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クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...  作者: がいとう
第4章 微妙にクラスメイト達と馴染めていない気がするんですけど…
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13話 土下座

 風舞




 シルビアとアンが加わりボタンさんの出していた屋台の片付けをさっさと済ませた後。

 俺達は雲龍の座敷でよく冷えたお茶をいただいていた。

 公爵さんとフェリアルさんは客間で休んでいるらしく、今はここにはいない。

 公爵さんは今日一日働きづめだったらしいし、かなりお疲れなのだろう。


 そんな事を考えながらキキョウを膝に座らせて頭を撫でるシルビアをなんとなく眺めていると、トウカさんとフレイヤさんがやって来た。

 フレイヤさんは既に日も暮れる頃合いだと言うのに、かなり眠そうにしている。



「遅くなってしまい申し訳ありませんでした」

「別に気にしなくても大丈夫よ。ドラちゃんをここまで連れて来てくれて助かったわ」

「ありがとうございます。ほら、着きましたからどこか適当な場所に座ってください」

「わかった」



 フレイヤさんはそう返事をすると一番近いカウンター席へとふらふらと近づいて行き、座ったかと思ったらすぐに突っ伏してしまった。

 …………。

 どんだけ眠かったんだよ。



「ふぅ、流石に少し疲れました」

「お疲れトウカさん」

「ありがとうございますフーマ様」



 トウカさんがそう言いながら俺の差し出したお茶をキューっと飲み干す。

 きっとあの調子のフレイヤさんをここまで連れて来るのはかなり大変だったのだろう。

 そんな事を考えながら舞の横に腰掛けてハンカチで汗を拭くトウカさんを眺めていると、ボタンさんが椅子を持ってやって来て、座敷席のそばに腰掛けた。



「さて、それでは皆はん揃ったみたいやし早速話を始めるとしましょか」

「ああ。そうしてくれると助かる。さっきから気になりすぎて気が気じゃなかったからな。舞が」

「そうね。さっきから貧乏ゆすりが止まらなかったもの。風舞くんの」

「まったく、お主らは何を張り合っとるんじゃ。して、話というのは一体何の話なんじゃ?」



 ローズが俺たちに呆れた様な視線を向けながらボタンさんに話を振る。

 遂にクラスメイト達に関する話を聞けるのか。

 なんか急に緊張して来たな。



「あら風舞くん? 瞬きが多くなってるわよ? もしかして緊張しているのかしら?」

「そういう舞こそ、汗がすごいぞ。緊張してるんじゃないか?」

「何のことかしら? ふぅ、このお茶美味しいわね」

「そうだな。流石ボタンさんの淹れてくれたお茶だ」

「あのー、先程からお二人のコップは空ですよ?」

「は、ははは。勿論気づいてたぞ」

「え、ええ。流石はシルビアちゃんね」

「あ、ありがとうございます?」

「な、なんだかめでたいわね。そうだわ、今晩はお赤飯にしましょうか! ふふふふふ」

「そ、そうだな! よし、俺は鯛を用意するぞ! ははははは」

「どうしようトウカさん。2人ともおかしくなっちゃったよ?」

「おかしいのは以前からですが、ここまで取り乱すとは珍しいですね」

「はぁ、これでは話が進まぬからお主らは黙っておれ」

「「は、はい。ごめんなさい」」



 ローズに怒られた俺と舞は謝りつつショボンとする。

 なんだよ、怒んなくたって良いじゃんかよ。

 だってクラスメイトの話を聞くなんて凄い緊張するんだぞ?

 俺達は城にクラスメイトを置いて逃げちゃった訳だし、もしもクラスメイト達が大変な目にあってるかもと思ったら…………。



「フーマはん? 顔が真っ青やけど大丈夫?」

「ああ。だいじょぶだ」

「そ、そうなん? それじゃあ今度こそ話を始めるとしましょか」



 ボタンさんがそう言って居住まいを正した。

 それを見た俺と舞はアンとトウカさんがそれぞれ入れてくれたお茶を飲み、同じ様に背筋を正す。

 ふぅ、少し落ち着いてきたな。



「今回うちが話そう思うてたんは、フーマはん達の学友の近況とラングレシアの王族に関する情報やね」

「もしかして、キキョウちゃんが最近留守にしていたのはその調査のためなのかしら?」

「そうだ! 私がお前達の為に変態女騎士と共にラングレシアまで行って来てやったんだぞ!」

「ふむ。それで調査結果はどうだったんじゃ?」

「まずはフーマはんの学友達の事なんやけど、全員無事やね。肉体的にも精神的にも健康そのものみたいやよ」

「精神的にも? あいつら、洗脳されてるんじゃないのか?」

「どうやらされてないみたいやよ。なぁ、キキョウ?」

「あいつらは随分と甘やかされているみたいだな。私ならあいつら全員殺せると思うぞ!」



 キキョウの言う事はよく分からないが、どうやらクラスメイト達は洗脳されていないらしい。

 それじゃあ、俺と舞があのお姫様に感じた不信感は何だったんだ?

