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9話 冒険者ギルド

 風舞 




「おお、これが冒険者の街ソレイドなのね!」



 街に入った途端、土御門さんが笑いから復帰して声をあげた。

 ソレイドの街は西洋ファンタジー風のこれぞ異世界といった街並みで、往来を行く人々は鎧やローブなどを着込み杖や剣を持っている。



「すごいわ! ねえ、高音くん! ほら獣人さんよ! あ、あっちの人は竜人かしら? それにドワーフっぽい人もいるわ!!」

「おお、本当だ! 生ケモミミだ! すげー!!」

「おい、お主ら恥ずかしいからやめい。田舎ものじゃないんじゃ。表で騒ぐでない」



 いや、そうは言うがなローズ。

 こんな異世界っぽい街に初めて来た俺達がこの興奮を抑えられるわけないだろ。

 事実、俺の隣では土御門さんが無邪気な顔で目をキラキラさせている。



「そ、それで、まずはどこに行くのかしら? 冒険者ギルド?」

「そうじゃな。まずは冒険者ギルドに行くとするかの」

「ん?今日は家を買いに行くんじゃなかったのか?」

「うむ。家は買いに行く予定じゃが、まずは身分証を発行せんといかんからの。ステータスカードは個人情報が多すぎるから身分証にはあまり使われんのじゃ」

「へー。身分証って冒険者証みたいなものか?」

「うむ。その通りじゃ」

「おお! 私が試験を受けると秘められた実力が判明して、騒ぎになってギルドマスターの部屋に呼ばれて高ランクになってしまうお約束イベントが始まるのね!」

「いや、冒険者になるのに試験はないぞ? いちいち試験なんぞしておれんからの。それに、ギルドランクもギルドに何の貢献もせずにあがることはないのじゃ」

「そ、そんな。私の冒険者としての生活が最初からつまずくなんて」



 土御門さんが目に見えて落ち込んでいる。

 よっぽど冒険者ギルドでの試験が楽しみだったんだな。

 土御門さんには悪いが俺的には冒険者ギルドで試験がなくてよかった。

 このメンバーだと俺だけ下位のランクになりそうだし。

 さすがにそれは気まずい。



「ふむ。よくわからんがさっさと行くぞ」



 ローズはそんな俺達の様子を軽く一瞥した後、すたすたと歩き始めた。

 もう俺の裾を離しているし、シャーロットさんに虐められた時の機嫌は直ったようだ。



「なぁローズ。お前、ソレイドには来たことかあるのか?」

「うむ。妾は100年ほど前に人族の視察のために来たことがある。その時にはあのダンジョンの最下層まで到達したのじゃ」



 わお。我らが魔王様はあのダンジョンを攻略済みらしい。

 それに人族の視察にも来ていたのか。

 俺達やシャーロットさんへの態度で薄々感じていたが、ローズは人族に対して特別悪い感情を持ってはいないようだ。



「それじゃあ、ローズちゃんは冒険者ギルドにもう登録してあるのかしら?」

「うむ。既に登録してあるが改めて登録し直すつもりじゃ。姿も変わっておるし、妾がSランクの冒険者証をだしても身分証には使えなさそうじゃしの。」



 確かに今のローズはとても実力のある冒険者には見えない。

 よくてエルフの令嬢と言ったところだろうか。

 話し方も尊大だし……。


 ていうか以前のローズはSランクだったのか。

 凄まじいな。



「ふーん。ランクっていくつからいくつまであるんだ?」

「EからSSSまでじゃの。確かSSSランクは今まで一人もいないはずじゃ。最初は皆Eランクからじゃの。」



 だれも到達していないSSSランクとかあるのか。

 確かに前人未到の目標があった方がやる気も出るだろうしな。

 形式上あるって感じなんだろう。



 そうして歩くことしばらく、俺達一行はようやく最初の目的地に到着した。

 俺達がたどり着いたところは石造二階建てのとても大きな建物だ。

 道中見て来た建物の中で一番大きいかもしれない。



