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Avengers  作者: くをん
17/25

謎の追跡。その正体は果たして……?

結構長いのでご容赦ください。

※修正しました。ご迷惑をお掛けします。

「――それで? どうして御2人はこちらにいらっしゃって?」

 とても落ち着いた物腰で周囲の喧騒がまるであたかも森の中にあるそれも大自然の川のせせらぎの様に聞き流しながら、全てを無に統一して神経をルイとレイの方に向ける。富士山景。

「――あ、えっと……」

「最近、急に『スパシーバ学園』の人口密度が増えたでしょ?」

 ルイが戸惑っている隙に、すぐさま答えたのは黒い眼帯を右目に携えたレイだ。ツインテールの黒髪をなびかせ、さも得意気に言った。右手には溶けかけのアイスキャンディーの棒をシッカリと握っている。

「そんでもって、何だか急にその話題で持ちきりになっちゃってさ。とんでもなく愉快なお昼ご飯の後に、せっかくだから新人(ルーキー)の『私闘(フェーデ)』でも見学しようって事になった訳。ここ、授業(カリキュラム)はキツイけど、その分能力者の負担を少しでも軽減して支える様に休憩時間は長いし、それに何より生徒達への束縛も特にないからね。担当の先生が突然風邪で寝込んじゃった自習授業の自由時間みたいなもんよ。ね? ルイ」

 そう言ってまたも眼帯の付いていない片方の目だけで可愛いウインクをするレイ。その後、アイスキャンディーの先端をペロペロと舌で舐める。それをどう受け止めたのかルイは不機嫌極まりない顔になって複雑に話を継いだ。

「――ね? ルイ。じゃないよ、全く。その愉快なお昼ご飯で誰が地獄を見たと思ってるんだ? 喉元に直接、包装紙事焼きそばパンを突っ込まれる経験値なんてそうは無いよ。希少だよ、希少。そんなレアな地獄、金輪際お断りだからね。それにほら、話は戻るけどここがある程度自由なのはそこら中に監視カメラやサイファー(無人偵察機)が飛び交っているからだよ。よくもそこまでお金を掛けられるなって、僕は感心しきりだけどね。因みにサイファー(無人偵察機)は時折ふわふわとこの監獄の様な島の中空を彷徨っているのを見かけるけど、監視カメラは巧妙に隠されてるはずだよ。能力で誰にも壊されない強度を保ったそれも極小のレンズが今もここのどこかで僕達の様子を窺っているんだ。悪質なパパラッチと同じだよ。それとどうして日本に数ある学校の自習授業の様子なんてレイは知っているんだ? 僕達は強制的な教育は受けてるけど、義務教育やその後に進学する高等学校の世界なんて知らないはずだよ? 何せ、この島の研究養育施設『イクスペリメント』に運び込まれた時、僕達はまだ物心すらぼんやりとした5歳児だったじゃないか」

 それを聞くとレイはまたさっきと同じくフフン、と鼻を鳴らしビシリ! と、アイスキャンディーの先端をルイに突き付ける。無論、レイの舌によって溶けて無くなったアイスの棒が露わになってそこには霜が降りた様に冷えた残骸だけが結晶として残ってはいたが。

ルイはその眼前に突き付けられたアイスの棒の先端にビクつきながらも、何か反論を試みようとしたが、失敗に終わった。何せレイがそのまま次話に素早く移行したからだ。

「あのね、ルイ。双子の妹君の忠告くらいシッカリと鼓膜に押さえておきなさい。そんなもんはね、単なる妄想。良く言えばチョッと想像力を働かせれば済む話じゃない。この孤島に出来た学術研究会『ウィア』の研究養育施設『イクスぺリメント』には数千、いや数万冊もの資料や本、雑誌や新聞に至るまでほとんど全ての蔵書が管理されてる図書館と言う便利な代物があるじゃない。それに『スパシーバ学園』の中にも、図書室はあるんだし、少し調べれば日本で起こっている事なんて一発丸分かりじゃないの」

 アイスキャンディー・セイバー喰らえー! とでも言いたげな態度でまたもビシィッ! と、ルイの眼前に溶けかけのアイス棒が突き付けられる。そこから溶けきったアイスキャンディー・セイバーの雫がレイの指先まで垂れてきて、しまった! 迂闊だった! 等とほざいている我が二卵性双生児のアホな妹を見て、ルイは唖然とした。何に? いや、その台詞に。他に何かあったでしょうか?

