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poco a poco  作者: 舞音
13/18

二日目

悩むだけ悩んだが、心がすり減っただけで、時間は無慈悲に過ぎていく。



寝たのか寝ないのか分からないうちに、朝がきた。


「奏ーおきろーー」


母の声にもう朝なのかと軽く絶望する。

微妙に痛む頭を抑え、時計を見ると8:00を過ぎていた。


(うわーやべえ、、)


家から学校まで急いでも10分かかる。始業は8:30だ。

ふらふらになりながら制服に着替え、リビングに駆け込むと母が大福を渡してきた。

一口で頬張り、今度はコップに牛乳を注いで渡されたのでそれで流し込む。

顔を洗うと目が覚めた。濡れた手でそのまま寝癖を抑えつけ、歯を磨いていると、台所から母

の声がした。


「はちじじゅうごふーん」


慌てて口をすすぎ、鞄を肩に引っかけると玄関に駆け込んだ。


「いってきまーす!」


エレベーターを待っているのももどかしいので階段を数段ずつ飛ばしながら駆け下り、その勢いで走って行く。


しかし運動部ではないので重い荷物を持ってそんなにずっとは走れない。


走って、疲れたら歩いて、また何となく不安になって走ってを繰り返していくと、だんだん周りに登校するC中生が増えてきたので、そろそろ良いだろうと思い走るのをやめた。


しばらくすると5分前の予鈴が鳴ったので、また少し急いで、2分前に無事教室に着いた。


(あーー疲れた、、、)


11月とはいえワイシャツの上にセーターとブレザーを重ねて走れば汗もかく。

そのまま1時間目の授業を休憩に当て、疲労が取れると今度は眠くなってきたので2時間目は寝た。

 

こんな具合で、奏は普段からお世辞にも授業態度が良いとは言えない。

それでもテスト勉強には取りくむお陰で、2つが相殺して平均的な成績を取っているのだった。


2時間目も終わって眠気と疲労がさっぱりなくなると、昨晩からの悩みが再び沸き上がってきた。

吹部は平日毎日活動しており、今日も部活はあるはずだ。しかし奏はそれを楽しみに放課後を待つことは到底できなかった。

答は一向に見つからず、授業の内容など入ってくるはずがない。

(だめだ、、、)

頭を抱えこみたくもなるが、授業中なのでそんなことをしたら寝ていると思われ当てられる。

二時間目は当てない先生だったから良かったものの、寝ても大丈夫な授業はそもそも少ない。

授業を受けているふりをしながら50分悶々と苦しんだ後、チャイムと共に奏は黒板から目を離してうなだれ、そのまま机の上の腕に顔を埋めた。

しばらくそうやっていると、背中を誰かが小突いてきた。

上半身を起こすと艶やかな黒い髪が顔にかかった。

山下だ。


「山下?、、何」


「響、今日は一段と無気力だねえ」


「いや別に」


「えー?、、いや、このままほっといたら教室移動せずに寝てそうだったからさ」


「あ、次移動か」


「そうだよ」


「忘れてたな、、」


「ほらね?、、とにかく、あんたが寝てて当てられたら、そっから順番に当てられてくんだからね、しっかり起きといてよ」


そう言うと山下は席を立って教室から出て行った。

山下の席は奏の真後ろだ。

ちなみにその2つ左隣には八朔がいる。


(同じクラスにいるだけじゃなくて、席も近いからな、、)


やはりそれが気まずくなってしまったらと考えると、辞めるという選択肢はとりようがないように思えた。

しかしその方向で考えるたびに、あの時の言葉と氷のような眼差しが頭をよぎる。

僕がもしいつまでたっても上手くならなかったら、今は優しく迎えてくれている部員からもそのうちあんな風に接されるようになってしまうのではなかろうか。

奏の頭の中は昨日から延々これを繰り返している。

そのため教室を移動するにも、ようやく昼になって給食を食べていても、奏はずっと上の空だった。


全てをないがしろにしてひたすら悩んだのに、結局なにが解決するでもなく、放課後はやってきた。


(部活、、行かないとな、、)


そう思いながらのろのろとプリントを整理したり、教科書を鞄に戻したりする。

みんなそれぞれの部活や委員会のために、ぱらぱらと教室を出て行く。何もない者は友達と連れだって帰っていく。

そのうちにほとんどのクラスメートがいなくなり、取り残されたように自席に座っていると今度はこの部屋をミーティングで使う部活の者たちがぞろぞろと入ってきた。


奏はここでようやく重い腰を上げた。

まだ部活で使う物を揃えていないので、教室を出て、ふらふらと歩いて行く。


音楽室に近づくにつれ、様々な楽器の音がごちゃまぜになって聞こえてきた。

音楽室の前では、ちょうど彩音が楽器を出していた。


「あ、奏、楽器の出し方覚えてる?」


「あ、、、うん、多分」


「そしたら楽器と譜面台もって、前と同じ教室来て、今日は最初はパート練習だから」


「うん」


彩音はユーフォと、譜面代の入った黒いケースを持って階段を上っていった。


あれだけ悩んでも、いざその時が来ればあっけないものだ。やっぱり辞めますなんて言い出せない以上、流れに従って部員としての日常に順応していく他に選択肢はない。 

奏は小さなため息をつき、楽器庫に入っていった。

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