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クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...  作者: がいとう
第4章 微妙にクラスメイト達と馴染めていない気がするんですけど…
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15話 高い高い

 風舞




 お姫様との会談を済ませた後、一度ソレイドに戻ろうとしたらクラスメイトの天満勇気が俺達のいる部屋を訪ねて来た。

 日本にいた頃の彼はその容姿と性格から多くの女子に人気があり、いつもキラキラとした学園生活を送っていた。

 つまり教室で本を読むかボンヤリしていた俺とは違う、生き物として高尚な存在なのである。



「あれ? もしかしていないのかい?」



 部屋の外からそんな声が聞こえてくる。

 天満勇気を見てるとなんだか負けた気がしてくるから、出来れば会いたく無いんだよな。

 あいつ、すごいイケメンだし。

 そんな事を考えてドアの前で固まっていたからか、舞が俺の様子を不審がって話しかけて来た。



「風舞くん? 開けないのかしら?」

「ああ、もう良いや。このまま帰ろう」

「よろしいのですか?」

「ああ。どうせイケメンが襲って来ただけだ。放っといても大丈夫だろ」

「て、敵襲ですか!?」

「そうだ。相手はかなり強力な存在だ。よってここは戦略的撤退を…」



 俺の話を真面目に聞いてくれるシルビアを丸め込もうと、イケメンの恐ろしさを説こうとしたその時…



「はいはい。日本語だったし私達のクラスメイトが訪ねて来ただけでしょう?」



 舞が呆れた顔をしながらそう言ってドアを開けてしまった。

 ちっ、いつもはちゃらんぽらんなのにどうして今の舞はこんなに真面目なんだ。

 普段だったら俺の悪ふざけに便乗して「退路の確保をするわ!」とか言って窓をぶち抜くぐらいするのに。



「あら、天満くんじゃない」

「やぁ、久しぶりだね土御門さん。高音くんも元気だったかい?」

「はい。お陰様で、それはもう」

『何故敬語なのですか? 学友なのでしょう?』



 俺も分からないですけど、自然と敬語が出て来たんですよ。

 もしかすると、俺の心のどこかでイケメンには敵わないという深層心理が働いているのかもしれない。



「どうしてここに? と聞くのは…野暮かしらね」

「あはは…篠崎さんから2人が城に来たと聞いたからいても立ってもいられなくてね」

「そう。心配をかけてしまった様でごめんなさい」

「いやいや。土御門さん達が謝る事じゃ無いよ。何か不幸なすれ違いがあっただけなんでしょ?」

「ふふ、そう言ってもらえると助かるわ」



 舞がそう言ってキレイな微笑みを浮かべる。

 ちくしょう。

 舞のその笑顔は俺でもめったに見られないんだぞ。



『何を悔しそうに歯ぎしりをしているのですか? 嫉妬ですか?』

「これだからイケメンは…」

『……嫉妬ですか。大丈夫ですよフーマにもそれなりに良いところはあります』



 フレンダさんは優しいな。

 やっぱりいつも俺と一緒にいるだけの事はある。



『まぁ、あの人間に敵うかは分かりませんが』

「こ、この性悪ナイチチ女が!!」

『なっ!?』

「うわっ!? どうしたんだい高音くん?」

「その、風舞くんは精神的に少し不安定なところがあるのよ」

「舞には言われたく無いわ!!」

「……そっか、きっと大変な生活を送って来たんだね。僕で良ければ相談に乗るよ」

「納得して俺に優しくするな! これだからイケメンは嫌いなんだ!」

「ごめんなさい天満くん。これ以上は少し…」

「そうだね。いきなり押しかけてしまってごめんよ」

「だから俺に哀れみの視線を向けるな!」

「大丈夫だよ高音くん。ここの人は皆良くしてくれるから今はゆっくりと休むと良い」

「ありがとう天満くん。でも、私達には帰る家があるから今日のところは失礼するわ」

「そっか。それじゃあ姫様には僕から言っておくよ。次はいつ頃城に来られそうなんだい?」

「そうね…3日以内にはまた来るつもりよ。その時はここに転移して来るから、この部屋は空けておいてくれると助かるわ」

「分かった。姫様にはしっかりとそう伝えておくよ」

「ええ。よろしくお願いするわ」



