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poco a poco  作者: 舞音
16/18

11月の小夜曲

門を出たところでチャイムが鳴った。


不本意ながら今日も彩音と一緒だ。


今日は矢吹先輩と叉川先輩の二人に捕まるまいと、部活が終わるなり小走りで、ひっそり音楽室を出た。

しかし、昇降口から中庭まで来た所で、同じく逃走中の彩音と鉢合わせてしまったのだ。


「あーあ、いつまでこれが続くんだろ、、」


彩音がぼやきながら、僕の方を見やった。


幸い昨日と違って、早く出た分部員達はいないので、通常の帰宅ルートを取れる。


人気の少ない通りを二人で歩いていると、初冬の寒さがよりこたえた。


「奏、どうだったよ、初合奏」


「ああ、、」


僕は歩きながら、さっき合奏のことを思い出した。


記憶の中から、心を動かすあの音が、鮮やかに浮かび上がる。


曲の生演奏を聞くのは、学芸発表会ぶりだった。

あれだけの音が連なって、1つの音楽を奏でる一体感。

輝くサウンド。包み込むようなハーモニー。

それらに心を揺さぶられるような感覚。


「、、凄かった」


その一言に尽きた。


「僕も、いつかあの中に入れるように、なるかな」


それを聞いた彩音は僕の方をちらりと見た。


「あんたはそうなりたいの?」


その言葉に、僕は無造作に頷いた。


つもりだったが、どっちつかずに肩をすくめたような感じになる。 


しばらく彩音も、僕も、何も言わなかった。

そして彩音が沈黙を破った。


「、、なりたいなら」


そう言いながら歩みを止める。

僕は少し先に進んでから、彩音が止まったことに気付いて振り返る。


「なれるよ、きっと」


彩音を見ると、微笑んでいた。

その目は僕を捉えた後に、少しだけ、どこか遠くを見たような気がした。



「、、、なんか」


「なに?」


そう言う彩音は、もういつも通りの表情に戻っている。


「あの、なりたいならなれるって言われても、、不安なんだけど、、」


「え、いやいやなれるんだってば!」


「、、どうだかー」


僕は家の方にどんどん歩いていった。


「まってよー!えー良いこと言ったんじゃーん!」


彩音が慌てて追い掛けてくる。


僕は思わず笑みをこぼし、子供のように駆けだした。


二人分の足音が、住宅街の寒空に響いた。

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