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poco a poco  作者: 舞音
8/18

家に辿り着くまでが部活

17時30分のチャイムがなった。もうほとんどの生徒は校門を出た頃だろう。


「、、もう行かないとね、、」


僕は目の前にいる彩音と顔を見合わせた。


「、、行こうか」


彩音はそう言うとため息をつき、階段に向かって歩き出した。


1、2年生の昇降口は、どちらもこの階段の下にある。せめて別々の場所にあれば良かったものを。結局彩音と一緒に帰ることになるのか。


「、、なんであんたのせいで友達に置いてかれないといけない訳?」


彩音がぶつくさ言うのを聞き流しながら、靴を履き替え、中庭を通って、校門へ向かう。中庭はサルスベリの並木道になっているが、今は裸の木々の、細々としたシルエットがそびえるだけだ。冷たくなってきた風が、道端の落葉をかさかさと騒がせている。

門の前には、校外に出るだけ出てたむろっている吹部の群れがいた。さっきの先輩二人の姿も見える。


「あ、やっぱ置いてかれてないみたいだよ、彩音」


僕がそう言って部員の方を指すと、彼らは門の脇にスッと隠れた。


「なるほどね、、」彩音がつぶやく。


「え、何?」


「いや、あいつら私達が一緒に帰るのを見届けようとしてんだよ」


(まじか、、、)


僕は絶句した。皆もっと他に何かやることはないのか。


「ふん、、上等よ、、」


「え、どうした彩音」


「奏、絶対に奴らをついてこさせちゃ駄目よ。裏道を使いまくって撒いてやろう」


「あーオッケー」


声を落として家までの道のりを確認すると、僕たちは早足で歩き出し、門を通った。

しかしさっきまでいた部員達の姿はない。いや、よく探すと電信柱の後ろや茂みの向こう側に人影が見えるが、彩音に倣って無視する。

いつもならまっすぐ進むところを、左の道に入ると、あちこちからどよどよとざわめきが起こった。


彩音の方を見ると、得意げな顔をして右を指差している。

僕たちは小走りになって、T字路を右に曲がった。C中の生徒達も多く住んでいる住宅街にさしかかる。

同じような家が並ぶ中を彩音と決めたとおりに、右に左に曲がっていく。通り過ぎた道の方から僕たちを探す声が聞こえた。


「おーいどこいったー」


「うわ、逃げられた、、」


「そっちいたー?」


それに追われるように、僕たちは走るスピードをはやめた。

小さな畑に沿って曲がり、小径を抜けると、車の通る広い道に出た。学校の前に戻って来たのだ。

後ろを向いたが、さすがに追ってきている部員はいなかった。


「やったね」


「うん、ざまーみろ」


彩音は住宅街の方に目をやり、満足げな笑みを浮かべた。


僕たちはさっきとは反対側の道を歩き出した。こっちの道は遠回りなのであまり使わないが、校門からはどっちに曲がっても帰れるのだ。

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