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poco a poco  作者: 舞音
9/18

先への指標

こちらの道だと住宅街を通らないので、人通りも車通りもいつもより多くて、なんだか少し落ち着かない。

吹部や知り合いこそいなかったが、同じように部活終わりのC中生が、あちこちで連れだって歩いていた。


「、、全く、お陰で15分は余計にかかるわ」


彩音は腕時計を確認すると、僕のせいだと言わんばかりにこちらをジロリと見た。


「ごめんて」


そう言いながら僕も同じ視線を彩音に送り返す。

申し訳ないとは思わないでもないが、それでも僕が謝るというのも釈然としない。

自分から始めたこととはいえ、勝手の分からない所で訳の分からない目に遭って、今日は絶対に僕の方が彩音よりしんどかったはずだ。

姉なら文句など言わずに、そんか弟のことを労ってほしい。


「、、まあいいわ、もう入部しちゃったもんはしょうがないし」


「それなんだけどさ、あれで僕もう入部したことになんの?」


「え?うん」


「なんか、今日顧問の先生とかいなかったじゃん?入部届は一応先輩に渡したけど、これで大丈夫なのかなーみたいな」


「いいのいいの。金杉先生顧問だけど全然部活来ないし。ミーティングで挨拶すればもう部員だよ」


「あ、そんなんでいいんだ」


金杉先生というと、確か2年生の音楽を教えている男の先生だ。顔はいまいち思い出せない。

音楽の先生なら、てっきり部活を見に来る物だと思っていたが、そういう訳でもないのか。


「先生が来ないなら、いつも練習はあの部長が見てるの?」


「部長とは別にシオンっていう学生指揮者がいてね、予定を立てたり練習を見たりっていうのは大体そいつがやってる」


「へー」


(そういうのって生徒でもできるもんなのか)


あのハーフの部長といい、どうやら吹奏楽部には偉大な先輩が沢山いるようだ。それに、よく知らないけど学生指揮者ってなんか凄い。

シオン先輩か。どんな人なんだろう。


感心している僕の方を見て、彩音がたしなめるように言った。


「とにかくあんたはもう公式に入部したってこと。入った以上、せいぜい上達できるように練習に励む事ね」


(なんか捨て台詞みたいに言うな、、)


けど上達しないといけないのは確かだ。普通なら4月に入部するのだから、7ヵ月分同学年に送れを取っていることになる。

その上僕は姉のお陰で辛うじてユーフォニアムの存在を知っていたくらいの初心者だ。

 

はやく周りに追いつかないと、、


いつの間にか家の近くまでやってきていた。

公園の横を通る。同じマンションに住んでいる子供達が、遊びを切り上げてで帰ろうとしている。

ここから家まではすぐなのだが、またあの住宅街を通らないといけない。

僕たちは念の為また回り道をすることにした。自転車の侵入を防ぐ敷居をすり抜けて、公園に入っていった。


「ねー彩音」


「ん?」


「今僕全然吹けないじゃん」


「うん」


「これ練習続けたらいつくらいに吹けるようになるもん?」


「うーん、、上達の速さは人によって違うよ。けどリミットは3月、、いや1月かな」


「え、、リミットあんの?」


しかも1月って、あと2ヵ月も無くないか。


「3月にさ、定期演奏会があるの」


「うん」


定期演奏会の存在は知っていた。去年彩音が中1で出ていて、両親が観に行っていた。

僕は中学受験から解放されて(落ちたが)遊ぶので忙しかったのと、単純に興味が無かったので行かなかったが、親が撮ったビデオを見た覚えがある。


「、、でも定期演奏会がリミットっていうなら、3月じゃないの?あれ違ったっけ」


「いや、定演の本番はそう、3月にある」


(定演って略すのか)


「でね、そのときやる楽譜をもう配り始めてるんだけど」


「うんうん」


「1年生は楽譜を貰う前にテストを受けないといけないんだよね」


「うんうん、、、え!?」

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