 舞がそう言って微笑むのを見て天満くんも微笑みを浮かべて頷き、俺の両肩に手を置いて爽やかな笑顔で話しかけてくる。



「僕達はみんな君達を待っているよ。元気になったらまずは訓練場に見学にでも来てくれると嬉しいな」

「俺を久し振りに保健室まで来た不登校児みたいに扱うな!」

「もう、興奮し過ぎよ風舞くん」

「ちくしょう! 普段は俺の方が冷静なのに!」

「それじゃあ天満くん。今日のところはこれで失礼するわね」

「うん。今日は2人の元気な姿が見れて良かったよ」

「ありがとう。クラスのみんなにはよろしく伝えておいてくれると助かるわ。風舞くん」



 舞がそう言って俺の手を掴んだのを見てシルビアとトウカさんが近づいて来る。

 エルセーヌさんは首を振って姿を消したし、ここに残って調査を続けるらしい。

 それじゃあ今日のところはこれで帰るか。



「今度来た時は俺と手合わせしてもらう! それまで精々首を洗って待っている事だな!」

「うん。その時を楽しみにしているよ!」

「ぐっ…覚えてろよ! テレポーテーション!!」



 こうして、俺達はキラキラ笑顔の天満勇気に見送られてラングレシア王国からソレイドまで転移魔法で戻って行った。

 ちくしょう、負け犬みたいなセリフしか吐けなかった。




 ◇◆◇




 風舞




『おいフーマ! 先程のあれはどういう事ですか!』

「元はと言えばフレンさんが…」

「わぷっ」



 ラングレシア王国からソレイドに戻って、いつも通りフレンダさんと言い争い始めたその時、ローズが転移直後の俺にぶつかって来た。

 どうやらローズが雲龍の中を歩いていた時に、その進行方向に俺が転移して来たらしい。

 ていうか、なんでローズは俺の胸に顔を付けたまんま固まってるんだ?

 抱きしめるでもなく腕を組んだままだし、かなり謎だ。



「えぇっと、ただいま?」

「うむ」

「なぁ、どうしたんだ?」

「ミレンはんはフーマはん達に置いていかれて寂しかったんよ。今も難しい顔をしながらここを行ったり来たりしてはったしなぁ」



 ボタンさんがカウンターの奥からそう言いながら出て来る。

 そうか、あの時はかなりテンパってすぐに転移しちゃったけど、ローズには心配かけちゃったんだな。



「ごめんなミレン。心配させちゃったな」

「うむ」

「ミレン? どうしたんだ?」

「大方、フーマはん達が学友を選んで自分を捨てるんじゃないかと思うて怖くなったんやろうね。それで咄嗟に手を伸ばせなかった自分に腹を立ててはるんよ」

「……そうなのか?」



 俺がそう問いかけると、ローズが腕を組んだまま俺の胸に自分の頭をグリグリと擦り付け始める。

 おいおい、これはどういう感情表現だよ。



「なぁ、口にしないと分からないぞ?」

「うぅぅぅ」

「いやいや、唸るんじゃなくて言葉にしてくれよ」

「そうやよミレンはん。もう良い大人なんやからそのぐらい出来るやろ?」

「あぁもう! そうじゃ! 妾はお主らに見捨てられるかもしれないと思って怖くなったんじゃ! それでお主を信じきれなかった自分に腹が立ったんじゃ!」



 ローズが顔をガッと上げて真っ赤な顔で俺をにらみながらそう言った。

 えぇ、何で俺が睨まれなくちゃいけないんだ?

 いや、置いていったのは悪いと思うけどさ…。



「なんじゃその顔は! 文句でもあるのか!」

「いや、別にそう言う訳じゃないんだけど…」

「じゃあ、なんじゃい!」

「えぇ、ミレンがすごくめんどくさい」

『おいフーマ。なんですかその口ぶりは!』

「だってぇ…」



 フレンダさんにそんな事を言っている間に、ローズが涙目で俺の顔を見上げながらプルプルと震えている事に気がついた。

 ローズのちっちゃな両手は俺の服をぎゅっと掴んでいる。



「あぁごめん! ごめんなミレン! 大丈夫! 俺、お前とずっと一緒にいるから! 何があっても一緒だから!」

「うるさい! お主の言葉など信じられんわ!」

「えぇ、どうしよう舞」

「ふふふ。こういう時は高い高いよ。ちっちゃい女の子は大抵それで笑顔になるわ!」



 あ、舞が元に戻ってる。

 もう真面目モードではなくなったらしい。

 って、せめてローズを何とかしてから戻ってくれよ…。



「あぁもう! 聞けミレン! 俺達はずっと一緒! 舞もシルビアもトウカさんもアンもフレイヤさんもボタンさんもフレンさんもずっと一緒! ミレンがどう思ってようが俺たちはずっと一緒なんだから、無駄な心配はするな!」

