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クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...  作者: がいとう
第4章 微妙にクラスメイト達と馴染めていない気がするんですけど…
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12話 ラムネとキキョウ

 

 風舞




 冒険者ギルドの2階に上がって事務室を覗いてみると、ガンビルドさんが数名の職員と共に書類とにらめっこしていた。

 あ、今日は眼鏡かけてないんですね。


 そんな事を考えている間に俺達の視線に気がついたガンビルドさんがパッと笑みを浮かべながら俺達に話しかけてくる。

 手元は引き続き書類の整理をしているし、今はそれなりに忙しいらしい。



「よう! よく来たなフーマ! 昨日の試合、かなり凄かったってミレイユから聞いたぞ!」

「えぇっと、ありがとうございます」

「ん? 元気がないな。どうかしたのか?」

「こやつはかなりやり過ぎたと反省しておるんじゃ」

「ふふっ。昨日は夕方からずっとミレンちゃんにお説教されていたのよね」

「その話はもういいだろ。それより、俺達に何かできる事はありませんか? 日頃お世話になってるので、少しでも恩返しが出来ればと思いまして」

「なに、俺とフーマの仲なんだからそんな事気にしなくて良いんだぞ! フーマ達は思う存分祭を楽しんでくれればそれでで良い!」



 ガンビルドさんがそう言ってガハハと笑う。

 相変わらずガンビルドさんはお人好しみたいだ。

 俺としては人混みの中を舞に連れ回されるのはかなり疲れるから、何か仕事をくれた方が助かるんだけどな。


 そう思ってもう少しガンビルドさんと話しを続けようとしたところで、部屋の奥の方からベージュ色のおかっぱヘアの職員さんが出て来た。

 確かマッシュルームって名前だったけ。



「おい君達! 確かお前はフーマと言ったな。ギルマスは今立て込んでいるのが分からないのか!」

「はぁ、すみません」

「まったく、こんな昼間から女性を2人も侍らせて遊んでいる暇があるのならダンジョンへ探索にでも行って来たらどうだ?」

「あら、フーマくんは私達を侍らせてないわよ?」



 舞が俺に詰め寄って来ていたマッシュルームくんの前にグイッと体を入れながらそう言った。

 少しだけ視線が厳しいものになっているのは、俺を守ろうとしてくれているためなのかもしれない。

 いや…違うか。



「それは、どういう事ですか?」

「ふふん! フーマくんが私達を侍らせているのではなく、私がフーマくんとミレンちゃんを侍らせているのよ!」

「は、はぁ」

「おいマイム。そやつが困っておるから訳の分からない事を言うでない。第一、妾達はお主の保護者なんじゃから(はべ)っている訳がなかろう」

「え? 俺までマイムの保護者なのか?」

「なんじゃ? 妾一人でこやつの世話を焼くなど無理じゃぞ?」

「ほら見なさい! 二人とも私をチヤホヤしてくれるのよ! これでも貴方はフーマくんが私達を侍らせていると言えるのかしら?」

「す、すみません」



 あらら、マッシュルームくんが舞に凄まれて謝っちゃたよ。

 落ち込む事ないぞマッシュルームくん。

 俺は舞よりもマッシュルームくんの方がマトモな事を言っていると思う。



「ガッハッハ。嬢ちゃんは相変わらず面白いやつだな!」

「ふふっ。お褒めに預かり恐縮だわ!」

「はぁ、邪魔をしたのガンビルド」

「ああ、特にマイムが邪魔をしてすみませんでした」

「おう! 少し息抜きになったから気にしなくて良いぞ!」

「え? それじゃあ私が邪魔をしたみたいに聞こえないかしら?」

「マッシュルー……マシューさんもお邪魔しました」

「あ、ああ」

「あれ? 無視? ねぇミレンちゃん。私今、無視されたのかしら?」

「うるさいぞマイム。ほれ、退屈なら先に下に行って遊んでおれ」

「むぅ、私は子供じゃないのよ?」



 舞が唇を尖らせながらそう言う。

 はいはい。

 後で好きなだけ遊んでやるから俺の服を引っ張らないでな。



「そういえば、ミレンの試合はいつなんだ?」

「試合? あぁ、妾は魔物と戦わんぞ」

「え? この前マイムが俺達は3人とも魔物と戦うって言ってなかったけか?」

「妾が舞台の上で戦うに相応しい魔物はこの辺りにはおらぬからの。断らせてもらったのじゃ」

「俺としてはミレンにも戦ってもらいたかったんだが、こればかりは無理強いできないからな」

「すまんの。その代わりと言ってはなんじゃが、ギルドで手に負えない魔物が出た際には妾が力を貸すと約束するのじゃ」

「おおそうか! ミレンが力を貸してくれるというならドラゴンの群れが攻めて来ても安心だな!」

「やめてくださいギルマス。縁起でもないですよ」