「ここが冒険者ギルドじゃ。くれぐれも騒ぎを起こすでないぞ」



 とローズが言うやいなや、土御門さんが目にも止まらぬ速さで走って行き、両開きのドアを勢いよく押し開けた。



「たっのもぉぉぉぉう!!!!!」



 まったく、あの人は。

 ローズが言ったこと聞いてなかったな。

 ここが冒、のあたりで動き出してたし。

 ローズは土御門さんの行いを見て口をポカンと開けている。



「おいこら! 待つのじゃマイ! お主は言葉も分らんのじゃから先に行くでない!」

「むう、しょうがないわね」



 土御門さんはそんなセリフとは裏腹に、足を止めることなく中に入って行ってしまった。

 俺たちは走って後に続く。

 冒険者ギルドの中は酒場と受付が合体した冒険者ギルドの定番のような見た目だ。

 クエストボードのような物や、バーカウンター、屋台などもある。


 ていうか俺たちすごい目立ってるんですけど。

 土御門さんのせいですごい気まずい。

 その土御門さんはズンズン受付に進んでいっている。



『おい、そこのお前! おい、ちょっと待て! お前だ。お前!』



 うわ、何か急に肩をつかまれた。

 最後尾を歩いていた俺が振り向くとそこにはガタイの良いおっさんが立っていた。

 今まで見たおっさんの中で一番デカいかもしれない。

 それに、背中には俺の身長程あるどデカい斧を背負っている。



『お前たち、見ない顔だな? 冒険者ギルドに登録にきたのか?』



 おっさんがいかつい顔で何か言ってくる。

 ああ、これはあれか。

 ここはお前らみたいなガキが来るところじゃねえっていう定番のあれか。

 そうだな、ここは何か力を見せつけなくては。


 とは言え、俺のステータスではこのおっさんに殴りかかってもダメそうだな。

 そうだな、あれをやってみるか。


 ゴンッ!!



『あだっ!?』



 ふっふっふ。

 これは避けられまい。

 転移魔法を使いおっさんの背負ってた斧をおっさんの真上にテレポートさせたのだ。

 いやはや上手くいってよかった。

 これならもう舐められることもあるまい。

 俺がそう考えていると後ろからローズに尻を蹴られた。



「おいっ! このたわけ! お主らは何かしらの騒ぎを起こさんと気が済まんのか!? 何故話しかけて来ただけの男に攻撃する?」

「いや、だって。こいつが俺の力を試しに来たから」

「初対面の奴にそんなことする奴がホイホイいるか! 大方ここに慣れていないように見える妾たちに案内をしようとしてくれたんじゃろ。ほら、頭を下げい」



 ローズはそう言うと、俺の頭を掴みおっさんに下げさせた。



『すまぬ。こいつらは共通語も知らない田舎者なうえに、どうしようもない阿呆なのじゃ許してやってくれ』

『そうか。遠いところからよく来たな。何、若者は元気があってこそだ! 頑張れよ!!』



 おっさんはガハハと笑いながら俺の背をバシバシと叩くと自分の席に戻っていった。

 ローズが何か失礼なことを言っていた気がする。



「ふん。気の良いやつでよかったな。くれぐれももう騒ぎを起こすでないぞ」

「はい。すみませんでした」



 ローズに謝罪と共に頭を下げ土御門さんの方を見ると、土御門さんはもう受付までたどり着き受付のお姉さんと話をしていた。



『ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどういったご用件でしょうか?』

「おお、ウサギ耳の獣人さんじゃない! 可愛いわね。」

『あの~、ご用件は? その、共通語わかりますか?』

「んん~。やっぱり受付は美人さんに限るわね」

『あの~、話聞いてます? おーい?』



 受付嬢さんが土御門さんに顔を近づけて手を振っている。



「まったく。こっちもか」



 俺の隣ではローズが頭を抱えていた。

 どうした?

 魔力切れか?