 そう思って首を傾げていると、俺の横に座っていた舞がその疑問を口にしてくれた。



「それじゃあ、あのお姫様が私達に余計な事を話していたのは一体どういう事なのかしら? まさかあのお姫様が国が危機に瀕しているというのに、私達に義理を通そうとしたとかじゃないわよね?」

「残念やけど、多分マイムはんの言うとおり義理を通そうとしたんやろうね。その証拠になるかは分からへんけど、フーマはんとマイムはんには大々的に捜索隊が出ているんよ」

「それは城から抜け出した俺達を取っ捕まえて縛りあげる為じゃないのか?」

「それも残念なんやけど、フーマはん達を保護するためやね。捜索隊には出来るだけ丁重に保護する様に指示が出ているみたいなんよ」

「ま、マジかいな」

「あぁそれと、フーマはんが洗脳の道具と勘違いした第一王女の指輪やけど、あれはただの護身用の魔道具やね」

「そ、そんな。それじゃあ私達はただの勘違いで城から抜け出して来たと言うの?」

「どうやらその様じゃな。あの国は代々温厚な王が多いから妾もおかしいと思っておったんじゃ」

「それじゃあ早く言ってくれよ!」「それじゃあ早く言ってちょうだいよ!」

「し、しかし、妾を森の中で保護してくれたお主らの事を疑うなど……」



 ローズが申し訳なさそうな顔をしながらそう言った。

 くっ、これじゃあ声を荒げた俺達が悪者みたいじゃないか。



『まったく、八つ当たりなどするものではありませんよ?』

「ごめんなミレン」

「ごめんなさいミレンちゃん」

「いや、良いのじゃ。それより、お主らはいち早くラングレシアに行って来た方が良いのではないか?」

「ん? なんでだ?」

「なんでも何も、ラングレシアの王族は行方不明なお主らのために捜索隊を出しておるんじゃろう? 戦争を間近に控えておる状態で貴重な戦力を割いている訳じゃし、捜索隊の運用費も馬鹿にならんぞ? それに…」