「ガッハッハ。マシューは相変わらず心配性だな!」



 ガンビルドさんがマシューくんの頭に手を置いて豪快に撫でながらガハハと笑う。

 どうやらマシューくんはガンビルドさんにかなり可愛がられているらしい。



「それじゃ、俺達はこれで失礼します」

「おう! またいつでも遊びに来いよ!」

「ありがとうございます。あ、そう言えばどこかオススメの屋台を知りませんか?」

『その言い訳、まだ覚えていたのですね。てっきり既に忘れているものと思っていました』



 やれやれ、フレンダさんは相変わらずお小言が多いな。

 姑じゃあるまいし、もう少し俺を甘やかしてくれないもんかね。



「オススメの屋台か。そう言えば、ミレイユが知り合いの屋台が今日から出店されると言ってたな」

「ミレイユさんの?」

「マシューさんも気になるんですか?」

「い、いや、そう言う訳じゃない! 仕事の邪魔だからミレイユさんのお知り合いの屋台とやらにさっさと行ったらどうだ!?」

「あらあら、顔を真っ赤にしちゃってウブねぇ」

「そうじゃな。フーマもこのぐらい素直じゃと可愛げがあるんじゃが……」

『お姉様の言う通りですね。フーマはもう少し純真な心を持つべきです』



 なんでマシューくんが顔を赤くしただけで俺がここまでボロクソに言われなくちゃいけないんだろうか。

 これも全部ピュアなマシューくんのせいだ。

 今度マシューくんの前で舞にミレイユさんをモフらせてやろうか。



「はぁ、それじゃあマシューさんの言う通りそこに行かせてもらいます。お邪魔してすみませんでしたね」

「全くだ! 早く出て行け!」

「またなフーマ! 嬢ちゃん達も討伐祭を楽しんでくれよ!」

「うむ。世話になったのじゃ」

「ええ! ミレイユさんにもよろしく言っておいてちょうだい!」



 こうして俺達3人はそこそこの時間で冒険者ギルドを後にし、人でごった返す街へと繰り出した。

 ミレイユさんの知り合いと言ったらおそらくボタンさんだし、取り敢えず雲龍に向かうとするかね。




 ◇◆◇




 風舞




 冒険者ギルドから出来るだけ人の少ない路地を通って雲龍まで行くと、店先に設置された屋台で何かを売っているボタンさんを見つけた。

 雲龍は隠れた名店みたいな位置にあり、ここはメインストリートからそれなりに離れたところなのだが、それなりに繁盛している様である。



「こんちは。もうかりまっか?」

「ぼちぼちやなぁ。あらあら、よう来てくれはったなぁ」

「ああ。ガンビルドさんのとこに行ったらボタンさんが屋台を始めたかもって情報を掴んだからな」

「そうやったんやね。ちょうど1時間ぐらい前に始めたところやったんよ」

「ふむ。ボタンは何を売っておるんじゃ?」

「野菜の塩漬けとラムネやよ」

「ラムネ? ラムネってあのラムネかしら?」

「おそらくマイムはんが考えてはる物で間違いないと思うんよ。キキョウ、ラムネ3本取ってくれへん?」

「私は忙しいから自分で取ってくれ! 何? キューヌが5本だと? それじゃあ銅貨20枚だ!」



 忙しそうに売り子をしていたその声の主の方を覗いて見ると、そこではかなり久しぶりに見るキキョウが忙しそうに接客をしていた。

 へぇ、あいつかなりアホっぽかったのにいつの間にか計算できる様になったのか。

 ってそうじゃなくて……。



「いつ帰って来たんだ?」

「今日の朝方やね。無事にうちの頼んでたお使いを済ませて帰って来てくれたんよ」

「何!? それではシャーロットもここにおるのか!?」

「いや、シャーロットはんは無断で長期間衛兵の仕事をサボってはったみたいでお説教中やね」

「そうじゃったか。ふぅ、それを聞いて安心したのじゃ」



 ローズが額の汗を拭いながらそう言った。

 どうやらローズの天敵が再びこの街に現れたばかりらしい。

 冒険者ギルドからシャーロット討伐の依頼が来ないと良いな。

 そんな事を考えながら条件反射で俺の肩に登ろうとしていたローズを下ろしていると、思案顔の舞がボタンさんに質問を投げかけた。



「もしかしてなのだけど、今晩の話というのはキキョウちゃんのお使いと関係あるのかしら?」

「まぁ、そうやね。マイムはん達が望むなら今から話しても良いんやけど、どうする?」

「フーマくんはどう?」

「聞けるなら早く聞きたいけど、シルビア達も連れて来てからが良いな」

「そうね。私もトウカさんやフレイヤちゃんも一緒に聞いておいて欲しいわ」

「というわけでやっぱり夜にするわ。今はこの屋台も忙しそうだしな」

「あらあらあら、フーマはん達は気遣い上手やねぇ」

「おいオバハン獣人!! いつまでも無駄話をしていないで早く手伝え!」

「そう言えば、公爵さん達はどうしたんだ?」

「あぁ、公爵はんならほら…」



 ボタンさんの指差した方向を見てみると、ちょうど公爵さんとメイドさんが木箱を持って階段から降りて来る所だった。

 もしかして、公爵さん達に屋台を手伝わせてるのか?