「いや、あのさあ……レイ――?」

 ルイは自分の心の中で渦巻いていく遺憾とカタストロフィーのミックスブレンドを多少なりとも咀嚼、嫌な顔をして味わいながら段々と気分が悪くなってきた。その目の前で、必死こいて棒を舐め舐めしては、フー。セーフ! 等と言ってのけるこの妹君がそんなに頭が良いとは思えない。

 呆然とルイはレイの顔を見つめ続けた。するとレイは――

「言っとくけど、今のノーカンだから。それと何? 年頃の箱入り娘の顔を見つめ続けて……私の顔に何か付いてるっての? ハッ! もしかしてルイ!」

 何の競技でいつから始まった? と、ルイが思ったのも束の間の休息。妹レイ様はどんどん脱線し、加速していく。リニアモーターカーかコイツは。

「あんた、私にその気があるわね! 誤魔化さなくていいわよ! 大丈夫! 私はその手のタイプ、別に嫌いじゃないから。寧ろどんと来い! こっちもどこまでも付いて行くわ!」

 双子の兄妹揃ってストーカーごっこして何が楽しいんだ? ほとんど犯罪まがいのレベルの単純脳細胞=バカトークを一方的にでっち上げる年頃の箱入り娘(自称)はこれ以上止まりそうになかったから、止める事にした。

「何で、僕がレイの事――その、あんまりこういう言い方良くないけど、好きにならなくちゃいけないんだ?」

 僕達は平成生まれの双子の兄妹なんだぜ――と、言おうとした所をアイスキャンディー棒を持っていない方の左手で制すレイ。まるで何かを悟りきった様な仏陀みたいな顔をして、彼女はこう言い放った。

「親族に一人くらいそういうのがいても、ホラ、なんかこう面白いじゃない? ファンタスティックで。ロマンに溢れているわ。うん。そういう事」

 ぶっ飛ばしたくなってきた。一体全体どういう事だ。何で自分がそんなあるまじき幻想の被害者を演じなければならない? その理由を30字以上60字未満で明確に記せ。

 ルイが拳を震わせんばかりに本気でそう思っている内に、やっとこさ大人系美女――富士山景様の天から舞い降りる美声が神の声となって届いた。

「要するに――って、口を挟んじゃうのもなんだけど……こう言いたいのね? あなた達2人は暇で――いや、こういう言い方は良くないわね。昼休みの時間潰しにこの『スパシーバ学園』の人口が増えてきた事をきっかけにその調査を行って新人研修会を臨時に独断と偏見で行おうとした。その最初の一歩が――」

「――『私闘(フェーデ)』の見学会って訳かい。なるほど、理に適っていなくもない。それにしても懐かしいな。俺達も新人(ルーキー)の頃にはここでひと暴れさせられたもんだ」

 景の言葉を受け継いだのは他ならぬこの男。プロテイン大好きな筋肉バカ。焔司(ほむらつかさ)だ。

 ルイ達の先輩にあたる彼は昭和の生まれなのか、今時ありえない少しブラウン気味の短髪角刈り頭をしており、いかにも体育会系です。みたいな筋肉質な男だった。着ているオーバーオールの白い制服も張り裂けんばかりにピッチピチになっている。

「――そうだね。僕達は皆、最初の頃はここから始まったんだ。年齢性別その他人生の境遇は多種多様に違うだろうけど」

 そしてその話の流れをキープしたのは、恋愛ルートリア充満喫なイケメン男。瀬川剣だ。容姿端麗で顔立ちも整っており、身長も180センチ前後。スラリとしたその体躯に振り返らない女性はいないと言われる、生ける伝説の持ち主でもある。その為か同性の天敵が多い。制服もスタイルが良いせいか、異様に似合っているのが憎らしい。

「あのさー。私の事忘れてない?」

 これまた、声を荒らげて応対したのは貝生凜(かいせいりん)と呼ばれるいかにもミーハーなどこにでもいそうな齢相応の日本の元女子中高生。童顔のロリータバカ少女の代表格。