「ま、マジかいな。なぁ舞。どう思う?」

「どうしましょう? もしもその捜索隊に見つかりでもしたら、一体いくら請求されるか分かったもんじゃないわ」

「流石に捜索隊の運用費をフーマはん達に負担させる事はないんやない?」

「それじゃあ、ラングレシア王国を滅ぼせば捜索隊にも見つからないしお金も払わなくて良いんじゃないか?」

「あぁ、もううちの声は聞こえてないみたいやね。それに、自分が何を言うてるのかも理解できてないみたいやわ」

「うん。フーマ様がどこかの魔王みたいな事言い始めたよ…」

「いくら魔王でも捜索隊に金を払いたくないからと言って滅ぼせば良いとは考えないじゃろうよ」



 ボタンさんとアンとローズが何やら呆れた顔で話しているが、今はそんな事に構っている暇はない。

 あの金銭感覚が上向きにぶっ飛んでいるローズが馬鹿にならないと言う運用費を払うなど、未だに借金のある俺には土台無理な話だ。

 こうなったらもうラングレシア王国に攻め込んで請求書を渡される前に滅ぼすしか……。


 そう思ってラングレシア王国の城を攻め落とす算段を立て様としたその時、シルビアが凄く悲しそうな顔をしている事に気がついた。

 あ、やべ。



「や、やっぱりラングレシア王国に攻め込むのは無しだ。出来るだけ平和な方法で行こう! 何せ俺は勇者だからな!」

「シルちゃんの顔を見て心が痛んだんだろうね」

「まぁ、流石に城を落とすのはやりすぎじゃからな」

「でも、城を落とさないとなると交渉するのに賄賂とは言わないけれど、何かお詫びの品が必要よ? 私もよく、と○やの羊羹を貰ったわ」

「まさかマスターまで城を落とすつもりだったのでしょうか?」

「どうやらそうだったみたいやね。2人揃って物騒やなぁ」



 お詫びの品か。

 ラングレシア王国は戦争の準備をしているらしいし、戦争に役立つものが良いよな。

 となると……。



「グリフォンの死体丸ごととかどうだ?」

「そうね! それが良いと思うわ! よし、そうと決まれば善は急げよ! 今すぐ行きましょう!」

「いや、ちょっと待て。この前ボタンさん達とソーディアに行った時に王様の前では許可があるまで頭を上げちゃダメって習ったぞ」

「なるほど。それじゃあ頭を下げたまま行きましょう! 私達は日本人なのだからやっぱり土下座が良いわ!」

「そうだな! よし、早速土下座しよう!」



 そうして、俺と舞は2人並んで雲龍の床の上で土下座をする。

 よし、このまま転移してラングレシア王国に向かえば心から謝罪するつもりで来たと思ってもらえるだろう。



「準備できたわ風舞くん!」

「よし、それじゃあ行くぞ! テレポーテーション!!」

「お、お待ちくださいフーマ様!」

「はぁ、仕方ありませんね」



 こうして、俺たちはソレイドの雲龍から数ヶ月ぶりにラングレシア王国王城謁見の間へ向かった。

 どうか許してください!

 金払いたくないです!




 ◇◆◇




 ローズ




「行っちゃったね」

「そうやねぇ」



 フウマ達が止める間もなくラングレシア王国へ転移してしまった後、雲龍に残された妾達は先程までフウマ達がいた場所を見ながら呆けておった。

 はぁ、妾を残して行くとは酷い奴らじゃな。



「フーマ様達大丈夫かな?」

「2人だけやと少し心配やけど、シルビアはんとトウカはんも一緒やし大丈夫やろ」



 ボタンの言う様に2人のそばにいたシルビアとトウカも共に転移したらしく、シルビアの膝の上に乗っておったキキョウが座敷の横で目をパチクリさせながら転がっておる。

 ふむ、いつの間にかエリスの姿も消えておるしあやつも付いて行ったんじゃろうな。

 そんな事を考えながらつい先程までフウマとマイの座っていた位置を眺めておると、アンがまじまじと妾の顔を見ながら話しかけてきた。



「ミレン様?」

「ん? なんじゃ?」

「いや、その…別に何でもないんだけど…」

「む? 何か言いたい事があるのなら遠慮せずに申してみよ」

「えぇっと、元気がないみたいだけど大丈夫?」

「別に妾は普段通り元気じゃぞ?」

「いや、そう言う事じゃないんだけど…」

「ではどういう事なんじゃ?」

「ミレンはんがフーマはん達に置いて行かれて悲しそうな顔をしているからアンはんは心配なんよ」

「別に、妾は悲しそうな顔など…」

「そうなん?」



 ボタンが微笑を浮かべながら妾の目を真っ直ぐに覗き込みつつそう言う。

 そのボタンの瞳に映る妾は確かに悲しそうな、怒った様な顔をしていた。



「いや、そうじゃな。確かにボタンの言う通りかもしれんの」

「あらあら、ミレンはんほどのお方にも珍しい事があるもんやね」

「………。そうじゃな」

「まぁ、心配せずともフーマはんとマイムはんはミレンはんの元に返って来るやろうし、何も悲しむ事はあらへんよ」

「そうだよミレン様! みんなすぐ帰って来るって!」

「そう…じゃな」



 アンとボタンがそうして妾を慰めてくれたが、2人に手が届く位置にいながら咄嗟に手を伸ばせなかった妾は曖昧な返事しか返せなかった。




 ◇◆◇




 風舞




「「すみませんでしたぁぁぁぁ!!!!」」



 ラングレシア王国王城の謁見の間についた直後、俺と舞は声を合わせてそう言った。

 魔族国家との戦争の準備で忙しい中、勝手に勘違いして逃げ出したおバカな俺たちの為に捜索隊を出してくれていたあのお姫様や王様には泥水に顔を突っ込んででも土下座しなくてはならないのだ。

