「分かりました」

「サーディンは暗部と合流した後に虫の駆除をお願いします」

「はっ! お気をつけてヒルデ様!」



 ヒルデさんはサーディンさんに一瞥だけすると、すぐに俺の肩に手を置いた。

 この人、もしかしてめちゃくちゃ偉い人なのか?

 俺はそんな事を考えつつ中庭に転移する。



「こちらです高音様」

「あ、はい」



 そういえば俺が一回中庭に来ていた事をヒルデさんは知っていたのか。

 あのタブレットに俺たちの位置情報でも表示されていたのだろうか?

 良いなぁ、俺も一台欲しいなぁ。



「オホホホ。もしよければ盗んで参りましょうか?」

「やめなさいよ。また尻を叩かれたいのか?」

「お、オホホ。冗談ですわ」



 そんな話をしながら走ってヒルデさんの後を追って行くと、俺達は大学にありそうなホールみたいな教室にたどり着いた。

 メガネのおじさんの授業を受けていたらしいクラスメイト達が、俺達がいきなり入って来た事で入り口の方へ一斉に目を向ける。



「皆様。侵入者が現れましたので一時避難していただきます。詳細は追ってお話しいたしますので、まずはこちらにお集まり下さい」



 ヒルデさんのその指示により、授業を受けていたクラスメイト達は首を傾げながらも広い教壇の上に集まり始める。

 話に聞いていた通り、明日香もここで授業を受けていた様だ。

 腰に剣を差してるのに魔法特化なのだろうか?