 そんな事を考えている間にキキョウの元まで荷物を運んだ公爵さんがキキョウの横に並んで接客を始めた。



「大丈夫かいキキョウさん。遅くなってすまなかったね」

「全くだ! だが、良いところで来たな! よし、お前はラムネを売ってくれ! 私はこっちで塩漬けを売る!」

「任せたまえ!」



 そうして分業をした事でお客さんの対応スピードを上げたキキョウと公爵さん。

 あの2人、多分相手の正体を知らずに仲良くしてるんだろうな。

 まぁ片や悪魔で片や国のトップだし、知らない方が2人のためなのかもしれない。


 そんな事を考えながら異色のコンビの様子を見守っていると、メイドさんもとい公爵夫人のフェリアルさんが俺達の方へ微笑みを浮かべながら近づいて来た。

 格好は完全に平民のそれなのに、身分の高そうなオーラがひしひと伝わってくる。



「こんにちは皆様。ご機嫌いかがですか?」

「まぁまぁです。フェリアルさんもボタンさんのお手伝いですか?」

「そうですね。一宿一飯の恩義をお返ししている最中と言ったところです」

「あら、公爵夫人自ら働いて恩を返すとは随分と大胆というか剛毅なのね」

「ふふ。どちらかというとこれは私の趣味ですね。いつも城に閉じこもっていては気が滅入ってしまいますから」

「あぁ、分かるぞ。確かに城で執務に追われていてはどうにも退屈になってしまうからの」

「分かっていただけるとは……申し訳ございませんが貴女は?」

「おお、すまぬ。妾はミレンじゃ。以前とある国の城で働いておった事があっての」

「そうでしたか。私はフェリアル、あちらで汗を流している者が私の夫です」

「そうじゃったか。以前フーマが世話になったと聞いておる。保護者として礼を言わせてもらうのじゃ」

「いえいえ。滅相もございません」



 ローズとフェリアルさんがそんな話をしているのをぼんやりと眺めていると、その様子を俺と同じ様に見ていた舞がスススっと俺のすぐそばまで近づいて来た。

 なんだか、いつもより微妙にテンションが低い気がする。



「どうしたんだ?」

「ちょっと昔の社交界の事を思い出して嫌になっただけよ」

「あぁ、そう言えばこの世界に来たばかりの頃にそんな事言ってたな」



 確か大空から落下中にパンツ丸出しでもう自由だとか騒いでいた気がする。

 思えばあの頃から舞はどんどん残念になっていったのか。

 ん? 待てよ?

 舞が社交界とか煩わしいものから解放されて残念になったのなら、適度に社交界に放り込めば元の清楚な舞に戻るんじゃないか?


