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クラスごと異世界転移して好きな女の子と一緒に別行動していたら、魔王に遭遇したんですけど...  作者: がいとう
第4章 微妙にクラスメイト達と馴染めていない気がするんですけど…
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9話 ドラ・フレイヤ

フレイ→フレイヤに変更しました。

 風舞




 舞とフレイヤさんの試合が終わった後、俺達は全員揃って我が家まで戻って来た。

 試合を見たお偉いさん方が勧誘をして来たり、冒険者の皆さんが強くて可愛い舞の姿を一目見ようととんでもない騒ぎになったが、冒険者ギルドの職員さん達の誘導のお陰で俺達は全員無事である。



「はぁぁ。何だかどっと疲れたな」

「そうね。私はチヤホヤされるのは好きだけど、流石に疲れたわ」

「ほれ、玄関先で溜まってないで早く中に入らぬか。後ろがつかえておるぞ」

「あぁ、ごめんごめん」



 ローズに背中をグイグイと押されて、玄関から進み中に入る。

 舞はフレイヤさんの腕を一度離し、一歩家の中に入ってから振り返って手を差し出した。



「おかえりなさいフレイヤちゃん。今日からここが貴女の家よ……。ってあれ? まさかのスルー!? ここは思わず私の言葉にグッと来ちゃうシーンじゃないの!?」



 舞が家の中にスタスタと入って行ってしまったフレイヤさんと俺の顔を見比べながら、少しだけ涙目になってそう言った。

 えぇっと、ドンマイ?



「それじゃ、俺は一度部屋に戻ってフレンさんに話を聞いてくるわ」

「私もご一緒いたしましょうか?」

「いや、トウカさんは舞を風呂に入れてやってください」

「えぇ、私は我が主の背中を流すよりフーマ様と添い寝したいのですが」

「トウカさんまでそう言う事言うの!? もう何よ! みんなフーマくんばっかりチヤホヤしちゃって!」

「あぁ、すみません我が主。お背中を流させていただきますので、供にお風呂に向かいましょう?」

「ほら、トウカさんもこう言ってるんだから風呂入って来いよ。汗べったりで気持ち悪いだろ?」

「むぅ。しょうがないわね」



 舞はそう言って不服そうな顔をしながらも、トウカさんと一緒に風呂場へと歩いて行った。

 俺はそんな仲の良い2人を見送った後で、後ろにいたローズとアンとシルビアに声をかける。



「それじゃあ、俺は少しだけ寝るから後は任せて良いか?」

「うむ。フレイヤの面倒は妾が見ておこう」

「アンの髪は今日中に切るから、もう少し待ってな」

「うん。私はいつでも大丈夫だよ。でも、シルちゃんも一緒にお願いして良い?」

「ああ。シルビアさえ良ければいつでも良いぞ」

「是非! 是非お願いします!」

「あいよ。それじゃあな」



 俺はシルビアとアンにそう言い残し、自分の部屋の方へと向かった。

 ローズはそんな俺の後をテケテケと付いて来る。

 フレイヤさんがこちらに歩いて行ったためだろう。



「何か気になるものでもあったのかね」

「さぁの。こっちにはお主の部屋ぐらいしか無かったはずじゃが」

「もしかして俺の部屋に?」



 そんな話をしながら突き当たりを曲がると、案の定俺の部屋のドアが開いていた。

 何で家に着いて早々に俺の部屋に来るんだ?

 そんな事を考えつつ足早に部屋に近づくと、フレイヤさんが部屋の中央でキョロキョロと周囲を見回していた。



「何してるんですか?」

「ない」

「ないとは何が無いんじゃ?」

「槍」

「槍?」

「私の槍」



 フレイヤさんの槍?

 世界樹で回収した武器はオーキュペテークイーンの巣にあった物だけなんだけど、もしかしてあの中にフレイヤさんの槍があるのか?



