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60話 魂の治療

 風舞




「という訳なんですよ」



 散々舞にいじめられてベッドに入った後、白い世界を訪れた俺はフレンダさんにナース服を着せて今日あった事を報告していた。

 やっぱりフレンダさんはナース服がよく似合うと思う。



「それで、何故私はこのような服を着せられているのですか?」

「その、今日は精神的に疲れたので慰めてもらおうと思って」

「はぁ、相変わらずフーマの言うことはよくわかりませんね」



 フレンダさんが瓶のコーラの栓を開けながら呆れた顔でそう言った。

 初めの頃のフレンダさんは無理矢理コスプレをさせたら凄い恥ずかしそうにしてくれたのに、最近はどんな服を着せても動じなくなってしまった。

 よし、スカート丈をもう少し短くするか。



「っておい! これ以上は短くしないでください! 下着が見えてしまいます!」

「ああ、これだよこれ。やっぱりフレンダさんは恥ずかしがってる時の顔が一番良いですね」

「だから、少しずつ短くしないでください! って、なんでへその回りの布を無くすんですか!」

「おお、流石フレンダさん。綺麗なおへそしてますね」

「ちっ、あまり調子にのらないでください」



 あ、やべ。

 今のフレンドさんはこの前までとは違って俺に力を奪われてないから普通に戦えるんだった。

 今も俺の回りに無数の槍が漂ってるし、これ以上怒らせる前にやめておこう。


 俺はそんな事を考えながらフレンダさんのスカート丈を元に戻した。



「おいフーマ。腹部の布が戻ってないのですが」

「いやいや、フレンダさんの綺麗なおへそを隠すなんてもったいないですよ」

「はぁ、もういいです」



 フレンダさんはそう言うと、病院によくあるような診察台の上に腰かけて脚を組んだ。

 今日もハイソックスとガーターベルトがよく似合う素敵な御御足(おみあし)である。



「そういえば、フレンダさんは今日何をしてたんですか?」

「はぁ、フーマの為に一日中術の準備をしていたのに、いきなりこんな仕打ちをされたから話す気すらも失せました」

「えぇ、そんな事言わないで教えてくださいよ。もしかして体調が悪かったとか感覚共有にデメリットがあったりとかしたんですか?」

「この世界では体調が悪くなることはありませんし、感覚共有も特に問題はありません」

「それなら、フレンダさんは今日何をしてたんですか? 折角ローズが刀を使い始めて、フレンダさんに見せてやろうとしてくれたのに」

「そ、そんな重要な場に不在とは…。フーマの為に新たな術など組んでいる場合ではありませんでした」

「ん? 新しい術って何ですか?」

「はぁ、折角お姉さまが私に新しい武器を見せようとしてくれたのに……」

「おーい。新しい術って何ですかー?」

「ちっ、うるさいですね。私は今、お姉さまの麗しいお姿を思い出して傷ついた心を癒しているのです。後にしてください」

「いやいや、それこそ後にしてくれませんかね?」



 フレンダさんのシスコンっぷりも相変わらずだな。

 まぁ、フレンダさんの体調が悪いとか新たな問題が生じたとかではなくて安心したけど。



「あぁ、もう。うるさいですね。フーマはまた魔法を使えるようになります。良かったですね」

「はい?」

「だから、私がフーマが再び魔法を使えるようにしてやると言っているのです」

「え? ちょ、ちょっと待ってください。そんな事出来るんですか?」

「はい。その為に私はお姉さまのお姿を確認するという重要な使命を放棄してまで術を組み上げたんですから、感謝してください」



 マジか。

 トウカさんがギフトを使えない今の状況では当分魔法は使えないままだったけど、使えるようになるのか。

 そうか。



「ありがとうございますフレンダさん!」

「きゃっ!? な、なんですかいきなり。抱き着かないでください気持ち悪い」

「ちょうど魔法が使えたらいいなと思っていたところだったんです。本当にありがとうございます!」

「良いから、早く私から離れなさい。それと、どさくさに紛れてへそを触ろうとするんじゃありません」



 フレンダさんはそう言うと、抱き着いていた俺をペイッと引きはがして診察台の上に放り投げた。