「あら、なんという立派なうさ耳なのかしら。ねえ貴女。その耳を少し触らせてもらえないかしら?」

『ん? 耳ですか? 耳がどうかしましたか? 何かついてますか?』

「それじゃあ、少し失礼するわね。」



 あ、土御門さんがお姉さんの耳に触りだした。



「ほほう、素晴らしい毛並みね。モフモフしていてとても手触りがいいし、それに果物のようないい香りもするわ。いいうさ耳ね!」

『な、なんなんですか? なんで急に耳を触るんですかぁ? って、ひゃう!? ああ、そこは、そこはダメでしゅう。も、もうやめてください。耳は弱いから、やめ、やめて、ひゃっう!?』

「あら、ここがいいのかしら? ふふふ。もっと触ってあげるわ」



 土御門さんがケモミミを触り始めてから受付嬢さんが顔を赤くしてくねくねしている。

 なんかエロイな。



「やめんか、こらぁああ!」

「ぐほっ!?」



 ローズが土御門さんに後ろからドロップキックをくらわすと、土御門さんはカウンターに突っ伏し

 た。



『まったく。すまんかったなお主』

『い、いえ。そんなに嫌じゃなかったですし、その、気持ちよかったので』

『む?』

『あ、ああ。なんでもありません。そ、それで本日はどのようなご用件でしょうか?』

『うむ。冒険者登録をしに来たのじゃ。こ奴らは見ての通り共通語を話せんからの。妾が代わりに手続きをする』

『ああ、そうでしたか。冒険者登録をするのでまずはステータスカードを提示してください』

『む? ステータスカードを提示するようになったのかの?』

『ええ。五十年ほど前から防犯のために受付の際にステータスカードの提示が義務付けられました』

『ふむ。そうか』



 ローズが受付嬢さんと話していたと思ったら振り返った。



「おい、お主ら。ステータスカードを出せ」

「ん? 登録にステータスカードがいるのか?」

「うむ。最近必要になったらしい」

「でも、私たち王国から逃げてるから本名がばれるのはまずい気がするわ。それにローズちゃんも称号に魔王ってあるんじゃないの?」

「ああ、それは適当に細工するから問題ないわ。ほれ、さっさと出すのじゃ」



 俺と土御門さんはローズにカードを渡した。

 それにしても細工ってなんでもありだなこの魔王。


 ローズは三人分のステータスカードを両手に挟むと何やら呪文を唱え、再び手を開くと俺のステータスカードが見たことのない言語に代わっていた。

 おお、手品みたいだ。



『ほれ、これでよいかの?』

『はい。ミレンさんとフーマさん。マイムさんですね。おお、みなさんお強いですね。Dランク冒険者と同じくらいのステータスとスキルですよ。それに魔法も使えるようですし、優秀ですね』

『そうか。それでは登録を頼むぞ』

『はい。少々お待ちください』



 受付嬢さんはローズと話し終わったのか奥の方へと走って行った。

 土御門さんが受付嬢さんの尻尾を見て、フリフリしていてかわいいとか言っている。


 それからしばしの間椅子に座って待っていると、受付嬢さんがトレイを持ってやって来て、ステータスカードと冒険者証を一人一人渡してくれた。

 ふんわりした雰囲気で可愛らしい人だ。



『皆さんEランクからのスタートです。冒険者証の再発行はお金がかかりますのでなくさないでくださいね。それと、私が皆さんの専属となったミレイユです。これからよろしくお願いしますね!』

「ねえ、ローズちゃん。彼女はなんて言っているのかしら?」

「専属となったミレイユじゃ。よろしく頼むと言っておる」

「あら! 彼女が専属になってくれたのね! よろしくね! ミレイユさん!」



 土御門さんはそう言うと、ミレイユさんの手を握ってブンブンと上下に振り始めた。



『あ、あの?』

『よろしく頼むと言って居る。』

『ああ、そうでしたか。よろしくお願いしますね』



 何を言っているのかはわからなかったが彼女の微笑みを見たら、今後うまくやっていけそうな気がした。

千年を生きる吸血鬼

ミレニアムヴァンパイア

ミレン

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