「それはどんな槍なんじゃ?」

「このぐらいの大きさの強くて便利な槍。魔力を流すと浮く」

「すみません。心辺りが無いですね」

「そう」

「ふむ。何でその槍がここにあると思ったんじゃ?」

「そいつは世界樹の主を倒した。持っているかもしれないと思った」

「俺がオーキュペテークイーンを倒したって分かるんですか?」

「分かる」



 ソレイドの草原で昼寝をしていたフレイヤさんが何故俺がオーキュペテークイーンを倒した事を知っているのか気になったが、もしかすると世界樹の迷宮王であるフレイヤさんにはその辺りの事が分かるのかもしれない。



「まぁ、槍は近い内にエルフの里に行って聞いて来ますので、そんなに悲しそうな顔しないでくださいよ」

「悲しそうな顔…しておるか? 妾には全く表情が変わった様に見えないんじゃが」

「そうか? なんとなく雰囲気があるだろ?」

「うぅむ。そうじゃろうか」

「ああ。多分俺は声だけのフレンダさんとよく話すから、そういう雰囲気を察するのに慣れてるんだろうな。ほら、フレンダさんは察してあげないとすぐ拗ねるから」

『おい。それはどういう事ですか?』

「あ、丁度良いところに来ましたね。今からフレンダさんを呼びに行こうと思ってたんですよ」

『そうですか。それより、私が拗ねるとはどういう事ですか?』

「別になんでもありませんよ。それより、何をしてたんですか?」

『フーマの記憶を追体験していました。おそらくソウルコネクトの時の影響が今になって来たのでしょう』

「そうでしたか。ちなみにどんな記憶でした?」

『幼いフーマが人間の女性に髪を切られている記憶です。とても和やかな時間を過ごしました』

「あぁ、それは多分俺の母親との記憶ですね」



 オーキュペテークイーン戦の時のソウルコネクトで魂が混ざった事によってお互いの記憶が相手に流れ込んだが、今回はフレンダさんが俺に魂の一部を移植した時とは違って、それぞれの記憶が消えてしまう様な事はなかった。

