平和な一時
短めです。サラリと読めますよ。
※こちらも修正しました。混乱してしまった方すみません。
呪詛の様に『あんたねえ』を繰り返すレイ。
異界から来るあの世の使いが今にも泣き叫んでフルダッシュでトンズラする位、得体のしれないオーラが彼女の周囲にゴゴゴゴ……! と、集まる。
そんな修羅場に彼女の頭上にあった天使の輪が正に天使の如く制止の矢を放った。
もちろんこの声の主も『神器珍獣』だ。
『――殺生は悪徳ですよ。大地レイ』
実に冷静で的確で何より恐ろしい事を平気で丁寧語で言いきったそのレイの『神器珍獣』の名は『アムー』。
『チッ! また面倒くせえのが出てきたもんだぜ! 全くなあルイ?』
シトーが軽く毒づくとその天使の輪(輪の両脇にはこれまた純白の羽がちょこんと浮いている)である他でもない大地レイの『神器珍獣』、アムーはどうやらご機嫌斜めだったらしく――
『果たして最初に出てきたのはどちらかお分かりで? IQの低いまあるい物体Xさん? そしてレイ? 殺すのならば、あの丸いお喋りなボールにだけにしときなさい。天使である私が許します。これも神の御加護です。アーメン』
――と、実に淡々とした調子でそう告げた。
『はああああ――!? チョッと待てよ! アムー! ざっけんな! なーにが、神の御加護です。アーメンだ! こちとらこんなナリだがよ! これでも無神論者気取ってるんだ! ケッ! 世の中、宗教戦争『イグネス』だとか、日本各地で勃発してるみてーだがよ!? そもそもおめーみてーな奴がいるからこんな事になるんだぞ!』
大地ルイの腹の上あたりに浮いていた『神器珍獣』――シトーはここぞとばかりの怒声と共に大地レイの頭上にいたアムーに疾風の如き速さで近付き牽制の罵倒語クロスカウンターを浴びせる。
――しかしだ。
『宗教戦争『イグネス』と私は永遠に無関係です。そもそも、あの戦争に巻き込まれた被害者達の中で特に優秀な『神呪』――元は『コンタギオン』の罹患者達ですね。――が、この島に運び込まれてから私は生まれたはず。なのにシトー。あなたはそれを理解しようともしない。やはりサッカーボール如きに話は通じないようですね。そう神様がお告げをくれています。ああ。全知全能の神よ。あなたの判断は間違ってはいない。ですが、1つ訂正をさせて貰えるのならば、『シトー』と言う存在そのものをこの世から抹消して貰いたいのですが、この願い何時になれば聞き届けて貰えるのでしょうか? アーメン』
まるで我関せず――と言った風情のアムーだった。
だが、大地ルイと大地レイの2人の双子の兄妹、小競り合いは目の前でギャアギャア騒いでいる自分達の『神器珍獣』を前にして何かが吹っ切れてしまったのか、それともシトーとアムーの激論戦に圧倒されてしまったのか、思わず数秒間顔をジッと見合わせて――
「――プッ! アッハッハ!」
ただ、2人とも愉快気に笑ってしまった。
ありがとうございました。
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