「オホホホ。ご主人様、どうやら少し遅かった様ですわ」

「何? 足止めの人達がいるんじゃないのか?」

「オホホ。少しだけ相手が上手だった様ですわね」



 エルセーヌさんはそう言うと、スカートの中から黒い長剣を取り出してスラリと構える。

 エルセーヌさんが武器を持ってる所なんて初めて見たぞ。



『おいフーマ。早く他の勇者を転移させなさい。このままではエリスの邪魔になります』

「みんな、安全な場所に転移させるから近場の人と手を繋いでくれ! 転移先には天満くん達がいるから、合流してくれると助かる!」



 俺が真剣な顔でそう言うと、クラスメイト達は俺の指示に頷いてすぐに行動にうつしてくれた。

 俺はそんなクラスメイト達を次々と雲龍のそばまで転移させて行く。

 だが…



「おい、なんで残ってるんだよ」



 明日香だけは他のクラスメイト達と手を繋ぐ事無く最後まで教壇の上に立っていた。



「アンタの指示に従いたくない」

「そんな事言ってる場合じゃないぞ」

「分かってる。でも、アンタの指示に従うぐらいならここにいた方がマシ」



 明日香はそう言って剣を抜くと、俺に背を向けて集中し始めた。



『近づいたらそのまま斬られそうですね』

「もう放っておきましょ。それよりもまずは自分の安全です」



 俺はそう言いながらアイテムボックスから片手剣を出してエルセーヌさんの横に並ぶ。



「相手は?」

「オホホ。最低でもご主人様も感知している通り馬鹿みたいに魔力を垂れ流している者が一人、他にも伏兵がいるかもしれませんわ」

「伏兵の方はエルセーヌさんでも感知できないのか。ヒルデさんには分かりますか?」

「いえ。私も正面から来る者以外は把握できていません」

「そうですか」



 既に知覚出来ている相手は一人いるのだが、それ以外に何人いるか分からないと正面の相手にすら集中しづらい。

 それなのに、この教室に向かって来ている相手の気配はとんでもなくデカいときた。

 これはかなりマズイかもな。



「オホホホ。心配ありませんわご主人様。ご主人様は私が相手を押さえ込んだ瞬間に私ごと敵をこの前一緒に行った草原に転移させれば十分ですの」

「勝てるのか?」

「オホホ。これでも私、元ご主人様に鍛えられていますのよ? 並の相手に負けるほど弱くはありませんわ」

「並の相手か? これ」

「オホホ。危なくなったら逃げますから心配ありませんわ。それよりもご主人様は伏兵への警戒をお願いしますの。私の勘だと間違いなく一人は潜んでいますわ」

「あいよ。それじゃあそっちは任せるぞ」



 俺は不敵に笑うエルセーヌさんにそう言った後で数歩下がり、黒板に背を向けて室内を観察する。

 教室内の机の上にはクラスメイト達の教材やノートが出しっ放しになっており、事の緊急さを否が応にも実感させてきた。



「アンタって戦えるの?」

「まぁ。そこそこ」

『なんですかこの小生意気な娘は。この小娘から倒してしまってはどうですか?』



 心の小さいフレンダさんがそんな事を言っている。

 今はそんな事している暇は無いでしょうが。

 そう思って溜息をついたその時、ヒルデさんが短く呟いた。



「来ました」



 その声に導かれるままに視線だけを教室の入り口に向けると、貴族っぽい格好をした白い角の生えたおっさんが血のついた剣を持って入り口に立っていた。



「あらら。やっぱりこれだけしかいないか」

「オホホ。それではお家に帰ったらどうですの?」

「いやぁ、そうしたいのは山々なんだけど、何の成果もなく帰れるほどおじさんも暇じゃないんだよね。そこの二人は勇者でしょ?」

「な、なんで分かったんだ?」

「いやいや、全然隠す気もない癖に何驚いたフリしてんのさ」

「ふっ、バレてしまっては仕方ない。俺が勇者風舞だ」

「えぇぇ。大物感出してるけど、名前すら聞いたことないんだけど」



 おっさんがそう言いながらボリボリと頭をかく。

 あの白い角、もしかしてあれが魔族で一番多いってローズから聞いてた鬼か?



『おいフーマ。そのまま話を続けてあの鬼の気を引いておきなさい。私だけに分かるエリスからの合図が来たら5カウントしますので、ゼロであの男を転移させるのですよ』



 フレンダさんにだけ分かるエルセーヌさんの合図か。

 エルセーヌさんは俺に背中を向けてるのに、合図なんて出せるのか?