 そう思い立った俺は、とりあえず舞をフェリアルさんとローズのそばに置いてみる事にした。



「ちょ、ちょっとフーマくん? どうして私の背中をグイグイ押すのかしら?」

「フェリアルさん。マイムがちょっとお城での暮らしに興味があるみたいなんで、出来たら話してあげてくれませんか? 出来れば夢をぶち壊す系の話で」

「え? 嫌よ! なんとなく煩わしそうな想像はつくし、 私はお姫様や女王様に夢を見るほど子供じゃないのよ!?」

「まぁまぁ。もしかすると良い話が聞けるかもだぞ。あ、フェリアルさん。できるだけストレス値が高そうな話をしてくれると嬉しいです」

「フーマくんの言っている事がよく分からないわ!」

「あらあらあら、マイムはんとフーマはん相変わらずやなぁ。さて、立ち話もなんやし良かったら上に上がって行かへん?」

「ふむ。それでは邪魔させてもらうとするかの」



 そうして、俺たち3人はボタンさんのお言葉に甘えて雲龍の店内へと移動した。

 店内はそれなりに冷房が効いていて、暑さによって噴き出していた汗がスッと引いていくのを感じる。



「はい。これがさっき言うてたラムネやね」

「お、ありがとうボタンさん」

「よく冷えていてとても美味しそうね」



 俺たちは口々にそんな事を言いながら透明な瓶のコルク栓を抜いて口をつける。

 どうやら俺の知っているラムネとは違ってビー玉を押し込んで開栓するタイプではないらしい。

 まぁあれを再現するのは技術的に厳しいだろうし、瓶の再利用を考えるとコルクの方が気軽か。



「へぇ、なんか思ってたよりも爽やかなんだな」

「そうね。柑橘系の良い香りがするわ。これは、レモンの他にライムも入っているのかしら」

「おお、流石はマイムはんやね。果物の名前は違うんやけど、柑橘系の果物を2つ入れてるんよ」

「ふーん。ラムネに果物を入れてんのか」

「あら、ラムネの語源はレモネードだから元々果物は入っているものなのよ?」

「そうなのか?」

「ええ。だからレモンの果汁が入っていないものはサイダーと呼ばれるわね」

「へぇ、知らんかった」

「さいだぁ? それは聞いた事がないの」



 あぁ、サイダーはランバルディア共通語にはない単語なのか。

 舞の説明だとラムネからレモンの果汁を抜いただけみたいだから飲み物としては存在するんだろうけど、また別の名前なのだろう。

 そんな事を考えながら炭酸が苦手なのかチビチビとラムネを飲むローズを眺めていると、おしぼりをお盆に乗せたフェリアルさんが俺達の元へやって来ながら話しかけて来た。



「そういえばフーマ様方は別大陸の出身でしたね」

「はい。あ、ありがとうございます」



 俺たちは口々に礼を言いながらよく冷えたおしぼりを受け取っていく。

 あ、舞が「ふへぇ」とか言いながら顔を拭いている。

 女性がおしぼりで顔を拭いているのは初めて見たが、舞がこうして顔を豪快に拭けるのはノーメイクだからなのだろう。

 ノーメイクでも十分に可愛いのは良い事なんだろうけど、もう少し人目を気にした方が良いと思うぞ。

 流石に服の下から手を突っ込んで胸の周りを拭くのはどうかと思う。



