表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
poco a poco  作者: 舞音
7/18

歓迎と、ちょっとした罠

部員達の流れの中に入り込み、僕も音楽室を出た。


廊下の電気も既に消えていた。窓の外から入る信号機の光で、教室の窓が赤や緑に照らされている。

時計を見ると17時25分だった。11月ということもありもう外は暗い。


こんな時間まで学校にいたのは、初めてかもしれないな。


すっかり雰囲気の変わった校舎を眺めていると、後ろからばたばたと廊下を走ってくる足音が聞こえた。


「ひびきくーん!」


聞いたことのない声だ。振り返ると、ウェーブのかかった長い髪で目の前が覆い尽くされた。

ふわっと良い匂いがしたかと思うと、声の主は目の前に飛び込んできた。


(、、、、?)


思わず後ろにのけぞると、後ろからさらに2人やってくるのが見えた。1人は彩音だった。他の2人もどうやら2年生の先輩のようだ。

一体なんだろうと声も出せずに突っ立っていると、最初にやって来た先輩が口を開いた。


「かわいー!」


(え、何が、、僕が、、?)


訳が分からずにいると、先輩はキャーキャー騒ぎながら急に僕の手を握った。


「な、なんですか!?」


混乱しながらも、握られた手から顔にかけてどんどん火照っていくのを感じる。女子の手なんて今まで握ったことがなかったのだ。


「あ、誰だって感じだよねごめん!」

「、、、」


驚いて言葉も出ない。しかし2人の顔を改めて見ると、もちろん知り合いではなかったが、どこかで見たことのあるような気がした。


(、、なんだったかな、、)


「アヤネ、私達のこと紹介して!」


先輩はパッと手を離し、彩音の方に向き直った。僕はまだ少しドキドキしているのを抑えながら、一歩下がって3人の方を向いた。


彩音はため息をつきながら、飛び込んできた方の先輩を指さして言った。


「これはパーカスの矢吹(やぶき) 小夜(さよ)


「よろしく!」


「でこっちはフルートの叉川(さがわ) (ゆき)


「そう!ウチのアヤネがお世話になってます~」

「おい、それはおかしいだろ」

彩音がすかさずツッコむ。


なるほど、友達の弟が入ってきてテンションが上がっているわけだ。

(多分この2人は彩音と一緒に写真に写っているのを見たんだろうな、、、)僕は勝手に納得した。


「さ、もういいでしょ、帰るよ」彩音がため息をつき踵を返したが、2人の先輩がそこに立ちはだかる。


「えー弟を置いて帰るの?お姉ちゃん」


「え」

(え、、、?)


「同じ家に住んでるだからそりゃ一緒に帰るでしょ!」

「いやいやいやいや」


なんだか雲行きが怪しくなってきたので、僕も恐る恐る口を開いた。


「あの、僕一人で帰りますよ、、」

「いやだめ。姉弟なのに納得いかない。ねえ彩音」


「ずいぶん勝手なこと言うな」


「じゃあ私達は帰るからね?あとは姉弟水入らずで!バイバイ~」

「え!?ちょっと待ってよ、おい!!」


彩音が呼びかけるが、2人は来たときのように猛ダッシュで階段の方ヘ消えていった。


(、、あの2人はこの為に来たのか、、、)


一緒のパートで練習させるだけでは飽き足らず(あの場合は副部長2人のせいだが)、姉弟で一緒に帰れというのか。

僕と彩音の2人しか残っていない廊下に、先輩達の足音と見回りの先生の声が響いた。


「おい叉川、矢吹、急ぐのはそうだが走るなー」

「すいません先生!」

「すいませーん」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