 どうやら今回のソウルコネクトの影響は、ただ魂が混ざって互いの記憶の一部を共有するだけらしい。



『あれがフーマの母親ですか。フーマとは違って穏やかで優しそうな女性ですね』

「そうですね。俺の自慢の母親です」

『そう……ですか』

「フレンダさん?」

『いえ。なんでもありません。それより、お姉様と話しているあのドライアドは世界樹から転移させた者ですよね?』

「はい。ついさっき舞が試合に勝ったみたいで、契約の為に取り敢えずうちまで連れて来ました」

『そうでしたか。マイの試合には私も興味があったので見逃してしまい少し残念ですね』

「まぁ、その話は今晩にでもゆっくり話しますよ」



 そんな話をしている間に、フレイヤさんと話をしていたローズが俺の話が一区切りついたのを見て声をかけてくる。

 フレイヤさんは相変わらず無表情のままだ。



「フレンダが来たのかの?」

「ああ。これで呼びに行く手間が省けたから、リビングに向かおうぜ。多分アン達が冷房をつけているはずだ」

「そうじゃな。それではそうするとしよう。お主もそれで良いかの?」

「良い」



 フレイヤさんは短くそう言って、俺の部屋からスタスタ出てリビングの方へ歩いて行った。

 まだ家の中を案内してはいないが、おそらくアン達の気配を感知しているのだろう。



「何を話してたんだ?」

「先程の戦闘についてじゃ。今度妾とも手合わせしてくれとも頼んだの」

「ふぅん。それでどうだ? 上手くやっていけそうか?」

「うむ。かなりマイペースなところがあるが、魔物にしては気性がかなり穏やかじゃし問題ないじゃろうよ」

「まぁ、あんだけ睡眠欲が強ければ普段は大人しいだろうな」

「それもそうじゃな。さて、妾達もリビングに向かうとするかの」



 こうして、俺とローズはフレイヤさんの後に続きリビングへと向かうのだった。




 ◇◆◇




 風舞




「それで、契約魔法を中心に調教とか他のスキルや魔法を展開していくらしい」



 フレイヤさんやローズと供にリビングに向かった後、舞が風呂から上がって来てからすぐにフレンダさんの指導の元、舞とフレイヤさんの従魔契約を開始した。

 現在はフレンダさんの説明を俺がそのまま口にして、従魔契約の準備をしているところである。



「なるほど、そこまで難しくはないのね」

『はい。従魔契約で最も難しいのは魔物を屈服させる段階ですから、それさえ済んでしまえば後は大した事はありません』

「フレイヤさんと仲良しなら簡単に成功するってさ」

「それなら安心ね。何せ私はフレイヤちゃんと剣を交えて戦った戦友だもの」

「…………」



 舞がフレイヤさんを抱き寄せながら、ビシッと俺にピースサインを向けてそう言う。

 心なしかフレイヤさんが嫌そうな顔をしているけど、気のせいか?



「これから大変だとは思いますが、供に頑張っていきましょうね」

「…………」



 トウカさんのその言葉に、フレイヤさんが頷いた。

 2人とも身長も髪の長さも同じくらいだし、白い肌で金髪のトウカさんと褐色肌で銀髪のフレイヤさんが並ぶと見応えあるな。

 まぁ、一部雲泥の差の部位があるみたいだけど。



「フーマ様? 女性はその様な視線に敏感であると聞いた事はありませんか?」

「な、何のことでしょう? それより、舞はスキルとか覚え終わったか?」

「ええ。思ったよりもステータスポイントが必要だったけど、無事に覚えられたわ」

「それじゃ、そろそろ始めるか。この後は……どうするんでしたっけ?」

『マイのスキルと魔法で契約する場合には、従魔に口づけをさせてマイはそこから魔法を流し込みます』

「フレイヤさんが舞にキスして、舞はそこから魔法を流し込むんだってさ」

「き、キス!? 私の初めては風舞くんの為に残しているのだけど!?」



 あ、そうなんだ。

 普通に嬉しい。



「我が主は口付けの経験が無いのですか?」

「ええ。トウカさんはあるのかしら?」

「はい。以前、最愛の方と一度だけ…」

「そ、それってもしかして!!」

「あぁ、ターニャさんとキスしたって話ですね! お二人ともすごく仲が良いですもんね!」

「ちなみに、妾は裸で抱き合った事が……」

「フレイヤさん! 場所はどこでも良いんで舞の体に口づけをお願いします!」



 全く…何でローズまで張り合おうとするんだよ。

 ほら、シルビアがキョトンとして、アンがあらあらぁって顔しちゃってんじゃん。

 こら、トウカさんは俺に意味深な流し目をしないの。



「むぅ。何だか私だけ仲間外れな気がするけど、今はフレイヤちゃんとの契約が大事だし、風舞くんを問い詰めるのはまた今度にしておくわ」

「何で俺…」

『普段から色目ばかり使うからこうなるのです。ほら、契約の邪魔になるから2人から離れなさい』

「舞達から離れろってさ」



 俺の指示に従い、皆が舞とフレイヤさんから離れて壁際に集まる。

 舞はそれを確認するとフレイヤさんに左手の甲を差し出し、フレイヤさんは何も言わずに跪いて口付けをした。



「なんだか、神秘的な光景だね」

「ああ。フレイヤさんは女神みたいな格好だから、余計そう見えるな」

「フーマ様は女神様を見た事があるのですか?」

「いや。そういう訳じゃ無いけど、名前も女神っぽいだろ?」



 フレイヤといえば北欧神話に出てくる豊穣の女神の名前だったはずだ。

 ドライアドが豊穣の女神の名前というのは結構ハマっている気がするし、フレイヤさんがフレイヤと名乗っている事にあまり疑問は感じない。

 そういえば女神フレイヤは性的に奔放だって聞いた事があるけど、フレイヤさんはどうなんだろうか?