 いや、今はフレンダさんとエルセーヌさんを信じて言う通りにするしかないか。



「ところでおっさん。おっさんはやっぱりジェイサットから来たのか?」

「そうだよ。まぁ、この情勢なら違くてもそう言うと思うけど、ジェイサットから来たと思っておいてくれればそれで良いよ」

「ふーん。それじゃあ今度はおっさんから一つ聞いていいぞ」

「あれ? てっきり質問攻めにされると思ったんだけど、おじさんも質問して良いの?」

「そうじゃないとフェアじゃないだろ?」

「へぇ、それじゃあお言葉に甘えようかな」

「あ、スリーサイズは測ったことないから秘密な」

「何言ってるんだい。そんなの聞くつもりないよ」

「え? 聞かないのか?」


『来ました。カウントを始めます。5…4…3…』



 フレンダさんのカウントダウンが始まる。

 出来るだけ狙っている様には見せず、正確なタイミングで転移させる事に集中しろ。



『…2…1…』


「なんでそこでがっかりすん…ガフッ!?」

『ゼロ!』



 フレンダさんがゼロと言うと共にエルセーヌさんに後ろから胸を貫かれていたおっさんをエルセーヌさんに触れてから転移させ、俺は伏兵に備えて重心を落とす。



『回避!』

「はい!」



 フレンダさんの指示通りに転移魔法で回避すると、俺の元いた場所に黒づくめの男が立っていた。

 黒づくめの男は一撃で俺を殺すつもりだったのか、攻撃の勢いを殺しきれずに重心がブレている。



「せいっ!!」



 教室内の空中からその姿を見ていた俺は再び転移して黒づくめの男の背後に回り込み、空間断裂を使って一撃で始末した。

 次は…



「私は大丈夫です! 明日香様をお願いします!」



 ヒルデさんが黒づくめの男と戦いながら俺に指示を出してくる。

 その指示に従い明日香に視線を向けると、明日香は黒づくめの男に馬乗りにされて目の前に迫るナイフを両手で抑えていた。



「ったくもう!」



 明日香に馬乗りになっている男のそばに転移し、そのまま空間断裂を発動させながら片手剣を振り下ろす。

 黒づくめの男は俺の攻撃を見る事もなく明日香の上から退き、ナイフを構えて俺と向かい合った。



「大丈夫か?」

「う、うん」

「そのままそこから動くな…よ!」



 俺はそう言うと同時にファイアーボールを放ち、黒づくめの男が動くのを集中して待つ。

 一方の黒づくめの男は俺の魔法を半身になってかわそうとしたが…



「馬鹿め!」



 再び転移魔法でファイアーボールの軌道上に転移させられてファイアーボールをモロに食らう。

 俺はその隙を見逃さずに黒づくめの男の目の前に転移し、そのまま空間断裂で首をはねた。



「ふぅ。まだいますかね?」

『まだ油断は出来ませんが、おそらく大丈夫でしょう』



 ヒルデさんは自力で相手を倒したみたいだし、軽く部屋を見渡しても周りの魔力を探っても敵の気配はない。

 フレンダさんの言う通りこれ以上の伏兵はいなさそうだな。

 エルセーヌさんが気掛かりだが、俺が向かってもおそらく足手まといにしかならないし、彼女を信じて無事な帰りを待とう。

 そう判断した俺は、教壇の上で座り込んでいる明日香に声をかけた。



「おい、大丈夫か?」

「…したの?」

「ん?」

「殺したの?」

「ああ。そっちは心臓を切ったし、そっちは首をはねたから死んでると思うぞ」

「そう」



 明日香は短くそう言うと、俺の視線から逃れる様に視線を落とす。

 なんか嫌に大人しいな。



『フーマに怯えているんじゃありませんか?』

「えぇぇ。俺、何か悪いことしましたか?」

『怯えられていないと思うなら手でも差し伸べて見れば良いじゃないですか』



 フレンダさんがそう言うなら…。



「おい、立てるか?」

「………」

『やっぱり怯えているじゃないですか』

「マジかいな」



 どうしよう。

 別に明日香に対して何か思うところがあった訳じゃないけど、普通に悲しい。

 この差し出したままの右手はどうすりゃ良いんだ?


 そう思ってなんとなくヒルデさんの方が気になったその時、舞が勢いよく教室まで走って来た。



「風舞くん! 加勢に来たわ……よ?」

「あぁ、ありがとな。でも、こっちは片付いたぞ」

「そう、途轍も無い気配を感じて走って来たのだけれど、遅かったのね」

「ああ。強そうな奴は今頃エルセーヌさんが相手してくれてるはずだ」

「エルセーヌが相手なら心配なさそうね。それより…何をしているのかしら? 篠崎さんをいじめてるの? いじめはダメよ?」

「いや、別にいじめてた訳じゃないぞ?」

「そうなの? それにしては随分と風舞くんに怯えているみたいだけど…」



 舞がそう言いながら明日香の元へ寄って行く。

 舞までフレンダさんと同じ事言うのか?



「大丈夫? 怪我はないかしら?」

「う、うん。ありがとう土御門さん」

「あら、随分と顔色が悪いわね。よいしょっと」

「つ、土御門さん!?」

「急な戦闘で疲れたでしょう? 私が医務室まで運んであげるわ」



 舞はそう言うと、明日香をお姫様抱っこしたまま教室の出口へ歩いて行った。




「それじゃあ風舞くん。私は篠崎さんを連れて行ってから戻るから、あとは任せたわね」

「あ、ああ。了解」

「ふふっ。風舞くんもお疲れ様」



 舞はそう言って微笑むと、そのまま明日香を抱えて教室から出て行った。

 教壇の上に残された俺にヒルデさんが話しかけてくる。



「ご協力いただきありがとうございました高音様」

「あ、いえいえ。力になれたみたいで良かったです」

「ふふっ。そう畏る事はありませんよ。高音様のお陰で無事に騒ぎを鎮める事が出来たのですから」

「い、いえ。俺がした事なんて大した事じゃありませんよ」

「そうですか? この男たちはそれなりに強かったと思うのですが、高音様は無傷で二人も倒してしまわれたではありませんか」

「それを言うならヒルデさんだってそんなに動き辛そうな服でちゃっかり倒してたじゃないですか」

「私はメイドなのでこの服が一番動きやすいのですよ。さて、お互いに返り血も付いていますしそろそろ移動しましょうか」



 ヒルデさんはそう言うと、手元の返り血をハンカチで拭ってから教室の出口へ向かう。

 さっきの戦闘中にパッと見た感じだと素手で戦っていた気がするんだけど、気のせいか?



「高音様? どうかなさいましたか?」

「あ、いえ。何でもないです」

「大丈夫ですよ高音様。きっと落ち着けば再び明日香様とお話ができるはずです」

「あ、はい。ども」



 どうやら明日香に怯えられた件を悩んでいたと思われたらしい。

 ヒルデさんまでこう言うって事は、明日香が俺に怯えているというのはいよいよ間違いなさそうである。



「はぁ」

『どうかしましたか? もしかしてあの小娘の瞳に恋してしまったのですか?』



 何だかなぁ………心が痛い。

次回17日予定です

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