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Avengers  作者: くをん
21/25

登校時間10分前!

少しでも面白いと思ってくれたなら救われます。

※修正しました。皆様にはご迷惑をお掛けします。

「大体ですね、この世に目覚まし時計なんて腐るほどありますよ?」

「はあ――それが何か?」

「あなたはその腐るほどある目覚まし時計の中からわざわざあの地獄の底から鳴り響く様な悪のベルを鳴らす目覚まし時計を選択した。そこが問題なんです。その他については何も言及する事はありません。ですから私の至福の時、レム睡眠時に見るハーレム結成隊――いや、夢の内容についてはこの際どうでも宜しい。そういう事にしておいて下さい。頼むから。まあ、その何だ? 私の大家としての意地とプライドがそれを阻んで許さない――じゃなかった、これも違うかな? ――と、兎にも角にも何もかも働き盛りの私の束の間の休息を悪夢(ナイトメア)にすり替えるのだけは今後一切禁止です。断じて」

 その束の間に見るハーレム結成隊についての思考を巡らした後、一体全体どんな悪夢(ナイトメア)を見ているのか? 気にはなったがまた長くなりそうだったので口には出さないでおくルイ。

「はあ――でも目覚まし時計に罪は……」

「もちろんありえませんよ。問題なのはそのナイトメアクロックを敢えて名は言いませんが誰が購入したと言う所が問題なんです。世の中には善と悪と言うものがありーの……」

 物事の基準。その物差しがデジタル電子アラーム目覚まし時計へ矛先を向けられたかと思いきや、いきなりその学説が性善説と性悪説にまでぶっ飛んでいき、ルイは思わず溜め息連発。あんな物買わなきゃ良かった――と、今更ながら思った所でもう遅い。後悔先に立たずとはこの事かと、ルイはまた1つ賢くなった。

 そんなこんなでルイがVS大家さん相手との押し問答を繰り広げてる最中にも颯爽とレイお嬢様はリビングで2人掛けソファに踏ん反り返り、丸いガラスのサイドテーブルに乗っていた女性用週刊誌を手に取る。

 ――フンフン。なるほど~等と言いつつページをめくり、上機嫌な子猫の様にあくびをする。全くもって外部との交友をシャットアウト。

「レイー! レイ様―! 一生のお願いだから何とかしてくれよー!」

 早くも人生に一度しかない『一生のお願い』スキルを何の恥じらいもなく使い、実の妹に縋り付くルイ。一方、その世界中に7つしかない龍の玉を集めなければ叶わない難攻不落の『一生のお願い』に対して、不覚にもレイお嬢様は冷ややかだった。

 どこからか救世主を求める声――しかし、何事も無かったかの様にレイは市販のオーディオ機器をリモコンで操作し、最近ここ『イクスぺリメント』で流行しているトップアイドルの歌詞と旋律を奏でながらその鼻歌を(そら)んじる。

 こうしてルイの救いの呼び声は見事にそのメロディーに相殺され、結局朝からまだその名も紹介していない若きインテリ眼鏡大家さんの大説法にコテンパンに打ちのめされる結末を迎えた。

 だが、例のデジタル電子アラーム目覚まし時計にも愛しの同居人大地レイお嬢様にも全くと言っていいほど罪は無い。ぶっちゃけ、レイは朝の束の間の休息をいつもの様に楽しんでいただけで、ルイのSOS信号に気付きもしなかったのだから。

「こうして、我等が宇宙艦隊『デンジャラス』は悪の銀河系軍団『デストロイ』を見事に看破し、全宇宙の核戦争を回避したのであった。そこに残ったのは宇宙全体の恒久的平和の存続と、秩序の確立。全宇宙に散らばった至高の魔石『DAY・DREAM』はと言うと、そのまま結晶化しこれまた全宇宙の最果ての地『ブラックシャドウ』にいる高僧『クリスタ』の手によって永久に封印されてしまった。しかし、これで何もかもが終わったのではない。事件が終わってから1000年後の今、封印されていたはずの至高の魔石『DAY・DREAM』が何者かの手によってその暗黒魔界の『ブラックシャドウ』の混沌とした闇から解放され、またしてもこの全宇宙に散っていったのである。高僧『クリスタ』は何者かによって殺害され、新たなる戦いの序幕はこうして始まったのです。少しは分かりましたか? 私の言いたい事が」

「――え、ええ。もちろん」

 いつから電子アラーム目覚まし時計から全宇宙の派閥抗争へと発展したのか? 謎は深まるばかりだ。

 大家さんの朝っぱらから始まったお説教も色々紆余曲折はありーの何だか訳も分からずに終わりーの気が付いてみたらとっくに登校時間10分前になっていた。

 孤島にひっそりと佇んでいるだけあって『スパシーバ学園』はこの無骨な賃貸マンションからそう遠くは無い位置にあったが、さすがに制服に着替えたりその他諸々の準備に追われると10分なんてあっという間だ。

「ルイ! 何やってんの! 急ぎなさい」

『ハァ~。これだからシトーの里親は……』

 つい先ほどまでくつろいでいたのが、まるで嘘の様にレイは真っ白なオーバーオールの制服に身を包むと、肩越しに『スパシーバ学園』指定の学生鞄を携えてルイを急かす。

 そんな彼女の頭上には天使の輪を模した両側に羽根があるレイの『神器珍獣(エクセンプルム)』――アムーが浮かんでいて、落ち着いた声音あるいは諭す様な口振りで軽い愚痴を零した。

「――ハイハイハイ! わーかってますって!」

『オイオイ、エンジェルちゃんよ。戯言は寝て言いな』

 いつの間にかルイの『神器珍獣(エクセンプルム)』――シトーもその姿を現した。どうやらルイの制服の中で眠りこけていたらしい。

『それを言うならば、寝言は寝て言えです。あなたの頭脳の許容範囲を超えているのは確かですが、もう少し勉学に重きを置いた方が良いですよシトー。まあ、無駄な努力に終わるのだけはこの私が保証しますが』

 新たな挑戦状を叩き付けるエンジェルちゃん。アムーに対し、シトーはと言うと――

『あーあー。エンジェルアムーちゃんは少し黙っててくれる? 俺は朝からどうでも良いご託宣を聞き入れる程、良い趣味を持っている訳じゃないんでね』

 珍しきかなその挑発を軽く受け流した。ただし、相変わらずこの2人の仲が悪いのは健在だったが。

 そして、2人――いや、アムーとシトーも加えると4人――は学校へと登校しにやっとこさ中途半端に背伸びした2LDKマンションの玄関から飛び出した。

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