 なんとなく扱いが雑な気がするが、久しぶりに本気で恥ずかしがるフレンダさんを見れたから良しとしておこう。


 それにしても、フレンダさんは俺のために新しい術を態々時間をかけて組んでくれたのか。

 あのローズ一筋のフレンダさんが俺の為に自分から何かをしてくれたのが凄く嬉しい。



「なにニヤけているのですか」

「いやぁ、また魔法が使えるのが凄く嬉しくて」

「そうですか。ただ、私も魂の治療は専門ではないので全ての魔法を使えるようにしてやることはできません」

「そうなんですか?」

「はい。今回は私でも治せる分かりやすい部分を治すので、おそらく転移魔法しか使える様にならないでしょう。それに、新しい魔法を覚える事もまだ出来ないままです」

「いやいや、転移魔法だけでも十分ですよ。本当にありがとうございます」

「はぁ、普段からこのぐらい素直なら可愛げがあるのですが」



 あれ?

 このセリフ以前にも言われたことあるような気がする。

 気のせいか?



「ちなみに、俺の魂を治すってどうやってやるんですか?」

「どうせ聞いてもフーマには分からないでしょう?」

「あ、はい。すみません」

「まぁ、簡単に言うとフーマの魂の繋がっているべきところを繋ぐ事で魔法を再び使える様にするのです。今回私に解読できたのはフーマの魂の中でも容量の多い部分なので、ここを繋げば転移魔法を再び使える様になるのではないかと推測しました」

「あー、やっぱり今一分かんないです」

「はぁ、フーマは相変わらず愚昧ですね」



 そう言いながらふんわりと微笑むフレンダさん。

 愚かって言われてるのに、思わずグッときてしまったのは何故だろうか。



「それで、術を俺にかけるって言ってましたけど、また俺は噛まれるんですか?」

「はい。そうするのが一番フーマの魂に干渉しやすいですからね」

「あのー。あれ、もの凄く痛いんで他の方法が良いんですけど」

「他の方法となると手を繋ぐか口移しになるんですが……」

「良いじゃないですか口移し」

「私はフーマと口づけをしたくありませんし、手を繋ぐだけだと精密な魔力の操作が難しいのでフーマの魂が傷つく恐れがあります」

「それじゃあ、口移し…」

「嫌です」

「あ、はい。そうですか。それじゃあ、今回も噛むやつでお願いします」

「まぁ、今回はこれまでの様に魂を傷つけたり余計な情報を加えたりする訳ではないから、そこまで痛みは強くないと思いますよ」

「そこまでって事は多少は痛むんですね」

「魂に干渉する訳ですから当然です」

「はぁ、それじゃあ一思いにやっちゃってください」

「分かりました。それじゃあ、大人しくしていてくださいね」



 フレンダさんはそう言うと、診察台の上で胡坐をかいている俺に近寄ってきて俺の首筋に牙を突き立てた。



「がぁぁあぁあぁぁ!」



 何がそこまで痛くないだよ。

 もの凄く痛いじゃんよ。



 俺はそんな事を思いながら、フレンダさんに押し倒されたまま気を失った。




 ◇◆◇




 風舞




 フレンダさんに噛みつかれて気を失った後、再び目を覚ますと知らない所にいた。

 おそらくどこかの城の廊下だと思うのだが、今まで一度も行ったことのない場所だと思う。


 ていうか体が勝手に動いてるんだけど、どうなってるんだ?

 俺の意思に反して体が動いているのに、赤い絨毯を踏みしめる感覚や頬を風が撫でる感覚は感じる。


 なんだこれ?

 全く状況が理解できないんだけど、どうなってるんだ?

 そんな事を考えながら移り行く視界を注意深く観察していると、足元の方にスカートの裾が見えた。


 あれ?

 もしかして俺、スカートっていうかドレスを着てるのか?

 そう思って皮膚感覚に注意を向けてみると、長い髪がなびいている感覚とストッキングとハイヒールを履いてロングスカートのドレスを着ていることに気が付いた。


 は?

 もしかして俺、女になってるのか?

 フレンダさんに魂の治療のための術をかけてもらってた筈なのに、何で女体化してるんだよ。


 俺はそんな事を考えながら、勝手に動く体に任せて廊下を進んだ。

5月23日分です。

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