『こういうのを見ると慎ましい胸で良かったと思いますね』

「………………」

『おい、フーマに言っているのですよ?』

「あぁ、はい。そうですね」



 出来るだけこの話をしたくなかった俺はそう短く返し、再びラムネに口をつけた。

 はぁぁ、ラムネ美味しいなぁ。




 ◇◆◇




風舞




 路地裏で一度アイテムボックスにしまった舞のお土産を眺めながら過ごす事しばらく。

 気がついたら外は既に日が沈み、キキョウと公爵さんが今日の分のラムネと塩漬けを売り切って店内へと戻って来た。

 俺と舞とローズはそんな2人と入れ替わりで外に出て屋台の片付けを手伝い始める。



「2人とも随分と焼けてたわね」

「ああ。キキョウはもともとそれなりに焼けてたけど、今日は日差しが強かったから真っ赤だったな」

「おそらく日焼け止めを塗らずに店番をしておったんじゃろうな」

「あるのか? 日焼け止め」

「うちが塗ってやろうとしたんやけど、どうも臭いが嫌いみたいで嫌がったんよ」

「へぇ。なんか子供っぽいな」

「多分今晩はお風呂がしみるやろなぁ」



 ボタンさんがそう言いながら苦笑いを浮かべる。

 その笑顔はまるで我が子を愛する母親の様であった。



『おいフーマ。手が止まっていますよ』

「はいはい。ちゃんとやりますよっと……。お、ありがとな」



 フレンダさんに指摘されて目の前の空き箱を持ち上げようとしたら、誰かが手を貸してくれた。

 持ち上がっていく箱を目で追いながら顔を上げると、シルビアが微笑みを浮かべながら立っていた。

 その後ろにはアンとエルセーヌさんが立っている。



「シルビア? どうしてここに?」

「エルセーヌからフーマ様がお呼びと報せを受けたので、馳せ参じました」

「あぁ、なるほど。ありがとなエルセーヌさん」

「オホホ。この程度大した事ありませんわ。トウカ様にもお声がけしてるので、もうしばらくすればフレイヤ様と共に来ると思いますの」

「あら、中々気が効くわね」

「オホホホ。お褒めに預かり光栄ですわ」

「ボタンさんのところ、今日から屋台を出してたんだね」

「ああ。それで今はその片付け中だ」

「そっか、それじゃあ私達も手伝うよ」

「はい。とは言ってもほとんど片付いている様ですが」

「ああ、ありがとな」

「オホホホ。それでは私はお先に上に失礼していますわ」

「おう、エルセーヌさんは先に休んでてくれ」

「あら? 今日はやけにエルセーヌに優しいわね」

「そうか?」

「大方またエルセーヌに弱みでも握られたんじゃろうよ」

「いつもなら手伝えオホホ女とか言いそうだと思ったのだけれど、そういう事ね」

『まったく、情けない男ですね』

「ぐっ……」



 ち、違うぞ。

 俺は別にエルセーヌさんに弱みを握られた訳じゃない。

 ただエルセーヌさんに微妙な引け目があるだけだ。

 なんて事を思いもしたが、そんな残念な弁解をしても意味がない事に気がついた俺は黙々と手を動かすのだった。


次回、ようやくラングレシア王国へ。


投稿は27日予定です。

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