 華奢な身体に無邪気な印象を与えるトラブル&ムードメーカー。

 とてもミーハーな性格が災いして、瀬川剣と言う超難関ハードルに勇猛果敢にもアタックしまくりな日々を送っているが、冷静にかわされている。しかし、どうやら彼女の視界に入る異性の男子は全部自分のモノと言う謎の潜在意識が芽生えており、その元来の気性――どういった家庭もしくは環境で育ったらこんな(ガキ)が生まれるのか未だ謎のままに事件は闇の中へ迷宮入り。時効は過ぎた――からか、初めて出会った異性に挨拶代わりに告白すると言う天然を通り越して最早筋金入りの恋愛マスターと言うか恋愛の神。

そんな恋愛バカ――ではもちろんなく、恋のキューピッド的位置付けにいる彼女の最大の天敵は剣と割り合い仲の良い友人関係を保っている筋肉バカ焔司(ほむらつかさ)だと言うのだから話は厄介極まりない。

先程の口論の種もその関係性から言って正直最悪の部類に入るだろう。実に合理的な仲の悪さだ。

「――モチのロンで忘れてないさ。なあ、レイ」

「え――ええ。てゆーか、(りん)(つかさ)さんの仲も相変わらず健在ね」

「「――ハア!?」」と(つかさ)(りん)。同時発声。呼吸ピッタ。

「まあまあ。ここは穏便に済ませようよ。でないと話はいくら経っても進まないし、それに2人の仲は今に始まった事でもない――だろ?」

 しかし、これ以上その仲に亀裂を育むのも好い加減止めろと言いたいのか、フォローに回ったのは相変わらず(りん)に付き(まと)われているイケメン――瀬川剣だった。

「そうね。2人とも今だけは仲良くなさい。新人(ルーキー)達の『私闘(フェーデ)』――。その真剣勝負に水を差す様な事になったら元も子もないわ」

 富士山景のその言葉、それが終止符(ピリオド)となったのか、場に沈んだ空気が沈黙の妖精となって地上に舞い降りた。

「――ハア。まあ、何でも良いや。とにかく僕とレイはこの昼休み中に口論も交えて色々考えたんだ」

――ルイがやっと追いついたと言わんばかりのため息まじりに呟くと、

「例の――ここ、『スパシーバ学園』言ってみれば、それらを統括するこの島全体の人口増加。つまりは研究養育施設『イクスぺリメント』の人口密度の増加の事?」

 大人系美女――富士山景がさもありなんとそれに応じて、

「YES」と、レイが相変わらず不器用な片目だけのウインクをかました。

「これまで、場違いな程数が少ないなと思ってたけど――」と、次に声を発したのは剣だ。

「確かに、急に新人(ルーキー)さんの数が増えてきたよね。例年の倍くらいかな?」と、(りん)

「本来は皆、『コンタギオン』に侵されてきた被害者なんだがな。それが次なる戦いの舞台。ステージに立たされるってんだから、皮肉なもんだな」

 さすがに最後に同調したのは(つかさ)だった。

 しかし――それが暗示する1つの結果とは? 果たして何だろうか?

 ある種の答えに達したのは他でもないレイだった。

「――ねえ? こうは考えられない? もし、もしもだよ? 私達の知らないどこかで『コンタギオン』なる謎って言うか、闇の病を利用して強制的に『神呪(ミュステリウム)』――つまりは能力者を生み出す方法が見つかってたとしたら……」

「レイ――それは考え過ぎだよ」

ルイは思わずそう言ったがぞわりと背筋に奇妙な違和感に似た恐怖が這い上がってきた。

「いや、確かにそれは興味深い話だな。『コンタギオン』を支配する闇の力……か。――でも、そんなモノが仮に存在したとして、僕達のトップ――学術研究会『ウィア』の連中は黙っていないと思う。何せそこまで言ったら、悪い例えになるけど『神呪(ミュステリウム)』の能力者達をベルトコンベアーで大量生産する事も可能な訳だからね」

「――そうね。『コンタギオン』はあくまでこの世界の宇宙の神秘的な力の源泉。私は宗教的知見からもそう思うわ。決して嘘じゃなしに」

 剣と景の意見は全くもって違う方向に動いたが、最終的に同じ結末を迎えた。

「でも……その――私達の知らない世界って?」

「俺達の知らない世界――か。ん? オイ、チョッと待て! それって――」

 (りん)がそう言い残し、(つかさ)が思考に埋没し、その時ふと何かに気付いたのと同調して皆の思考が一致した。


 ――宗教戦争『イグネス』が起こっている日本?――

今回はルイとレイ、その仲間達が議論し合い、ある結論に辿り着きます。

重要な場面です。

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