 こちらから交渉を仕掛けるためにはまずは誠意を見せる事が第一なのである。


 そう考えながらしっかりと頭を下げて土下座しているのだが、誰からも声がかからない。

 人の気配はするから謁見の間に誰もいない事は無いと思うんだけど……。

 そう思っていたその時、どうやら一緒に転移して来てしまったらしいシルビアが俺の肩を叩きながら話しかけて来た。



「フーマ様! 敵です! 暗殺者です!!」

「は?」

「マスターもお顔をお上げください! どうやら件の王女殿下が襲われている様ですよ!」

「え?」



 シルビアとトウカさんの声につられて思わず顔を上げると、お姫様と玉座に座る王様が2人の騎士に守られながら、数人の男達に囲まれていた。

 その男達は皆一様に貴族然とした格好をしているのだが、全員がその手に武器を持っている。



「初手で何人やれる!?」

「私は3人!」

「私は1人なら抑えられると思います!」

「私は後方支援を」

「よし、それじゃあ行くぞ!」



 俺はそう言いながら舞とシルビアを連れて騎士と暗殺者の間に転移し、目の前の男1人にファイアーランスを放った。

 舞とシルビアはそれぞれの俺の左右から一気に強襲し、舞は一瞬で2人を倒しシルビアは左端の1人に斬りかかる。



「お前達は!?」

「俺たちは敵じゃありません! 賊は俺達でなんとかしますので、お二人は遠距離攻撃を警戒してください!」

「りょ、了解した!」



 片方の騎士がそう答え、王様とお姫様の元へと近づいて行く。

 よし、これで後は目の前の相手に集中するだけだな。

 そう考えた俺は出来るだけ速度を意識しながら先程倒した男の隣に立っていた男の顔面に火魔法を放った。

 そして鍔迫り合いに持ち込まれていたシルビアに襲いかかろうとしていた男の真横に転移し、空間断裂で胴体を斬りつける。



『残り4人です! うち2人はマイと交戦中!』

「了解!」



 俺はそう言いながらシルビアと鍔迫り合いになっていた男をトウカさんの正面に転移させ……



「お任せください!」



 剣を上段に構えたままのシルビアを王様達に両手を向ける男の側に転移させた。



「ぐぁぁぁっ!?」



 シルビアの鋭い一閃を受けた男が両手を斬り落とされて悲鳴をあげる。

 よし、後は舞の戦ってる2人だけ…。



「って、もう終わっちゃったのか」

「そうね。これで一先ずは全部かしら?」

「ああ多分な。すみません、もう戦えないとは思うんですけど、念の為手錠とかあったらお借りしても良いですか?」

「あ、ああ。すぐに用意させよう」



 俺の要請に対し、王様がそう言って騎士に目配せをする。

 目配せを受けた騎士は一度敬礼をすると、謁見の間から走って出て行った。



「ふぅ、これで大丈夫そうだな」

「そうね。お疲れ様フーマくん」

「いや、俺は大した事してないぞ。シルビアとトウカさんが手伝ってくれたからな」

「いえ、私はただ足を止めていただけですし」

「シルビアが1人を止めてくれたおかげで何人かの視線が集まったんだから謙遜する事ないぞ。相手はかなり強かっただろうに、パワーで互角みたいだったから正直ビックリした。俺の知らない間に随分と強くなってたんだな」

「あ、ありがとうございます」



 シルビアが顔を赤く染めながらそう言った。

 主人としてちゃんと褒めてやらなくちゃと思ったけど、尻尾がブンブン動いてるし心配なさそうだな。

 そんな事を考えながらクールな顔で尻尾に感情が丸出しのシルビアの姿にほっこりしていると、刀の血を払った舞が俺にグイグイと近づいて来ながら物欲しげに話しかけてきた。



「ねぇフーマくん! 私は私は!?」

「えぇっと、マイムは安定した強さだな。いつも通り良い感じだったぞ」

「むぅ、シルビアちゃんの時よりも感想がやんわりしている気がするわ」

「そうか?」



 そんな感じでいつも通りの会話をして急な戦闘で上がった脈拍を抑えていると、お姫様が玉座のある階段から降りて話しかけて来た。



「危ないところを助けていただきありがとうございました」

「い、いえ。ご無事なら何よりです」

『小娘相手に何を緊張しているのですか』



 だって…一国のお姫様をこんなに間近で相手にするなんてこれが初めてだし…。

 いや、そういえば公爵さん達も一国の王様と王妃様だし、ローズもフレンダさんも王族だったわ。

 あれ? 俺の知り合いの王族…色物枠多くね?

 そう思っている間にもお姫様は微笑を浮かべながら話を続ける。



「ところで、命を助けていただいた恩人にいきなり不躾ではあるのでですが、皆様はどなたですか?」

「えぇっと俺はフーマで、こっちが…」

「マイムよ。よろしくお願いするわ」



 舞がそう言って右手を差し出す。

 あれ? そういえば俺たちがここに来たのって……。



「マスター、一国の姫君に何も考えずに手を差し出さないでください。自分が何をしに来たのかお忘れですか?」

「はっ! そうだったわ…」

「どうかなさいましたか?」

「「すみませんでした!!」



 当初の目的を思い出した俺と舞はその場でシュバッと土下座した。

 危ない危ない。

 危うく暗殺騒ぎのせいで、粗相を働くところだった。



「え、ええと。どういう事でしょう?」

「勝手にいなくなってごめんなさい!」

「私達の事を思って正直に話してくださったのに、疑ってごめんなさい!」

「あ、あの……いまいち要領を得ないのですが…」

『はぁ、先に本名を名乗ったらどうですか?』

「あ、そっか。高音風舞及び土御門舞、ただいま帰還しました!!」

「しました!!」

「高音風舞様と土御門舞様? もしかして…」

「はい! 転移魔法で城から逃げ出した2人でございますです!」

「そうでしたか…まずはお顔をお上げください」



 俺と舞は2人揃っておそるおそる頭を上げる。

 ん? もしかして今日本語で喋ったのか?