 褐色エッチなお姉さんだったりするのだろうか。



『おいフーマ。また良くない事を考えていませんか?』

「そんな事ないですよ。それで、どのくらいかかるんでしたっけ?」

「数分で終わるはずじゃ。マイは初めて従魔契約を行うから慣れていないかもしれぬが、そこまで長い時間がかかる事はなかろうよ」

「ふーん」



 そう言ってから黙って見守る事数分、ローズの言った通り舞とフレイヤさんの契約が無事に終わった。

 フレイヤさんが口付けをやめたのを確認した舞が、フレイヤさんの手を引いて立ち上がらせ真っ直ぐ目を見つめて話しかける。



「貴女は今日からドラ・フレイヤ。私の従魔よ。これからは困った事があったら何でも私に相談してちょうだい」

「分かった」

「ふふっ。よろしくね」



 舞はそう言って微笑みとふんわりと微笑んで、フレイヤさん改めドラ・フレイヤさんを軽く抱きしめた。

 ドラちゃんって名前を諦めてはいなかったみたいだが、フレイヤさんは別に気にしていないみたいだしこれで良いのだろう。



「それでなんだけどトウカさん、ドラちゃん。せっかく私の従者も2人に増えたところだから何かこう…マークっていうかエンブレムを作りたいと思うのよ」

「「………」」

「ちょっと、聞いているのかしら?」

「そういえばフレイヤ様。フレイヤ様はこの家に来るのは初めてですので、先ずは案内をしないとでしたね」

「よろしく」



 そう言って、フレイヤさんとトウカさんは2人揃ってリビングから出て行った。

 1人残された舞が呆然と2人を見送り、コテンと首を傾げる。



「あれ? 私、ちゃんと契約したはずよね? ちょっと風舞くん! 私の従者達が言う事聞いてくれない!」

「まぁ、これからじゃないか?」

「フーマ様。私達は何かエンブレムを作らないのですか?」

「別に作っても良いけど、作ってどうするんだ?」

「フーマ様をいつでも感じられる様に背中に彫ろうかと」

「いやいやいや。流石に若い女の子が墨を入れるのはどうかと思うぞ」

「それじゃあ、お揃いの指輪とかペンダントをつけるのはどうかな?」

「ああ。そう言うのなら気楽だし分かりやすいし結構良さそうだな」

「ありがとうございますフーマ様。それでは、必要な物がありましたら何なりとお申し付けください」

「あいよ」



 シルビアとそんな話をしていると、その様子をジッと見つめていた舞がぶわっと涙を浮かべ、近くでジュースを飲んでいたローズに抱きついた。



「ミレンちゃぁぁん! 風舞くんとシルビアちゃんとアンちゃんが見せつけてくるよぉぉ!!」

「おいこら! 人が物を飲んでいる時にいきなり抱きつくでない!」

「だってぇぇぇぇ」

「お主、大人しくしておればそれなりに威厳があるのじゃからそうすれば良いではないか」

「でも、私は心からトウカさんやドラちゃんと仲良くしたいのよ!」

「そんな事妾に言われても知らん! おいフウマ! こやつをなんとかせい!」

「よ、よーし。それじゃあ、早速アクセサリー作りのために買い物にでも行くか」

「はい!」

「そうだね。それじゃあミレン様、行ってくるね」

「行って参ります」

「おい! お主ら妾を見捨てるつもりか! おい!」



 こうして、俺達3人はベソをかく舞に抱きつかれたローズをリビングに残して討伐祭で賑わっている街へと繰り出して行った。

 おそらく後でローズに小言を言われるだろうから、何か甘い物でもお土産に買ってくるとしよう。

次回9月11日です。

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