「無駄とはなんじゃ! 妾は本気で心配しておったんじゃぞ!」

「知るか! 俺達がミレンを見捨てるわけないだろ!」

「そんな事分かっておるわ! じゃから妾は自分に腹を立てておるんじゃ!」

「だったら俺を睨むな! 胸をポカポカ叩くな!」



 俺がそう言ってべったりとくっついてくるローズを引き剥がそうとしていると、シルビアがアワアワとしながらアンに話しかけているのが見えた。



「ど、どうしようアン。止めた方が良いのかな?」

「うーん。放っといていいんじゃないかな」

「そうですね。これも一種の惚気(のろけ)みたいなものなのでしょう」

「妾は惚気てなどおらぬわ!」

「すみませんミレン様。しかし、その様に顔を真っ赤にしていては信じられませんよ?」

「真っ赤になどなっておらんわ! こ、これは……日焼けじゃ!」

「そうなの? でも、すごく体温は高いわよ?」



 舞がローズを後ろからヒョイと持ち上げてそう言う。

 おい、頼むから高い高いはしないでくれよ。

 そんな事したら間違いなくローズはブチ切れるぞ?



「高くないわい! ええい! 早く妾を降ろさんか!」

「そうだったわね。高くなるのはこれからよ! ほら、高いたかーい!」



 ダメだこりゃ。

 はぁ、今晩はローズにぶん殴られて終わるんだろうなぁ。

 そう思って諦めかけていたのだが、舞に高い高いされたローズはジタバタと暴れる事もなく両手で顔を抑えてなされるがままになっていた。



『おいフーマ。お姉様を泣かすとはどういう了見ですか?』

「ご、ごめんなミレン。俺達が悪かった。だから、泣かないでくれよ。な?」

「泣いてなどおらぬわ。妾が泣くわけなど…」

「舞もそれやめろ! ミレンはもう大人なんだからそんなんで喜ぶわけないだろ!」

「そんな事ないわよ? この前2人っきりの時にやってあげたら凄く嬉しそうだったわ」

「え? マジで?」

「マジよ」

「妾は大人じゃからそんな事…」

「嬉しそうにこんなに楽しい遊びは初めてじゃ! って言ってたわ」

「めちゃ子供じゃん」

「妾は大人なのに…おと、な……うわぁぁぁぁん!!!」

『おいフーマ! お姉様が号泣してしまったではないですか! こんなお姉様見た事ありませんよ! どう責任を取るつもりですか!』

「えぇ!? んな事言われても…」



 ローズは舞に抱えられたまま膝を抱えて泣きじゃくっているし、シルビアはあわあわとして、アンとトウカさんは俺からパッと目を逸らし、ボタンさんは笑顔を浮かべながらお茶を飲んでいる。

 この状況でどうすりゃ良いんだよ。

 そう思ってため息をつきかけたその時、パジャマ姿のキキョウが奥の方から目をこすりながら出てきた。

 その右手には熊のぬいぐるみが抱えられている。



「うるさいぞ。何時だと思ってるんだ」

「あらあら、起こしてしまったんやね」

「おいオバハン獣人。これはなんの騒ぎだ」

「実はミレンはんが泣いてしもうたんよ」

「なんだ? もしかして夜が怖いのか? 仕方ないな。ほら、これを貸してやるからもう泣くな。夜に泣いていては私達悪魔が寄って来るぞ」



 キキョウがそう言いながら熊のぬいぐるみを舞に抱き抱えられているローズに差し出す。

 それを見たローズは泣きじゃくるのをぴたりとやめ、数回まばたきした後でその身をひねり…



「あいたっ!!?」



 舞の拘束から逃れると共に舞を蹴飛ばして……



「フウマのアホぉぉぉぉぉぉ!!!!」



 そう言いながら雲龍から物凄い速さで走り去って行った。



「なんだったんだ? あいつ」

「えぇっと、起こしちゃってごめんな」

「いや、別に良い。それじゃあ私は寝る」

「あ、ああ。おやすみ」



 こうして、いつの間にか大人になっていたキキョウの背中を見送った俺は、これからローズを探しに行く事を考えると溜息しか出ないのであった。

 はぁ、こんな事ならちゃんとローズも連れて行くんだった、




次回10月3日予定です。



キャラクター人気投票の結果は 10月6日に発表します。

予定より遅くなってしまっていますが、今しばらくお待ちください。

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