「どうやら本当に高音風舞様と土御門舞様の様ですね」

「は、はい」

「色々とお聞きしたい事はございますが、お二人ともご無事で何よりです」

「あ、ありがとうございます」

「先日は私の力が及ばなかったばかりにお二人に不信感を抱かせてしまい申し訳ありませんでした。そして、そんな私の前にもう一度お姿を見せてくださいまして誠にありがとうございます」



 お姫様がそう言って俺と舞に深々と頭を下げる。

 俺達はそんな光景がまるで飲み込めず数秒ばかりポカンとした後、慌ててお姫様に話しかけた。



「ど、どうか頭を上げてください! 元はと言えば俺たちが勝手に勘違いしただけなんですから!」

「そうですよ! 第一王女殿下が謝る事など何1つありません!」

「しかし…私は今日この時までお二方を保護する事も出来ず、過酷な生活を強いてしまったのでは…」

「そんな事ないです! ぶっちゃけ毎日遊んで暮らしてました!」

「毎日ご飯もお腹いっぱい食べてました!」

「そう…なのですか?」

「はい! 今日も牛丼の大盛りを2杯食べました!」

「私は卵をのせて食べました!」

「は、はぁ……」

「「すごく美味しかったです!!」

『まったく、2人揃って何を馬鹿な事を言っているのですか』



 え?

 でも、今日の昼飯すごい美味しかったですよ?

 そう思って首を傾げていると、誰かが謁見の間にやって来て大声を上げた。



「お姫ちん! 暗殺者に襲われたって聞いたけど大丈夫!!?」

「明日香様! はい。こちらの皆様が危ないところを助けてくださいました」

「そっか。ありがとね……って、風舞?」

「あ、あーちゃん…」

「無事だったの?」

「あ、ああ」



 俺は幼馴染であるあーちゃんこと篠崎明日香にどうも顔を合わせ辛くて、思わず顔を逸らしてしまう。

 シルビアと舞はそんな俺と明日香の様子を視線を行ったり来たりさせながら見守っていた。



「今までどうしてたの?」

「ソレイドってところで冒険者やってた」

「ふーん。で、そこのエルフと獣人は?」

「俺の従者と舞の従者」

「へぇ、冒険者は大変だって聞いてたけど風舞には従者もいるんだ。それに土御門さんを名前で呼び捨て…」

「いや、これはその…」

「私達は風舞達がいなくなって凄い心配してたのに、風舞はこんなに可愛い女の子達に囲まれて毎日面白おかしく暮らしてたんだ」

「そ、そんな事は……」

「お姫ちんだって毎日夜遅くまで働いていて忙しい中捜索隊の指揮をしてくれていたのに、風舞は遊んでたんだ」

「さ、流石に毎日は遊んでないぞ?」

「でも、ここ最近の風舞くんは食っちゃ寝してたわよね?」

「へぇ、土御門さんには働かせて自分だけ食っちゃ寝。私達が必死にレベル上げしてる時も風舞は食っちゃ寝…」



 明日香がそう言ってワナワナと震えながら俯く。

 って、あれ?

 なんか腰の剣に手をかけてない?

 さ、流石にそれで斬りかかって来るとかじゃないよな?



「いや、別に俺は舞のヒモとかじゃ…」

「返してよ…」

「はい?」

「私の心配を返してよ!!!」



 明日香がそう言って思いっきり俺に向かって走って来る。

 既に俺のスキル達が危険を察知して体を動かそうと神経に命令を送っているが、俺の理性が申し訳無さから体を床に縫い止めているためか全く動いてくれなかった。



『はぁ、全く何をやっているのですか』

「マジすんませんでした!!!」



 結局、俺はフレンダさんや明日香やお姫様や王様に謝罪の言葉を吐きながら吹っ飛び、トウカさんが一箇所に纏めていた暗殺者のところに突っ込むのであった。

 はぁ、やっぱり勇者の一撃はかなり痛いなぁ。

次回投稿は9月29日予定です。

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